キュウべえ「ボクと契約してTS魔法少女になってよ」   作:フェレーデ

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日間ランキング1位に載りました!
まどマギってすごいなと思わされる今日この頃です。
新作映画に向けた布教も兼ねてまどマギの良さを伝えられればと思います。

ところで、こんなタイトルの作品をクリックするってことは、みんなTS好きってこと…!?













/人◕ ‿‿ ◕人\
君の嗜好はエントロピーを凌駕した。
 さあ解き放ってごらん、その新しい性癖を…!!



確定された未来

 どうも、TS魔法少女を務めている渡里さつきです。

 

 美樹さやかと鹿目まどかに巴マミのことを励ましてやって欲しいと言った翌日、巴マミは問題なく学校に登校してきた。

 以前までのどこか余裕のある雰囲気に戻っていて、危うい雰囲気はもうない。どうやら2人の励ましは成功したようだと、ほっと胸をなでおろした。

 

 巴マミの復活に時間がかかるようなら見滝原を巡回しようと思っていたが、あの様子を見る限りでは問題はなさそうだ。要らぬ争いはしたくないし、また別の場所を巡回することにしようと思った。

 

 そして、巴マミの件が一段落したことでひとつ分かったこともある。

 それは暁美ほむらが話していた事が極めて信憑性が高いということ。

 

 あの瞬間、俺が助けに入らなければ巴マミは絶命していた。

 魔法少女の身体は確かに丈夫だが、身体が噛み千切られて生き残れるほどのものではないはずだ。仮に生存したとしても、強烈な痛みでショックを起こして気を失い魔女に喰われてしまう。これは強烈な痛みで神経系が狂うからだ。脳の構造というのはそういう風になっている。

 

 暁美ほむらの言葉は正しかったといえる。

 あの時点で介入しなければ確かに巴マミは命を落としていた。魔女との戦いの結末なんて普通は予測できない。それを言い当てて見せた彼女の言葉は十分に信じるに値する。

 

 となれば、彼女が言っていたワルプルギスの夜が来るというのも本当である可能性の方が高い。

 半信半疑で協力関係を結んでいたため特に何か行動を起こすこともなかったが、本当にあの災害級の魔女が来るとなれば対策くらいは考えておいた方が良いだろう。

 

 そう考えた俺は暁美ほむらにメールを送った。

 ワルプルギスの夜についての対策を考えたいから詳しく話を聞きたい、と。

 返事はすぐに返ってきた。今日の放課後にワルプルギスの夜について纏めた資料を見せるから自宅まで来て欲しいと、住所を添えて。

 

 ………この子無防備過ぎないかな?

 

 いや確かに俺が男であることを黙ってるのが10割悪いのは分かっているのだが、こんなだまくらかすような真似をして女の子の家に入るのはちょっと抵抗が…。

 内緒話ができるような個室のお店とかに呼ばれると思っていたら、自宅に呼ばれるとは流石に予想外だった。確かに内緒話をするにはこれ以上ない場所ではあるが、思春期真っ盛りの男子中学生にはハードルが高い。

 

 見た目に反してファンシーな部屋だったらどうしよう。

 そんな不安を抱えながら記されていた住所の場所へと向かい、暁美ほむらと表札の書かれた部屋に入ると、そこには素晴らしい空間が広がっていた。

 

 生活感のない整然としたシンプルな部屋。

 円形に並べられたソファと天井で静かに回る歯車。

 大きな鎌状の振り子時計が左右に揺れ、多数のホログラムが空中に映像を映す。

 

 この世界は全面ガラス張りの部屋が学校の教室に採用されていたり現代アートに描かれるような外観のデザイナー住宅が点在していたりと独創的で近未来的な作りになっているとは思っていたが、ここに来て厨二感全開の部屋の登場。

 レトロかつモダンという贅沢なその部屋の造詣に俺の心は打ち震えた。

 

「カッコよ…!」

「……」

 

 おい、なんだその顔は。

 何と言おうとここお前の部屋だからな!

 キュウべえに向けるような視線を俺にも向けるんじゃねえ!

