キュウべえ「ボクと契約してTS魔法少女になってよ」   作:フェレーデ

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魔法が使えるリアルな世界

 どうも、僕っ子TS魔法少女です。

 今回は他の魔法少女にエンカウントした話をしようと思う。

 

 あれは4回目くらいの魔女討伐の時のこと。

 魔女の結界を感知した俺は変身をして結界の中へと入っていった。

 しかし、そこには既に先客がいた。黄色い衣装の魔法少女と赤い衣装の魔法少女、2人が協力して魔女と戦っていた。

 

 俺の他にも魔法少女っていたんだ、なんてことを考えながらひとまず2人の戦いを観戦。

 黄色い方は動きに熟練感のようなものがあるけど、赤い方はまだまだ拙さが残ってるなぁなんてことを思っていた。

 

 すると、赤い方がピンチに陥った。

 攻撃にはセンスを感じるが、使っている武器が槍なこともあってか守りに入ると弱いようで、魔女の攻撃に不意を突かれて絶体絶命といったところだ。黄色い方も自身に向かってくる攻撃もあり、フォローするにも間に合わないだろう。

 

 なので、俺は間に割り込んだ。

 俺に魔女の攻撃は効かない。よほどの火力があれば突き破られるだろうが、今回の魔女の攻撃くらいではその恐れもない。

 

「っ…!」

 

 すると、俺が来たことを黄色い魔法少女も分かったのだろう。

 こちらを一瞥すると、今まで使っていた銃よりも数倍大きな砲台を創り出して、『ティロ・フィナーレ』という掛け声とともに魔女を葬った。

 

(おぉ…!!)

 

 か、かっこいい!

 魔法少女なのに銃を使うのかとか思うところはあるが、それ以上にかっこよかった。やっぱり銃は男子の心を掴む。せっかく魔法が使えるようになったのなら、俺もああいうことできないかななんてことを思った。その時だった。

 

「おい、お前!」

「へっ」

 

 横合いから赤い魔法少女がずかずかと歩いてきた。予想外のことで、思わず素っ頓狂な声が漏れてしまう。

 あれ、きみ後ろにいなかったっけ? そう思って振り返ってみると、ちょうどその身体は薄れて消えるところだった。

 

「魔力が崩壊している……分身体か?」

「そうだよ! 新技の練習中だったのに邪魔してんじゃねえ」

「ちょっと佐倉さん言い過ぎよ。悪気があったわけじゃないようだし」

 

 その後、簡単な自己紹介をした。

 赤い方の魔法少女が佐倉杏子で、黄色い方の魔法少女が巴マミ。ちなみに俺は渡里さつき。本名を名乗ったが、元々名前が中性的だったので中身が男だとは思ってないようだった。

 

「さつきさん、貴方もこれが目的なんでしょ」

 

 そう言って、巴さんはグリーフシードを放ってくる。

 使っていいということなのかな? だが、俺はすぐに巴さんに放り返した。

 

「これは返すよ。戦ったのはボクじゃなくて2人だし」

「は? じゃあ何で戦いに横槍入れてきたんだよ」

「え、だって魔法使い同士って協力するもんじゃないの? 敵は同じなんだし」

 

 そう言うと、2人は顔を見合わせて呆けた顔をしていた。

 な、なんだよ? 魔法少女モノってそういうやつだろ。魔法少女たちが協力して共通の敵に立ち向かう的な。戦隊モノが男児向けなら魔法少女モノは女児向け。どっちも巨悪に立ち向かうっていう点では同じはずだ。

 

「あなた、キュウべえから何も聞いていないの?」

「何の話?」

 

 そうして俺は聞いた。

 魔法少女同士の関係性は穏やかなものではないということ。

 その原因は魔女が落とすグリーフシードの数に限りがあることで、奪い合いが発生してしまうからということ。

 グリーフシードがなければソウルジェムの濁りを取り除くことができないので、争いを避けることはできないということ。

 

 ……なるほど。

 考えてみればそうだという気持ちになる。

 魔法少女になるという一点だけで、女児が見るような魔法少女モノの世界をイメージしていたが、ここはリアルな世界だ。アニメやゲームの中の世界のように無限に敵が沸いて出てくるわけでもないし、主人公なんてのがいるわけでもない。

 

 フィクションを現実化することで起こる弊害。どうしても生じてしまう矛盾。そうしたギャップをすべてなくしてできたのが、この世界。

 

 なんとなく仲良くできると思うことが甘かったのだろう。現実はそう上手くはいかない。ご都合主義はまかり通らない。

 

「それは悪いことをした。僕は別のところで魔女を狩ることにするよ」

 

 俺は2人に謝って狩場を変えることにした。

 見滝原市は確かに魔女の出現が多い方ではあるが、2人も魔法少女がいれば十分だ。むしろ、多過ぎればグリーフシードが枯渇して、魔力を使うのも億劫になってしまって共倒れになってしまう恐れもある。それはお互いに望むところではない。

 

 フィクションはフィクションだから面白いんだなと思ったのだった。

 

 

 

 

 

「──で、キュウべえ。どうして教えてくれなかったんだ?」

「聞かれなかったからだね」

「……」

 

 その後、キュウべえを問い詰めると悪びれもせずそいつは言った。

 いや、かなり大事なことだろそれは。あらかじめ言っとけよ。そう思ったのは俺だけじゃないはずだ。

 最悪の場合はあのまま殺し合いに発展してた可能性だってあるのだ。あの2人が優しい人柄だったからそうはならなかったが、そうじゃなかったら襲われていたかもしれない。

 

