不死終末黙示録 狩人篇   作:FROMG・E

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第三話 【悪夢の使者】

「…いやに静かだな、どこもかしこも死体ばかりだ」

 

僅かに顔を顰め、助言者は呟いた。

 

聖堂街への道中は、まさに悲惨と形容する他はなかった。

 

一面に散らばる死体や肉塊、死臭を放つ血霞に臓物はまた、屋根や街頭に紐のように釣り下がり、地上へ血と汚物の雨を降らせている。

 

破壊された扉や窓の鉄格子には大量の肉片や血飛沫に加え、桃色の粘液が大量に付着しており、あの獣が引き起こした惨劇であることは疑いもなかった。

 

狩人が壊れた扉に手を掛けようとしたその時、橋の向こうから一発の銃声が鳴り響いた。

 

それと同時に、耳を劈く、件の獣の金切り声がこの町を包む。

 

「あの銃声は、それに獣の咆哮・・・・ガスコインか!」

 

音の方角を特定した助言者は、狩人を最短距離で誘導する。

 

そしてその道中にはやはり、獣や人間の食い散らかされた死体が転がっていた。

 

あの桃色の粘液に覆われた、凄惨を極める喰いかけの死体が。

 

橋を渡った先にあったのは、墓石の散乱する広場であった。

 

街の郊外にある地下墓地、その広場の中央を良く見ると、謎の狩人が獣と死闘を繰り広げている最中であった。

 

「やはりガスコインか!あの獣・・・・今し方の獣に似ているが、まさかな」

 

狩人の名はガスコイン、後に判明した事であったが、彼は元よりヤーナムの生まれにあった訳ではなく、異邦より参った「流れ者」であったという。

 

神父の敬称で知られたというが、その肩書きもまた、ガスコインがかつて身を置いた土地の聖職者、その敬称であり、そのような風習はヤーナムに存在し得ない。

 

ヤーナム民はごく閉鎖的であり、しばしば異邦人の愚かさを噂話として好む。

 

高圧的で偏見に満ちた異邦人たちは、ヤーナムを理解せず、故にその闇に血の躯を晒すのだと。

 

ゆえにガスコインは教会の狩人でありながら、異邦の肩書きのままに周囲からその名を呼ばれたのだろう。

 

だがいつの日かガスコインは、医療教会と袂を分かち、野良の狩人へ流れた。

 

果たして彼は何を思い、あるいは何を見知ったのか。

 

それはきっと、医療教会の暗部、永劫に秘匿するべき昏い一面、恥部なのだろう。

 

だがその所以を知る者は既におらず、それを知る術もまた、皆無である。

 

「・・・堪らない、血の匂いじゃあないか・・・ハッハッハーッ!」

 

ガスコインと対峙する獣は、狩人が先程倒した獣とほぼ同種とみて間違いはなかった。

 

僅かな違いはあるものの、二枚の舌から溢れる桃色の粘液は、そうそう誰もが持ちえる特徴ではない筈だ。

 

獣の頭には渦巻き状の角が生えており、腕は肥大化してぬらぬらとした光沢を帯び、指先には黒く鋭い巨大な爪が生えている。

 

脚は無数の触手が束になる事で獣の二脚を再現しており、だがその隙間からは神秘の光を纏う粘液が垂れている。

 

肋骨の剥き出した胴にはまた、無数の触手が不規則に蠢いており、背部から伸びる一際長い触手の先には白黒の毛玉が付いており、よく見るとそれは全て瞳であった。

 

「狩人よ。あの獣はもはや尋常の獣ではない、上位者の眷属『悪夢の獣』とでも呼ぼうか。口元を見ろ、ヤーナム市街の惨劇は奴の仕業に違いないぞ」

 

悪夢の獣の口元をじっと見てみれば、確かに歪な牙の間にはヤーナム住民の服の切れ端や烏の羽、そしてあの桃色の粘液塊がべっとりと付着しており、先程の死体は全て、件の獣が彼らを食い散らかした後であると言う事が見て確信できた。

 

「これは好機だ、このまま決着の時まで見ていよう。生き残ったほうが、君の狩るべき相手となる」

 

助言者の真っ当な意見を聞き、狩人は、このまま二方の戦いを見守る事にした。

 

