<教室棟>
死亡したかに思えた狩人が目覚めたのは、見知らぬ建物の中であった。
薄暗く、埃を被ったその部屋は、冷気を纏った線香の匂いに似た、不思議な香りを放っている。
左の机には、眼球の詰められた瓶が無数に置かれており、それはまた、ビルゲンワースに存在していたものと同様のそれであった。
詰まる所この部屋は、ビルゲンワースに関連する施設、その一つであるのだろうか?
更なる情報を求めるべく、狩人は眼前の扉を開いた。
「狩人よ、ここは、ビルゲンワースの学徒の学び舎。すなわち教室棟だ」
その言葉を聞いた瞬間、冷たく重い鉛のようなどろりとした液体が、背筋を這い上る感覚に襲われた。
それが上位者の叡智に触れた証、啓蒙の享受である事を知ったのは、未だ先の話である。
眼前の本棚に無造作に置かれた、古びた書籍を手に取った狩人は、何者かの冷たい視線を感じ取った。
目の前には窓の割れた扉があり、その隙間から何か、白い塊のような、何者かの頭と思しきものが揺れている。
白い塊に目を凝らしてみれば、それは生気を感じさせない、青ざめた亡者のような顔であった。
不気味な笑みを浮かべる顔の傍には、黒く細い触角のような何かが蠢いており、それが蜘蛛の脚であると直感するのに、そう時間は掛からなかった。
正体を直感した狩人はすぐさま落葉を抜き放ち、それに気が付いた窓越しの異形は、薄ら笑いながらこちらに語り掛けてきた。
「・・・ウヒッヒッヒッ」
「神秘に見えるは人の幸福」
「だから君は幸せ者だ。私に、感謝したまえよ」
「君のごとき下種者が、本来望んで得られるものではないのだから」
「ウヒッヒッヒッ・・・」
狩人はこの声に聞き覚えがあった。
金域の森に隠された廃墟群にて、あの青緑の石を渡してきた蜘蛛の声。
人を見下したような、あのおぞましき薄ら笑い声、まさに瓜二つであった。
狩人は躊躇う事無く落葉の刃を、その青ざめた亡者顔の寸前まで近づけた。
この様な扉ごときは、何の障害にもなり得ない。
素手の一撃、それ以前の寸止めの衝撃波ですら破壊できる程の、薄い薄い防護膜である。
狩人は確実に刺し貫く心算で刃を近付け、だがしかし、その蜘蛛男は眉一つ動かす事なく、不気味な笑顔を保ったまま、静かに言葉を続けた。
「・・・ウヒッヒッヒッ」
「なんだ、まだ愚図愚図しているかね」
「どうせ無為なのだ。潔く進み、運命に身を任せたまえよ」
「ウヒッ、ウヒッ」
「ウヒッヒッヒッヒッ」
まるで狩人をどこかへ誘導するような、そんな意図を感じさせる言葉を吐きながら、下種な声を以て蜘蛛男は嘲笑する。
狩人はこれ以上の接触は無意味と判断し、先へ進んだ。
どちらにせよ、神秘の邂逅があるのならば、先へ進まぬ道理はないのだから。
そうして狩人は、辺り一面に立ち並ぶ本棚の森を、ただひたすらに探索した。
虱潰しに書物や実験のメモを漁るうち、狩人の脳内にはある謎が生まれていた。
ビルゲンワースの始祖、学長ウィレーム。
彼の喝破した言葉にあった、思考の次元・瞳の意味。
助言者は先程、瞳の意味を思考の視野と呼んでいた。
上位者に至る為には主観と客観、二つの瞳を持つ事が重要であり、それを持たぬ我々の思考は次元が低いのだと。
それに付随して、ビルゲンワースの学徒、筆記者カレルの残した秘文字「カレル文字」とは、人ならぬ声の表音を文字とし、神秘の力を得るそれは、血に依らぬ方法として、学長ウィレームの理想に近いものであったと言う。
すなわち血に依る力とは上位者から遠い存在、獣の根源となるとウィレームは解釈しているのだ。
血に依らぬ神秘の力を得る事がウィレームの理想に最も近いのならば、高次元の思考・思考の視野と言うのはつまり、より多角的な観点から一つの事象を捉える為の知識なのではないだろうか。
