姫川大輝は逆行する_が、どうにも弟が弟じゃない。   作:ある日の残り香

26 / 28
 
タイトルの通り。
大したオチはないです。全てが終わった後なので。

おさらい:最終話の星野アクア♀
・20歳、大学生。
・あかねとは恋人関係で、やることやってる。
・雨宮吾郎と雪宮五里ではなく、星野アクアとして生きている。
・姫川の前世(本編アクアの選択)を知っている。
・姫川に対して独占欲強め、べったり。ブラコン。
・海洋恐怖症。

転移後のタイミング
・葬式直後。
・みんな曇ってる。
・てか、みんなヤバい。

 

 なお、転移先に飛ばされるのはご都合主義の複製コピー(本人は自覚なし)なので、本体は普通に生活してる。
 さらに、本二次創作の冒頭では姫川が自殺を試みるが、これ自体がifであり、原作だと普通に頑張って立ち直ってるので、このエピソードで姫川を救ったとて、姫川逆行がなくなることがない。
 



オマケ⑤【最終話の星野アクア♀が原作葬式直後に転移するやつ】

 

 街の往来で目を覚ます。なんでこんなところにいるのかわからない。お酒でも飲んだだろうか。いや、それはない。私がお酒を飲むのは、家族といる時だけだ。ルビーと大輝が過保護だから。

 ならば夢遊病だろうか。それもないだろう。少なくとも、あかねやルビー、ミヤコさんからそういった話を聞いたことはない。今の私の服も、ごく普通の冬服だ。

 

 とりあえず、事務所に帰ろう。そう思って歩き出そうとした時、私は後ろから声をかけられた。

 

「アクアくん……?」

 

 聞き慣れた恋人の声だ。だが、その声は困惑と期待が入り混じった奇妙な緊張感を持っており、なによりあかねが私を「くん」づけで呼ぶなんてことはあり得ない。あかねはずっと私のことを「ちゃん」づけで呼ぶ。

 

「あかね?」

「……アクアくんじゃ、ない?」

 

 私の目に映ったあかねは、記憶よりも少し幼かった。もしかすると、私より年下なのかもしれないと思えてしまうほどだ。

 彼女の服装がまた奇妙である。喪服だ。誰かの葬儀を終えた後なのだろうか。

 

「……私は正真正銘星野アクアだよ、あかね。本名は星野愛久愛海。20歳。そっちこそ、若返った?それに、喪服って……誰か、亡くなったの?」

「あ、え?人違い……だと思ったんだけど……なんで私のことを……」

「こっちも混乱してる。あかねが私のことをアクアくんなんて呼ぶことはなかったし、なんか若返ってるし……」

 

 お互いに混乱していたが、不意に私の視界にポスターが目に入る。

 

「あのポスターに書かれたイベントの日付……2年前のだ。」

 

 どうやら、僕は過去に来てしまったようだ。まあ、転生があるのだしそういうこともあり得るか。

 

「……なるほど、過去かぁ。過去の自分に合うとまずいよなぁ。今の私って何してたっけ。」

 

 2年前のこの時期。肌寒さからしておそらく冬。大輝のお見舞いに行きつつ、受験をしていた頃かな。

 

「アクアくん……いや、アクアさん?落ち着いて聞いてほしいんだけどね……」

「ん、どうしたのあかね。」

「私たちの知るアクアくんは、死んでる。」

「……もしかして、カミキヒカルに?」

「……うん。」

 

 なるほど、そういうことか。私は大輝の話を思い出した。

 

「つまり、この世界だと私は大輝の弟で、例の映画を撮って逆恨みで殺されちゃったのか。それが男の星野アクア……と。」

「の、飲み込みが早くない?」

「身近なところに類似事例があったからね。大輝っていう。」

「姫川さんが……」

 

 少しずつ状況を飲み込むと同時に、私はある一つの問題に気づいた。その問題に気づいた私は、財布とスマホを確認する。

 

「やっぱり……免許は使えないよね、これ。発行日が未来になってる。それに、硬貨も一部……というより、同一の番号の紙幣が存在することになっちゃうから、下手に紙幣も使えないのか。口座ももちろん存在しないし……携帯も圏外……あれ、そもそも私の戸籍って……」

「……存在しない、ね。」

「どうしよう。」

 

 雨宮吾郎さん、こんな時ってどうすればいいんですか。

 

 

 