ガスコインは改造された散弾を発射する短銃を構え、悪夢の獣の隙を的確に見抜いて弾丸を撃ち込み、内臓攻撃を繰り出す。

 

狩人の繊細なそれとは異なる、酷く野蛮で荒々しい内臓攻撃。

 

血に酔いしれるとはまさにこの事であろう、それはまさに獣のごとき野蛮な狩りである。

 

悪夢の獣も負けてはおらず、黒く大きな爪でガスコインの皮膚を引き裂き、血や臓物を噴出させる。

 

更に、触手の先の瞳から、眩い閃光と共に神秘の光線を発射した。

 

ガスコインはすんでの所で攻撃を躱し、自らの狩道具「獣狩りの斧」を変形させた後、強烈な重打を悪夢の獣の頭蓋目掛けて繰り出す。

 

みしりと音を立て砕ける頭、灰褐色の血飛沫を上げ、地面に倒れる悪夢の獣。

 

ガスコインは獣の死体を執拗に斧で引き裂きながら、狩人の方角へくるりと顔を向ける。

 

「・・・どこもかしこも、獣ばかりだ・・・」

 

「・・・貴様も、どうせそうなるのだろう?」

 

「ハァァァァ…」

 

血塗れの包帯より覗く瞳孔は半ば蕩けており、焦点は合わず、狩人はガスコインの中に狂気の片鱗を感じ取っていた。

 

ガスコインは既に正気を失っており、眼前のまともな狩人を、認識できなくなっているのだ。

 

悪夢の獣を踏み潰し、ガスコインは狩人の下へ足を運ぶ。

 

「狩人、既に奴は獣だ。存分に狩り、弔いたまえよ」

 

狩人はルドウイークの長銃を展開し、撃ち放つ。

 

ガスコインの振り上げた獣狩りの斧が弾かれ、体幹が崩れる。

 

すぐさま好機と見た狩人はガスコインの懐へ飛び込み、回転を伴う内臓攻撃を繰り出した。

 

腹の中で内臓が次々と狩人の腕へ纏わり付き、這い上ってゆく。

 

ガスコインは改造銃を撃ち放って狩人の腕を吹き飛ばし、背後へ大きく飛び退いた。

 

「匂い立つなぁ…」

 

ガスコインの改造銃は獣の血肉を容易く抉る為の機構が備わっており、狩人の肉体を爆ぜさせる事など、造作もない。

 

右腕を吹き飛ばされた狩人は輸血液で欠損部位を復元した後、落葉を構える。

 

「ハッハッハ…」

 

ガスコインは更に高笑いを上げ、輸血液で腹部の傷を癒した後、獣狩りの斧を変形させ、地面に食い込ませ力を溜め始める。

 

次の瞬間、金属音と同時に衝撃が走り、狩人から血が噴き出した。

 

獣狩りの斧により飛ばされた石片が狩人の脇腹を深く抉ったのだ。

 

狩人は膝を突き、脇腹を押さえ悶える。

 

ノコギリ工房の狩道具の一つ、獣狩りの斧。

 

膂力に任せて繰り出される一撃の威力は凄まじいものであり、それはまさしく、獣を狩るに相応しいものだ。

 

ある種の狩人は、処刑の意味で好んで斧を用いたとされており、ガスコインも今や、その狂人に列している事は疑いない。

 

人里の連盟に於いても使い手は多く、その中でも特筆して実力を見せていたのが「黒衣の狩人、ガーランド」と呼ばれる狩人である。

 

彼はまた、ヤハグルの黒衣装束に身を包んで大斧による膂力と大砲の破壊力で残虐な狩りを楽しむ快楽主義者であり、だがその実力は往々にして高く、連盟内では「虐殺王」の異名で恐れられていた記憶がある。

 

困惑する助言者をよそに、狩人はよろよろと立ち上がって輸血液により傷を塞ごうとする。

 

過去に耽るのは意識が薄れている合図であり、それはまた、死闘の合間において御法度の行為である為だ。

 

だがガスコインは狩人の隙を見逃さず、縮地を用いて狩人の眼前まで距離を詰めたかと思うと、獣狩りの斧を横薙ぎし、腹部から内臓と血飛沫を吹き出させた。

 

獣狩りの斧の一撃を真面に食らい、メキメキと鈍い音を立てて砕ける骨、ブチブチと乱雑に引き裂かれる肉。

 