思考の瞳が必要であるというのも、今まで知覚していなかった智慧を得る事によって開かれる知見を瞳と捉え、人ならぬ表音もまた、未知なる言語やそれに列する、何かしらの意味を持つ「言霊」であると同時に、人ならぬ領域を知り、識を得る為の手段であると。
すなわち物事を見分け、知り分け、上位者の次元に近付かんとするが故の発言であると解釈するならば、十二分に辻褄も合おうもの。
カレル文字とはすなわち、上位者特有の言語を表音として残したものであり、それを脳に焼き付ける事で直接意味を送り込み、容易に思考の次元を高める事が出来る手段の一つであるとウィレームは解釈したのだろう。
では、なにゆえウィレームはそれを瞳と称したのか。
瞳を閉じれば何も見えなくなるように、瞳のない者には何も見えぬように、この世には、一定の条件を越えねば知覚する事の出来ない概念や領域というものがある。
ヤーナムに例えるならば、見えぬ上位者の姿。
これは、上位者の智慧たる啓蒙を高めれば、その姿を映し出す事が出来る。
それはつまり、未知の存在・上位者に関する啓蒙を得た者は、既知の存在と化した上位者を理解し、その領域に達するという事になる。
それをウィレームは、見えぬ瞳を開いたと定義付け、理解する事を宿すと解釈し、その結果、脳に瞳を宿すという言葉が生まれたのではないだろうか?
狩人は一連の考察を手記に纏め、次なる部屋の扉を開いた。
中央廊下の途中、左の扉を開き、部屋へ足を踏み入れる。
そこは、またもや瞳の保存瓶が連なる実験室のようであり、学徒たちの無知さに嘆きを覚えながら、再び次の部屋の扉を開く。
次に辿り着いたのは、大部屋であった。
中央に教壇と黒板、上段まで続く、弧を描くように並ぶ椅子の列を見た狩人は、この場所を講義室のような部屋であると推察する。
探索するべく足を踏み出した刹那、天井からかつての学徒達の成れ果てと思しき異形が、白い亡者のような顔と半分蕩けた足を引き摺りながら襲い掛かって来た。
落葉を変形させ、二刀袈裟斬りにて異形を葬る。
次々と襲い来る異形を狩るうち、狩人は教壇奥の椅子に、輝く何かが張り付いているのを見つけた。
殲滅を終えた狩人は、椅子に座る干乾びた遺骸へ近づくと、強引に指を破壊し、光るそれを取り上げた。
へばり付いた指の欠片を取り除いてみると、それは鍵であった。
【講義室の鍵】
「狩人、あの蜘蛛男には用心しておけ。手放しに信用できる相手ではない」
不意に助言者が語り掛けてくる。
どうやらあの蜘蛛男について、何か知っているようだ。
講義室を後にし、更なる探索を続ける狩人。
円を描くように椅子の並んだ部屋には、またもや学徒の成れ果てたる異形が無数に蔓延っており、だがそれはよく見れば、小さな悪夢の獣が姿を見真似たものであった。
赤桃色の粘液を纏った異形は狩人の存在に気が付くと、一斉に飛び掛かり始末を試みる。
狩人は静かに落葉を構え、秘儀「古狩人の一閃」を繰り出し獣達を一刀のもとに斬り伏せた。
先へ進み、鍵を用いて講義室の扉を開ける。
学徒の成れ果てを斬り伏せた後、奥の研究室へ向かうと、そこには宝箱が置かれており、中には複数の資料と共に、一つの箱が無造作に置かれていた。
箱を慎重に開けると、そこに入っていたのは、エーブリエタースの先触れ、その媒体となる軟体生物であった。
【エーブリエタースの先触れ】
軟体生物は狩人の懐へ入ると、もとより存在した先客と混じり合い、やがて大きな一匹の精霊へと進化を果たした。
その副産物として、精霊が無数の幼体を吐き出した事に、狩人は未だ気づいていない───。
