素直になった幼馴染から激重感情を向けられていることを俺はまだ知らない   作:水島紗鳥

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第7話 そんなガチトーンで言わなくてもいいじゃない

「とりあえず保健室に行きましょう、特別に私も一緒に行ってあげるから」

 

「いや、別に保健室に行くくらい全然俺一人でも大丈夫だけど」

 

「せっかく好意で言ってあげてるんだから素直に従ってくれてもいいじゃない、それとも私と一緒に行くのは嫌かしら?」

 

「……分かった、じゃあお言葉に甘えるよ」

 

 上目遣いをされてそんなふうに言われてしまうと流石に断れそうにはなかったため、俺は大人しく受け入れることにした。

 秋夜が保健室で幼馴染とベッドインとか言ったせいで変な想像をさせられてしまったため、後で一発ぶん殴っておこう。俺と紗奈が一緒に体育館から出ていく姿をめちゃくちゃ見られていたため恥ずかしかったことは言うまでもない。

 

「それにしても春人と一緒に保健室にいくなんて一体いつ以来かしらね」

 

「多分小学四年生の運動会の時以来じゃないか? 確かあの時はクラス対抗リレーの最中にこけて紗奈と一緒に保健室に行った記憶があるし」

 

「あったわね、そんなことも」

 

「紗奈が何も考えずに傷口に大量の消毒液をぶっかけてきてめちゃくちゃ痛かったのはいまだに覚えてるからな」

 

「悪かったわね、あの時はとりあえずたくさんかけとけば治るって思考だったから」

 

 そんな話をしているうちに保健室へと到着した俺達だったが中には誰もいなかった。中は完全に無人で完全に静まり返っている様子だ。

 

「保健室の先生はいないみたいだな」

 

「用事か何かでどこかへ行ってるのかもしれないわね」

 

「いつ戻ってくるかも分からないし、勝手に応急処置だけさせて貰おう」

 

「じゃあテーピングテープを取ってくるから春人はそこに座ってて」

 

 紗奈にそう言われたため今度は抵抗せず素直に好意に甘えることにした。棚を開けてテーピングテープを探し始めた紗奈はすぐに見つけたようだが問題が発生する。

 高い位置にあり紗奈の身長だとギリギリ手が届かなかったのだ。紗奈は身長百五十四センチとやや小柄なため高い位置にあると厳しいらしい。背伸びをして取ろうとする紗奈だったが見ていてちょっと危なっかしかったので俺は立ち上がる。

 

「手が届かないなら俺が代わりに取るから別に無理しなくても大丈夫だぞ」

 

「……春人は身長が高くて羨ましいわ、私に何センチか分けて欲しいんだけど」

 

「男子の平均身長よりほんの少し高いくらいだから分けるのはちょっと無理だな、平均身長だけは絶対に下回りたくないし」

 

「そんなガチトーンで言わなくてもいいじゃない」

 

 俺の言葉を聞いた紗奈は少し膨れっ面になりながらそう文句を言ってきた。一応百七十四センチあるため男性の平均よりはほんの少し高いが、ちょっとでも分けたらあっという間に下回ってしまう。

 まあ、そもそも身長を分ける方法なんてないが。そんなことを思いながら先ほど棚から取り出したテーピングテープを指に巻こうとしていると紗奈が口を開く。

 

「突き指のテーピングくらい私がやってあげるわよ」

 

「いいのか?」

 

「ええ、そのためにわざわざ保健室までついて来たようなものだしね」

 

 そう言い終わった紗奈は俺が持っていたテーピングテープを取る。そして俺の手に触れて来た紗奈だったがその感触は相変わらず柔らかかった。

 ここ最近紗奈は妙に俺と手を繋ぎたがるためよく繋いでいるが、あまり女子には免疫がない人間のためそのたびにドキドキさせられてしまう。

 めちゃくちゃ単純な人間だと思われるかもしれないが、多分モテない男子高校生はみんな今の俺と同じような感じに違いない。

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