「何をそんなに心配しているんだい? 君だったら他の魔法少女に攻撃されたとしても、なんとかすることができるだろう?」

「そういう問題じゃなくてだな…」

 

 言っていることは間違ってはいない。

 俺の固有魔法なら、まあ大体の攻撃は異空間に飛ばして無力化できる。流石に巴さんのティロフィナーレが直撃したり、佐倉さんの分身体にリンチにされたりすれば処理上限を超えてやられると思うが、それもまた予想なので、実際にはどうなるか分からない。

 

 ただ、問題はそこではない。

 俺は無駄な争いを避けたかっただけなのに、キュウべえはそのことを分かっていない。無事だったから何の問題もないだろうと平気で言ってくる。話が噛み合わないなとつくづく思う。

 

「………まぁいいや。それと、俺のことを聞かれてもあの2人には黙っといてくれ。特に巴さんの方」

「どうしてだい?」

「あの人たぶん見滝原中の生徒だろ。変身してたから確証は持てないけど」

「確かにそれは事実だけど、黙っておく理由にはなっていないよ」

「俺が男だってバレちゃうかもしれないだろ。同じ学校に通ってるってことが分かったら、すぐにでもバレる可能性がある。このことはトップシークレットだ。バレたらお互いに不幸になるしいいことがない。世の中には知らない方が幸せなこともあるだろ?」

「うーん、さつきの言ってることはよく分からないけど、知らない方がいいこともあるというのはボクもそう思うよ」

 

 キュウべえは納得も理解もしていないようだが、俺の素性を他言しないことは確約してくれた。

 こいつは説明不足が多分にあるが、嘘は言わないやつだ。その点では信用ができる。まだ数日の付き合いではあるが、それだけはなんとなく分かる。こいつなりの誠意なのだろうか?

 

 

 

 

 

 さて、別の場所で魔女を狩ると言ったが、引っ越すのかと聞かれたら答えはNoだ。

 住居の手続きも学校への編入手続きもキュウべえが上手くやってくれた。学校にももう3回登校したし、男友達も何人かできそうだ。そんな状況を易々と手放したくはない。

 

 それに、個人的にも見滝原中の設備は優れているのも魅力的だ。

 後から調べて分かったことだが、ここは開発都市。最先端の技術が集まってつくられた超近代的な都市だ。そういうところで勉強するのに内心憧れを抱いていたし、それが思わぬ形で叶って嬉しい気持ちもある。

 

 俺の取り柄は地頭が良かったこと。

 勉強が苦ではなかったし、躓いたこともなかった。

 しかし、それが原因で周囲と話を合わせることができなくて、なんとか合わせようと思って非行に及んだのが例の夜遊び。それが原因でこの世界に迷い込んで、今に至る。

 

 この学校は学力が高いこともあって生徒のレベルも高い。

 前にいた学校よりも居心地よく感じるから、離れたくないという気持ちが大きい。

 

 では、どうやって他の場所の魔女を狩るのか?

 

 それは、俺の固有魔法で解決することができる。

 結論を言えば、ワープができるのだ。知っている場所同士を繋げて、異空間を経由して移動することができる。

 魔女が結界を張って異空間を創り出すのを応用した形だ。魔女の結界は基本的に1つしか入り口がないが、入り口を複数用意すれば別の地点同士を繋げることができる。

 

 結界は魔女が使っている力ではあるが、それが魔法であることには変わりない。

 だったら魔法少女にだって同じようなことができてもおかしくはない話だ。それに気づいてからは、魔女が張っている結界を参考に自分の魔法が上達していった。

 

 昼は学校で授業を受ける。

 夕方からは散歩がてら観光して、魔女を見つけたら魔女を狩る。

 そういう暮らしを続けて半年ほどが経ち、俺も学年が上がって2年生になった。

 学校内では数回ほど巴さんとすれ違うことがあったが、俺が魔法少女であることはバレた様子はない。接触してくる様子はないし、キュウべえからも何も聞かされていないのだろう。

 

 魔法少女同士はお互いの位置を魔力やら気配やらで感知することができるが、その辺は俺に才能があったこともあり上手に隠蔽することができた。

 できればこのまま気付かないでいてくれると嬉しいものだ。男が魔法少女なんてやってると知ったら、巴さんは絶望するかもしれないし、俺だって恥ずかしい。

 

 そんなことを思っていると、背後から肩を掴まれた。

 

「やっと見つけた」

 

 振り返った場所にいたのは金髪を縦ロールにした少女………ではなく、黒髪ストレートの少女だった。えっ、誰この子?

 

「えっと……僕とどこかで会ったことある?」

「話したことはないわ。でも、私はあなたのことを知っている」

 

 俺のことを知ってる?

 俺はこんな子に出会った覚えはないが……あっ

 

「もしかして、縄張り荒らされて喧嘩でもしに来た? きみも魔法少女でしょ」

「そうじゃない……けど、あなたの力には興味があるわ」

 

 そう言うと、その少女はどこからともなく実銃を取り出した。

 もう一度言おう。実銃を取り出した。

 

 えっ?

 

「少し喧嘩でもしましょう?」

 

 そんなことを銃を構えながら言うのだった。

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