更に別の研究室に足を踏み入れると、奥の角にまた、一つの宝箱が置いてあるのに気が付いた。
ゆっくりと開けてみると、腑分けされた遺体入りの瓶と共に、赤色の胎児が、剥き出しのまま納められていた。
【レッドゼリー】
助言者曰く、これは神の墓より持ち出された聖体の一つであり、遺跡の各所に死に落ちた、人ならぬなりそこないの赤子であるという。
そしてこの赤子を用い、更なる冒涜的行為、すなわち墓暴きを行うのがかつての医療教会が行ってきた、探究と銘打たれた罪の一つでもあるのだそうだ。
そして狩人は最後に残った、一際豪華な装飾を施されし大扉をゆっくりと押し開けた。
扉の先には謎の暗闇が広がっており、狩人は勢いよく吸い込まれた後、異空間へ飛ばされてしまった。
<悪夢の辺境>
やがて目覚めた狩人は、再び見知らぬ土地へ辿り着いていた。
あちこちに立てられた、人の怨念が詰まったような造形の積み石が、狩人を出迎える。
穴を抜けた先に広がっていたのは、歪な形をした岸壁だった。
足元をタイルの如く埋め尽くし、所々から隆起している六角柱状の岩。
柱状節理と呼称されるそれは、溶岩が急速に冷却された際の収縮作用により、割れて柱状になったものである。
白く濁った空と見知らぬ植物、おぞましい造形の墓、歪んだ道。
明らかに尋常のそれではなく、悪夢の何たるかを強調するが如き光景であった。
その光景を一目見た狩人は、かつて軍に居た頃に訪れた、恐山の事を思い出していた。
恐山とは霊山として有名な山であり、悪夢に通じる異界の側面も持っていたのだろう。
先の、悪夢の僻地とはまた違った印象を受ける。
あちらが狂気を誘う、甘い赤桃色の瘴気に満ちた悪夢であるならば、こちらは、血と死臭を纏った、青みがかった灰色の瘴気に満ちた悪夢である、と言った所であろうか。
崖下に広がる白い霧の中を通眼鏡で覗くと、そこには帆船のマストが覗いており、その下に海がある事が容易に想像できる。
だが、悪夢の海など、大方ろくな物ではないはずだ。
狩人が先へ急ぐ最中、岩陰から一発の銃声が鳴り響いたかと思うと、血に呑まれた狩人が2人飛び出し、襲い掛かって来た。
先に狩人に襲い掛かって来たのは、獣狩りの斧を変形させた狩人であった。
落葉を構え、螺旋刺突を繰り出し心臓を貫き、血に呑まれた狩人の一人を斃す。
これまでに相見えた古狩人と比較すれば、その腕は圧倒的に劣る狩人である。
そしてもう一人は、獣狩りの散弾銃に仕込み杖を携え、襲い来た。
今度はエーブリエタースの先触れを用いて狩道具を叩き落とした後、落葉の二刀上下斬りにて、真二つに断ち斬り斃した。
獣に比べると脆弱な存在ではあるが、血の意志は獣のそれとは比べ物にならない程、上質かつ濃厚な物を溜め込んでいる。
同時に狩人は、仕込み杖を見てかつての連盟員の盟友の一人「調教師フランク」を思い出していた。
彼は古狩人の細工師装束を纏い、仕込み杖と教会の連装銃で狩りをしていた、極めて撓やかな身体と優れた体幹を備える優秀な狩人であった。
思い出に耽る狩人は燐光を放つ、グロテスクな菌類を目印に道を進んでゆき、やがてあの、甘く芳醇な死の香りが悪夢に満ち始めている事に気が付いた。
刹那、周囲から合唱の如く響き渡る、甲高いあの咆哮。
悪夢の獣が、狩人を追ってか知らずか、この世界に足を踏み入れた事は明白であった。
エーブリエタースの触手を用いて段差を超え、未だ見ぬ導きの地を目指し先を急ぐ。
道中、腐敗した血液の如き緑色をした毒沼には青ざめた異形の軟体生物が蠢いており、裏側にはまた、無数の使者たちが張り付いていた。
長銃の仕掛けを回し、連弾発射で軟体生物たちを仕留めてゆく。
悪夢の獣が侵入してきた以上、時間をかけた狩をしている場合ではないのだ。
