キュウべえ「ボクと契約してTS魔法少女になってよ」 作:フェレーデ
皆さんお久しぶりです。
宣言通り帰ってきましたフェレーデと申します。
予告していた1月半ばより少し早いですが、年明けからの仕事がかなり忙しくなりそうなので今のうちに投稿できる分を投稿します。
〇わ~にんぐ
先に言っておくと、この話の結末は映画とまったく異なるものになります。
また、第1章よりも作者の解釈が色濃く反映された作風になってるので、解釈違いやコレジャナイ感があるかもしれないということを先にお伝えしておきます。
矛盾がないように書いたつもりではありますが、見落としてる設定とかあったらごめんなさい。
1:楽しくて幸せな場所
「……はうぅ…もう朝?」
わたし、鹿目まどか。
見滝原中学校に通う中学2年生。
ただ、普通の中学生とはちょっとだけ違って、魔法少女として見滝原の街を守っているの。人が見る悪夢から生まれる
昨日もナイトメアと戦ってあまり寝れてない。
けど、学校には行かなきゃだから遅刻をしないように早く起きないと!
「おはようキュウべえ」
棚の上に飾られたにぬいぐるみに混じって眠っているキュゥべえを撫でて、自室を出て1階へと降りていく。パパにおはようと挨拶をしてリビングのカーテンを開け、朝が弱いママを起こしに行く。
そうして、身支度をしながら最近あったことについて話す。
「最近どんなよ?」
「仁美ちゃんがちょっと大変。中々上条くんと予定が合わないんだって」
「うんうん。ま、ほんとに難儀なのは付き合う様になってからなのさ。めげず焦らず、諦めずだよ~」
ママと何気ない会話をするのはわたしにとって日常の一部だった。
1日のスタート。こういう会話をすると、今日も1日頑張るぞっていう気分になる。
今日は上条君と仁美ちゃんのことについて話した。
2人はちょっと前に恋人同士になって付き合うようになったけど、お互い時間が合わなくて大変なようだった。2人とも習い事が忙しいからしょうがないのかな? せっかく恋人同士になったなら上手くいって欲しいと思う。
「それからね。今日から転校生が来るんだって」
「へえ。こんな時期に珍しくない?」
「どんな子かなぁ? お友達になれるといいな」
まどかはまだ顔も見ぬ転校生に思いを馳せる。
先生の話では女の子っていう話だった。転校したては周りに馴染むのも大変だろうから、お友達になってあげられたらと思う。だって、わたしが転校生だったら、きっと緊張して何も話せなくなっちゃうだろうから。
「さあ、まどかも急がないと」
「え!? わ…もうこんな時間!?」
朝ごはんの食パンを咥えて家を出る。
後から付いてきたキュウべえを肩に乗せて、一緒に学校へと駆けていく。
「それじゃあ行ってきます!」
わたし今、とってもとっても楽しいです。
毎日が充実していて、楽しい思い出がこんなにたくさん。
まるで夢を見ているみたい。ナイトメアはもちろん怖いけど、それをみんなと一緒に退治するのはちょっぴり楽しいと思ったり。
◆
「おはよー」
通学路で待ち合わせするのはさやかちゃんと杏子ちゃん。2人とも魔法少女で、昨日も一緒にナイトメアを倒すために戦った仲だ。
ちょっと前までは仁美ちゃんも一緒に待ち合わせしてたんだけど、上条君と付き合うようになってからは別々で登下校するようになった。
方向が反対だけど、それでも一緒に居られる大事な時間だからって言って仁美ちゃんは上条くんと待ち合わせしている。
それを見て、なんだかいいなぁってちょっとだけ思う。少しだけ憧れはあるけど、わたしにはまだ理解できない世界だ。
「遅いぞーまどか」
「昨日もお疲れ」
全員が魔法少女、とは言ってもそのことばかり話してるわけじゃない。
むしろ昼間はナイトメアのことをすっぱり忘れて、学校生活を楽しむようにしている。
「あれからちゃんと眠れた?」
「一応ね。でも、今日の予習やる時間はなかったから、もし当てられたらまずいかも」
「まだマシじゃねえか。あたしなんて宿題すっぽかしちまって、やべーわマジで」