「まず戸籍だけど、これについてはなんとかする方法はあるよ。」

「……無戸籍相談窓口、かな。でも、そこからどうするの?戸籍を得るなんて難しくない?」

「カミキヒカルは今、テレビに顔が映ってる。両親がいなくて一人で生きてきたあなたは、テレビに映ったその顔を見て家族かもしれないと思ったことにする。そして、そこで強制認知調停を起こすの。これは死後3年はできるから。幸いなことに、カミキヒカルのDNAサンプルはきっと警察が保管している。DNA鑑定はできるよ。あとはそれを証拠として裁判に勝って、適切な手続きを済ませると……」

「……戸籍は得られる、と。」

「うん、そうだね。」

「正直、あの変態と血縁を証明するというのもあまり気分がいいものじゃないけど、カミキヒカルは姫川愛梨との間に子供があったという文脈が既にあるから、どこかの誰かが同じように子を宿していてもおかしなところはない……か。」

「うん、流石に母親まで明らかにしちゃうと、ルビーちゃんに迷惑がかかるからそこは隠してね。」

 

 意外と、戸籍はなんとかなりそうだ。これなら、働けないとか最悪の場合は生活保護を受けられないなんてことも回避できる。

 まあ、今の私には履歴書に書ける学歴も職歴もないのだが。

 

「非認可施設出身のストリートチルドレンで、水商売して生きてきたことにしておこうかな……抵抗は強いけど。」

「……ちなみに、あなたはそういうのの経験は?」

「あかねとだけだよ。実際に男性のソレをいれたことはない。」

「そ、そうなんだ……」

「なに顔赤くしてんのさ、えっち。」

 

 少しずつ、私の偽の経歴が作られていく。

 

「あー……名前。名前どうしよう。」

「たしかに、愛久愛海を使うわけにはいかないね。偶然被るような名前じゃないし。」

「んー……じゃ、五里(いつり)。なんとなく。」

「神木五里……うん、違和感はあまりない名前だね。」

 

 あとはうまく裁判を進めれば良い。が……

 

「お金、ないんだよね。」

 

 DNA鑑定にもお金はかかる。今の私は無一文だ。これまで芸能活動で稼いだお金は一銭も使えない。全てが水の泡と消えてしまった。

 

「お金なら私が出すよ。」

「え、いいの?返すのに時間がすごくかかると思うよ?」

「返さなくていい。」

 

 あかねの助けもあり、戸籍取得の最後の壁も突破した。

 

「このことは、私とあなた……五里ちゃんとの間だけの秘密。他の人には、絶対に本当のことを話したらダメだよ。みんな、アクアくんを失って心の底から苦しんでるから。最悪の場合、監禁とかされちゃうかも。」

「わかった……でも、あかねは大丈夫だったね。」

「うん、私が好きなのはあなたじゃなくてアクアくんだから。」

「……ちなみに、大輝にも話しちゃダメ?」

「ダメ。あの人、ショックが大きいから……錯乱するかもしれない。」

「そっか。」

 

 

 

 

 

 

 戸籍取得はスムーズに進んだ。DNA鑑定の結果という証拠は強力で、強制認知調停は無事に勝訴。カミキヒカルは私を認知した。死んでるけど。

 そしてその結果を元に戸籍を取得することができた。神木五里として。

 

「あかね、ありがとう。」

「いいんだよ。でも、これからもきっと大変だと思う。何かあったらすぐに助けを呼んでね。」

「うん。」

 

 戸籍を取るまでの間、ロクにアルバイトもできなかった。だが今も小学校も中学校も高校も大学も通った履歴がなく、職歴もないことには変わりない。その経歴からは想像もできない教養と知能が武器となる。

 

「カタギじゃやっていけないか……」

 

 となるとやはり芸能関係か。しかし、役者をやって目立つのは得策じゃない。今の私の姓は神木。星野アクアファンからのバッシングは避けられない。それに、私の顔を見てアクアの面影を見た関係者がどう反応するか。

 ならば裏方だろう。とはいえ、テレビなどの大きな舞台ではなく、ネットコンテンツの……薄給な仕事しかないだろうが。だが、私が得意な仕事はこれしかない。

 

「……。」

 

 そういえば、この世界のアクアがいなくなった後のカントクは……一人で編集作業をしているのだろうか。

 

「心配だな、少し。」

 

 

 

 

 

 

