姫川大輝は逆行する_が、どうにも弟が弟じゃない。 作:ある日の残り香
原作アクア「防御カード『15年の嘘』!これによって真実を隠して心中する!!おら!しね!!」
今作アクア「ノーガード戦法!!!殺しに来い!!!道連れにしてやる!!!!」
第十八話【復讐実行中計画進行中(視点:星野アクア)】
「なんのつもり、あかね。」
「ダメだよ、アクアちゃん。一人で復讐なんて。」
最近、私が外出をするたびにあかねに妨害される。ここまで偶然が続くと、流石に私と同様GPSやらなんやらを使っているに違いないと思い、盗聴器や隠しカメラも含めて捜索してみたが、一切見つからない。
「どうして?どうしていつも先回りできるの?」
「どうしてだと思う?」
あかねが目を閉じ、再び目を開ける。私は、その瞬間に纏う雰囲気が変わったあかねを見て強い嫌悪感を感じた。
「……私の真似してる?」
「正解っ!」
あかねはかつて恋愛リアリティショーでアイを完全にトレースしたように、今度は私をトレースしたようだ。
「私のプロファイリングにかかれば、アクアちゃんがどこにいくのか、いつ動くのか、私を欺こうとする時はどういった方法を取るのか……全部お見通しだから。」
「あかね、あなた本当に生まれる世界を間違えてるよ。」
このあかねの妨害によって私は日々、焦りを募らせていくことになった。早く復讐を果たさなければ、今病院で動けない姫にいが襲撃される可能性は低くない。今度こそ確実に命を奪われる。だからこそ、早くカミキヒカルを殺さねばならないというのに。
「一旦落ち着こうよ。アクアちゃん。焦ってる時は何事も失敗しやすくなるんだから。」
「……。」
姫にいの絶対安静期間終了まで、残り3日。カミキヒカルはまだ動かない。だが、あの男が手を引いたとは思えない。油断なんかできるわけなかった。
「そういえば、ルビーちゃんとは話せた?」
「……わかりきってるでしょ、あかねなら。」
私は結局、ルビーとはまだ仲直りできていない。だが、もはや仲直りをする気などなかった。私は復讐に殉じるつもりだからだ。私のことを嫌いなままでいてくれた方が、予後が良い。
「私は話すべきだと思うけどな、ルビーちゃんと。」
「ルビーはまだカミキヒカルにたどり着けない。だから、たどり着く前にカミキヒカルを殺す。」
「……。」
私の目下の目標は、あかねを欺いてカミキヒカルと接触することだった。それからの作戦も練ってある。私は犠牲になるが、カミキヒカルを消し去れる作戦を。
帰宅せざるを得なくなった私は、事務所であかねを欺く作戦を考えながら、有馬と取り止めのない雑談をしていた。仕事のこと、ルビーのこと、学校のこと。他にも色々なことを。
そんな中で、有馬の出した一枚の写真に私は食いついた。
「この人は?」
「ん、ミキさんね。神木プロダクションってところの代表よ。優しい人。」
「……そうか。」
「ミキさん、アクアに会いたがってたわよ。前回は事情が事情で会えなかったけど。そういえば、姫川は元気?回復してきてる?」
「……姫にいは少しずつ調子が戻ってきたよ。でも、まだしばらくは安静。」
「アクア……?怖い顔してどうしたの……?」
「気のせいだよ。ミキさん__に有馬が世話になったならお礼しに行かないとなって。何を贈ろうか考えていただけ。」
これは、あかねが知らない情報だ。うまくやれば、あかねを出し抜いてカミキヒカルに接触できる。
「ミキさんの連絡先、教えてくれない?お伺いする日を決めなくちゃ。」
「いいわよ、私はミキさんって呼んでるけど、正確にはカミキさん。まあ、アンタから愛称で呼ばれたら喜ぶでしょうけど。」
「なんで?」
「あの人、アクアのファンだって言ってたわ。」
ああ、ムカつくな。
カミキヒカルに接触する前日。私は姫にいの病室を訪れた。
「姫にい、起きてる?」
「ああ。ずっと寝てばかりで体が鈍りそうだ。」
私はお見舞いの品を渡し、ベッド脇の椅子に腰掛ける。
「傷の具合はどう?」
「もうほとんど塞がったな。しばらくリハビリすればすぐにでも役者として復帰できると思う。」