 

 

 

 

 

 ワルプルギスの夜。

 その戦闘記録を数々の資料と暁美ほむら自身の実体験をもとに聞いた。

 

 一度目の世界、鹿目まどかと巴マミが挑み敗戦。

 二度目の世界、先ほどの2人に加えて暁美ほむらも戦うが、それでも力及ばず敗戦。

 三度目の世界、色々あってワルプルギスの夜と戦う魔法少女は鹿目まどかと暁美ほむらの2人だけになってしまい、奮闘するが敗戦。

 四度目の世界………

 

 

 俺が聞いたのはワルプルギスの夜と戦った時の状況だけ。

 暁美ほむら自身が何を願って魔法少女になったのかということや、三度目の世界で巴マミが途中退場している理由なども聞いていない。

 

 淡々と話される言葉は恐ろしいほどに具体的で、詳しすぎることがかえって恐ろしく思う。

 だってこいつはすべて憶えているということなのだ。時間を遡って他の人間から消えてしまった記憶も、体験も、すべて。

 

 ゲームでうまくいかなかったときにリセットボタンを押すような、そんな単純な話じゃない。そんな心境で過去に遡っているのならすべてを憶えているわけがない。

 全部本気でやってダメだったんだと伝わってきた。大切な人が死んでいくのを見続けて、大切な人とゼロから関係を築くのを繰り返して…。

 

 それは、どれほど苦しいものなのだろうか。

 俺には分からない。

 

 

 

「それで、ワルプルギスの夜は倒せそう?」

「うーん…」

 

 そして、一番の課題。

 ワルプルギスの夜を倒せるかどうか。そのスペックを聞いた俺は、簡単に倒せるなんて言うことができなかった。

 

 まず、ワルプルギスの夜は結界を作らない。

 隠れ潜まずとも倒される心配がない程に強いから閉じこもる必要がない。

 ただ、結界がなくとも一般人は魔女が見えないので、超特大の台風が訪れたようにしか感じることができない。

 

 そして、ワルプルギスの夜は浮かんでいる。

 台風の目の位置を陣取り、正気ではないような高笑いを上げ、魔力を旋回させてビルをへし折り、街を丸ごと崩壊させる。

 ワルプルギスの夜自体は超頑丈な空中要塞のようなもので、魔法少女の動体視力をも上回る速度でレーザーを撃ってきたり、浮かせたビル群を遠心力そのまま叩きつけたりしてくる。硬度も大したもので、軍用設備をフル動員しても殆どダメージを与えられた感触はないとのこと。

 

 使い魔は人型をした影人形のようなものや、華やかなパレードを想起させるゾウや象車。

 高笑いをしていることから、パレードを楽しんでいるのだろうか? それとも、街が崩壊するのを見て愉悦に浸っているだけ? どちらにしても狂気に染まっているとしか言えない。

 

 正直、他の魔女と比べて規模が桁外れだ。

 今までの魔法少女たちが倒せなかったのも納得の強さ。

 魔女と戦っている魔法少女を何人か魔女結界の外からコッソリ盗み見たことはあるが、そのほとんどは民間人と同じように逃げ惑うしかできないだろう。

 想像でしかないが、時を止められるほむらが避けられないと言っている時点で、並みの魔法少女は災害を凌ぐことさえできないと考えた方がいい。

 

 しかし、俺にとっての問題はそこではない。

 

「正直、僕一人だけ生き残るなら街の真ん中で棒立ちしていたとしてもできる。防御に集中すれば、絶対に守りを崩されない自信はある。だが……」

「問題は攻撃手段ね」

「そう」

 

 俺にとっての問題はワルプルギスの夜に与えられる有効手段がないこと。

 今まで魔女退治は素手でやってきたから、単純な攻撃能力で言えば暁美ほむらや巴マミよりも下だ。魔法少女の身体が悲鳴を上げるほど魔力を込めて殴ればその限りではないが、災害に素手で立ち向かうのはあまりに無謀というもの。

 

 暁美ほむらもそれは分かっていたのだろう。

 彼女自身も攻撃手段には乏しい。現代兵器を扱っているのもそれに由来するものだろうし、今の俺と同じような悩みは過去に抱えていたはずだ。

 