 ネットコンテンツの編集で得た小金を元手にした私は部屋を借りた。これは酷く難航した。こんな不安定な暮らしをしている人間に、部屋を貸そうなんて考える人間はあまりいないのだから。

 

「うわ、シミが残ってる……。」

 

 最終的に、家賃1万6000円という破格の物件を私は借りた。うん、事故物件だ。

 部屋の中央にうっすらと残る人型のシミ。幽霊など信じていなくとも、こんなものがあれば不快になるのは当然。誰も借りないわけだ。

 

「でもまあ、安く住めるし敷金礼金も安かったし……贅沢は言ってられないか。」

 

 部屋には、最低限の家具と中古の安いPCが一台。私の仕事道具だ。部屋の中心には、伸ばした髪を黒く染めた女……私が一人だけ。

 

「はやく稼いで、もっとまともなパソコンに乗り換えないとなぁ。」

 

 私の仕事は好評だった。市場を破壊しない程度の値段で、プロレベルの技術を提供する私は、引く手数多だ。仕事の単価こそ安いが、数があるのでフリーランスとしてやっていけそうだった。

 

 さて、今日も仕事に取り掛かろう。そう思ってパソコンを開くと、メールが一通届いていた。おそらく、仕事の依頼だろう。だが、このメアドは……。

 

「……カントクの鼻は誤魔化せないか。」

 

 

 

 私は今日、面接に来ている。だか生憎と、リクルートスーツなんて買うお金はない。パーカーにジーンズ……いや、むしろ彼に対してはこれこそが正装だろう。

 私がインターホンを鳴らすと、キャラの強いおばさんが出てくる。見慣れた、カントクの母親だ。

 

「五反田監督と約束をしたものです、彼はいらっしゃ__」

「あら、女の子!?泰志あんたこんな若い女の子に……!」

「……面接に来ました。フリーの動画編集者のイツリです。」

 

 少々手間取ったが、なんとか家に上がることができました。

 

「失礼します。」

「言葉遣いは丁寧だが、服装はあり得ないぐらいTPOから逸れてるな……」

「すみません、なにぶん金銭上スーツを買うお金がなくて。」

「いや、いい。そういうズレたところも気に入った。」

「そう、ですか。」

 

 カントクの顔は、私が知るそれよりも少しやつれていた。

 

「……すみません、ちゃんとご飯食べてますか?」

「え?ああ。食べてるよ。」

「そうですか……酷くやつれて見えたので、体調が悪いのかと。」

「心配無用だ。」

 

 つい、心配になって聞いてしまった。私はこの世界のカントクとは親しくないというのに。こりゃ、面接もダメかもな。

 

「それじゃ、一応形式上履歴書見せてくれ。」

「はい。」

 

 今回の仕事は単発ではない。長期契約になる。だからこそ、彼も慎重になっているのだろう。こういう仕事で履歴書を求めるなんて。

 

「……履歴書、驚くほど白いな。」

「育った施設がグレーなところだったので、結果的に書ける経歴がなかったんですよね。」

「……苗字は神木、か。」

「はい、神木五里が本名で、イツリって活動名も本名から取ってます。」

「……親父さんとは、親しかったか?」

「いえ、死んでから初めて知りました。私、戸籍がなかったので、もしかするとって希望に縋って強制認知の調停を起こしたんです。そしたら、実際に親子で……それからは、姓がないと不便なので彼の姓を借りてますが、彼は悪名の方が強いですからね。つけない方が良かったかもしれません。」

「……そうか。」

「私、今は染めてるんですけど、髪の色が彼譲りなので目立つんですよね。っと、これはあんまり面接に関係ないですよね?」

「ああ、すまなかった。」

 

 カントクの部屋に置かれた写真立て。そこには、私によく似た少年が写っていた。きっと、彼こそがこの世界の星野アクアなのだろう。

 

「……それじゃ、実際に作業をやってもらう。」

「任せてくださいよ、これで食ってますからね。」

 

 

 

 結果は合格。カントクはそんな私の姿を、どこか懐かしいものでも見るかのような顔で眺めていた。

 

「雇用契約はこの通りだ。年に一度、更新するかどうかをお互い判断って感じだな。」

「__え、こんな貰っていいんですか?」

「……お前な、あの金額で商売続けてみろ。市場が焦土になるぞ。」

「すみません、義務教育受けてないのでよくわかんなかったです。」

「はあ、義務教育受けてないってのがホントなのか疑わしくなってくるな。むしろ、大卒ぐらいの教養と知性を感じるぞ。」

「褒められてます?」

「まあ、そうだな。」

「やったー?」

 

 彼の中で私とアクアが繋がらないように、少しは馬鹿っぽく……道化を演じる必要もあるかもしれない。そう思ってわざとらしく「やったー?」なんて言ってみた。すごく恥ずかしいので、やったことを後悔している。

 

 

 

「バイトちゃん、ご飯食べてく?」

「いいんですか?」

「いいのよ、ご飯はみんなで食べた方が楽しいでしょ?

