まったりデュエマ伝   作:ヴァーチャル

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デュエマ・スタート!

「僕のターン!呪文『魂の呼び声』で、ゴッドを3枚デッキの上に仕込む。そして『フェアリー・ギフト』でコストを軽くし、『邪帝類五龍目 ドミティウス』を召喚!」

 

 ハゲしくアツかりしカードバトル、デュエル・マスターズ。それはカードとカードの真剣勝負。そして今、小さな街のデパートの中で、何人かの観客に見守られ、激しく熱かりし戦いが繰り広げられていた。

 

「では、ドミティウスの能力。デッキの上から5枚見て……」

 

 デュエル・マスターズ、通称デュエマは、二人のプレイヤー間で行われるゲーム。二人のデュエリストの真剣勝負だ。

 今デュエマをしているのは、少し大人びた大学生くらいの青年と小学4年生の少年。少年の名前は皆輝咲(みなきざき) 彩人(さいと)。デュエマ大好き少年である。

 

「行くぞ、ドミティウスの能力!こいつがバトルゾーンに出た時、山札の上5枚から、5つの文明のコスト7以下のクリーチャーを1体ずつ、バトルゾーンに出せる」

「な、なにぃ!?」

 

 デュエマは互いのターンを交互に行う。基本的に、ターン中の行動は、そのターンのプレイヤーが主に行う。つまり彩人は、これから待ち構えている恐るべき展開を止める術を持ち合わせてないということである。

 

「……ふふっ。出たクリーチャーは、この4体だ!来いっ!『究極神アク』!『超絶神ゼン』!『竜極神ゲキ』!『竜極神メツ』!」

 

 お兄さんの場にクリーチャーが出てくる。このように、強いクリーチャー、自分が好きなクリーチャーを使って相手の5枚あるシールドを破り、トドメをさす。それがデュエマの基本的な勝利条件だ。クリーチャーはもちろん、強ければ強いほど、相手クリーチャーを多く倒せるしシールドも多く破壊できる。そして、今お兄さんの場に出てきたのは、とんでもなく強いクリーチャーばかりだ。

 

「ゼン、アク!そしてゲキ、メツ!」

 

 今出てきた4体はゴッド。特定の組み合わせが揃えば、なんと。

 

「ゴッドリンクっ!降臨しろ、ゼンアク、ゲキメツ!」

 

 2枚のカードが繋がって合体し、さらに強くなる。しかも同時に二組。

 

「すげぇ、すっげぇー!」

「ふふ。クリーチャーは出たターン、攻撃が普通できない。だけどゴッドリンクしたゴッドは即攻撃が可能!いけ、ゼンアクの攻撃!その能力で、パーフェクト・アースを破壊!」

「なっ!?くっ、だが墓地のグールジェネレイドは、場のグールじゃないドラゴンが死んだら蘇る!2体復活だ!」

「だが、そいつらではこの攻撃は防げない!喰らえ、Q(クアトロ)・ブレイカー!」

 

 Q・ブレイカー。それは一撃でシールドを4枚破壊するという必殺技。彩人にそれを防ぐ術は無い。

 

「くぅっ……!ウォォォッ!」

 

 5枚あった彩人のシールドが砕かれていく。シールドが無くなれば、デュエリストはかなり無防備になってしまう。

 

「……へへっ」

 

 だけど、ピンチはチャンス。砕けたシールドは手札に加えられる。これで手札、つまり彩人が使えるカードが4枚も増えた。しかもここでシールドから手札に加えられるカードに「S(シールド)・トリガー」があれば、彩人はそれをコストを払わずに使える。

 

「……だが、来ない!」

「なら続けて行く!ゲキメツで攻撃!その能力で、君のマナを2枚破壊!そして、最後のシールドを破壊だぁぁっ!」

「ぐぅ!」

 

 砕かれたシールドがヒラリと宙に舞い、手札に舞い込む。そして……。

 

「……S・トリガーは、無しだ」

「そうかい。クリーチャーは召喚したターンは攻撃できない。よってドミティウスも攻撃不可。トドメは刺せないので、これでターン終了」

「ふーっ、アブね~」

「あ、忘れちゃいけないゼンアクの能力。ターン終了時、ゼンアクはアンタップされる。そしてゼンアクは攻撃を防ぐ「ブロッカー」だ!」

「俺の攻撃を、自身をタップすることで1度だけ防げる能力だな」

「そしてゼンアクのパワーは17000!ブロックできるのは1度だけだけど、グールの攻撃を1度は防げる」

「……チッ」

 

