"あなた”の為の物語 作: 燃える空の色
―――<Infinite Dendrogram>とは。
それは、「無限の可能性」を謳い、「無限の系統樹」と名付けられたダイブ型VRMMOゲーム。
仮想のゲーム世界にプレイヤー自身が入り込んでプレイする、正しく夢のようなそれ。
当然、最初は誰にも信じられず、失笑を買ったそれも、時間が過ぎる内にその真実性が明らかになり、プレイヤーの数を増やしていった。
そう、「無限の可能性」。
誰も彼もが、自分だけのオンリーワンというその言葉に惹かれ、このゲームに手を伸ばした。
唯一無二の、他の誰にもない、あったかもしれない可能性―――有り得ざる未来を掴めたかもしれない、そんな可能性にさえも。
そう、これは。
これはそんな、有り得ざる可能性に手を伸ばしてしまった。
あるいは、その可能性を否定しようとした、一人の男のーーー。
□???
今日もまた、"あなた”は彼女の夢を見る。
燦々と煌めく太陽の下、向日葵畑に囲まれ、こちらを振り向く彼女の横顔。
麦わら帽子からふわりと揺れるピンク色の髪が、彼女の目元を優しく隠す。
そんな記憶の中の彼女は、いつも楽しげに笑っていた。
―――あの日。真っ赤な炎で彩られた花畑の中で見た、最期の姿でさえも。彼女は、とても安らかな笑顔を浮かべていた。
そう、ピンク髪の不思議な彼女は、いつも優しく笑っていた。
まるでこの世界の全てが愛おしいとでもいうように、この世界の全てを慈しむように。
この物語を、優しく彩るように。
彼女は、"あなた”のことを愛していた。
"あなた”もまた、彼女のことを愛していた。
それだけは、夢見る世界であっても、変わらない現実。
それだけは、彼女と"あなた”が、とても愛し合って
たとえ夢だとしても、たとえ現実ではないのだとしても、確かなことだった。
―――あの日。"あなた”が、彼女が伸ばした手を掴むことが出来なかったのも。
正しい選択を選べなかったことも。
その可能性を掴み取れなかったことも。
どうしようもないくらいに、全て。
否定したいその何もかもが、全て、確かな現実だった。
そしていつも通り、"あなた”は夢の世界から目を覚ます。
もう、彼女がいない、その世界へと。
◇◆
――はじめまして。
もしかしたら、久しぶりなのかもしれないけれど、そんなことは些細な話。
大事なのは、"あなた”が今、この物語を見てくれているってこと。
ねぇ、これから、ワタシは"あなた”に三つの質問をするわ。
その質問について、"あなた”が導き出した答えを教えてちょうだい。
一つ目。
もしも、"あなた”の持っていた唯一無二の可能性が、"あなた”にとって許し難いもので、認められないものだったら。
"あなた”は一体、どうするのかしら。
二つ目。
もしも、"あなた”が、その可能性を放棄してしまったら。けれど、その可能性を必要としてしまったら。
"あなた”は、どんな選択をするのかしら。
三つ目。
これが最後の質問。
ねぇ、もし。もしも、"あなた”が、ワタシを。過去のさざ波を思い出してくれたなら。
その時は、"あなた”も。
……ごめんなさい。
無駄な問答をしてしまったわね。
ふふ…少し、前置きが長くなってしまったけれど、これで言いたいこと、聞きたいこと、
それじゃあ、早速。最初のページを捲って、ワタシ達の物語を紡ぎましょう。
世界で一番悲しくて、楽しくて―――とっても素敵で、ロマンチックな物語を。
そう、これは―――、
―――"あなた”の為の物語