スカベンジフロムアーク   作:鈴ノ猫鳥

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依頼と油断

 迷宮の物資回収から二日後、互助会に顔を出せばすぐさま受付から声をかけられる。

「ジョンさん頼まれてた荷物届きましたよ……普通に私達が発注するより相当安かったんですけど、どう言う伝手なんですか?」

 互助会を通して管理AIに注文したのは俺の肉体用の調整薬を含めたこの居住地で必要とされるだろう医薬品であり、追加として迷宮の鍵に関連する依頼を受けた者ならばアークから提供される防護服と言うか衣類である。

 俺が申請したのは突撃兵装(アサルトスーツ)、動きを阻害しない様に作られた軽装甲の文字通り攻撃的な突撃兵科(アサルト)に向いた装備である。

 医薬品などの値段に関しては非管理区域から管理区域側にある製薬工業地区に発注せざるを得なく、自分達を特別だと思い込んでいる管理区域の連中に中抜きあるいは、関税と付けられた手数料を余計に取られるのである。

 管理区域と非管理区域の違いは 管理される自由、あるいは管理されない自由を行使しているかどうかなのだ、 管理AIアークから見れば大差は無いのである。

 街のネズミか山のネズミかの違い程度でしかないのだ。

 本人達の視点では大きな差があるが、傍から見ればどちらも『ネズミ』でしか無いと言う話だ。

 そこに異端でありアークの観察対象である俺が注文する事でアークの査察が入り、関税と言う勝手にかけられた手数料を切り捨てられ遥かに安価で入手出来る事となったのである。

「それに管理区域D-74から依頼も一つ入ってますよ此処とD-74の中間にある非管理区域に発生した迷宮での名指しでの物資回収の依頼です近隣駅までのチケット付きの依頼です」

 

「分かった、回収するのはレコーダーに銀の短剣? 随分変わった組み合わせだな、まぁ良いんだが」

 互助会内の空き部屋を更衣室として借りて突撃兵装に着替えた後に、その依頼を受けて近隣の駅に向かう。

 駅から蒸気機関車に乗り迷宮に侵食された地域G-063へと移動する。

 移動中、機関車の中で注射型の肉体調整薬を注入しておく。

 大きなダメージによるズレこそ無いものの、戦闘行動や日常生活でも肉体の安定性は下がって行くために今回の依頼で何かある可能性に先に投薬する事で、安全を担保しておく。

 G-063の入口はR-44の迷宮とは違い壁、床、天井全てが石畳に侵食された迷宮であった。

 自分の足音が響く、突撃兵装の長靴(ちょうか)のつま先と踵部分に付いている金属パーツがカツカツと音を鳴らす。

 侵食されていない部分である金属製の床じゃ無いのが音の問題ではまだ救いだろうか。

 こちらで迷宮化したのは倉庫地帯だと情報を聞いている。

 他の連中が来るより先に回収する必要があるため、昨日一昨日の様に気配を隠して進まず、さっさと迷宮内に侵入すると、石畳の廊下が続いており、元々設置してあった灯りが遮断された影響で内部はかなり暗い。

 レコーダーはともかく、銀の短剣と言うのは金目の物として持って行かれる可能性があるのは想像にかたくない。

 暗闇の奥で灯りが動くのが見える、先客だろう。

 肉体の性能のおかげで、完全な暗闇なら流石に見えなくなる可能性があるが、奥の灯りは兎も角、少しだけ存在している光量を増幅した視界には灯りを持たなくともなんとかなっており、突然灯りを顔に向けられても最先端のこの肉体は一瞬で判断して、視界を塞ぐことは無い、つまり、少なくとも暗闇で灯りを使っている相手に対してはかなり有利が取れる。

 肉体の安定性を高めた以上威力としては銃よりも剣鉈のが高い。

 命中精度は銃でも上がってはいるのだが。

 

