朝起きて、朝ごはんを食べるまでの話。
僕は鶴姉妹と同棲している。
なぜこうなったのかはさして重要じゃないから、すっ飛ばそう。
とにかく、僕の家には銀髪でおっとり美人の翔鶴と、生意気かわいい系美少女の瑞鶴の姉妹がいて、僕は彼女達と一緒に暮らしている。
ベッドルームには3人が一緒に横になれるだけの大きなベッドがあって、そこで3人川の字になって眠る。
このベッドは3人で暮らす事が決まった時に買ったものだ。
どっちにもえこひいきしないで同じように、同じくらい愛するという約束だ。
だから、彼女達も「どっちが好きなの?」なんて聞かない。
どっちも同じくらい好きなんだから。
だから、一緒に寝る。
そうしたわけだから、朝起きると、両手を枕にされていて両腕がしびれていたり、抱き枕にされていたりする。
気がつくと、翔鶴の大きくて柔らかな胸元が間近にあって、頭を抱き締められていたという事があったり、身体が動かせないなと、思ったら、瑞鶴に抱き締められていた…なんて事もある。
まぁ、さすがに夏場は暑いから、それなりに距離を取ってるが。
家事は日替わりになってるけど、だいたいしっかり者のお姉ちゃんな翔鶴が気がついたらやってる事が多くて、翔鶴が朝ごはんを作ってるうちに、瑞鶴が僕を起こしに来るなんて事が多い。
実は僕は寝起きが良い方だから、ほとんどすぐに目は覚めるんだけど、素知らぬ顔をして寝たふりをしている事が多い。
なかなか、起きない僕を再三起こそうとする瑞鶴が可愛いからだ。
大声を出したり、僕の身体を揺すったりして、起こそうとしても、起きない僕を見かねたのか、最後には瑞鶴は僕の鼻をつまんで、僕の口を己の唇で塞ぐ。
さすがに息ができなくって僕が目を覚ますと、鼻をつまんだ手は離してくれるけど、唇は離れていかない。
そのまま、しばし、お互いの唇の感触を楽しみ、瑞鶴が納得すると、ようやく唇が離れていく。
「おはよう」
そう言うと、瑞鶴は
「おはよう、朝ごはんの準備を翔鶴姉がしてて、そろそろ、できるから、先に顔洗ってきなよ」
と言った。
顔を洗って、キッチンへ行くと、テーブルの片方に二つの席があり、向かいの真ん中に一つ席がある。
その二つある席の一つに瑞鶴がすでに座っていて、翔鶴は鍋を運んできて、テーブルの真ん中に置いた。
「翔鶴」
そう言うと、
「はい?」
僕の方を見てそう答えた翔鶴の唇を塞ぐ。
突然の事に驚いた翔鶴だったが、チラリと瑞鶴の方に目をやる。
目の前で起こった事を見ても慌てるでもなく、平然と御飯をよそおうとしている瑞鶴の姿を見て、翔鶴は察したのか
事態を受け入れる事にしたらしく、手を僕の身体に回した。
それどころか、舌が僕の口の中にまで侵入してきた。
仕方ないなと、それを受け入れ、舌を絡ませる。
しばらくして、翔鶴は納得したのか唇が離れていき、翔鶴は瑞鶴の隣の席に座った。
すると、瑞鶴が
「翔鶴姉、私、そこまでしてない」
と言うと、
「あら、てっきり…」
と翔鶴は顔を赤らめてそう言い。
「じゃあ、後でしてもらうといいわ」
と言い、
「それよりまずは朝ごはんにしましょう」
と言った。
鍋には温かい味噌汁が湯気をあげていた。
豆腐やワカメや麩なんかが浮かんでいるが、一番多いのは葱。
さらには葱がたっぷり盛られた別皿が僕の方の席に置いてある。
まぁ、理由は簡単で、
「味噌汁の具は葱だけでもいい、具をたくさんいれると味が濁るからとかじゃなくて、単に僕が葱を好きだから。」
と言ったくらい、頭がおかしい程に僕は葱が好きだからだ。
というわけで、2人はそれを納得してくれたけれど、葱だけの味噌汁にはちょっと受け入れがたかったのか、いろいろな具が入っている。
特に麩は金沢で買ってきた物だが、色鮮やかで美しく美味しいからか、彼女達は気に入ったのか、必ず入ってる。
まぁ、僕も嫌いじゃないし、葱がたっぷりあれば良いので、文句はない。
他に並んでいるのは静岡で買ってきたわさび漬。
酒粕はまるで有名パティスリーの生クリームのようにクリーミーで、わさびはシャキシャキしていてうまいんだ。
様々な野菜の入ったサラダがあって、メインは鮭の西京焼き。
京都に行った折りに店で食べた西京焼きが、しっかり味付けされているのに上品であまりにうまくて、皆がすっかり気に入ってしまい、それから常備してある物だ。
文句があるとしたら、あまりにうまくて、飯がすすみすぎる事だろう。
かつての大食いで食道楽な先輩を見て育った事もあって、うちの二人もそこそこに量を食べる。
それなのに、わさび漬だの西京焼きだのとただでさえ、飯が進んで困るようなおかずがあっては、飯がどれだけあっても足りないくらいだ。
ガッツリ食べて僕が動けないくらいになっていたのに、同じくらいか、下手したらもっとたくさん食べたはずの2人は「腹八分目と言いますし、これくらいにしましょうか」等と笑いながら言い合ってるのだから、さすが正規空母と恐れ入ったものだ。
とにかく、目の覚めるような美人2人を眺めながらの食事が不味いはずもなく、どんな王族であってもかなわないような食事を僕は楽しんだ。