学生と魔法少女の両立はとっても大変で、宿題をしたり授業の予習をしたりするのも難しい時がある。
朝から夕方まで学校に行って、夜はナイトメア退治。纏まった時間なんて取れないことも多くて、決まった時間に勉強をすることもままならない。
「なぁまどか。後でちょっと写させてくれよ」
「こぉら! そういうズルにまどかを巻き込まないの!」
「お前が写させてくれないのが悪いんだろ? 1人で抜け駆けして終わらせちゃうなんて、酷いのはさやかの方じゃないか」
「帰ってすぐ一緒にやろうって言ったのに。テレビなんて見てるから!」
「大体さあ、魔法少女と学校の両立なんて無理なんだよ。遊んでる時間なんてありゃしねえ」
「まず遊ぼうっていう発想がおかしいって言ってんのよ!」
生真面目な部分があるさやかちゃんと不真面目な部分がある杏子ちゃん。
2人は同じ部屋に住んでいて、パッと見では性格が合わないんじゃないかと思うけど、根っこの部分は似た者同士で実は相性が悪くない。むしろ、バッチリなんじゃないかと思えるほど。
こうして登校中に言い合いができるのは仲が悪いからじゃなくて、2人が遠慮なく喧嘩ができる仲だからこそ。
わたしもそれが分かっているから「喧嘩は止めようよ」なんてことは言わず、ただ見守るようにしている。というか、もう言っても無駄だと思って割り切るようになった。
……ただ、通学路でこういうことをするのはちょっと止めて欲しいかなって思う。
注目の的になってじろじろと視線が集まるのは何度経験しても恥ずかしい。もうちょっと周りの目を気にしてくれれば嬉しいかな、と思うんだけど、さやかちゃんと杏子ちゃんは完全に2人の世界に入っていて自重する気がないことがありありと伝わってくる。
(うぅ……もう諦めるしかないのかな)
いつものことだし仕方がないのかなと半ば諦めている。
とはいえどうにかしたいという気持ちがあるのも事実で、だからといって何かできるわけでもないというのもまた事実で。
結局、何をすることもなく困ってしまって苦笑いを浮かべることしかできない。いつものことだから仕方ないと心の中で言い訳をして。
「……」
でも、そんな光景が時々どうしようもなく愛おしく思えて。
いつもの見慣れたはずの光景が、輝かしくも懐かしい、けれど新鮮な、得難いものであるように思えてならなくて。
言葉にならない気持ちで胸がいっぱいになるのはどうしてだろう。
◆
チャイムが鳴り朝礼が始まる。
教壇に立った早乙女先生が指示棒を片手に話し始める。
「皆さん、マヤ暦で預言された世界の終わりをやり過ごしたからっていい気になっていませんか? いやいやまだまだこれからですよ。とある宗教の祭礼の日に合わせて日食と月食が6回起っちゃうっていう話です。怖いですねぇ、まずいですねぇ」
よく通る声に反して、メガネは不気味に光り話す内容は意味不明。
生徒たちは「また始まったよ…」というばかりに、椅子に座ったまま先生の放つ異様なオーラに耐えることしかできない。
「───それに、2050年までに何が起こるかといえば……はい! 中沢くん!」
「えっ! えっと……何のことだか」
「いけませんねぇ。あちらの国では、約41%の人があと40年で神の子が再臨すると信じているそうです。黙示録のラッパがなっちゃうかもなんです」
大仰な身振りを交えながら語りを止めない早乙女先生。
クラスから動揺の声が上がるが、それに気づくことなく続ける。
「まぁでもね、先生……世界が滅んじゃうのも良いかなぁって思うんです。男女関係とか恋愛とかもうたくさんですし、このまま四捨五入して40歳とか言われるくらいなら、もういっそ何もかもリセットして最初からやり直した方が……」
「あの……ちょっと、先生?」
「あぁそうそう! 今日は皆さんに転校生を紹介します」
「そっちが後回しかよ!」
世紀末のような語り口から一転、声のトーンを5つくらい上げて何事もなかったかのように話し始める先生。先生がいつもの調子に戻り、クラスからいくつもの安堵の息が零れる。
「じゃあ暁美さん。いらっしゃい」