 彩人はピンチだった。強力な神が揃った今、次の自分のターンで一気にお兄さんを倒すか、神を除去するかしないと、次のお兄さんのターンで確実に負ける。しかし合体した神は、除去される時に2体のどちらかを場に残せる。つまり完全な除去は困難。しかもゼンアクはブロッカーでもある。

 

「絶体絶命か……ふふっ」

 

 笑う。しかもヤケになって笑ったわけではない。熱い炎が、デュエ魂が、彩人の胸の中で燃えているのだ。

 

「……笑うんだね」

「あぁ。あんなモン見せられたら、俺も黙ってられねぇ!デュエリストとして、魅せるモン見せてやるぜっ!俺のドロー!」

 

 彩人のターンが始まる。彩人の場にはグールジェネレイドが2体。マナは7枚。彩人はマナを1枚チャージし、8マナにする。

 

「さぁ、勝負だ!『爆竜兵ドラグストライク』を召喚し、呪文『ヒラメキ・プログラム』、超動!コスト7のグールを破壊!」

「あれは、自分のクリーチャーを1体破壊し、それよりコストが1つ高いクリーチャーが出るまでデッキをめくり、最初に出た1枚を場に出す、というカード」

「グールはコスト7だから~、最初に出たコスト8を出せる!何が出るかで勝負が決まる。良いのが出たら拍手喝采!さぁ、来いっ!」

 

 彩人のデッキに残ってるコスト8は2種類。どちらが出るかで決まる。パラパラとカードをめくり、そして、彩人は希望の1枚にたどり着いた。

 

「キター!『復活の祈祷師ザビ・ミラ』!こいつは場に出た時、自分のクリーチャーを好きなだけ破壊し、その数だけコスト6以下のサイキック・クリーチャーを呼べる!ドラグストライクとグールを破壊し、『ヴォルグ・サンダー』を2体場へ」

 

 ヴォルグ・サンダーは場に出た時、プレイヤーひとりを選び、そのプレイヤーのデッキを、クリーチャーが2枚出るまでめくり、めくったカード全てを墓地に送る。

 

「なるほど。そいつの効果を僕のデッキにうてば、僕のデッキを全て破壊し、ライブラリアウト、デッキ切れで勝てるかもしれないね」

「いや、俺はこいつの効果を、自分に対して使う。つまり、破壊されるのは俺のデッキだ!」

「……なに?」

「さらに2体目の効果ぁ!俺のデッキをさらに破壊して……」

 

 デッキからカードを墓地に送る。そして、そのカードは遂に顔を見せた。

 

「来たぜカモン!落ちたのは、『永遠(とわ)のリュウセイ・カイザー』!」

「リュウセイ・カイザーか。確かに強力なカードだけど、墓地に送ってどうする?」

「それを今、見せてやるぜ!ドラグストライクは破壊された時、手札からドラゴンを1体、なんでもタダで出せる!」

「な、なにが来る!?」

「行くぜ!ザビ・ミラと2体のヴォルグ・サンダー、進化GV(ギャラクシー・ボルテックス)!」

 

 進化。それは文字通り、クリーチャーが進化すること。指定した種類のクリーチャーの上に重ねることで召喚できるのが、進化クリーチャーだ。難しい召喚条件の代わりに召喚酔いはない。デーモン・コマンド3体の上に重ねられ、彩人の最強の切り札が現れる。

 

「未来を拓く閃光、竜と交わりここに降臨!『竜魔神王バルカディア・NEX』、召喚!」

 

 天使と悪魔の羽を生やした巨大なドラゴンが、空を十字に引き裂いて降臨する。そんなイメージがその場にいる全ての者を包み込む。伝わるだろうか。彩人が、お兄さんが、このデュエマを見ているギャラリー全てが、胸の高まりを感じていることが。

 

「……バルカディア・NEX、か。スゴいカードを使うね」

「へへぇ」

 

 そう、こいつはスゴいカードなのである。いろんな意味で。15マナという、普通に出すならデッキの半分近くをマナに貯めてからでないと出せず、進化元を場に揃えるのも難しい。要するに、普通なら登場は考えられないカード、ということだ。能力は強力だが、他にもっと簡単に使える強力なカードはいくらでもある。

 

「なんでこんな強すぎるカードを……、って感じかな?」

「まぁそんなところだね」

「でも、今はちょうどいい強さだ。そう思わね?」

「……ふっ。ちょうどいい、かな?」

「あぁ。そっちのシールドは無傷の5枚。だけどこいつは、一撃で相手のシールドを全てブレイクできるワールド・ブレイカーを持つクリーチャーだ!」

「通ればね。だけど、こちらにはブロッカーのゼンアクがいる!しかもこちらは神!」

「ならブッ倒すだけだ!いけバルカディア・NEX、シールドを攻撃!その攻撃時の能力で、ゼンアクを破壊!」

「ゼンを残す。アクは自身の能力で手札に戻る」

 

