蒼き炎が照らすもの【リメイク】   作:96犬くん

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原作を読んでいた方が分かりやすいかと思います。



プロローグ

帝都辺境にある村で新たな命が産声を上げた。

 

「おめでとうございます!よく頑張りましたね!元気な男の子ですよ!」

 

助産師が生まれたての赤子をお湯で洗い、清潔な布に包むと赤ん坊の母親である女性の隣に赤ん坊を寝かせた。

 

女性の顔には疲れが浮かんで見えたが、彼女は赤ん坊を見ると大粒の涙を流しながら嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「よかったぁ……」

 

母親である彼女は、赤子の頭を優しく撫でながら言うと、赤子もそれに答えるように指を握る。

彼女が笑みを浮かべながらそれを見ていると、病室の扉が勢いよく開く。

 

銀髪をオールバックにした筋肉質な男性が心配そうに入ってくる。

 

幾度もの危険種との戦闘で傷つき、鍛え抜かれた体に気圧されそうだが、そんな威圧感は今は鳴りを潜めている。

 

「ゆ、ユミル!大丈夫か!?」

 

「ええ、大丈夫よウィル…元気な男の子だって」

 

 

そう言いながらユミルと呼ばれた女性は、夫であるウィルに微笑みかける。

 

ウィルも安堵したのかほっと胸を撫で下ろし、彼女の手を握る。

 

「ありがとう、ユミル!よくがんばってくれた…!!」

 

「もう、泣き過ぎよ」

 

傍らで感謝の言葉を涙ながらに言うウィルにユミルは苦笑する。

 

 

「つか黒髪か…俺らと全然似てないな!ハハハハ!」

 

ウィルが我が子の頭を撫でながら笑う。

 

ユミルは優しく赤子の手を握り、それに被せるようにウィルの大きな手がそれを覆う。

 

赤子に「ユウイ」と名付け、2人はこれから幸せを誓い合う。

 

 

 

しかし…

 

それから7年後、悲劇は起きた。

 

3人で少し隣村まで出かけた帰り道、家族は運悪く超級危険種に遭遇してしまう。

 

狼のような獣影は蒼白い炎を身に纏い3人の乗る馬車を一撃で粉砕した。

 

吹き飛ばされる木片、断末魔、そして奔流のように広がる恐怖。

 

衝撃とともに吹きとばされた3人に凶爪が迫るも、ウィルがなんとかその腕に刃を立てる。

 

「俺の家族に…手ぇ出してんじゃねぇ!!」

 

しかし相手は超級危険種。

 

抵抗虚しくまるで紙を破くかの如く容易にウィルの体を引き裂く。

 

 

 

振るわれた危険種の腕から飛び散った血がユウイの顔にべっとりと付着する。

 

その瞬間、体は突如として燃え上がり、我が子を守ろうと子供に覆いかぶさっていた母親を焼き殺してしまった。

 

 

 

その惨状に、両親を失い自身の身に呪いを宿してしまった少年のみが残ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

あの凄惨な事故から約13年

 

帝都の裏路地に倒れ伏す男を呪われた青年は見下ろしている。

 

倒れてる男は今の帝都ではさして珍しくないチンピラだった。

 

 

 

 

 

時は少しさかのぼる。

 

 

 

男はその夜も数人の仲間とともに獲物を探し、路地裏に入っていく青年に目を付けた。

 

手口はいつも通り。刃物を突きつけ、声を荒げ、相手の怯えた顔を見てから金品を奪う。

 

拍子抜けするほど簡単な仕事。

 

 

 

ーーそのはずだった。

 

 

 

「おい!動くんじゃねぇぞ!」

 

 

 

いつも通りの言葉。いつも通りの流れ。

 

少し脅せば青年は震えあがり、金品を差し出して命乞いをするはずだった。

 

 

 

だが、その瞬間は永遠に訪れなかった。

 

 

 

刃が喉元に触れた瞬間、視界が蒼白い光に染まった。

 

仲間の悲鳴を聞く間もない。

 

ただ光が弾け、次いで肉が焼けた匂いが遅れて鼻を刺した。

 

