朽ち果てている廃教会
教えてもらった住所に誤りがない事を何度も確認しアリサは意を決してインターホンを押す
壊れているのかピーンポッと最後の音が途切れるのを聞きながら中の者を待つが5分過ぎても10分過ぎても一向に現れる気配がない、勿論その間に何度かインターホンを押したのだがそれでも住人は来なかった
「………………………………」
何となくドアノブに手を掛けると扉が開いておりアリサは玄関まで入ると絶句する
そこにあったのは巨大なユリカの像
玉座に足を組み傲慢な王の様に座りその手から無数の物を出し人々に分け与える姿
そんな像に呆気に取られていた所から我に返り大声で住人を呼ぶ
「すいませ〜ん!!」
しかしやはり住人は現れずアリサはどうしたものかと考える
(……………………出直すか)
最終的にそう考え外に出ようとドアに手を掛ける
その時、ガシャーン!!と何かが壊れた様な音が通路の先から響きアリサは何事かと音の聞こえた方を見るが奥の方まで見通す事は出来ず暫く待つが何の変化もない
心配し駆け寄る声も悲鳴を上げる声も聞こえないのが更にアリサの不安を駆り立てる
(まさか1人しか居なくてソイツが倒れたとか?…………)
嫌な事を想像しけれどアリサの善性が無視を許さず仕方無くアリサは部屋の奥に進む
「お、お邪魔します」
一応そう声を発する事も忘れない
一歩ずつ音の聞こえた方に歩みを進める度に人々が生活する音や声が聞こえてくる
「うああああああああああああああ!!クスリ!!クスリをくれええええええええええ!!」
「足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない」
「は、腹が減った…………飯を…………誰か…………」
最もまともな生活音とはとてもいい難かったが
「ッ!何だよこれ…………」
その光景にアリサも顔面蒼白となり後ずさるとドンと壁にぶつかる
振り返るとそこには司祭風の格好をした男と女が笑顔で立っており阿鼻叫喚の地獄の中で笑顔を浮かべている
「あ、あんたらは…………」
「ようこそユリカ教へ!!」
「ここでは神の御使いユリカ様を崇める為の宗教になってますわ!!」
気味の悪い笑みを浮かべたままそう話す2人にアリサは小さく悲鳴を上げる
「さぁ、小さく新しい入信者よ。まずはその目でユリカ様のご尊顔を焼き付けなさい!!」
「あの、ウチは入信に来たんじゃなくて…………」
そこでアリサの言葉が止まる
(あれ?ウチ、何しに来たんだっけ?と言うかウチはなんでここに来たんだ?真田は死んだってのに)
考えが纏まらないアリサは目の前で不気味な笑顔から真顔に変わった2人に気付かない
「皆さん、その者は異端者です。我々の女神を愚弄する愚か者」
「殺してしまって構いません。ユリカ様が新たに創造して下さいます。より完璧な信徒として。それに、その者を殺した人にはユリカ様が望む物を与えて下さいますよ」
二人の声を聞いた空腹の男はアリサに襲い掛かる
「め〜〜し〜〜」
「なっ!?ちょっ!?」
アリサはそのまま押し倒されそれに無数の人間が群がってくる
「ああああああああああああああああああ!!クスリクスリクスリクスリクスリクスリクスリクスリクスリ!!!!」
「もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと頂戴!!」
「止めっ!!この!!離れろ!!」
アリサも必死になって抵抗するが弱っているとは言え大人 数十人に襲われれば手も足も出ない
大人達は皆目が虚ろでアリサの首を締め上げてくる
その手を必死に振り払い地面を這いずる様に逃げるがすぐに部屋の角に追い詰められる
「や、止めろ、来るな!!」
そんな命令聞くわけもなく大人達はゆっくりゆっくりとアリサの元へ歩いていく
(嫌だ!!死にたくない!!怖い!!助けてくれ真田)
ユリカに渡された煙草とライターを握り締めまるで神に祈る様に握る
火の手がないにも関わらず握られた煙草の1本がボォと突然燃え尽きる
「え……」
灰が空中を舞い次第に形を取る、既に魔法を失った少女にとって、それは余りに美しくそして残酷な光景だった
「…………………………随分早い呼び出しだと思ったら成る程、これは私が出張る必要がある訳だ」
灰は人形になったかと思うと現れた人物はそう声を上げる。その人物を見上げアリサはわけも分からずその人物の名を呼んだ
「………………真……田?」
「やぁ紫藤さん、余生満喫してる?」
ユリカは自身で生み出した煙草に火を付けながら笑顔でそう言った