 合体した神は場から消える時、1体を身代わりにし、残りの神は場に残すことができる。ブロッカーであるゼンが残った。まだ神は攻略できてはいない。

 

「だが、まだバルカディアの能力は終わってねぇ!デッキから、ドラゴンを1体タダで出せる!」

「ふっ。自分で破壊した、残りわずかのそのデッキに、切り札があるのかい!?」

「……あぁ!」

「!」

「来い、『真実の王(トゥルーキング) ヴィオラ・ソナタ』!その力で、ゼンを破壊!」

「なに!?」

 

 ブロッカーが消える。これで守りは崩れた。そして彩人の墓地が弾け、カードが1枚舞い上がる。

 

「そして墓地から進化でないドラゴンを出せる。蘇れ、『永遠のリュウセイ・カイザー』!その力で、俺のクリーチャーは全てスピードアタッカーになり、召喚酔いしない!」

「このために墓地に送っていたのか──っ!」

「へへ。バルカディア・NEX、ワールドをブッとばせ!ワールド・ブレイク!」

「ぐぅっ!だけど、S・Tが来れば……」

「バルカディア・NEXの能力。こいつがいる限り、相手は呪文を唱えることができない!つまり、S・Tが出ても呪文なら無力!」

 

 シールドが砕けていく。そして、砕かれたカードの中の1枚が一瞬輝きを放つ。しかしそれはバルカディア・NEXに握り潰され、消えた。

 

 ─S・T、呪文『デーモン・ハンド』……不発!─

 

「発動するS・Tは……ない」

「なら、行くぞ!ヴィオレ・ソナタで……トドメだぁーっ!!」

 

 ドラゴンの一撃が炸裂し、彩人の勝利が決まった。

 

 

 

「よっしゃあーっ!人生初の、大会1回戦突破だー!」

「ふふ。おめでとー」

「へへっ。いい勝負だった。またやろーぜお兄さん」

「うん!」

 

 彩人とお兄さんは笑いながら握手する。デュエマは真剣勝負を通して友情を生む、ハゲしくアツかりしゲームなのだ。そこに悪しき影は一切な……。

 

「ふん。雑魚が」

「くっ、くぅっ!」

「この程度の実力で俺に挑むなど……。呪文、『超次元ミカド・ホール』超動!ロンリー・ウォーカーのパワーを-2000し、破壊。そして超次元ゾーンより、『時空の封殺ディアス Z(ゼータ)』を場へ!」

 

 彩人とお兄さんの隣のテーブルでは、何やら不穏な空気が立ちこめていた。

 

「隣はまだ終わってなかったんだ。見てみようか?」

「そうですね。あっ!」

「どうしたの?」

「対戦してるの、友達なんですよ。速攻デッキで、すっごく強いんです」

「そう。でも、彼ピンチみたいだよ?」

「え?」

 

 闇自然の2色の速攻デッキと、光闇自然水の4色の、なにやらよく分からないデッキがデュエマしていた。速攻側の場にはクリーチャーが何体もいるが、いずれもパワー2000。4色側の場にある『ノーブル・エンフォーサー』の能力で、パワー2000以下のクリーチャーの攻撃は封じられている。

 

「さらに、『エメラル』召喚!手札とシールドを入れ替える。ターン終了」

「んー、確かにピンチだな。だけど、あいつのデッキはノーブル・エンフォーサー1枚で終わったりは……」

「俺のターン!シールドをひとつ選び、要塞化!『雪要塞 ダルマンディ』!こちらのクリーチャーのパワー、全て+3000!」

「おおっ!これでノーブル・エンフォーサーの影響は受けなくなった!」

「デス・マーチ、ザビ・クロー、アニマベルギス、スナイプ・モスキート、一斉攻撃だー!」

 

 シールドが砕けていく。しかし最後の1枚、スーパーエメラルの能力で仕込まれたシールドが砕けた時──。

 

「……シールド・トリガー」

 

 光がクリーチャーたちを覆い、その膝を折る。

 

「呪文、『DNA・スパーク』。相手クリーチャーを全てタップし、俺のシールドが2枚以下なら、デッキの上から1枚を新たなシールドにできる!」

「そ、そんなカードを仕込んでたのか!?く、ターンエンド」

「そんなことも分からんとは……。つくづく呆れさせる。俺のターン、『超次元リバイヴ・ホール』!『時空の凶兵ブラック・ガンヴィート』を場へ!その能力でデス・マーチを破壊!エメラルでダルマンディが要塞化したシールドを攻撃」