そうして教室に入ってきたのは、長い黒髪を三つ編みをおさげにした赤縁の眼鏡をかけた少女。
「暁美ほむらです。どうかよろしくお願いします」
ふと、その視線がまどかと合う。
何だろうと思い見ていると、ほむらはおもむろに長い前髪をまくる仕草をし、その時に左手の中指に指輪が嵌っているのが見えた。
『あれって…!』
『ソウルジェム! ってことはあの子も…!!』
まどかやさやか、杏子がそれに気づいたのを見て、ほむらはにこりと微笑んだ。
◆
昼休み。
マミさんにもほむらちゃんのことを知らせようと思い屋上に集まると、なんと既にマミさんとほむらちゃんには面識があったそうだった。
しかも、昨日のナイトメア退治のときは、ほむらちゃんはマミさんの補佐をしていたというのだから驚いた。わたしたちにほむらちゃんのことを黙っていたのは、マミさんからのちょっとしたサプライズだったらしい。
「すごいのよ彼女の魔法。コンビネーションで攻撃力を何倍にも圧縮できるんだから」
「そんな……、私にできるのはサポートだけで、攻撃そのものはからきしですけど…」
ほむらちゃんの魔法は時間を止めること。
ほむらちゃんに直接触れているもの以外はすべて時間が止まって動かなくなるから、すばしっこいナイトメアを追いかけたり、ナイトメアの強力な攻撃から身を守ったりするのに有効に使える。
実際、マミさんは時間を止めている間に攻撃をセットして、時間が動き出すと同時に一斉にナイトメアに攻撃を当てて倒したのだとか。
ほむらちゃんと直接触れていれば私たちも止まった時の中を動くことができるから、リボンでほむらちゃんと繋がったまま動き回れるマミさんは相性が良い。
ただ、ほむらちゃんの言う通り攻撃手段にはならない。
時間を止めることができてもその間に攻撃をしなければナイトメアを倒すことはできないから、その辺はわたし達が頑張らないといけないところだ。
「よぉし、これでピュエラ・マギ・ホーリー・カルテット改め、ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット結成ね!」
マミさんが意気揚々といった様子でチーム名を決める。
「決まった…」とばかりに満足げな表情を浮かべるマミさんに、さやかちゃんと杏子ちゃんが何か言いたげな顔だ。きっと同じことを考えてる、やっぱりこの2人は仲良しだ。
ほむらちゃんはどう反応していいのかといった様子でドギマギしていたので、こっそりテレパシーで教えてあげることにする。
『安心してほむらちゃん。マミさんはこういう人だから』
『え、えぇ……』
だけど、ほむらちゃんの表情から不安な気持ちは全然なくなっていなくて、これから上手くやっていけるのかな、という不安がなんとなく伝わってきた。
なんだかその気持ちはすごくよく分かる。わたしも不安で押しつぶされそうになることばかりだから、新しいことに戸惑っちゃうのはとても共感できる。
だから、わたしは安心していいよという意味も込めて言った。
ほむらちゃんの手を握り、これからよろしくという挨拶もかねて。
「ほむらちゃん、これから一緒に頑張ろうね!」
「…うん!」
◆
午後の授業。
昼食明けの時間ということもあり眠気に襲われる生徒もいる中、早乙女先生の英語の授業は続く。
「willという助動詞はbe going toに置き換えることができるため、今回の置き換えの問題ではI won't forget the promise we madeとするのが正解となります。どちらも何々するつもりという未来の用法ですが、be going toの場合はあらかじめ決めていたことを指し、willの場合はその場で決めたことを指します」
いつものことながら中学生にするにしては詳しすぎる英語の授業。
しかしそれでも分かりやすいことは確かで、昨日のナイトメア退治で予習まで手が回っていなかったまどかは先生が話したことをメモしていく。
家であまり勉強に取り組む時間が取れない以上は、学校で頑張るしかない。眠気をぐっと堪えて、目の前の授業に集中する。
