素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

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間話1 信じられないかもしれないけどそれが現実よ

「あれ、さっきまで春人と一緒にアウトレットにいたはずなのに……」

 

 何故か私は全く見知らぬ場所に立っていた。どう見てもアウトレットの中ではなく、どこかの街の路上のようだが一体ここはどこなんだろう。そんなことを思っていると道の向こうから見覚えのある顔が歩いてくる。

 

「……春人?」

 

 何故か私が知っている春人よりも容姿が明らかに大人びていた。ぱっと見ただけの印象だが今の私よりは年上で二十代後半くらいにしか見えない。

 だが、それ以上に私を驚かせたのは全く知らない女性と手を繋いで仲睦まじそうに二人で歩いていたことだ。そんな様子を見て明らかに不快な気分にさせられた私は春人に近付いて文句を言う。

 

「ちょっと、春人。隣の女はどこの誰よ?」

 

 しかし私の声が聞こえないのか無視をされてしまう。だから引き止めるために手を掴もうとする私だったが、何故か春人に触れることができずそのまますり抜けてしまう。

 

「無駄よ、この空間であなたは私以外には認識されないし干渉もできないようになっているから」

 

 後ろからそう声をかけられた。その声はどこか聞き覚えがあったのだが、声の主を見た瞬間私は驚きのあまり声をあげる。

 

「えっ!?」

 

 何と後ろに立っていた相手は私と同じ顔をしていたのだ。より、正確に言うと私が二十代後半になったら多分こんな感じになるだろうという姿だったが。

 

「あんた誰よ……?」

 

「あら、私が誰なのかはあなたが一番よく知っていると思うけど」

 

「……もしかして私?」

 

「そうよ、私は二十九歳のあなた自身よ」

 

 目の前に立つ女は私に対してそう告げた。どうして私はここにいるのかや、何故二十九歳になった私が目の前にいるのかなどとにかく分からないことだらけだ。

 

「てか、何であんた……未来の私はそんなにやつれたような顔をしているのよ?」

 

「何でだと思う?」

 

「うーん、ちょっとだけ想像がつかないわね」

 

 もし本当に目の前にいるこいつが二十九歳の私だとして、何故こんなにも全てに絶望したような表情をしているのか全く分からない。すると二十九歳の私は悲しそうな表情で口を開く。

 

「それは今の私が不幸のどん底にいるからよ」

 

「そう言われてもよく分からないんだけど」

 

「ところであなたは春人のことは好きかしら?」

 

「そ、そりゃ好きだけど」

 

 唐突に話題を変えてきた二十九歳の私に対して戸惑いながらそう答えた。私は昔から春人のことがずっと好きだった。いつから好きだったのかは分からないが、私は春人と結ばれたいと思っている。すると二十九歳の私は悲しそうな表情を浮かべながら口を開く。

 

「そう、でも残念だったわね。()が春人と結ばれることはなかったわ」

 

「……えっ?」

 

 ちょっと何を言っているのかよく分からなかった。 だって春人も私のことを好きなはずなんだからそれはあり得ないでしょ?

 

「信じられないかもしれないけどそれが現実よ」

 

 二十九歳の私がそう言った瞬間、場面がまるで立体映像のように切り替わる。今度私が立っている場所は結婚式場だった。

 

「あれを見なさい」

 

「あ、あれは!?」

 

 どうやら結婚式の最中のようだったが新郎である春人の隣に立っている新婦はどう見ても私ではない。唖然としている私の前で結婚式はどんどん進行していき、誓いのキスの場面になった。

 私以外の女と春人がキスしているシーンなんて絶対見たくなかった。しかし目を逸らそうとする私に対して、二十九歳の私が邪魔をしてくる。

 

「これがあなたの未来なんだから目を逸らすなんて許さないわ」

 

 そのせいで私は幸せそうな顔をして誓いのキスをする場面をまじまじと見させられる羽目になった。これが私の未来なんて絶対に信じたくない。だが、二十九歳の私の表情が全てを物語っていた。

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