素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

15 / 24
第13話 私もやれば出来る女ってことよ

 ゴールデンウィーク二日目の今日、俺と紗奈は朝から倉敷駅にいた。今日はこれから瀬戸大橋を渡って香川県にある宇多津水族館に行く予定だ。

 

「それにしても紗奈の友達も運が悪いよな、せっかくペアチケットまで買ったのに行けなくなるなんて」

 

「急用みたいだから仕方がないわ」

 

「その分俺がしっかり楽しまないとな」

 

「せっかく誘ってあげたんだからつまらなさそうにされたら困るわよ」

 

「間違いない」

 

 本来は紗奈とその友達が一緒に行く予定だったが、どうしても外せない用事が出来てしまったとのことで行けなくなったらしい。

 しかも昨晩急に行けなくなったようで、あまりに急過ぎて他に誘える相手がいなかったため俺に声をかけたのだとか。俺は基本的に陰キャで一緒に遊ぶような友達はほとんどいない。だから前日の夜に突然声をかけられても余裕だった。

 

「それにしても香川にはちょっと前に行ったばかりなのにまた行くことになるとは思わなかった」

 

「入学してすぐに校外研修で行ったわよね」

 

「ああ、うどん作り体験をした後で金比羅山に登らされるとかいう何のためにやるのかよく分からない研修だった」

 

 ちなみに疲れるという理由で紗奈の荷物を持たせられたため余計に疲れた記憶がある。本当にあの日を境に紗奈はガラッと変わったと思う。ちなみに何があったのかを聞いてもいたが、紗奈は頑なに教えてくれなかった。

 本気で嫌がっていたため追及するのを辞めたが、口を閉ざす紗奈が何かを恐れているような姿だったことはよく覚えている。ひとまずは紗奈が優しくなっただけ良しとしよう。そんなことを考えているうちにホームにやって来た電車に乗って岡山駅方面へと移動を始める。

 

「いつも思うんけど、一回岡山駅まで行くのって中々面倒じゃない?」

 

「確かにな、倉敷駅から直通で四国まで行けたらめちゃくちゃ便利なのに」

 

「そうよね、瀬戸大橋だって岡山市じゃなくて倉敷市にあるんだから」

 

 俺や紗奈が口にした言葉は倉敷駅周辺に住んでいる者なら一度は思ったことがあるはずだ。だが現実は路線の都合で四国方面とは全然方向が違う岡山市内まで行った後、岡山駅で山陽本線から瀬戸大橋線に乗り換える必要がある。

 

「ところで紗奈はゴールデンウィークの課題は順調か?」

 

「実はもう全部終わらせてるわ」

 

「えっ、マジ!?」

 

「私もやれば出来る女ってことよ」

 

 紗奈がもう課題を終わらせていることは完全に予想外だ。今までの紗奈の場合だと長期休みの課題は後回しにした挙句、俺に手伝わせるというパターンがほとんどだった。

 そう言えばここ最近は普段の課題もちゃんと提出するようになってるし、明らかに以前の紗奈よりも真面目になっている。ここまで紗奈が変わるなんて一年前の俺に言っても多分信じないに違いない。

 そんなことを考えているうちに次の駅で一気に人が乗ってきて電車内がさらに混雑し始める。すると紗奈は俺の腰に手を回して密着してきた。

 

「き、急にくっ付いてくるなよ」

 

「電車の中が混んできたから仕方なくよ、流石に知らない人にはくっ付けないから」

 

「それは確かにそうかもしれないけどさ……」

 

「もしかして春人は嫌かしら?」

 

「別に嫌ではないぞ」

 

 体の柔らかい色々な部分が俺に当たってることに関して紗奈は気にならないのだろうか。俺は完全に思考が停止状態に陥っている。

 だが、それと同時に他の誰かにくっ付かれるのはちょっと複雑な気分になりそうだったので、紗奈が選んだ相手が俺で良かったと思う自分がいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。