暫く進んだ先、何やら頭部に大量の瞳を宿した異形が徘徊しているのが見えた。
不気味な鼻歌を歌う異形は狩人の存在を察知すると、その頭部脇から生えた触手を一杯に広げ、狩人に抱き着く勢いで飛び掛かってきた。
闘牛士の如き足捌きで異形の突進を回避し、背後から手刀を捻じ込むと、異形の内臓を全て引き摺り出した。
やがて狩人は、歪な装飾の施されたアーチを潜り、傾いた塔へ入ろうとした。
その瞬間、突如謎の塊が、狩人の眼前に落ちてきた。
六本の指に三対の腕、網目状の楕円形状をした頭を持つ、大型の異形。
上位者の一角、アメンドーズであった。
だが狩人はこのアメンドーズを見て、とある疑問を抱いていた。
象徴的な髭状の触手が無いことに加え、体色が異様なほど白く、よく見れば左腕が一本多かったのだ。
狩人がオドン教会裏で握り潰された時のアメンドーズは体色も黒く、髭状の触手も生えていたし、何より眼前のそれと比べても、三回り以上の巨躯を誇っていたのだ。
そして同時に、このアメンドーズに対してとある記憶が蘇る。
隠し街ヤハグルの祭壇に祀られたアメンドーズの石像が、眼前のそれと酷似した外見を持っていた事に。
そのような事を考えている隙に、アメンドーズはゆっくりと此方へ歩みを進め、瞳の付いたその掌を地面へ思い切り叩き付けてきた。
間一髪で攻撃を避けた狩人は落葉を抜き放ち、脚元目掛け刺突攻撃を繰り返した。
『巨大な獣と対峙した時には、末端をまず狙うべし』
「獣狩指南之書」に記された狩りの指南術の一つであり、それはまた、狩人の膨大な経験則から来る、極めて論理的な戦術であった。
痩せさらばえた脚部に甚大な傷を負い、呻き声とも叫び声とも取れる異音を鳴らしながらアメンドーズは狩人へ再び拳を伸ばし、叩き付ける。
加速を連続で用い、紙一重で攻撃を全て躱す。
一件回避不可能に見える高速技も、大振りな予備動作が伴えば、たちどころに木偶の攻撃と化す。
刹那、アメンド―ズが空中へ飛び上がったかと思うと、その痩せさらばえ、骨張った体躯からは想像も出来ぬ程の重量を感じさせる轟音と共に、狩人の頭上へ落ちてきた。
流石の狩人もこの攻撃は予見していなかったようで、左腕を捥ぎ取られてしまった。
「狩人、こいつはこれまでの獣とは違う。あの悪夢の獣と同じ、上位者の一角だ。舐めて掛かると死ぬぞ」
助言者から啓蒙を授かり、輸血液で腕を復元させた狩人は反撃を開始した。
それに応えるようにアメンドーズも唸りを上げ、おぞましい量の瞳を飛び出させた後、小宇宙より光の束を展開して狩人を切り刻まんとした。
間を置かずに口腔と思しき部位より飛び出す、極太の光線攻撃。
狩人の心臓を貫き、暫し動きを封じ込めた。
更にアメンドーズは大きく吠えた後、掌に神秘の光を収束させ、小宇宙を展開して狩人に叩き付け始めた。
紙一重で躱した後、秘儀「古狩人の一閃」で両足の関節を破壊する。
重く、轟音のような唸り声を上げながら、アメンドーズの頭が地面に倒れ伏した。
その姿は宛ら土下座であり、命乞いにも見えた。
瞳は開いたまま、ぴくりとも動かない。
これを好機と見た狩人はアメンドーズの頭に加速を用いて急接近した後、頭蓋へ手刀による刺突攻撃を繰り出し、脳を捏ね繰り回して組織類を全て掻き出した。
怯むアメンドーズ、追撃する狩人。
助言者も固唾を飲み、死闘の行く末を見守る。
やがて立ち上がったアメンドーズは頭部に神秘の血を収束させ、部位を再生させた後、小刻みに震えながら乳白色の吐瀉物を撒き散らし始めた。
狩人の頭上に降り注いだそれは見る見るうちに装束に染み込んで肌を溶かし、筋肉を通過して骨の奥まで侵食を始めた。
急ぎ加速にて一定の距離を開け、輸血液にて回復を図る。