噴き出す狩人の血は、ガスコインの黒い衣装を赤黒く濡らし、血濡れという名の狂気に染め上げる時、それはまた、芳醇な香りを漂わせる。

 

ガスコインは更に傷口へ強引に腕を捩りこみ、強烈な内臓攻撃を繰り出して狩人を壁際まで吹き飛ばした。

 

「堪らぬ血で誘うものだ…えづくじゃあないか…」

 

土埃の中、狩人は朦朧とする意識の中から立ち上がり、輸血液を数本纏めて打ち込む。

 

ガスコインに付けられた傷は見る間に癒されるが、狩人は緊張を解けずにいた。

 

これまでに戦ったどの獣よりも手強い、そう狩人は確信していた。

 

それもその筈、ガスコインはかつて相棒の古狩人ヘンリックと共に。無数の獣や血に狂った狩人を狩って来た歴戦の猛者。

 

それが今や獣の膂力を得ているのだ、技と力を兼ね備えた強者ほど、手強い相手もいないだろう。

 

「狩人よ。ガスコインに対し、長銃は隙が大きく分が悪い」

 

「ここはガスコインの動きに対応できるよう、接近戦に切り替えた方がいいぞ」

 

助言者の言葉に従い、狩人はすぐさま長銃を仕舞い込んで落葉を変形させる。

 

ガスコインもそれに倣うように、獣狩りの斧を短く変形させて迎撃態勢をとる。

 

互いに見つめ合い、しばし緊張の間が訪れる。

 

その時、ガスコインがおもむろに大きく口を開け、喉奥から巨大な血塊を吐き出した。

 

その僅かな隙を見逃さず、狩人は加速を用い、素早い回転刺突攻撃をガスコインの死角に見舞った。

 

急所のみを的確に狙った、鋭い一撃。

 

ガスコインの脇腹より血が噴き出し、内臓が零れる。

 

「ハッ、ハハハッ…」

 

だが既に正気を失い、獣の如き状態にあったガスコインに痛みは大した効果を持たなかった。

 

ガスコインは獣狩りの斧を再び変形させ、リーチの伸びたそれを膂力のままに叩き付ける。

 

済んでの所でガスコインの攻撃を躱した狩人は加速を用いて背後を取り、変形させた落葉による、二刀連続乱れ突きを叩き込んだ。

 

「効いているぞ、狩人よ。そのまま、急いで止めを刺してしまうのだ」

 

助言者の言葉が狩人に届いたその刹那、耳を劈く程の咆哮を響かせて、ガスコインは恐ろしい獣へと変貌した。

 

その衝撃に思わず体勢を崩す狩人。

 

まさに血に酔った狩人の成れ果て、闇に血の躯を晒した異邦人の、おぞましき末路そのものであった。

 

「遅かったか‥‥だがこうなった以上は仕方がない。ここからが本番だ、狩人よ、気を引き締めろ」

 

狩人は勢いよく爪を振り下ろさんとするガスコインの腕目掛け、加速螺旋突きを繰り出し体幹を崩させる。

 

そしてガスコインの胸部目掛け内臓攻撃を見舞い、血に塗れた心臓をずるりと音を立てて引き摺り出した。

 

断末魔を上げて倒れ込むガスコイン。

 

錆びた死臭を放つ鈍朱色の心臓は、狩人の掌の中で未だ力強く脈打ち、だがその鼓動はもはや意味を成すものでは無い。

 

狩人はガスコインの遺志を想起しながら、血塗れの心臓を握り潰した。

 

「ガスコイン・・・・・待て、まだ息があるぞ。とどめの介錯をしてやらねばなるまい」

 

確かにガスコインは心臓に手を当て、だがなお闘争の態勢に移らんとしている。

 

例え獣に身を堕とそうとも、獣狩りの本能は失われてはいないとでも言うのだろうか。

 

高潔で憐れな古狩人ガスコインに、目覚めと弔いの介錯を与えよう。

 

狩人は上空へ飛び上がり落葉を変形、二刀を交差させた後、地面目掛け加速した後、その頸を一発で斬り落とした。

 

ガスコインの右手が心臓の穴から離れ、力無く垂れ下がる。

 

立ち上がりかけていた両足も既に膝を突き、硬直したまま動かない。

 