「では、この空欄に入るのはどちらか答えてみましょう。はい! 中沢くん!」
「えっと、willだと思います」
「正解です! 今回の文の流れからその場で思いついたことを言っていることが分かるので、willを当てはめるのが適切です。で・す・が! 皆さんは決してその場で思いついたことを軽々しく言うような大人にならないように───」
『アイツまた指名されてるよ』
『先生もまだ恋愛引き摺ってるみたいだね。意外とあの2人お似合いなんじゃない?』
『えっ、お似合いって…!』
『もーさやかちゃん。先生と生徒でそういうのはダメだよ。それに、今は授業中』
『あはは、冗談だってば。ごめんごめん』
授業を受けているとさやかちゃんと杏子ちゃんがテレパシーで会話を始めた。テレパシーに巻き込まれたほむらちゃんはぎょっとした顔で隣の席の中沢くんと早乙女先生を交互に見て挙動不審になっていた。
『いやぁ、でも、恋愛マスターのあたしの見立てでは、あの2人はお似合いだって思うんだけど』
『失恋マスターの間違いじゃないか?』
『こぉら杏子! いくらアンタでも言って良いことと悪いことが──』
『もう2人とも、今は授業中だから……はぁ』
テレパシーでも喧嘩を始めた2人にはわたしも困った顔で笑うことしかできない。今度、キュウべえにテレパシーをシャットする方法を教えてもらおうかな? マミさんは出来るみたいだし、わたしにだって出来るはずだ。
喧嘩を見てあわあわしているほむらちゃんには「いつものことだから気にしなくていいよ」と伝えると、2人のことを気に掛けながらも、再び授業に集中し始めたようだった。
(それにしても、失恋……か)
一方でわたしは授業に集中し直すことができなかった。
失恋、さっきの杏子ちゃんの言葉が脳裏をよぎる。
(さやかちゃんはもう大丈夫だって言ってるけど……)
さやかちゃんは失恋を経験している。
本人は勘違いの初恋だったから失恋じゃないって言ってるけど、わたしから見たらあれは失恋だったと思う。
中学1年生の時のこと。
さやかちゃんは、仁美ちゃんから告白の宣戦布告を受けた。さやかちゃんの幼馴染の上条君に恋してしまったから、1日待ってから告白をするのだと。
仁美ちゃんとしては、さやかちゃんが上条君に幼馴染以上の気持ちを持っていることを察していて、けれど全然進展しない2人の中に発破をかけるつもりも兼ねて告白宣言をしたのだと思う。
けれど、突然のことにさやかちゃんは困惑して、とりあえず猶予としてバイオリンのコンサートが終わるまで待って欲しいとお願いして、それならばと仁美ちゃんも了承した。
そして、訪れたコンサート当日。
わたしとさやかちゃんと仁美ちゃんは3人でその演奏を聴きに行って、見事に晴れ舞台を成功させた恭介君に惜しみない拍手を送った。
わたしも仁美ちゃんも音楽にあまり詳しいわけではないけど、上条君の演奏が素晴らしいものだということだけは十二分に伝わってきて、感動した。
でも、さやかちゃんにとってはそれだけじゃなかったみたいだった。
『さやかちゃん、どうして泣いてるの?』
『えっ、あたし何で泣いて……』
さやかちゃん自身もどうして泣いてるのか見当がついていないようだった。
涙が止まらないさやかちゃんにわたしはハンカチを貸して、少しでも苦しさが紛れればという思いで隣に寄り添った。
でも、どれだけ拭っても涙が止まることはなくて、ぼろぼろと泣くさやかちゃんを見ているとどうにも苦しんでいるように見えてならなくて。だから、黙ってぎゅっと抱きしめてあげた。
しばらくするとさやかちゃんも落ち着いて、涙声のまま話し始めた。
『まどか、ありがと。……あのね、あたし気付いたんだ』
『気付いた?』
『あたし、ずっと恭介のことが好きなんだと思ってた。小さいときに聴いた恭介の演奏が綺麗で忘れられなくて、胸がドキドキして……』
『……』
『でも違った。もちろん恭介のことは好きだけど、そういう意味じゃなくて。あたしが本当に好きだったのはこの演奏だったんだって気付いて、今までずっと勘違いしてたんだって思ったらどうしようもなく胸が苦しくなって、それで…』
