手っ取り早く天国に行くには、自己犠牲が最適らしい 作:つかとばゐ
───早くも死んでしまうのか?
俺は、ダンジョンで意識不明のレナを抱えてそう思う。
数時間前。
「ねぇ、天国に行くって......どういうことだ?」
俺のパーティー加入の申請終わらせたであろう彼女にそう言われた時、言い訳を考えていた。
「どこまで聞いたんだ....?」
「ただ、天国に行くってところだけ.....」
そうか、なら大丈夫そうだ。
「いやぁ、単純に....冒険者は聖書によると地獄に堕ちやすいって書いてあったんだよ」
俺は、お得意の嘘で誤魔化す。
「な、なぁ~んだ。てっきり.....」
その後の発言は、喉まで出かかったのだろうが、結局彼女が口に出すことはなかった。
「あっ!そうだ.....あのダンジョンに行こうっ!」
そう指さす方向は、なにやら掲示板に貼られている、1枚の紙。
「うーんと、これのことか?」
「そうだっ!」
その紙を見てみる。
「........」
ふむふむ。
……高難易度すぎないか?
「お前.....何レベルなんだ?」
「えーとね、23!」
───再度、紙を見てみる。
推定レベルは36。
「いや、流石にそれはやばいんじゃあ?」
「いやいや、私は強いんだっ!」
「でも.....」
「私のことを心配してくれているのは分かるが......安心してくれ、こんなの、一人でも大丈夫なくらいだ。なんなら、私がアルトくんを守るよ」
なんともまぁ、自信満々にそう言うから受注することとなった。
───そして、ダンジョンに到着した。
「不気味だな.....」
「そうだな。でも、こんな手前でへばっているんじゃあ、騎士にはなれぬぞ!」
俺、別に騎士志望ではないんだけどな。
「さぁ、行くぞ!」
「......うん」
中に入れば、コウモリが佇んでいるのか分からないが、赤い目が無数にこちらを見つめていた。
「よし、私に付いてくるだけでいいからな、アルトくん」
……本当に行けるんだろうか?
俺は、少し不安になってきた。
「第三魔法!ファイアトルネード!」
そう言うと、手から炎が出てきて先程からあった無数の赤い目が無くなっていった。
……腰に付けている杖は使わないのだろうか?
「おおっ!すごい!」
「ふふっ、そうだろう?!」
嬉しそうに彼女は笑う。
「これなら......行けるかもなっ!」
俺も、自信が湧いてきた。
彼女は強いから大丈夫だと、安心しきっていた。
「アルトくんっ!後ろだっ!」
いつの間にか、コウモリが俺の背後に回っており、首を噛み付こうとしていた。
「っらぁっ!」
俺はギルドで買っておいた剣で薙ぎ払う。
「ふぅ......よしっ」
見事、コウモリに剣が当たり絶命した。
……活躍できたかな。
「よくやった!アルトくんっ!」
「おう!」
俺たちはダンジョンの中なにも関わらず意気揚々とハイタッチした。
「このまま進んでいこう!」
「ああ!」
───俺たちは暗闇の奥へ奥へと入り込んでいく。
数時間経った頃だった。
「少し、休憩を取ろう」
彼女はそう言い、背負っていたバックから藳のようなものを取り出して、呪文を唱えて焚き火を作った。
「これなら、ここのダンジョンの魔物たちは寄ってこない」
「そうだな.....」
俺たちは焚き火に囲むように座る。
手をかざすと暖かい......心なしか、この焚き火が安心を与えてくれているように感じた。
「アルトくん......」
「ん?」
「その、あ、ありがとうな.....」
顔を見せたくないのか、俯いてそう言った。
「なにが?」
「私をちゃんと魔術師として見ているところとか.....パーティに入ってくれたところたか.....感謝でいっぱいだ」
「ははっ.....そうだな。でも、いつかは俺が逆に立場になってそうだけどな。多分、
「今後からも....か」
嬉しそうに微笑む。
「あぁ、今後からもだ」
「......ふふっ、そうだな。よろしく頼む....アルトくん」
「こちらからも、宜しく頼むよ。レナ」
パーティとしての絆を深まっていた───その時だった。
「ギャ”ア”ア”ア”ア”ア”」
この世のものとは思えない咆哮が聞こえてきた。その咆哮は、とてつもなく大きく、少しだけ地面が揺れていた。
「っ?」
地響きが.....大きくなっていく。
さっきの揺れは、咆哮によるものではない?