主を失った頸元からは噴水の如く死血が溢れ出し、狩人を深紅に染め上げてゆく。

 

狩人はガスコインの首を埋めた後、十字を切り、弔いの意を示した。

 

【YOU HUNTED】

 

刹那、血だまりにばしゃりと音を立てて倒れ込むガスコインの遺体。

 

ぽっかりと開いた心臓の洞には、泡立った死血が弱々しくゴボゴボと音を立てていた。

 

「狩人よ、ガスコインの懐に鍵があるはずだ。漁りたまえよ」

 

助言者の言葉に従い、ガスコインの懐を探る狩人。

 

すると、懐の奥から生温い死血を纏う、一本の鍵が狩人の手を摺り抜けて地面に零れ落ちた。

 

【地下墓の鍵】

 

それは地下墓の門を開き、オドン教会へと導く鍵であるらしく、狩人はそれを拾い上げ、戦場を後にしようとする。

 

「よし、これでヤーナムの…」

 

助言者が何かを言いかけた刹那、狩人は階段へ大きく飛び上がった。

 

死に倒れたはずの悪夢の獣の血だまりの中に、おぞましい何かの気配を感じたのだ。

 

『・・・・月が、月の使者が降りてくる・・・・』

 

『不死の赤子に・・・・甘き夢を・・・・・』

 

その声はまた、助言者とも狩人とも異なる、柔らかな女の声。

 

いや、恐らくは人のそれですらないだろう、静かで、深く、冷たく優しいものであった。

 

初めて聞く筈のその声はだが、狩人にとっては酷く懐かしい、何者かの存在を想起させんとしていた。

 

「アレは…」

 

その時であった。

 

墓石の底より、どす黒く淀んだ血が這い上り始め、血煙となって地下墓を覆い隠し始めたのだ。

 

地下墓を包む血煙はやがて一筋の紐となり、ガスコインの死体の傍に腐り落ちていた悪夢の獣の上へ集い始め、徐々に瞳の形を成し始めた。

 

千切れた肉塊が束になり、砕けた骨片が互いに寄り合い、零れ落ちた臓物が蛇の如く空へ這い上がり、おぞましい死血と共に形を成してゆく。

 

『悪夢は過り、血は枯れ、月の主は、赤子を欲する…』

 

甘く昏い呼び声に応えるかのように、瞳を成したどす黒い死血は悪夢の獣の死骸へ、一斉に零れ落ちた。

 

すると、再び赤く輝いた血の霧と腐敗した死の香りが地下墓を覆い尽くす。

 

瑞々しい肉の裂ける、美麗ながらも生々しい音と共に、悪夢の獣の肉体が形を成してゆく。

 

面長い獣の顔は花弁のようにぱっくりと裂け、内側から無数の牙と爪を持った触手が花粉の管のように、たおやかに生え始める。

 

背中からは血塗れの刃が腕のように生え、体を支える触手と共にうねうねと蠢き始める。

 

前脚は軟体生物のようにぬらぬらとした獣の腕が生え、地面を叩き血を纏っている。

 

後脚は海洋生物のようなヒレの形となり、蒼い神秘の粘液を纏っている。

 

尾のような器官は無数の触手で構成されており、その先にはまた、瞳と思しき白黒の球が付いていた。

 

狩人の眼前に蘇った悪夢の獣は、もはやただの獣とは言い難い、まさしく「上位者の眷属」に相応しい、異形の体躯を成していた。

 

「こんな事があり得るのか・・・新たな上位者、いや眷属か・・・・とにかく気を付けろ。尋常では斃せぬぞ」

 

助言者は映像越しにすら伝わる狂気の波に、思わず冷や汗を流す。

 

だがしかし、狩人は助言者の言葉を無視したまま、加速を用いて瞳の生えた尾部の触手を切り刻んだ。

 

悪夢の獣は悶える様子もなく、ゆらりと立ち上がった後、狩人目掛け刃の連撃を放つ。

 

狩人はそれを落葉で弾き、受け流し、斬り落とした。

 

斬り落とされた触手は弾けて血縄となり、再び悪夢の獣へ取り込まれてゆく。

 

千切れた触手の傷口からは、甘く蕩ける香りを放つ、薄桃色の血煙が辺りへ漂い始める。

 

悪夢の獣の抵抗か、あるいは狩人を喰らう甘美な罠か。

 