『……うん、そうだね』
……さやかちゃんが本当の気持ちを自覚して、上条くんには告白しないって言った。仁美ちゃんもさやかちゃんの言葉をしっかり聞き届けて、それならばということで上条くんに思いの丈を伝えることにした。
2人が何を話したのかは知らない。
さやかちゃんが「あたしたちは向こう行ってるから」と言って仁美ちゃんと上条くんを二人きりにしたから。
でも、次の日に「付き合うことになりましたわ」とクラスで嬉しそうに話していた仁美ちゃんに、さやかちゃんも明るい調子でおめでとうと祝福して。
仁美ちゃんが「上条くんが最高の演奏をできるよう私も頑張りますわ」と言うと、さやかちゃんはちょっとだけ泣きそうな表情で「仁美ならできるよ」と言っていた。
『まどか、ごめん。ちょっとだけ一人にさせて』
『さやかちゃん…』
仁美ちゃんと話したあと、さやかちゃんはそう言ってどこかに行ってしまった。
だけど、どうにもさやかちゃんが遠くに行ってしまうように感じて不安でいっぱいになったわたしは、怒られるのを覚悟でさやかちゃんを探した。
すると、さやかちゃんは人のあまり立ち寄らない空き教室でこっそり泣いてた。
あたしの初恋が終わっちゃったって言って。2人を祝福したい気持ちは嘘じゃないのに、それでも胸が張り裂けそうなほどに苦しいんだって言って。
わたしにはその気持ちを理解してあげることができなくて、寄り添ってあげることしかできなかった。
けど、時間とともにさやかちゃんも気持ちの整理がついてきて。
さやかちゃんも仁美ちゃんと上条くんの仲を素直に応援することができるようになってきた。
恋愛は友達関係を壊すこともあるって怖いことをママが言ってたけど、さやかちゃんと仁美ちゃんはそんな感じじゃなくて。
2人は変わらず友達のままだし、このまま時間が経てばさやかちゃんの苦しい気持ちも無くなっていくのかな、なんてことを考えていた。
でも、悲劇は起こった。
交通事故で上条くんがバイオリンを弾けない身体になってしまった。
極めつけに現代の医学では治せないとハッキリ言われて、絶望に暮れる上条くんと一緒になって泣いている仁美ちゃんが、見ているだけで痛々しかった。
『世の中ってさ、どうしようもなく理不尽だよね。どうしてあの2人が苦しまなきゃいけないの? せっかく幸せになれたのに』
『さやかちゃん…』
『あんなの見てられないよ。あたしが何とかできれば──』
『その言葉は本当かい?』
『えっ』
『だれ?』
『僕はキュウべえ。君たちの力になってあげられるよ』
『それは、ほんとう?』
『もちろんだよ。願い事をなんでも一つ叶えてあげる。だから──』
──ボクと契約して魔法少女になってよ
そんな日のことだった。
キュウべえに出会い魔法少女の存在を知ったのは。
さやかちゃんは上条くんの腕を治せると聞いて、奇跡を起こして魔法少女になった。2人には何も伝えず「仁美の祈りが奇跡を起こしたのかもね」なんて言って、わたしにも「これで良かったんだよ」って言ってた。
さやかちゃんは魔法少女になって街を守るために戦うようになったのに、わたしは契約もせず願い事も決められないまま。
それでもさやかちゃんのために何かできないかと思う気持ちは確かにあって、だけど戦うことが怖いと思う意気地なしなわたしもいて。
魔法少女になるかどうかを悩んでいたときに黒猫が車に轢かれてしまう現場に居合わせて、わたしも魔法少女になる決意を固めた。
『見ず知らずの野良猫を助けるために魔法少女になるなんて……まぁそこがまどからしいというか何というか』
さやかちゃんは呆れてた。
でも、怒ることはなくて、これから一緒に頑張ろうねって言って手を取り合った。それが、わたしたちの魔法少女としての始まり。
それからマミさんとさやかちゃんと一緒にナイトメアと戦って、後から杏子ちゃんが合流して一緒に戦うようになって、今日はそこにほむらちゃんが加わって。そうして今に至る。
(───あっ、いけないいけない! 授業に集中しないと!)