 特に足音など気配を消すこと無く、灯りを動かしている連中の元へ行く。

 そこに居たのは三人組の人間だった。

 内二人は元軍人崩れである襲撃者であり、こちらに突撃銃(アサルトライフル)の銃口を向けて来る。そしてそれは銃のあくせさとして付いているフラッシュライトで俺が照らされる事になる。

 三人目は武器を持っていない所を見ると人間に見えても何らかの強化人間(ブーステッド)なのだろう。

 一瞬の間が空いた後すぐに警告無しで突撃銃が火を吹く。

 流石に突撃銃相手では不利だと廊下の曲がり角を遮蔽に隠れる。

 放たれた銃弾が石畳の壁の角を削っていく。

 

 さて、どうやって対処するか半分機械式の脳に刻まれた先程の相手の立ち位置を元に、片手だけ曲がり角から銃を向けてブラインドショットで三発撃ち込めば、どれだけ当たったのかまだ不明だが一人分の呻き声が聞こえる。

 残弾が一発なので、多少の被弾は覚悟の上で曲がり角から飛び出し、銃持ちの額目掛けて引鉄を引く。

 更に銃器本体を初めのブラインドショットで倒れた銃持ちの手元に投げて突撃銃を取り落とさせる。

 剣鉈を引き抜き空手の三人目に詰め寄る。

 いや、空手では無く三人目の手にはオイルライターが握られていた、カチとライターの蓋が開く音がすれば、辺り一帯が突然爆発したかの如く炎に包まれる。

 

「っち、超能力者(Type-PSI)かよ」

 軽く毒吐けば剣鉈を振りオイルライターを持っていた左肩を強かに打つ。

 超能力者は銃器よりも前兆無く放たれる為、炎以外も使えるなら圧倒的に銃持ちよりも厄介な相手だ。

 再びカチリとライターの蓋の音が鳴ると火炎放射器の様に超能力者から炎が放たれる。

 かなり強めに叩いた筈ライターを取り落とさなかったらしい。

 ライターの音を引鉄にしているのは二回目の音でハッキリした。

 普通の人間なら二度の炎で一気に酸素が消費された影響があったかもしれないが人造の身体の俺には影響が無いので、二回目の炎の発動は完全に隙でしか無く、三度目のライターの音を聞くことはなく、俺は超能力者のくびを剣鉈の刃で切り裂いていた。

 まだ生きていた一人目は再び動き出す前に返す刀で首に剣鉈の刃を差し込みとどめを刺す。

 突撃銃二丁に満タンのマガジンを六つ、それにライターと幾らかの糧食を確保しバックパックに詰めて情報にあった銀の短剣とレコーダーがある部屋へと向かう。

 元は金属製だったであろう扉は侵食の影響で木製で金属の柵による覗き窓のついた扉となっていた。

 これは場合によっては鍵の探索が必要かと思ったが蹴り開ける(ブリーチ)と言う少々荒っぽい手段を取ることにした。

 蹴り壊した扉を潜り室内に入れば銀の短剣とレコーダーは簡単に見つかった。

 残ったのは俺では価値が判別出来ない書類やそれに伴う雑貨類などだけであった。

 

 銃器は非管理区域に居ると火薬式の銃弾の補充は難しい為売り払う事にして、メイン武器になる銃器を入手する為に使わせてもらおう。

 しかし今回は正直、油断しすぎたな、あまり俺の肉体に影響が少ない炎だったからまだ良いが、ある程度の耐電せいはあるが明らかな弱点となる電撃だった場合死んでいた可能性も高い。

 昨日一昨日で剣鉈と格闘で済んでいたからと銃弾を補充していなかったのは流石に舐めすぎだったな。

 まぁなんにせよ任務は完了した、戻るとするか。

 バックパックから突撃銃を一丁取り出してすぐに撃てるように手にしておく。

 何事も無く安全区域である駅まで到達した俺は、後払いで支払われる切符代を支払い、再びR-44へと向かう。

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