Fate/The Second Babel 作:織田三郎ノッブ
神は沈黙し、世界は再び祈りを失った。
文明は神話を忘れ、理性が奇跡を塗りつぶす。
しかしその果てで、人はなおも空を見上げる。
「なぜ、神は私たちを見捨てたのか」
その問いに答えるため、人類は再び“塔”を築いた。
神々が滅ぼしたはずの禁忌の構造体――バベル。
人はそれを模倣し、科学と魔術、信仰と理論、過去と未来のすべてを融合させて、
第二のバベルを創り上げた。
それは祈りではなく、実験。
赦しではなく、挑戦。
人類自身の手による「創造の再現」だった。
だが、その塔の頂には、聖杯が眠っていた。
創造と破壊の理を司る女神――ヘラ。
彼女は、すでに“神の座”を失った存在。
人類が築いた塔を見下ろしながら、静かに微笑む。
「ならば見せてみなさい。
お前たちは、何を以て“人”と呼ぶのかを。」
その瞬間、世界各地に七色の光柱が立ち上る。
四十九人の人間が選ばれ、それぞれの魂に“令呪”が刻まれる。
七陣営、四十九の英霊。
彼らは己の信念をもって、塔へと集う。
剣は秩序を掲げ、
弓は叡智を解き放ち、
槍は恐怖を克服し、
馬は導きを誓い、
術は理を編み、
暗殺者は罪を赦し、
狂戦士は限界を超える。
彼らが召喚するのは、過去・現在・未来を越えて選ばれた英霊たち。
だがこの戦いは、単なる願望の争奪ではない。
それは――人類そのものを選び直す戦争である。
塔の内部では、時代と文明が入り混じる。
古代の神殿と現代都市が同居し、過去の神々が眠る層に、未来の機械が根を張る。
そして、沈黙していた“神の遺骸”――七つのビーストが目を覚ます。
さらに、宇宙の外側から“狂気”――フォーリナーが降臨し、
世界は現実と虚構の境界を失っていく。
理が壊れ、時間が溶け、
戦う理由すら霧散していく中で、
それでも人は戦い続ける。
なぜなら、それが“人間”だから。
母なる聖杯〈ヘラ〉は問う。
「お前たちは、なぜまだ立ち上がるのですか?」
その問いに答えるため、
彼らは剣を掲げ、祈りを叫び、拳を振り上げる。
彼らは神を壊すために戦うのではない。
神に代わるために戦うのでもない。
――人類が人類(おのれ)を証明するために。
塔が崩れ、理が砕ける。
だが、光は消えない。
それは絶望ではなく、誕生の閃光。
神が沈黙したなら、人が語ろう。
神が去ったなら、人が創ろう。
神が滅びたなら、人が歩もう。
天を穿つ塔の残骸の中で、
新たな夜明けが産声を上げる。
それは神々の時代の終焉であり、
人類の始まりの物語。
――Fate/The Second Babel
それは、人類が神を超える物語ではない。
それは、人類が人類(おのれ)を証明するための物語。