 だが、俺と彼女で違うのは魔力量の差。

 目算ではあるが、少なくとも数十倍程度の差はある。それを利用すれば、今のうちに対策を立てることはできるだろうと思っている。

 

「攻撃方法に関してはこっちで準備する。お前の話が正しいのだとすれば、前回の僕は『世界を繋ぐ結界』とやらでワルプルギスの夜より恐ろしい奴を消滅させたんだろう。だったら今回の僕でもできるはずだ」

 

 暁美ほむらの話を信じる。

 そう決めたはいいものの前回のループの話だけはにわかには信じられないものだった。

 

 ワルプルギスの夜をなんとか退けたが、その後にさらに恐ろしい魔女が出現。

 キュウべえの試算で10日ほどで地球が滅ぶレベルの魔女を、俺が『世界を繋ぐ結界』という不思議な魔法で消滅させたのだとか。

 

 ワルプルギスの夜よりもそっちの魔女の方がヤバいんじゃないかと言ったが、暁美ほむらが言うにはイレギュラーだから問題ないとのこと。

 ほむら自身が対応するとのことだったので一任し、それ以上詳しく聞くことはなかった。

 

(それにしても、”世界”を繋ぐ……か)

 

 気になるのは”世界”という言葉を俺自身が使用していること。

 その意味は、暁美ほむらが使用する場合とは異なる。

 

 彼女が使う場合は『時間軸の異なる世界』を指すだろう。

 彼女にとっては地続きに繋がっている記憶の中の世界は、時間遡行という魔法により何度も繰り返された世界。

 この世界に生きる人たちにとっては繰り返された世界は折りたたまれていて、それを感知することもないし思い出にも残っていない。

 

 しかし、俺の場合は『異世界』から来た。

 この世界と見た目は大きく変わりはしないものの、ただひとつ、魔法があるかないかという違いがある世界から来た。

 

 それが意味するのは……。

 

 

 

 

「それと、もうひとつ疑問がある」

「何かしら?」

「鹿目まどかの強さについてだ」

「……」

「あいつが持っている因果は相当なものだ。キュウべえが言うには、鹿目まどかが魔法少女の契約をすればどんな魔女も怖くないくらいの力があるらしい」

「そうね。でも、あの子には契約をさせないわ」

「なぜだ?」

「答えたくない、と言ったら」

「……いや、それならそれでいい。僕たちはただの協力者だ。明かしたくない情報まで共有する必要はない」

 

 

 

 

 所変わって見滝原で最も大きな病院。

 最新式の施設が多数導入されたこの病院はそれ相応に入院費や治療費も高額だが、そんな病院に個室で入院している上条恭介(きょうすけ)は裕福な家の出ということが分かるだろう。

 

 そんな彼がなぜ入院しているかと言えば事故。

 幸いにも頭は打たなかったため命の関わるような怪我を負ってはいないが、左手と脚の神経が麻痺するという重傷を負ってしまった。

 プロのバイオリニストを目指す彼にとって左手の怪我はあまりにも致命的。しかし、それでも治療を続けていけば治るだろうと希望的観測を持っていた。

 

 事態が変わったのは昨日のことだ。

 治療を担当していた医師からはっきりと現在の医療では治る見込みがないと言われた。

 

 その瞬間、目の前が真っ暗になった。

 手が治らなければ満足にバイオリンを弾くことなんてできやしない。そんな世界に意味なんてないのではないか、そう思えた。

 

 大好きだったはずの音楽も途端に聴くのが嫌になって。美しい音色が耳に入ってくるたびに苛立たしさと恨めしさ、どうしようもない無力感が胸中を巡った。

 

 もう本当に死んでしまおうか。

 心の底からそう思って、窓から覗く壮観な景色から目を逸らして下を見て、湧き上がってくる恐怖に躊躇して……。

 

 

「恭介…?」

 

 そんなときだった。

 後ろから声を掛けられたのは。

 