 

 

気が付けば男は地面に伏していた。

 

気づけば男の両足は酷く焼け爛れており骨が露出している。

 

もう立ち上がることはできないだろう。

 

そして男は瞬間的に理解するーーこの青年には手を出してはいけなかったのだと。

 

 

 

 

 

「お、お前なんなんだよ!?」

 

 

 

やがて男は痛みに悶えながら青年に問いかける。

 

 

 

「あ?なんだって言われてもなァ...知る必要あるか?これから死ぬのに?」

 

 

 

そう呟きながら青年…ユウイは右手の掌を男に向け、そのまま炎を放つ。

 

 

 

「や、やめっ....」

 

 

 

死体には目もくれず青年はロングコートを翻しながら路地裏を後にする。

 

路地裏には複数の焼死体のみが残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ー13年前ー

 

 

 

 

 

惨劇の後、気がつけばユウイは土埃と血の匂いに包まれた道を歩いていた。

 

 

 

よろめく足。震える小さな肩。

 

額から落ちる赤い雫が土にしみ込み、夜の空気に冷えていく。

 

 

 

見るものすべてが揺れていた。

 

白く焼け焦げた母の腕。語りかける前に途切れた父の声。

 

耳の奥で木片の飛び散る音がいつまでも止まない。

 

 

 

帰らなきゃ。家に。村に。

 

そこに行けば、きっと誰かが助けてくれる。

 

そう思い込むしかなかった。

 

 

 

暗い森道を抜け、村の灯りが見えたとき──

 

ユウイはかすかに笑った。涙で顔を濡らしたまま。

 

 

 

「……ただい、ま……」

 

 

 

震える声は、夜風にかき消える。

 

 

 

村人が気づく。松明が揺れ、ざわめきが広がる。

 

 

 

「ユウイ……?ひとり…なのか」

 

「血まみれじゃないか、なにが──」

 

 

 

ユウイは言葉にならない声で嗚咽した。

 

 

 

「父さん、が……母さん、が…………」

 

 

 

説明になっていなかった。

 

だが、その断片だけで十分だった。

 

 

 

村人の目に怯えと嫌悪の色が浮かぶ。

 

 

 

「あの子……呪われてる」

 

「蒼い炎……さっき、見えたぞ」

 

「危険種の力を宿したんだ……!」

 

「近寄るな!化け物だ!」

 

 

 

ユウイは首を振る。

 

違う、違う、と言おうとするが、言葉は喉の奥でひっかかる。

 

 

 

助けてほしかった。

 

ただ、抱きしめてほしかった。

 

 

 

それなのに、突きつけられたのは冷たい石と憎悪の眼差しだった。

 

 

 

「出て行け!村に災いを呼ぶ!」

 

「こんな化け物、置いておけるか!」

 

 

 

心が引き裂かれる音がした。

 

 

 

ユウイは涙に濡れた視界の中で、ただ呟く。

 

 

 

「いや……いやだ……ひとりは、やだ……お願い……助け、て……」

 

 

 

しかし返ってきたのは、

 

恐怖に満ちた、子供を見る目ではない視線。

 

 

 

「殺される前に処分するべきだ」

 

 

 

「呪いの子だ。悪魔だ」

 

 

 

ユウイの小さな胸が、ついに耐えきれなくなった。

 

 

 

喉が焼けるように熱くなる。

 

体が震え、息が吸えない。

 

 

 

怖い

 

寒い

 

もう、イヤだ

 

誰もいない

 

 

 

世界が音を失う。

 

 

 

そして──

 

 

 

「……あああああああぁぁぁ!!!」

 

 

 

ユウイの絶叫と同時に、蒼い炎が爆ぜた。

 

 

 

悲しみが

 

恐怖が

 

孤独が

 

そのまま炎になって世界を染める。

 

 

 

家が燃える。

 

夜空が白く染まる。

 

 

 

逃げ惑う声が遠くで響く。

 

泣き叫ぶ声も、やがて聞こえなくなった。

 

 

 

ユウイは泣き続けた。

 