 

 要塞化されたシールドがシールドゾーンから離れたら、ダルマンディは墓地に送られる。ダルマンディは墓地に送られ、その能力は失われる。クリーチャーのパワーは元に戻る。

 

 「これでお前のクリーチャーは雑魚に戻った。ミル・アーマでザビ・クローを攻撃、破壊!さらにディアス、アニマベルギスを潰せ!」

「ぜ、全滅だと……!」

「俺のターンの終わり、お前のクリーチャーが3体以上場から離れていれば、ディアスは覚醒する!君臨し、弱者を蹂躙せよ!来い!」

 

 悪魔の胸の巨大な目玉が開き、翼は禍々しさを増し、その両手に赤く光る剣が握られる。

 

「『殲滅の覚醒者ディアボロス Z(ゼータ)』!!」

 

 轟く咆哮。ディアボロスの全身から溢れる黒いオーラが、場を包み込む。

 

「俺の勝ちだ。ディアボロスは俺の他のクリーチャーのパワーを+5000し、お前のクリーチャー全てのパワーを-5000する。パワー0以下のクリーチャーは破壊される。つまり、お前のクリーチャーは存在することすら許されない」

「……!」

「まだやるか?」

「あ、当たり前だ!」

「時間の無駄だな……」

「つっ!俺のターン……マナをチャージ。ターンエンド……」

「俺のターン。ディアボロスでQ・ブレイク!ガンヴィートで、トドメだ!」

「う、うわぁーっ!」

 

 決着。4色使いの男が勝利する。男はカードを片付けながら、ポツリと呟いた。

 

「……つまらんデュエマだった」

「っ!う、うぅ……!」

 

 歯ぎしりの音が、鈍く、会場に響く。負けた彼の悔しさを伝えるのに、これ以上の言葉は必要ないだろう。彼はどこかへ走り去った。

 

「……!」

 

 男がデッキを手にしてテーブルから離れたその時、彩人の足は動いた。

 

「おい!」

「……お前は。次の俺の対戦相手か」

「なんであんなこと言ったんだ」

「あんなこと?」

「つまらんねぇとか無駄な時間とか、なんでそんなひどいこと言えるんだ!あいつは、最後まで頑張ったじゃねぇか!」

「……だからどうした?」

「なに?」

「頑張ったところで、勝てなければ無意味だ。ヤツは俺に負け、逃げ出した。つまりそういうことだ」

「……ホントにそうか?」

「……ふん。次の試合、楽しみにしている」

 

 視線の交差。やがて、男は去っていった。

 

 

 

「彩人くん」

「なんですかお兄さん?」

 

 15分の休憩のあと、次のデュエマは始まる。彩人がテーブルに座って休んでいたところに、さっき彩人と戦ったお兄さんがやって来た。

 

「次の君の相手の彼、誰だか知ってる?」

「いや。有名な人なんですか?」

「かなりね。彼は(のぞみ) 天人(あまと)。十聖者っていう、この街最強のデュエマチームのひとりらしい」

「……十ってことは10人いるわけすか?」

「うん。彼はNo.10。そして、あのチームは強さが全て」

「ふーん」

「彼はチーム内最弱。崖っぷちだ。この大会で負ければチームから外される。だからピリピリしてるんだろう」

「へー。厳しいチームなんですね」

「……昔はそうじゃなかったんだけどね」

「そう、ですか」

 

 彩人は立ち上がる。そして、歩いてくる男、希 天人を見据える。

 

「……聞いたぜ。あんたのこと」

「そうか。なら分かるだろう。今の俺に必要なものは勝利。お前のようなあまいデュエリストに、この俺が倒せるわけがない!」

「それはどうかな」

「……はっ。お前の全てを潰してやる。このデュエマで!シールド、展開っ!」

「行くぜ、シールド展開!」

 

 互いにデッキの上からカードを5枚シールドゾーンに置く。そして、ハゲしくアツかりし戦いの幕が、今開く!

 

「デュエマ・スタート!!」

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。
今回の話はこれで終わり、次話に続きます。本当は1話で終わらせるつもりだったのですが、冒頭のダイジェストのデュエマが意外と長くなり、このようになってしまいました。
いきなり省略デュエマ連発になってしまいましたが、次話でのデュエマは省略なしでいきます。あー、やっぱり1ターン目と2ターン目は省きます。互いに動きナシなので。楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
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