次の瞬間、悪夢の獣の顔を覆う触手が、口腔の内側へ縮み始め、再び顔が花のように裂け、広がり始めた。

 

百合の花弁を思わせるその形状に、助言者は嫌な予感を覚える。

 

かつて対峙した上位者達の神秘攻撃、その予備動作が走馬灯のように脳内を駆け巡る。

 

「身構えろ、何かしてくるに違いない」

 

助言者は狩人に迎撃の態勢を取るよう指示を与える。

 

狩人は助言者の言葉に従い、ルドウイークの長銃の照準を悪夢の獣の頭に構え、その時を待つ。

 

果たしてこの行動は正しいのか、あるいは死の滑落を誘う崖淵なのか。

 

助言者自身にも初見の獣、いかに歴戦の狩人とて、百中の助言など出来よう筈もない。

 

やがて開かれた顔は完全に閉じ、だが次の瞬間、獣に戻ったその口から閃光と共に、蒼白く歪んだ神秘の光球が放たれた。

 

「やはり来た!狩人、障害物に隠れろ!」

 

上空へ放たれた蒼白い神秘の光球は上昇し切った後、噴水のように広がり、ゆっくりと降下を始める。

 

刹那、重力に惹かれるように落ちていった光は再び束となり、狩人目掛け降り注いだ。

 

障害物を豆腐のように打ち砕いた神秘の光は矢となって再び上空へと打ち上がり、八方へと散開する。

 

それはかつて助言者が死闘を繰り広げた上位者たち「白痴のロマ」や「星の娘、エーブリエタース」の神秘攻撃を思わせるような光であった。

 

助言者は呼吸を整え、冷静かつ的確に避け方を狩人へ伝えてゆく。

 

「良いか狩人、向かってはいけない。流れを作るように、障害物を光に当てていくんだ」

 

すぐさま神秘の光が矢継ぎ早に狩人目掛け降り注ぎ始めた。

 

ルドウイークの長銃を仕舞い、落葉を変形させた狩人。

 

そのまま地面に向いて加速螺旋突きを繰り出し、土埃と共に地面に穴を開け、潜り始める。

 

無数の神秘の光は土埃や墓石の欠片、地面の土塊に阻害され、一つ残らず消え去ってしまう。

 

土煙が収まった頃、狩人は地面から顔を出し、神秘の光がすべて消滅した事を確認すると、再び加速螺旋突きを、今度は悪夢の獣の心臓目掛け繰り出した。

 

ずぶり

 

獣の心臓と臓腑を絡め捕った、あの感覚が腕に伝わってくる。

 

狩人の腕に、無数の腐敗した臓腑が這い上り始める。

 

勝利を確信した狩人はそのまま加速突きを繰り出し、心臓を抉り抜こうと足に力を込める。

 

その瞬間であった。

 

悪夢の獣が狩人の身体をむんずと掴んだかと思うと、自らの臓腑が引き抜けるのも意に介さず、上空へ放り投げたのだ。

 

一瞬の出来事に動揺を隠せない狩人、その刹那、悪夢の獣の顔が再び開き、中央に神秘の光が収束し始める。

 

回避行動を取ろうとするも、悪夢の獣の臓腑が腕にがっちりと絡み付き、身動きが取れない。

 

助言者が叫ぶ間も無く、悪夢の獣から極太の神秘の光、その奔流が狩人目掛け撃ち放たれた。

 

狩人の断末魔は虚空に掻き消え、同時に、周囲の建造物の一部すら削り取られてゆく。

 

やがて光が収束し霧散する頃、地面に黒焦げの肉塊が、べしゃりと落下する。

 

それは四肢を失い、もはや半死半生の、狩人の成れ果てであった。

 

輸血液を打つ事さえ出来ない狩人はただ、芋虫のように弱々しく蠢く事しか出来ない。

 

悪夢の獣は勝ち誇ったように雄叫びを上げ、再生させた触手を、一斉に肉塊へ伸ばし攻撃を繰り出した。

 

瞳の付いた触手は神秘の光のレーザーで、刃の付いた触手は斬撃波を放ちながら、かつて狩人だった肉塊をズタズタに引き裂いてゆく。

 

狩人はそのまま気を失い、気が付いた時には夢の館へ戻っていたのだった。

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