「───は?」
気付けば、俺たちの目の前に
「アルトくんっ!避けろっ!」
放心しかけていると、突然レナがそう叫んだ。
「はっ....」
咄嗟に避けると、俺が居たところには......巨大な手が置かれていた。
「もし、あの場所に居たら.....」
そう考えると身の毛がよだつ。
「アルトくんっ!私に任しておくれ!」
そう言うと、腰に付けていた杖を取り出した。
「第五回魔法......ファイアーエムブレムっ!!!」
その瞬間、爆炎がその巨大な何かを包んだ。
「す、すげぇな」
「ふふっ!そうだろ!」
しかし、安心できたのは束の間だった。
───ビクともしていなかったのだ。
「な.....」
「───え?」
彼女は絶望の表情を浮かべて、そう呟く。
彼女から息切れしているのが聞こえた。多分、魔力を使い切ったのだろう。
「アルトっ!アルトくんだけは逃げろっ!」
即座に状況を理解し、己の身を投じて俺を逃がそうとする。
「......っ、それは俺の役割だろっ」
俺は自分の胸に言い聞かせる。
───自己犠牲って、意外と怖いな。
「な、なんで私に向かうのっ?ねぇっっっ!逃げろって言って......っ!!!!」
「レナぁっ!」
レナの背後には大きな手が迫っていた。
「あああああああああああっ!」
間一髪の所で、彼女を押し飛ばして救うことに成功した。
その代わり───
「いやあああああああっ?!アルト....っ、アルトくん......腕がっっっ!」
───右腕を失っていた。
「だ、大丈夫だから.....」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい.....私なんか放っておいていいから逃げてよおっ!」
「あ......ぐっ」
後ろから轟音がする。
多分、大きな手が俺の背後から迫っているのだろう。
「レナ....お前だけでも......っ!」
「し、死んじゃだめ.....っ!死んじゃだめええええええええっっっ!」
俺はほとんど動かぬ身体を無理やり動かす。
「あっ......ぎっ」
回避はギリギリ間に合った.....と、思った。
「あぁ......?なんだこれぇ?」
視界がボヤけて見えないが、何かが落ちた。
……俺はそれを拾いあげる。
「な、なにを......やって.......っ?!!」
「これは....前に食べたビーフカレーの肉か?」
「あぁ、あぁ、ああああああああっ!!!」
「どうしたんだよ....レナ」
「それ.....アルトくんの耳だよっっっ?!」
あぁ、そうなんだな。
───さっきから、レアの叫び声がうるさくなってきた。
「レナ..... 少しうるさいよ」
「ご、ごめっ......」
「 .....あっ......ぎっ.......がはっっ」
口から大量の血を吐き出す。
こりゃもう.....死に近いな。
「いやだ......いやだああああっ、───あっ?!」
急に、充電切れしたようにバタンと倒れた。
このまま死んでもいいかな、と思うが、俺は本能でその考えをやめさせる。俺は死んでもいいが、レナだけは生きて帰さなければならない
「........っ」
左腕でレナを抱えて小走りする。
「すー、すー」
───気持ちよさそうに寝ている。
こんな姿を見たら、さらに助けなければならないと思った。
「い......やっ、アルト.....くんっ!」
悪夢を見ているのか、うなされていた。
「もう見えない....か」
後ろを振り返ると、あの化け物は居なくなっていた。
「それじゃあ....レナ....っ、じゃあな」
俺は周りを確認して、レナをゆっくりと下ろす。
「いか.....ないで」
レナは応答するように寝言を言った。
「.......ごめんな」
もう俺は死ぬだろう。俺は天国へと行くよ、レナ。
───最後に、ダンジョンをクリアした達成感を、2人で分かち合いたかったな、と思った。
「あ───っ」
数秒後、俺は膝から崩れ落ちた。
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そちらの方が話数は進んでおりますので、ぜひよければ見ていただけると嬉しいです!
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次回は、「死の淵から」です。