ハッとして現実に戻る。
ホワイトボードを見ると幸いにもあまり授業は進んでいなかった。
昔のことを思い出すのは良いけど、今は英語の授業に集中しないとと思い気合を入れ直し、止まっていた板書を書き写していく。
「では、本日学習した助動詞について復習です。美樹さん、この問題の答えは?」
「んーと、3番だと思います」
「正解です。次の問題、佐倉さん」
「えっと、1番」
「正解です。次、暁美さん行ってみましょう」
「う、えーと……4番、です」
「正解です。では、最後の問題。渡里さん」
「えっ…?」
すると、ほむらちゃんがぎょっとした様子で渡里さんの方を振り向いた。
信じられない、というような表情を浮かべている。
『どうしたのほむらちゃん。知り合い?』
『い、いえ……そういうのじゃないんですけど……』
『…?』
テレパシーで聞いてみるが、返ってきたのは歯切れの悪い言葉ばかり。
同じくほむらちゃんの様子を不思議に思ったさやかちゃんと杏子ちゃんも何だ何だとばかりにほむらちゃんの答えを待つ。
『あの……渡里さんなんてこのクラスに居ましたっけ?』
『何を言ってるんだほむら。最初から教室にいたぞあいつは』
『いや、それはそうなんですけど……』
『変なこと言わないでよね。大体、ほむらは今日転校してきたばっかりなんだから、あいつのこと何も知らないはずでしょ』
『う、うーん……でも』
『それともやっぱり知り合いとか?』
『会ったことは……ないはずなんですけど』
『ほむらちゃん。調子悪いなら保健室行く? わたし保健委員として見過ごせないよ』
『……いえ、大丈夫です。鹿目さんも心配してくれてありがとうございます。私が勘違いしておかしなこと言ってただけみたいなので』
【補足①:まどかの作った世界】(改変世界)
まどかの作った世界は『魔女が生まれない世界』。
絶望して黒く染まったソウルジェムは、その死に際に現れるまどかによって浄化され消滅する。まどかが呪いを引き受けていると考えればわかりやすいかも。
その反動なのか、世界には魔獣が現れるようになり、魔法少女はそれと戦うための正義の味方になった。恐らく、今までの世界で魔法少女由来で生まれていない魔女が魔獣に該当するのではないかと考えられる。(魔法少女由来ではないのなら、キュウべえが魔女と称さないのも納得)
この世界では色々なことがあった末に、さやかちゃんは円環の理に導かれている。詳しくは魔獣編の漫画を読もう。
【補足②:ナイトメアの世界】
ナイトメアとは人の悪夢から生まれる呪いのようなもの。
この世界の魔法少女は、それを退治してナイトメアを見ている人を救い出す使命を負っている。映画を見る限りでは、ナイトメア空間は一般人を巻き込まないんじゃないかと思われる。
【さやかの恋愛関係について】
叛逆の映画でさやかは上条恭介と志筑仁美が付き合ってるのを受け入れたうえで、上条のことを「あんな無神経なやつ」と言っている。そこから逆算したら今話のようになった。魔法少女となる際の祈りはほとんど変わらず。
【マミさんの中二病問題】
中三なのに中二病を発症していることで有名な人。
ティロ・フィナーレとか言ってる時点でその予兆はあった。ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテットも絶対ノリノリでやってる。映画では二番目に楽しそうだった(一番はさやかちゃん)
ネーミングセンスは良い方なので助かってる部分はある。
【さやかと杏子の同棲問題】
本当にどうしてこうなった案件。
どういう経緯で同棲に至ったのか想像できない。
無理やり考えるなら、さやかの両親が杏子の両親と知り合いで、天涯孤独になった杏子を引き取ることになったとか?
ただ、公式公認カップルは推すべきだと思ってるので、みんなも推そう! 杏さや!
【キュウべえ喋らない問題】
-叛逆の映画にて-
キョーコ「普通に喋れるんだな、あんた」
QB「ボクが喋らなかったらキミたちは魔法少女になれないじゃないか」
営業スキルしか取り柄のないキュウべえはどうやって魔法少女契約をしたんでしょうか? 喋らないキュウべえとかいう奇麗なキュウべえはお呼びじゃなくってよ。
『考察好きの皆様のために』
展開予想のコメントをしたいけどガイドライン違反になるから駄目だ、というお悩みを抱えている人のために考察の魔女の憩いの場という考察スペースを作りました。
作者自身は展開予想合戦や作品への考察も含めてその作品の面白さだと思っているので、感想欄ではできないことをやってもらえればと思います。
もし、このやり方が何らかのガイドラインで禁止されていた場合は、予告なく取り潰しする可能性があるとだけ留意しておいてください。
次話「それはまるで夢のような世界」