「何してるの、恭介?」

「さやか…」

「すごくやつれた顔をしてるよ。ねえ、何があったの?」

「……治る見込みがないって言われたんだよ。現在の医学ではどれだけ時間をかけても治らないって」

「そう、なんだ……」

 

 同情したように優しい視線を向けてくるさやかにどうしようもなく腹が立った。

 それが理不尽だと分かっていても、一度沸いた気持ちは治まってはくれない。

 

「さやかは……今日もCDを持ってきたのかい?」

「ううん、今日は見舞いに来ただけ」

「そう、なんだ…」

「あと、恭介にひとつ聞きたいことがあったから」

「聞きたいこと?」

「恭介はさ…。奇跡や魔法ってあると思う?」

 

 突然問われたその疑問に、上条も困惑する。

 

「突然どうしたんだい」

「いいから、答えて」

「……ないと思うよ。奇跡も魔法も……神様だっていない。もしもそんなものがあったら、ボクの腕だってきっと……」

「……」

「でも、いきなりこんなことを聞いてどうしたんだい?」

「え、ううん、ちょっと気になっただけ」

 

 と、さやかは気にしないでという風に小さく両手を振って

 

「でも、そっかぁ……そうだよね。恭介はそうだもんね。今までずっとバイオリンを頑張ってきたんだもん。こんな終わり方ってないよね」

「さやか…?」

「ありがとう恭介。あたし決心ついたよ」

 

 何が何だか分からずお礼を言われてさらに困惑する。

 

「さやか、さっきから何を言って…」

「あたしはさ、奇跡も魔法もあると思うよ」

「……本当に何を言ってるんだい?」

 

 あまりの話の噛み合わなさにさやかの頭がおかしくなったのではと思った。

 怒りを通り越して呆れてしまい言葉も出ない。

 

 

「それじゃあまたね、恭介」

「あっ……」

 

 帰っていくさやかに手を伸ばしたのは無意識だった。

 彼女がどこか遠くに行ってしまう気がして。




 魔力が多くても少なくても魔法少女らしい戦い方はできないんだねって。難儀だなぁ。

【上条君について精一杯のフォロー】
 良く言えば年相応、悪く言えば視野狭窄。
 彼の一番の不運はまどマギの実質的な主人公のさやかに思いを寄せられたこと。
 天才キャラによくありがちな、一つのことに熱中して他のことが疎かになるというのが最悪の方向で発揮された人。さやかちゃんを魔法少女に決意させた罪は重い。
 交通事故に遭ったという点でマミさんと共通点があるが、マミさんが自らの祈りで魔法少女になりその後も模範的な魔法少女であろうと頑張り続けたのに対して、上条君は自暴自棄になって見舞いに来たさやかちゃんを心配させて地獄への片道切符を掴むきっかけを与えた。
 彼本来の性格は優しく柔和ではあるが、ほむらがやり直したどの世界でも音楽関係のことをやっているほど音楽の世界にどっぷり嵌っていて、それ故にその世界が閉ざされるとヒステリックになる。
 なお、某ラノベの上条君とは入院仲間かもしれないが、中身の成熟度は語るまでもないだろう。

 あれ、フォローってなんだっけ?


【ほむホームについて】
 家の外観は一般的なものだが、その中身は西洋のレトロな街の一室に現代の家具やプロジェクターを持ってきたような部屋。とても厨二感に溢れていて素晴らしいと思う。
 振り子時計や歯車など時間に関係するアイテムが多く、どことなくロンドンの時計塔にあんな部屋があったら面白そう。
 そのあまりに独創的な部屋の間取りからネット上では”ほむホーム”の愛称で呼ばれており、皆さんが中二病を発症していることが窺える。
 表札には”暁美ほむら”と本名が刻まれていて、そのことから両親は不在でありほむらが一人暮らししていることが分かる。たいへん部屋の趣味がよろしいと思う。
 中2かつ厨二病という年相応なほむらちゃんは同じく厨二病患者である中3の巴マミを苦手に感じており、これは恐らく同じ厨二病患者同士でも方向性の違いがあるからだと思われる。
 ちなみに他の家は、まど家、美樹ハウス、マミるーむ、杏会などと呼ばれている。
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