炎の中で、両手で耳を塞ぎ、うずくまりながら。

 

 

 

助けて。

 

誰でもいい。

 

もう、ひとりは嫌だ。

 

 

 

彼を包む炎は、ただ、少年の心の形だった。

 

 

 

何も守れず

 

何も掴めず

 

ただ、焼いただけ。

 

 

 

夜明け、村は跡形もなく消えていた。

 

泣き声も、叫び声も、もうどこにもない。

 

 

 

灰が雪のように降り積もる中、ユウイは震える手を見つめる。

 

その掌に、焼け焦げた家々よりも重い――確かな感触が宿っていた。

 

 

 

「ハハハ...もう、何も残ってない...」

 

 

 

かすれた声は涙と嗚咽の混じった子供のものではなく、

 

なにか冷ややかで壊れかけたものだった。

 

 

 

一歩、焼け落ちた地面を踏みしめる。

 

足元には、かつて自分を追い回した村人の姿があった。

 

その顔には恐怖が焼き付いたまま、二度と動かない。

 

 

 

ユウイはしばらく無表情でそれを見下ろしていたが、やがて――

 

 

 

「ああ、こんなにも簡単に壊れるんだ...」

 

 

 

低く、どこか狂気を孕んだ呟きが漏れた。

 

自分を拒み、恐れ、追いやった者たち。

 

たとえ嘆き叫ばれても、彼の胸に湧いたのは後悔ではなかった。

 

 

 

“守れなかった”という絶望は、

 

“奪われるくらいなら、先に奪う”という歪んだ結論に姿を変えていく。

 

 

 

黒い髪に宿る赤い光が、ゆらりと揺れる。

 

失った愛情の温もりを思い出すほどに、胸の奥から燃え上がる焔は濁っていった。

 

 

 

「次はぼく……いや、俺が壊す番だ」

 

 

 

その表情には、幼さと狂気、そして消えきらぬ悲しみが同居していた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「……」

 

 

 

昨夜の惨劇とは別の裏路地でユウイは目を覚ました。

 

 

「チッ...懐かしい夢見ちまったな...」

 

 

最悪な目覚めだなと苦笑しながら起き上がる。

 

 

その時だった。

 

 

 

「あなた!こんなところで何をしているんですか!」

 

 

こちらの感情とは裏腹に明るく元気な声が路地裏に響く。

 

 

ブロンズヘアーをポニーテルをなびかせた少女がこちらを指さしながら立っていた。

装備からして帝都警備隊だろうか?傍らには丸っこい動物がいる。

 

 

「あン?なんだお前?」

 

 

「私ですか!!私はセリュー・ユビキタス!帝都警備隊です!!」

 

 

「...ユウイだ」

 

 

 

これがユウイが帝都に到着して初めての『生きた人間』だった。




プロフィール
名前:ユウイ 年齢:20歳 性別:男 身長:183cm
体重:73㎏ 
7歳の時に両親を失い、天涯孤独の身となる。
その際、超級危険種の血液を体内に取り込んでしまった結果、危険種の力を扱える様になる。
似たような事例ではエスデスのデモンズエキスがあるが、こちらは帝具ではない為デメリットが存在する。
危険種に近い身体構造に変化しているため、一般人よりも傷の治りが早く身体能力が高い。

能力:蒼炎
高威力かつ広範囲の炎を放出する能力。
家族を襲った超級危険種の血液を取り込んだことで発現。
自身が放出した炎はある程度操ることが出来る。爆炎などを起こすことも可能。炎の温度は約7000度。
強力な力だがデメリットもあり、一定以上の炎を使うと自身の体すらも焼いてしまう為長期戦には不向き。
武器が自身の炎に耐えられないため、武器は基本使わず独学の格闘術を使用。
炎は推進力としても利用可能で、炎と近接格闘を組み合わせた戦闘を行う。
格下には炎でまとめて焼き払う。
また帝具使いとしての認識のため、他の帝具は扱うことができない。
デモンズエキスと違い帝具として調整されていない為デメリットが存在してしまう。
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