スカベンジフロムアーク   作:鈴ノ猫鳥

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はじまり、あるいは日常

 規格化された高さ幅共に3mの鋼鉄製の廊下にカンカンと金属同士がぶつかる足音が響く。

 足音の主は身長2mのガタイの良い男であり、その身に纏うのは旧宇宙統合軍と名乗る軍用の装備であった。

 その足に履いているのも軍用長靴であり、爪先と踵部分が鋼鉄に覆われている為の足音であった。

 体術を使って戦う場合には実に有用な靴なのだが、静音性を求めるゴミ漁り屋(スカベンジャー)を生業としている今は余計な装備だったと男が考えている所に通路の先から複数の足音が響く。

 通路の先から現れたのは三人の男達であり、男と似た服装していたが

 明確に違う点があった双方が腰に下げた銃器、三人組は強化プラスチックと鋼鉄で作られた旧式の無煙火薬を使用した旧来の銃器であったが、対する男が下げているのは真鍮で彩られた圧縮蒸気で弾を撃ち出す通称を蒸気銃(スチームガン)と呼ばれる銃器であった。

 その愚者の黄金(真鍮)の輝きを見た三人組は男に向かって一切せの躊躇いなく銃器、拳銃(ピストル)のトリガーを引く。

 旧支配者層の元軍人、襲撃者(レイダー)と呼ばれる連中であり、一兵卒の襲撃者は非管理区域のセオリーを無視して火薬式の銃器を扱う。

 然し、対する男は慌てずに銃とは逆の腰に下げた剣鉈を右手で抜き放ち、弾道の上に乗せる様に順手で構えるとその刃に添わせる様に弾いていく。

 刃と弾丸が触れる事に灯りの少ない廊下を照らす火花が散る。

 凄まじい技の冴えではあるが、あくまでも小口径の拳銃相手だから出来る事であり。

 そして男が試験的に作られた上で何の因果か旧世代の地球上の人間の魂が入った半有機体の人造人間(サイボーグ)だからであった。

 実際としては拳銃弾程度の被弾では致命的な傷を負わないが、生命維持の為の管理AI『アーク』製の高価な薬品を摂取する必要が出てくるのだ、それ所か生きているだけでその薬品が必要になる為に金策が必要なのだ。

 連射式の短機関銃(サブマシンガン)なら無理だったなと男が考えていることなどお構い無しに次々と銃弾が撃ち込まれる。

 全く問題無いとばかりに剣鉈を動かし、銃弾を弾くが拳銃の弾が切れ、カチカチと弾切れを示す空撃ちの音が響く、そしてそれとは別に金属同士を引っ掻く音が三人組の背後からする。

 その音を鳴らしたのは人類管理AIの下僕であるロボット、修繕者(ティンカー)であった、六本の脚を持ちその脚先は鋭い刃となっている管理区域外、非管理区域と呼ばれるゴミ漁りをする場所で徘徊する通路での争いや傷により姿を現す敵性機械(エネミー)の一体である。

 銃声で引き寄せられたのであろう修繕者は三人組の1人に飛び付きその鋭い刃の脚先でスパリとその腕を切り落とす。

 弾切れを起こしていた三人組に機械相手に対抗する手段は無く。

 腕を切り落とす事で無力化されていく。

 本来なら管理AIの支配下にある為人間を襲わないが、非管理区域ではその限りでは無い。

 あっという間に三人組が無力化されると弾いていた男に向けて赤く光るカメラアイを向けて向かってくる。

 飛びかかって来た修繕者の刃も銃弾と同じ様に剣鉈の刃で受け流すが重量差もある為鍔迫り合いを長くするつもりは無く、即座に左手で腰の銃を抜き銃口を頭部あるいは胴体に当たる部分に押し付けて引鉄を引く。

 男の持つ銃はレバーアクション式の散弾銃であり、高密度に圧縮された蒸気が弾薬を撃ち出し、弾薬の中央に配置された大型の貫通弾頭がまず放たれ、修繕者の装甲を貫き、中央弾頭の周りに配置された直径0.8mmのベアリング弾がその周りの装甲を貫き修繕者の内部をグチャグチャにして行く。

 その時点で血にも見える赤いオイルが飛び散り、辺りを赤く染める。

 その時点で修繕者は沈黙し、カメラアイからも光が消える。

 並の人間を即死させる程の力があろうと、修繕者は最弱とも言える敵性機械であり基本、複数体固まって動く相手なので、レバーを押し込む様に手首を使って一回転《スピンコック》をして再装填(リロード)する。

 

 

 その対応は正しく2体目の修繕者が三人組の奥側から現れる、修繕者の下部にはミキサー状の口があり、有機体の接種により粘着性の非常に高い通路の修繕用の糸を吐き出す。

 近寄られ糸に絡まれては問題だと、男は距離に多少の不安を覚えながらも右脚に向けて引き金を引く。

 運良くスラグ弾頭が最前の右脚の付け根に当たり、散弾部分が右脚を引きちぎる。

 修繕者の脚先は非管理区域に住む住人であるゴミ漁り達に人気の近接武装の材料であり、赤いオイルの流れる肉の食えない半有機体の敵性機械の買取対象となっているパーツである。

 先に倒した修繕者の脚部に剣鉈の刃を捩じ込み脚先を切り落し回収。

 そして機動力こそ削いだ物のまだ生きている修繕者の薄い装甲に剣鉈を差し込んで機能停止させ、また同じ様に脚先を回収する。

 最後に襲撃者達の銃も回収する。

 非管理区域で火薬式の銃器は向いてないとは言え、そこそこの値段で売れるのだ。

 一通り売れる物資の回収が終わった為安全地帯(セーフティエリア)に向かって帰還する。

 ここから先は相棒の出番である。

 非管理区域に住む大半の住人はかつて起きたと言う戦争の際に遺伝子操作で作られた獣の遺伝子を持つ獣人達である。

 純粋な人間体と言うのは少なく、獣人達から見た人間と言えば旧支配者層か今回出会った襲撃者の様な存在であり。

 多少名の知れたゴミ漁りになったとは言え、俺が売りに行けば足元を見られ買い叩かれるのがオチである。

 なので、相棒である獣人に売買して貰うのだ。

 




蒸気銃
現在現実で使われている火薬式の銃器と違いかなりの密度で圧縮された空気を専用カートリッジで加熱放出する事で弾を発射する銃器
構造上火薬式の銃器よりも口径は小さくなる。
口径の差以外での威力は火薬式と大差は無い。
主人公が扱っている弾丸はいわゆるスラグ弾(ショットガンの弾の中でも大きな弾を一発発射する弾の事)を弾薬の中で一纏めにしてある特製の弾薬であり、現実には存在しない。
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