朝ごはんを食べ終わってのんびりしていると、瑞鶴がコーヒーを淹れて出してくれた。
こうみえて瑞鶴はコーヒーを淹れるのがうまい。
「私、神戸生まれのお洒落な空母だしね、神戸は日本のコーヒー発祥で、私、昔、喫茶店でバイトして淹れ方習ったんだよ。」
というのが本人談。
瑞鶴はいつも、耐熱ガラスのコップにコーヒーを淹れて出してくる。
理由を聞くと、
「私は鮮度のいいコーヒーしか出さないから、その証を見てほしいのよ。」
と、まるで、こだわりのコーヒー店みたいな事を言った。
なるほど、瑞鶴の言う新鮮な鮮度のいいコーヒー豆で淹れたコーヒーとやらは透明度が高くて、茜色に透き通っている。
飲んでみると砂糖なんて入ってない筈なのに、どこか甘さを感じる。
「いつも美味しいコーヒーをありがとう」
そう言うと、瑞鶴は頬杖をついて、にっこり笑い、上目遣いで僕の目を覗き込んできた。
かわいい。
でも、僕は知ってる。
この頬杖ついて上目遣いで僕を見る時の瑞鶴は、何か僕にお願いがあるんだ。
「ねぇ」
「なに?」
「今ね、ゾンビ・リーダー・リターンズ ゾンビが来たりて笛を吹くが絶賛上映中なんだよ、観に行きたいの!」
と言った。
こうみえて、瑞鶴氏はホラー映画が大好きなのである。
「前作の御釜怪綺談で、唯一、成仏出来なかったゾンビ・リーダーが、再び釜底村に現れて、村人達を襲いまくるというお話でね。前作では脇役扱いだったゾンビ・リーダー役のミズ・イオリーノが今度は主演でゾンビの愛と哀しみをね、全身全霊で演じるんだよ。博士への愛しかないゾンビ・リーダーは、愛ゆえに博士を追い求めるんだけど、博士はすでに前作で死んでるからさぁ、再会できないんだよ…」(早口)
好きな事を喋る時って早口になるって本当だったんだ。
すまんが、君がホラー映画が好きなのはよく知ってるが、僕と翔鶴は好きじゃないんだ…
というか、翔鶴はその前作で開始数分に最初のゾンビが出てきた時に怖くて、半失神してたんですが…
それでも、まだ、僕達に続きのゾンビ映画を見せようと…
毎回、思うんだけど、1人で行けと言うと、
「1人でゾンビ映画見てもつまらないもん」
とか言って、僕達を連れて来たがるの止めてもらえます?
と思っていると、家事を済ませた翔鶴がやって来て、瑞鶴の隣の席に座り、
「何の話をしてるんです?」
と聞いてきた。
「あなたのかわいい妹君がゾンビ映画を観に行きたいと仰せなのですが…」
と言うと、翔鶴は目に涙を潤ませながら、首をふるふるした。
まぁ、そうなるな。
「え〜、ゾンビ映画ってさ、例えるなら、ジェットコースターみたいなもんなんだよ。安全な所からスリルを愉しむみたいな…ジェットコースターで揺すぶられた時にキャーキャー叫ぶみたいに、ゾンビ映画も叫んで愉しめば良いんだよ。翔鶴姉だって、ジェットコースター好きでしょ?」
と瑞鶴に熱言されたが、ジェットコースターが好きじゃない僕は賛同できない。だが、翔鶴はそうだったのね!みたいな顔してる…
いやいや、あなた、前作でゾンビ出てきた瞬間に半失神してたじゃない。
だが、なんか瑞鶴のゾンビ映画とジェットコースターの類似性みたいな話を聞かされているうちに、翔鶴の反応は変わってきていて、行ってみてもいいかも?な感じになってなる。
マジかえ、こうなったら、もう反論は出来そうにない。
まぁね、ここん所、忙しくて、二人の相手出来なかったし、仕方ない、お出かけするか。
僕は立ち上がって、
「わかりました。
瑞鶴のリクエストを聞いて、ゾンビ映画見に行きましょう。
ただし、翔鶴がまた開始早々に半失神したりして楽しめない可能性もあるから、映画が終わった後は翔鶴の行きたい所に行きます。
それと、帰ってきてから、お風呂やご飯やらは面倒くさいから、ご飯食べてお風呂入ってから帰ってくるから、その準備をするように。」
と言うと、2人は喜んで席から飛び出して、僕に抱きつくと歓喜のキスの嵐を降らせた。
なんでコーヒーの事を詳しく書いてるのか自分でもわかりません。
あと、ゾンビ・リーダー・リターンズ ゾンビが来たりて笛を吹くなんて映画はありません。
野水伊織さんが出演されたお芝居の御釜怪奇談の二次創作を書いていいと言われたので、架空の続編です。
ミズ・イオリーノって、我ながらうまく外国人ぽい名前にしたなぁと思います。
長くなったので分けました。
「(仮名)鶴姉妹とデートする話」に続きます。