素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

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第20話 自分だけが気持ちよくなって終わるような女じゃないわ

「ど、どういうつもりだよ!?」

 

「私も一緒にシャワーを浴びようと思っただけよ。ほらっ、その方が効率も良さそうだし」

 

「いやいや、そういう問題じゃないだろ」

 

「どういう問題なの?」

 

「俺達は男子と女子だぞ、どう考えてもこれはまずいって」

 

 あまりにもぶっ飛んだ紗奈の行動に俺はそう声を上げながら狼狽えることしか出来ない。しかも何でタオルすら巻いていないんだよ。

 

「別に私の裸なんて見たことあるんだからそんなに慌てなくてもいいじゃない」

 

「それは小学校低学年くらいの時の話だろ」

 

「そんなに前だったかしら? 私的には一週間前くらいだったような気がするんだけど」

 

「さらっとありもしない記憶の捏造をするな」

 

 今や俺も紗奈も高校生なんだから小学生の頃とはわけが違う。間違いなく高校生の男女が一緒にシャワーを浴びるなんてことは不健全だ。

 

「そもそも何であんたは恥ずかしがってるわけ? 幼馴染が裸の付き合いをするのは世間一般的に考えても普通よ」

 

「……えっ、そうなのか?」

 

「ええ、春人は人付き合いのことには疎いから知らないかもしれないけど私の知り合いはみんなやってるから」

 

 紗奈があまりにも堂々とそんなことを言うもんだから本当にそんな気がしてきた。えっ、もしかして俺の方が異常なのか?

 

「ってわけだから私も一緒に浴びさせてもらうわよ」

 

「あっ、おい!?」

 

 紗奈は当たり前と言わんばかりに俺の隣にくるとシャワーのレバーを下げる。するとシャワーヘッドから暖かいお湯が出てくるわけだが、二人同時に浴びる想定をしたサイズではないため全身には満遍なくかからない。

 

「流石に二人同時だとちょっと厳しいわね」

 

「当たり前だろ、二人でシャワーを浴びるとか全然効率が良くないからな」

 

「じゃあもう少しくっ付けば浴びやすくなるかしら?」

 

「ちょ!?」

 

 何と紗奈は何のためらいもなく俺の背中に密着してきたのだ。言うまでもなく阻むものは何もないため胸の柔らかさがダイレクトに伝わってくる。俺はパニックを起こす寸前だというのに相変わらず紗奈は平然としていた。

 紗奈がここまで普段通りということはやはり幼馴染と裸の付き合いをするのが当たり前というのは本当なのかもしれない。そう思ってしまうくらいに俺の思考回路はぐちゃぐちゃだ。

 

「うーん、やっぱり体の密着してる部分にはシャワーのお湯がかからないのはちょっと物足りないかも」

 

「こ、これで分かっただろ。いい加減このくらいで諦めろ」

 

「だから春人にかけてもらうことにするわ」

 

「……えっ?」

 

「それなら別にいいでしょ。ほらっ、寒くて風邪をひいちゃいそうだから早くして」

 

 紗奈は理解が追いつかない俺を無視してシャワーを手渡してくる。そしてそのままお湯を体に満遍なくかけろと言いたげな表情を俺に向けてきた。完全に思考停止状態に陥ってしまった俺は紗奈の言われるがまま行動をする。

 

「このくらいでいいわ、じゃあ今度は春人の番ね」

 

「いや、俺は別にそこまでしてもらわなくても大丈夫だから」

 

「大丈夫、私に任せなさい。自分だけが気持ちよくなって終わるような女じゃないわ」

 

 そう言い終わるやいなや紗奈はシャワーを奪い取ってきた。そしてそのまま俺の体にシャワーヘッドの先から飛び出したお湯をかけてくる。

 緊張し過ぎたせいか一周回って何だか急にめちゃくちゃ落ち着いてきた。うん、以前までの傍若無人でガキ大将みたいな頃ならともかく今の紗奈が俺に嘘なんてつくはずがないよな。

 だから幼馴染と裸の付き合いをすることは当たり前のことであるに違いない。今まで恥ずかしがっていたのがバカみたいだ。

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