だがアメンドーズがそれを見逃すはずもなく、大きく飛び上がった後、神秘光線の乱射及び小宇宙展開、叩き付けの連撃、確実に殺す為の攻撃を次々と休みなく繰り出してきた。
流石の回避性能と技量を持つ狩人でさえ、この質量攻撃は避けようがなかった。
もはや立つ事すらままならぬ中、血の池に倒れ込む狩人。
肉体はずたずたに引き裂かれ、意識を保つ事すら危うい状態に陥っている。
「狩人!」
助言者が言葉をかけた刹那、朦朧とした狩人の脳内に一つの言葉が過った。
『「青ざめた血」を求めよ。狩りを全うするために』
その時、狩人の懐より、無数の軟体生物が這い出てきた。
あっという間に体中を覆い尽くしたそれは、やがて致命傷となる心臓付近の傷口を抉じ開けた後、粘ついた粘液を滴らせて侵入していった。
狩人の肉体に潜った軟体生物、エーブリエタースの先触れと呼ばれる神秘の一端。
精霊と呼ばれる軟体生物たちは、上位者の神秘の残滓と考えられており、ゆえにその力の媒介と成り得ると言われている。
今、エーブリエタースの精霊と一つになった狩人は上位者の神秘、その一端を脳の内に宿して蘇った。
神秘の眷属、星の狩人ここに誕生せり。
アメンドーズの前に立っていたのは最早人としての狩人ではなく、"上位者の眷属"神秘の狩人そのものであった。
「狩人、一体君はどうやって?」
「いや、今は聞くまい。アメンドーズを斃し、悪夢より目覚めたまえ。それが、今の君に与えられた使命の一つだ」
助言者の言葉を受け、狩人は駆け出す。
ぬるりと蒼き粘液を纏いながら加速する様は、まさに人間を超越した証であった。
狩人は両の手を広げ、エーブリエタースの先触れの発展技とも思える大いなる秘儀「エーブリエタースの呼び声」を展開した。
それはまた、先触れたる神秘の触手のみならず、かの聖体「エーブリエタース」の触腕そのものを召喚し、小宇宙より降り注ぐ無数の光の矢を撃ち放つ秘儀であった。
飛び出した眼球を次々と光の矢で潰され、悶え苦しむアメンドーズ。
再生もままならぬまま、狩人に蹂躙されてゆく。
遂に危機に陥ったアメンドーズは、おもむろに自らの腕を一対引き千切り、鞭状の武器として振り回し始めた。
引き千切られた腕は掌に小宇宙の光を収束させ、再び狩人を襲う。
だが、既に軟体生物の介入なくして掌から先触れを召喚する事が可能となっていた狩人は、もはやアメンドーズの敵ではなかった。
引き千切られ、棒状の得物と化した腕に飛び乗り、凄まじい速度で駆け上がった後、更に大きく飛び上がった狩人は、背中に取り付いて"獣の爪"を展開し、アメンドーズの首を捥ぎ取った。
刹那、灰色の乳死血が噴水の如く吹き上がり、轟音と共にその巨躯が地面へ倒れ込む。
首を失ったアメンドーズの肉体は四方に爆ぜ、後には血と臓物に塗れた狩人、そして謎の聖杯が残るのみであった。
【YOU HUNTED】
「なるほど、アメンドーズの首か。それはまた、君の新しい狩道具となるだろう」
【大アメンの首】
【病めるローランの聖杯】
助言者は感心したような言葉で勝利を祝福する。
そして狩人は『狩人の確かな徴』を用い、悪夢の辺境を抜け出した────ように思えたのだが。
狩人が目覚めたのは、狩人の夢ではなく、今し方アメンドーズと死闘を繰り広げた広場にある、塔の最上部であった。
「何が起こったと追うのだ、狩人・・・危ない、上だ!」
助言者の言葉と同時に、塔が崩壊を始める。
驚愕の感情を色濃く残した狩人の眼前に現れたのは、ビルゲンワースに現れた悪夢の獣であった。
悪夢の獣は、アメンド―ズの腕を腹から伸ばして狩人を捕えると、そのまま小宇宙を展開して握り潰し、狩人を再びビルゲンワースへと引き戻してしまった。