素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

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第18話 確かに春人は私のものじゃないわ、でも大切な幼馴染だから

 俺の名前を口にしたということは間違いなく顔見知りなだが、記憶を思い返してもこんなギャルの知り合いなんていない。

 

「えっと……」

 

「あっ、やっぱり分からないか。まあ、高校デビューでめちゃくちゃイメチェンしたしね」

 

 なるほど、どうやらギャル風の見た目になったのは最近のようだ。そう言えば声に聞き覚えがあるなと思っているとギャル風な女子は決定的な一言を口する。

 

「いつもみたいにおっぱいを揉んでみる? そしたら思い出すかもよ」

 

「あっ、もしかして神埼か!?」

 

「正解、やっと思い出してくれた」

 

 ギャル風な女子改め神埼瑠衣(かんざきるい)はそう声をあげた。神埼さんはモテない俺にセクハラまがいな言動をよくして揶揄ってきた中学校の同級生だ。そして言うまでもなく俺は神埼さんのおっぱいを揉んだことなんてない。

 

「めちゃくちゃギャルになってたから気づかなかった」

 

「誰こいつって顔で見られたからちょっと悲しかったよ」

 

 神埼さんはそう口にしながら泣き真似をしていたが演技であることは知っている。こいつはモテない男を弄ぶのが好きなのだ。

 

「てか、そんな派手な髪とかメイクをしてて大丈夫なのか? 普通の学校なら生徒指導が入ると思うんだけど」

 

「ああ、私の学校は基本的にその辺りは自由だから」

 

「そんな学校この辺りにあったっけ?」

 

 そもそも岡山県内の高校だと定時制以外では髪染めがオッケーな学校はなかった気がするんだけど。そんなことを思っていると神埼さんはすぐに答えを教えてくれる。

 

「広島学園大学附属の福山校って言ったら分かるんじゃない?」

 

「なるほど、あそこか」

 

 広島学園大学附属高校は俺の通っている星稜高校をはるかに上回る偏差値を誇る中国地方で間違いなく超難関の高校だ。

 確かに勉強さえできればファッションは自由な校則だったはずなので、神埼さんがギャル風な格好をしているのも納得出来る。

 

「ところで黒崎君は図書館に何しに来たの?」

 

「見ての通り勉強だ、来週から中間テストが始まるからな」

 

「やっぱりどこも来週くらいからだよね」

 

 神埼さんとそんな話をしていると突然体に寒気が走る。後ろを振り向くとそこには紗奈がいた。宇多津水族館の時と同じくドス黒いオーラを出す紗奈だったが、神埼さんはそんなのお構いなしに話しかける。

 

「あっ、紗奈ちゃんじゃん。久しぶり」

 

「……えっ、あんたってもしかして瑠衣?」

 

「やっぱり紗奈ちゃんはすぐに気づいてくれるよね」

 

 俺とは違い紗奈は神埼さんがギャル風な姿になっていてもその正体にはすぐ気付いたらしい。やはり女子はその辺りは敏感なようだ。

 

「まさかとは思うけど春人にちょっかいなんか出してないでしょうね?」

 

「うーん、おっぱいを揉ませようとしたくらいかな」

 

「ちょっと、私の春人を穢そうとしないでよ」

 

「男子の夢を叶えてあげようとしただけなのに酷い言われようで悲しいんだけど」

 

 紗奈は神埼さんから終始ペースを乱されまくりだった。そう言えば中学時代から神埼さんの方が一枚上手だったっけ。

 

「そもそも黒崎君は紗奈ちゃんのものじゃないと思うんだけどな」

 

「確かに春人は私のものじゃないわ、でも大切な幼馴染だから」

 

「……へー、紗奈ちゃんも変わったね」

 

 さっきまで揶揄うモード全開だった神埼さんは紗奈の言葉を聞いてちょっと感心したような表情になってそう声をあげた。神埼さんも今までの紗奈とは違うことに気付いたらしい。

 

「素直になった紗奈ちゃんに免じて黒崎君に絡むのはこのくらいで許してあげるよ」

 

「さっさとどこかへ行きなさい」

 

「二人ともまたね」

 

 そう言い残して神埼さんは俺達の前から去っていった。これでようやく勉強を再開できると思っていたら紗奈が問い詰めるような視線を向けながら口を開く。

 

「それで瑠衣のおっぱいは本当に揉んでないんでしょうね?」

 

「当たり前だろ、図書館でそんなことをするわけないから」

 

「じゅあ図書館じゃなかったらしたのかしら?」

 

「今のはあくまで言葉のあやだからな」

 

「とにかく、春人は私の幼馴染なんだから迂闊なことは許さないからね」

 

 神埼さんに弄ばれたせいか、紗奈はちょっとぷりぷりしていた。

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