「よかった……」
しばらく雑談が続く。仲睦まじい兄妹の、よくある会話だ。
「それでさ、クイズ番組の司会者の人が私のことをブラコンだってイジって来たの。なんの変哲もないエピソードトークなのに。」
「最近のお前はだいぶブラコン呼ばわりされても文句言えないぞ、アクア。」
「えー?」
気づけば、長く話し込んでしまった。そろそろ退室しないと。
「そうだ、姫にい。写真撮ろうよ。ツーショットの。」
「いいけど、なんで?」
「病院に入院するなんて今後あんまりないだろうしさ、後からこんなこともあったなって見返せるじゃん?」
それは、少しの我儘だった。これから死ぬかもしれない私が、少しでも姫にいの心に残りたいと、私との思い出を姫にいが思い出せる媒体を遺しておきたいという身勝手な我儘だ。
看護師さんからも許可をもらい、写真は撮れることになった。看護師さんは微笑ましそうにスマホを構えてくれる。
「よし、じゃあ寄れ寄れ。」
「ん。」
私は二人のスマホ両方で写真を撮ってくれた看護師さんにお礼を言い、病室を去ろうとした。その時、姫にいが私の手を掴む。
「どうしたの?姫にい。」
「復讐は、お前一人のものじゃない。それだけは忘れないでくれ。」
「……当たり前じゃん、姫にいが回復したら計画をまた進めるよ。」
「……俺は、お前がいなきゃ生きていけない。だから、無茶だけはしないでくれ。」
「……。」
姫にいが私を抱きしめる。それは温かくて、少し切なかった。私の決意が揺らぐのを感じた。
「そうやって甘えるのか。甘えた結果が、姫川の怪我だろ。」
心のヒビの中から、ソレはまた這い出してきた。
わかってる。これ以上はダメだ。
「__姫にい、苦しい。」
「え、あっ!ごめん!」
ガバッと姫にいが私を解放すると同時に私はスルッと病室に入口へ向かう。
「お大事に、姫にい。」
私は、ちゃんと笑えていただろうか。
私はお土産の茶菓子を持って、約束の場所へ向かう。指定されたその場所は海の見える丘がある公園であり、なぜそんな場所を指定されたのか、その理由は推測が容易だった。
「あなたが、カミキヒカルさんですか。」
「会いたかったよ、アクア。」
私は今回、カミキヒカルが選んだこの場所が防犯カメラもなく、人気が少ない場所であるという情報を掴んでいた。故に、彼が私を害そうとした場合、その証拠は自分で確保しておかなければならない。私はコートの内側にレコーダーを仕込んでいた。
本来、殺し合いになった時のためにナイフも持ってきたかったが、ナイフなんて持っていれば警察からこちら側に殺意があったと認定され、ルビーや姫川に迷惑がかかりかねない。アイツから私に対する明確な「殺害の動機」さえあれば話は別だったのだが、そんなものはない。
カミキヒカルの犯罪の証拠を得られれば万々歳。得られなければ、「ある約束」さえ交わして、それを守る保証さえ得られれば及第点。もし全てダメなら、海に突き落として殺してしまおうという計画だ。
殺してしまった場合、私も被害者を装うために海に飛び込んで死亡しなければならないのが玉に瑕だが。
「初めて会うのに下の名前呼び捨てなんですか。」
「うん、だって実の娘を"星野さん"とか呼ぶのは、少し薄情だろう?」
「……母親を殺してるのに、そんなことを気にするんだね。」
「ふふっ、やっぱり気づいていたんだ。賢いね、アクアは。」
「姫にいの……姫川大輝の件はあなたの差し金?」
「僕もニュースには驚いたよ。まさか、とね。」
「__あくまでもシラを切るんだ?」
とはいえ、アイの殺害を仄めかすような発言をした時点で証拠としては十分。プランAの逮捕プランも現実味を帯びてきた。
「そうだ、アクア。見てごらん。」
「……?」
「前のロケ地ほどじゃないけど、ここも海が綺麗なんだ。」
「それが、なに?」
「海は好きかい?」
「あなたと見るのでなければ。」
カミキは柵に手をかけ、海を見下ろす。私もその横に立ち、海を眺めた。