 

 というわけでご飯を一緒にいただくことになった。食費がかつかつなので正直ありがたい……のだが。

 

「あの……」

「遠慮せずお食べ。だってあなたガリガリじゃないの!ご飯ちゃんと食べれてる?」

「……ここ最近は、ちゃんともやしの炒め物を食べてます。」

「それじゃ栄養にならないわよ!ほら、もっとお食べ……」

「か、カントクもあまり食べてないじゃないですか。」

「俺は歳だ。」

 

 無限におかわりされるご飯。とても心が温まるのだが、最近の私はまともな食事を取れていなかったこともあり、胃が縮んでいる。正直とても苦しい。

 

「……こうしていると、思い出すわね。あの子のこと。」

「ああ。」

「……星野アクアさんのことですか?部屋に写真がありましたし、親交が深かったとお聞きましたが。」

「そうだ。早熟はよく、俺の作業を手伝ってくれていた。」

「役者さんなのに、ですか?」

「ああ……と、この辺は裏の話だ。お前が血縁上はあいつの腹違いの姉だろうと、話すことじゃなかったな。」

「いえ、こちらこそすみません。それにしても姉……ですか。当然のことですけど、あまり実感はないですね。」

 

 自分が自分の姉になったということに、私はなかなか実感が持てなかった。

 

「まあ、今更親族ヅラするつもりもないですし……私は結構カミキヒカルに容姿が似ている方なので星野家には関わらないようにしたいですね。この姓を名乗っている以上、恨まれても仕方ないですし。」

「……カミキヒカルの罪はあいつだけの罪だ。子供に罪はない。ルビーも、姫川も……お前も、関係ない。」

「そう言われると……少しだけ、救われます。」

 

 カントクはやっぱり優しいんだよな。不器用な父親っぽくて。

 

 この夕食は、私のお腹だけじゃなくて心も満たしてくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

「邪魔するわ。」

「えっ、わっ!?」

 

 カントクの元で仕事を始めてからしばらくして、突然の来客があった。それは、有馬だった。彼女は私に顔を近づけて、まじまじと見つめた。

 

「ふーん、アンタが……」

「ち、近い……」

 

 私がちらちらとカントクの方へと助けを求めると、カントクは苦笑する。

 

「悪いな、イツ。新しいバイトの話を聞くや否やこいつが会いたがってな。ほら、お前の前任のことで。」

「……そういえば、有馬さんは同じ事務所のご友人でしたっけ?」

「友人……そうね、結果的に見れば友人関係よね。」

 

 んー、これは地雷を踏んでしまったか。でも友人以外なんだというのだろう、あ、ライバルか。

 

「……あんたの前任者、星野アクアは私の恩人で、憧れだった。そして同時に、好きな人でもあったの。って、生前はこんな簡単なことを伝えられなかったから、あんな末路になったのかもね。」

「……。」

 

 お、重い!!なに、この湿度?!

 

「おい有馬、イツが固まってんぞ。」

「あ、いえ!お気になさらず!!」

 

 この世界の私は一体どんな神経してたらこんな爆弾を放置してカミキヒカルと一緒に殺される道なんて選ぶんだとドン引きした。

 

「そ、それで私に会いに来た詳しい理由は……?」

「……あーくんの後任がどんな人間なのか気になったのよ。この変人な監督が認めるような人間が、アクアの後任として雇うような人間がどんな人間なのかって。」

「あーくん……星野アクアさんのことですか?あだ名で呼ぶなんて、相当仲が良かったんですね。」

「……。そうかもね。」

 

 あれー?違うのー???わかんないよー!!!

