映画を見に行く事が決まってから、二人の準備ができるまでのしばらくの間、僕も準備を済ませて、車の窓ガラスを拭くなどした。
大事な二人を乗せるのだから、万全にしておきたいからね。
汚れて見えなくて事故しましたとか嫌だから。
二人と一緒に暮らすようになって、それまでの軽からボックス車に買い換えた。
理由は、どこかに遠征して、眠くなった時に、軽では二人が横になれないのでかわいそうだし、荷物も入り切らなかったりするからだ。
しばらくして、
「準備できたよ」
という声とともに二人が姿を現した。
翔鶴は白いシャツに赤いワンピース(すまない、女性の服の知識が無いんだ)といかにも、女の子女の子した可愛らしい姿で、瑞鶴はジャンバーにショートパンツと帽子というボーイッシュな出で立ち。
たぶん、二人が並んでたら、姉弟か、年下の彼氏みたいに見られるだろうな…
「よし、じゃあ、行こうか。」
と言うと、瑞鶴が
「待って待って、身だしなみチェック」
と言って、僕の服の襟や袖、靴の踵踏んでないか、スマホや財布などを忘れてないか、チェックし始めた。
お母さんか!
最後に僕の髪を少し撫でると、
「寝癖もないし、万全万全、今日もカッコいいよ。」
と言った。
「あぁ、うん、ありがとう。
瑞鶴も翔鶴も可愛いよ」
と返す。
にっこり笑う二人から荷物を受け取って、トランクに置いてから、車の後部座席のドアを開けて
「お嬢様達、どうぞ、お乗りください。」
と言うと、
「うむ、苦しゅうないぞ」
と笑いながら言う瑞鶴が先に乗り、
「もう、瑞鶴ったら」
と言いながら翔鶴も乗り込んだ。
二人とも後部座席なのは、まぁ、前にどっちが助手席に座るか揉めましてね…
助手席に座った時に、こっそり、僕の手を握ってきたり、膝に手を置かれたりしたのを、後ろの席に座った方が見つけて、文句言ったりしたんですよ。
以降、二人とも後部座席。
まぁ、今はナビとかあるから、そんなに助手席の必要性は低いかな?
「映画も楽しみだけど、ドライブも楽しみだねぇ。
皆でお出かけなんて久しぶりだもん。」
と瑞鶴がシートベルトを付けながら言った。
「そうね。久しぶりだもんね。
今日はたっぷり楽しみましょう」
と翔鶴もシートベルトを付けながら賛同する。
ともあれ、僕はシートベルトを全員が付け終わったのを確認すると、車を走らせ始めた。
すると、ろくすっぽ走らないうちに、瑞鶴が身を乗り出してきて、
「ねぇねぇ、次のコンビニで止まってよ、お菓子買いたい。」
と言った。
さっき、朝ごはん食べたばかりなのに…
まぁ、いいよ、好きにして。
という訳で、見えたコンビニの駐車場に車を停めて、三人とも店に入った。
僕はお腹減ってないし、もう眠くはないけど、ねんのため、コーヒーだけ買う。
二人はやいのやいの言いながら買い物してる。
とりあえず、僕はトイレを済ませて、車に戻ってしばらく待つと、けっこうな荷物を抱えた二人が戻ってきた。
「そんなに食べるの?」
僕がそう言うと、
「パキモンとコラボしててさ、おまけのカードが付いてくるから、全部集めたくなるじゃない…」
と瑞鶴が答えた。
いやまぁ、いいんですけどね…
車を走らせると、さっそく瑞鶴はお菓子の袋を開けて、おまけをチェックし始め、嬉しそうに笑顔を浮かべたり、残念そうに目を覆ったりと、忙しそうだ。
しばらくして、おまけのチェックが終わったのか、お菓子を翔鶴とも分け合いながら、食べ始めた。
「これ、いけるね」とか「そうね、おいしいわね」なんて言いながら、二人ともモリモリ食べてる。
さっき朝ごはんたっぷり食べたばかりなのに、よく入りますね…
僕が呆れた顔してるのに気がついたのか、
「あ、私たちばっかり食べててごめんね、お菓子いる?」
と瑞鶴が聞いてきたけど、
「いや、お腹減ってないからいいよ、いらない」
と答えると、
「そう?じゃあ、食べたくなったら言ってね」
と言って、引き下がった。
そうこうしてるうちに下道を走り終え、高速道路に入る。
オーディオの電源をオンにすると、車内に歌が流れた。
♪強くなる 向かい風受けて翼拡げ 空に願ってた♪
翔鶴が顔を赤らめて、恥ずかしそうに外を向いてる。
しばらくして、歌は流れて二番になる。
♪懐かしい あなたの横顔私ずっと 空に祈ってた♪
今度は瑞鶴が食べるのを止めて、顔を真っ赤にして俯く。
一緒に車で出かける時は最初に毎回流すのだが、未だに二人は慣れないらしい。
その後は適当にランダムで曲を流してるから、二人ともノリノリで聴いてるし、歌ってる。
そうこうしているうちに映画館のある施設に近いインターから高速道路を降りて、施設の駐車場に車を停めて、施設に入る。
まず、映画のチケットを購入すると、瑞鶴は映画のグッズを見始めた。
「あ〜、これいいなぁ。でも、こっちのもいいなぁ」
などと言いながら、グッズを手に取り物色している。
そんな瑞鶴を少し離れた所から眺めていると、僕の左腕にするりと翔鶴の腕が伸びてきて、腕を絡め、翔鶴がにっこりと笑った。
まるで、ごく当たり前のように。
しばらくして、瑞鶴がこっち向きながら、
「これ買おうかなっておもっ…」
という声が途中で途切れる。
「あっ、なに腕組んでるの?
翔鶴姉、ずるい」
という声とともに、瑞鶴は非難の声を上げたが、
翔鶴は平然と、
「暇そうに空いていたから。
瑞鶴も組みたいなら、早く買っていらっしゃい」
と言った。
瑞鶴はプンプンしながら、手早く買い物をすませ、僕の右腕に己の左腕を絡ませた。
やれやれ…
まぁ、いいか。
でも、三人が横一列になってると、通行の邪魔だから、うまく避けないといけないな…
まぁ、まだ上映時間まで時間があるから、しばらく施設の中をブラブラする事にした。
どこ回ろうかね?
そうして、僕たちはしばらくウインドウショッピングを愉しむ事になった。