「海はいい。深く落ちれば落ちるほど、陽が届かなくなって、暗くて寒くなっていく。生き物が住めない空間になっていく。そして、まだ知らぬ深海の先はきっと、空っぽだ。僕たちみたいにね。」
「私が空っぽだって?」
「そうだろう。君はアイや僕と同じ。中身がないんだ。嘘を纏って生きている。」
「……。」
「アクア、姫川大輝はやめておくんだ。彼は僕と姫川愛梨の子、君の輝きを喰らって、きっといつか君を死に追いやるか、君を僕と同じ飢えた存在に変えてしまう。」
私は驚いたようにカミキヒカルに目を向けた。カミキヒカルが突如口にした言葉に理解が追いつかなかったのだ。
「やめておくって何?私と姫にいは兄妹だよ?兄妹なんて、やめようと思ってやめられるものじゃないでしょ。」
「そうじゃない、アクア。隠さなくていいよ。君と姫川大輝は恋愛をしている。そうだろう?」
「は?」
この親父は何を言っているんだ。
「君の「嘘」が変わり始めた時のことをよく覚えている。姫川大輝と積極的に交流をするようになってからだった。そうだね、まるでアイのように大きな変化があった。」
「なに?え、なに?」
私は予想外の事態にペースを崩された。私には"前世"から父親がいない。だから父親という存在がよくわからなかった。それでも、これが異常であることはわかる。
__前世?
「シたんだろう、姫川大輝と。」
「アホか!兄妹でそんなことするわけないじゃん!!」
「あれ、おかしいなぁ。あの変化と距離感は性を知った人間特有のものだと思ったんだけど……」
「__あなたは、頭がおかしいよ。」
クソ、何か今思い出せそうだったのに、目の前にいる気狂いのせいで思考がまとまらない。殺すか?
「ところでアクア。僕は父として一つ言わせてもらいたい。」
動揺していた私は、背後から近づくもう一つの影に気づかなかった。その人物によって私は、拘束された。
「ダメじゃないか、女の子が一人で殺人鬼に会いにきちゃ。」
カミキヒカルが、私に近づいてくる。そして、私のコートの内側を探るとレコーダーを見つけて取り出し、海に捨てた。
「うん、準備は万端だったみたいだね。でも残念、僕は一人じゃないんだ。今の君と違って。」
「くっ__」
「ありがとう、ニノ。お陰で傷をつけずに捕らえられたよ。」
ニノ、旧B小町のメンバーだ。まさかカミキヒカルとグルだったとは。
「カミキさん、どうしてこんな子に入れ込むの?ルビーならまだしも……」
「たしかにアクアはアイとは違うね。アイを超える可能性も低い。だから殺す対象にはなり得ない。」
「ぐぅ……っ!!」
「暴れないでよ、疲れるじゃない。」
「アクア。」
カミキヒカルが屈んで私と視線を合わせる。
「カミキヒカル……っ!!ルビーに、いや__私の大切な人たちに、手を出すなっ!!私はどうなってもいい、だから……っ!!」
私は叫ぶ、プランAを取り上げられ、応戦できずにプランCへ移ることもできなくなった今、プランB一本で戦うしかない。私を人柱とすることで、せめて私の大切な人たち。ルビー、あかね、有馬、MEM、姫にい……みんなを守るための敗北宣言。
だが、カミキヒカルはその言葉に対して小さく笑うと、口を開く。
「アクア、僕は君が苦しむ姿が好きだ。君は大切な人を失うたびに、その身に命の重みを背負うことができるからね。」
私の敗北宣言は、カミキヒカルの心には一切届くことはなく。
「僕はこれまで、アイに届き得る輝きを持つ者たちを殺しては、アイの存在を感じていた。そうすることで、アイの存在が重みを増していったんだ。」
「何が言いたい……」
「でも、それには限界があった。」
「限界?」
「そうだ。アイの存在をいくら重くしても、いつかは必ず消えてしまう。僕らの中だけに残っても、僕らの中からもいつか薄れていってしまう。永遠じゃないんだ。」
彼はまるで、理屈を語るように意味のわからないことを羅列した。狂人にしかわからない世界だろうか、その感覚を言語化し続けている。