 

「イツ。色々その辺複雑だから触れない方が得策だぞ。」

「警告が遅すぎます。」

「まあいいわ。今回は挨拶しに来ただけだし。」

 

 そう言って、有馬は去っていった。この世界の私のことを考えると、かなり胃が痛くなった。私が男だったら、周囲が大変なことになってたんだなぁ……本当に。

 いや、私も大輝がそばにいなかったら勘違いを量産していたのかもと考えると少し危なかったかも。

 

 ……大輝、会いたいなぁ。

 

 でも、今の私は大輝にとっては、見知らぬ妹でしかないんだよね。

 

「……。」

「どうした、イツ。遠い目して。」

「ううん、別に何もないですよ。ただ、少し疲れただけです。」

 

 私は伸びをすると、作業に戻った。

 

 

 

 

 

 

 お金に余裕ができた私は、断られながらもあかねへの返済を始め、残ったお金で「星野アクア」出演作品と、ついでに「姫川大輝」の出演作品を見始めた。

 

「……私より、演技はあまり得意じゃなさそうだな。」

 

 星野アクアの第一印象は、そんなものだった。感情演技だけじゃない。他の演技も「用意してきた演技」だ。役を羽織り、演じるということがあまりできていない。

 だが、同位体である以上は同じところもある。演出を齧っていたがための環境を生かした魅せ方ができている。特に、今日あまのストーカー役なんかは私より上手い。

 

「……これでファンに堕ちた女、数人はいるんだろうな。」

 

 星野アクアへの偏見が深まった。

 

 

 

 次に姫川の出演作品を見始めたが、一本目でギブアップした。

 

「……無理。」

 

 美人な女優さんと演技とはいえイチャラブしている兄を見て、「複雑」以外の感情を持つ妹が果たしているだろうか。はっきり言って、演技が上手いせいで余計に見ていられなかった。

 

「ぅ……ぷ……。」

 

 いや、流石に吐くほどショック受けるのは私くらいかもしれないけど。はぁ、気持ち悪いブラコンに育ってしまったなぁ私。

 そういえば、元の世界だと大輝は私に配慮して恋愛ものもあまり出なくなったんだよなぁ。テレビ局さんも私という厄介なブラコンがいることを知った上で、大輝の配役を考えていたフシはあるし。

 

 私は、ずっと守られてばっかりだったなぁ。大輝に。

 

 

 

 

 

 

「お金も溜まってきたし……そろそろ、髪の毛染め直さないとなぁ。」

 

 私の髪の毛は少しずつ逆プリン化し始めていた。上の方は綺麗な金髪で、肩より下は全てを塗りつぶしたような重い黒髪。それが大体腰のあたりまでという様相だ。前髪は自分でなんとか切り揃えているが、それも限界がある。

 

「こりゃ散髪代も染髪代も馬鹿にならないなぁ……」

 

 さて、美容院に行こうかと家を出ようとすると、あかねが玄関前に立っていた。

 

「あれ、あかね?」

「五里ちゃん、今日はオフだよね?」

「ああ、うん。でも髪の毛そろそろまた黒く染めないとって……」

「なんで?」

「え?」

「金髪の方が五里ちゃんは綺麗だよ。」

「えっ……」

 

 ダメだ、あかねからそう言われてしまうと私は弱い。たとえ同位体だろうと、あかねという存在からそう言われてしまうと、私は……

 

「じゃ、じゃあ染めない……。」

「髪も短くしたら可愛いんじゃないかな〜?」

「で、でもそれだと……」

「大丈夫だよ、大丈夫。」

 

 それは、ダメだ。星野アクアに近くなってしまう。そうなれば、多くの人にいらぬ心傷を与えてしまう。

 

「……ダメだよ、あかね。それだと、私を見て星野アクアを思い出して苦しむ人が生まれてしまう。」

「だめかぁ。」

 

 あかねが時折見せる、星野アクアへの執着。もしも私がいなかったら、その執着はどこへ向かったのだろうかと思うと、少し怖くなる。

 

「さ、行こう。五里ちゃん。」

「行くって、どこに?」

「ふふっ……」

 

 まあ、同位体である星野アクアのやらかしに対しての尻拭いは、同じく同位体の私がすべきことなのだろう。

 

 一つ目の行き先は美容院だった。

 

「私が予約しておいたよ。」

「えっ」

「その髪の毛じゃ、生活しづらいでしょ?少し整えよう?」

「……ショートにはしないからね。」

 

 結局バッサリと切った。とはいえ、星野アクアを彷彿とさせるほどではない適度なバランスである。

 

「どうかな?」

「……可愛いよ。アクアくんとの間に娘が生まれてたら、こんなふうに育ったのかもなぁ。」

 

