嫌な気分しかない。
同窓会で久しぶりに会った彼女。
諦めることも、振り払う事も出来ない初恋。
初恋をそのまま失恋に導いた彼女は、女性の輪の中で幸せそうに現状を報告している。
席が離れていても嫌でも聞き耳を立ててしまう。
正直、怒りや恨みや嫉妬を顔に出さないだけ、自分は良く出来ていると思う。
嫌な酒の飲み方をしつつ、居酒屋のラストオーダーが近づく。
学生時代に仲が良かった男が二次会に誘うも辞退する。
正直、辛い。
自分以外と幸せ者になった彼女と、彼女と幸せ者になった相手が幸せに暮らすイメージが頭にちらつくほど、怒りが湧いてくる。
(これはしばらく響くな)
あれは忘れもしない8月31日。
臨海学校で見た彼女の姿。
自分はただの一人相撲でしかなかったと言う事実が、自分の知らない所で、バイト先の男が彼女と付き合ってた事実が、自分に強烈なトラウマを植え付けた。
とにかく彼女から離れて何もかも忘れたいがために駅に向かう。
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電車内でうなだれる自分。
電車の窓からは自分の心境を表すように、青ざめた血の光が照らす。
電車の揺れが酔った体に心地よい眠気を誘うが寝過ごすわけにはいかないので目元をマッサージしながら我慢する。
こんな時だけ、ふと脳裏によぎる彼女のイメージは暗い感情で眠りを妨げてくれる。
正直、頼りたくないが。
私が暗い想像をしているうちに目的の駅に着く。
ドアの向こうは浜辺だった。
思い出したくもない、あの浜辺だった。
白昼夢の中にいるような感覚で電車を降りる。
足に感じる砂の感触。
血のような青ざめた空。
情事を目撃した岩場。
全てがあの時のままである。
自然と足が岩場に向かう。
見たくないのに向かってしまう。
彼女とあいつが幸せそうに交わっている姿が見えてくる。
目をつぶろうにも見せつけてくる。
目を掻きむしろ、えぐり出しても見えてしまう。
艶のある声が聞こえてくる。
耳をふさいでも聞こえてくる。
耳を掻きむしり、引きちぎっても聞こえてくる。
膝をつきただ黙って、全て終わるのを怒りや憎しみを抑えて待つ。
でも、いつまでたっても終わらない。
岩場の周り。
水泡のごとく彼女と他の男たちの情事が浮かんでは波にさらわれていく。
そのたびに脳に響く艶声。
精神を安定させるために考える。
男たちを安楽椅子に掛けるイメージを。
男たちを鋸の刑に掛けるイメージを。
男たちを無限の拷問に掛けるイメージを。
「見て」
ふと声をかけられ顔をあげる。
そこには静かに彼方を指差す、幼い日の姿をした彼女。
「あれを見て」
指差す先に、名も知らぬ少女と笑う少年の姿があった。
私は全てを理解した。
こうして少女が見せたものでわかってきたよ。
浮いては消える情事や幸せにしてる一家や男女の全てが。
うん・・・
わかって・・・きたぞ・・・。
そうか、彼女と自分の関係はすごく簡単なことだったんだ。
ははは・・・
どうして彼女が、自分と結ばれなかったのか。
だから、少女よ言わないでくれ、
その先を言わないでおくれ。
「私は彼にふさわしくない」
少女が諦めるように呟くと同時に走り出していた。
かつての自分に。
全ての元凶を殺すために。
奥歯を噛む、ただ殺す。
怒りも無く、恨みもなく、少年の自分の首を力いっぱい絞めて殺す。
殺した。
振り向けば少女が微笑んでいる。
コンビニ受け取りの控えを手渡してくる。
「・・・頑張ってね!かっこいいお兄さん」
うん、頑張る。
今はただ殺そう、いつか悪夢は終わるはずだから。
私は浜辺に鎮座するコンビニに向かった。
少女は微笑み、空に浮かぶ月は慈しむように輝いていた。
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何故か納品される弁当。
なぜか納品される雑誌に新聞。
それをなぜか廃棄、陳列して床を清掃する俺。
理由は分からないが、なぜかコンビニ業務を行う俺。
やってくる客は基本的に、取り寄せ品の受け取りくらい。
そんな変わらない異常な日常を過ごすコンビニアルバイトは外の様子が変わったのを訝しむ。
コンビニの外が、昼下がりの郊外の住宅地以外に変わるのは初めてだった。
巨大な月が浮かぶ水平線に赤青い空に変わることなど、長すぎる勤務経験で初めての出来事にアルバイトはさらに驚くことになる。
入ってきた客の人相に驚いた。
その客は目と耳をえぐり出し様な血まみれの男だったからだ。
「コンビニ止の荷物取りに来ました」
何もかも初めてだった。
外の景色、男の異常性、何より「宅配の受け取り」。
アルバイトは控えを受け取り、たしかにこのコンビニ受け取りの控えであることを認めるが、コンビニ止の宅配便など心当たりがない。
が、ふと気づく。
カウンターの上に一丁の銃がある事に。
そしてなぜか理解した。
これが宅配便の荷物と。
異様な状況に腰に存在しなかった、44マグナムの重みを感じる。
(こいつは今までの客と違う。こいつを停める事に何か変化があるのでは無いか?)
だが、アルバイトに自由はなかった。
アルバイトはいつも通りに「伝票を受け取り、物を渡す」。
血まみれの男が、ズボンにコルトネイビーをねじ込み、店を出ようとする。
アルバイトが声を上げる。
「おい!あんたに曲がりなりにも自分の「正義」があるのか!」
血濡れの男が言う。
「殺すのに、何か理由が必要なのか?
「殺す」と思ったから「殺す」それだけだよ。」
と血濡れの男が悠然と店を出ていく。
残されたアルバイトの腰に存在した44マグナムの重みは今はない。
本来ならこれが第1話ですが、
第2話に当たる、ヒロイン視点の物語が難産すぎますので先にこちらを投稿。
既にエピローグ自体を投稿してますので、現在は始まりと結果を投稿した状態です。
課程であるヒロインの視点はまだしばらくお待ちを。