「だから君のように背負える人間に、背負わせるんだ。そうして、背負った君はその重みで潰れそうになりながらも、強く輝ける。継承していけるんだよ。それに、背負わせる段階で才能ある者たちの命を奪う僕たちは、その際にもアイを感じることができる。二毛作ってわけだ。」
「狂ってる……。」
「君はすでに、アイの重みを背負っている。これから多くの輝きを背負っていけば、君はもっと綺麗に輝く星になる。そしてその星の中に、僕はアイを感じることができるんだ。君という星に、才能ある人間という薪を焚べ続けることでね。」
カミキヒカルは、私が思っていた以上に……狂っていた。
彼は私のポケットの中で通知を鳴らすスマホに気づくと、それを取り出す。そして、その待ち受け画面を見ると不快そうにため息をつく。それから、スマホを海に投げ捨てた。
「__ニノ、車は用意できてるかい?」
「ええ。」
カミキヒカルはジャケットのポケットからガムテープを取り出すと、私の口を塞いだ。
「アクア、君の新居に案内しよう。君はそこで眺め続けるんだ。君の大切な存在たちの未来が枯れていくのを。あるいは、枯れる前に収穫されていくのを。」
私は手足を縛られ、目隠しをされて車の後部座席に投げ込まれた。車が、どこかへ向かって走り出す。
一方その頃。姫川大輝は病院を脱走していた。黒川あかねから、アクアと連絡がつかなくなったと告げられたからである。
「はぁ……くそ、まだ万全じゃねえな。」
二週間近くも療養していたのだ。体力は落ちている。俺は財布と免許証を手に、ある場所へと向かっていた。
その最中、俺に声をかけてくる存在があった。
「……ルビー?」
「姫川大輝、何をしてるの?入院してるはずでしょ?」
そこには、星野ルビーがいた。彼女の表情には、焦りがあった。
「アクアと連絡がつかなくなったらしい。俺の車で探す。」
俺は正直に打ち明けた。
「私も行く。」
「……アクアなら止めるんだろうけどな。ついてこい。」
人手は多いに越したことはない。そう思ってのことだったが……
「アクアがいる場所、アイツらが教えてくれるから。」
ルビーが指差した先には、カラスの群れ。それらが、全て俺たちを見ていた。
「……マジかよ。」
俺は契約していた駐車場に置かれた、俺の愛車のエンジンをかけた。合流した黒川も乗り、三人で__
「お前は__!?」
「神の使いだよ。」
「ええ?」
「姫川大輝、その子のことは気にしなくていい。味方だから。」
「そうか……じゃあ。」
四人全員がシートベルトをつける。
「__掴まってろ、ちと飛ばすぜ。」
舐めるなよ、カミキヒカル。俺は前世よりも安全運転を極めて今ここに立っているんだ。
ブロロロロロロ……
星野アクア
姫川が刺されたことで焦ったあまり作戦失敗。
カミキヒカルの異常性を本編と比べてあまり理解できてないのも弱点として大きい。あと本編よりも弱い上に防御スキル『15年の嘘』を習得してないから自爆特攻できないのもパワーダウン。
誘拐されている。ヒロイン。
もしもあの病室で、姫川にあと30秒でも長く抱きしめられていたら、悪霊が浄化されてこんな無茶はしなかった。
黒川あかね
かなちゃんの恩人に挨拶に行くんだ、ならええか……。
かなちゃんに確認したら、その恩人カミキヒカルやないか。
あかん、アクアちゃん電話に出んわ。
姫川大輝
妹可愛いけど無理しないでほしい。
__アイツ無茶しやがった!!
姫川号、発進!!
星野ルビー
共通の敵を持ったため姫川大輝と初共闘。
アクアを助け出すのは私。
ツクヨミナビ、起動。
ツクヨミ
流石にアクアが弱すぎて困ったのでルビーに手を貸す。
この車に乗ったことを後悔する。
カミキヒカル
姫アクに脳を破壊された結果、原作より頭がおかしくなっている。
アクアは芸能界にいてもこのままだと姫川大輝とくっついて消えそうだから、自分の目の届くところで鑑賞しようと決めた。(狂人)
ニノ
アクアよりルビーを殺したい。ルビーはアイを超えかねないから。
有馬かな
日常ヒロインのため、最終決戦不参加。
本作、ずっとギャグでは?
ラスボスがギャグ堕ちした時点でこの最終章は決定づけられていた。
次回、「ハンドルを右に」