 あかねの視点はちょっとよくわからないことがある。あと、今は私の方が年上だよ、あかね。

 

 それから向かったのは、水族館だった。水族、館。

 

「ごめん、あかね。ちょっと……私は、無理かも。」

「大丈夫?」

「うん、ちょっと……ね。いやぁ、海洋恐怖症なのはわかってたけど、水族館もダメだったとは……。」

 

 脳内には、大輝の乗った車が海に落ち、大輝が沈んでいくイメージが再生される。

 

「……ちょっと、海とかは嫌なことを思い出しちゃって。」

「そっか……。」

 

 私は、あかねには話してしまうことにした。私のトラウマの原因ともなった、カミキヒカルとの最終決戦を。

 

「……そっちは、随分とこっちとは状況が違ったんだね。」

「うん、大体は大輝とあかねのおかげ。」

「アクアくんも、私たちのこと頼ってくれたら良かったのになぁ。」

 

 あかねが、暗い顔をして俯いてしまった。

 

「……。」

「ほぇ?」

 

 私は無意識のうちに無言であかねのことを抱きしめていた。あかねは素っ頓狂な声を上げている。

 

「遺される辛さは、私も少しだけわかるよ。私も大輝が戻って来なかったら、どうなってたことか。」

「……不思議、アクアくんに抱きしめられた時と同じだ……安心する。」

 

 あかねも私を抱きしめ返す。この世界でも、アクアはあかねをあの歩道橋で救ったのだろう。こんなふうに、抱きしめて。

 

「女の子に餌だけ与えていなくなる男って、ひどく残酷だよね。」

「うん……。本当に……。」

 

 このあかねは私の恋人のあかねとは違う。だけど、放っておくことはできない。

 

「じゃあ、次の場所に行こうか!五里ちゃん!」

 

 結局、その日は日が暮れるまであかねに連れまわされた。

 

 

 

 

 

 

「B小町の復帰ライブ……。」

 

 私は揺れていた。可愛い妹がアイドルとして活躍する舞台。それを応援しに行かないのは、道理に反している。

 だが、私は星野家には関わってはいけない。そうだ、ライブに行ってもしもルビーが私を見た時に、アクアを見出したらどうする。せっかく復帰したのに、古傷を抉ることになってしまったら取り返しがつかない。

 

「ネット配信のチケットだけ買っておこう……。」

 

 ドルヲタとして、悲しい選択をせざるを得なくなったことに、ひどく落胆した。

 

「それにしても、みんな少しずつ立ち直り始めているんだよな……。」

 

 そこで私は思い出した。

 

「……大輝は?」

 

 

 

 というわけで、あかねに様子を見てきてもらった。

 

「うん、一時は危ない状態だったけど……ルビーちゃんのことを思い出して立ち直った……のかな。少しだけ、生きる気力を取り戻したみたい。」

「大輝……。」

 

 私が知ってる限りだと、大輝は4年後くらいに自殺をする。それまでに心の傷を癒すにはどうするべきか。

 

「ねえ、やっぱり大輝には……」

「ダメだよ、アク……五里ちゃん。」

「そっか……。」

「でも、五里ちゃんとして関わる分にはいいんじゃないかな?」

「え?」

「1から信頼関係を築いていけばいいんだよ。姫川さんに、死ねない理由を増やしてあげるの。」

「……できるのかな、私に。」

 

 いや、やるしかない。大輝は私を救ってくれた。今度は私が救う番だ。

 

 

 

 

 

「というわけで初めまして。五里です。血縁上はあなたの妹にあたります。」

「……姫川大輝だ。」

 

 私は後日、大輝の自宅を訪れた。玄関で挨拶した時、彼はまるで幽霊でも見たかのように私を見ていた。アクアと重ねたのか、カミキヒカルと重ねたのか。

 

「挨拶が遅くなってごめんなさい。なにぶん、戸籍がない期間が長くて、路上生活じゃない普通の生活に適応するのに時間がかかって……」

「路上生活……」

「あ、今はちゃんと屋根のある部屋に住んでますよ!」

 

 目の前の大輝は、ひどく弱っていた。頑張って立っている……そんな表現でしか表せないレベルで弱々しく、痛々しかった。

 

「ごめんな……。」

「はい?」

「俺の親父のせいで、お前はこれまで20年間戸籍もなく……苦しい生活をしてきたんだよな……」

 

 あ、重症だ。全部の不幸を自分のせいだと思い込んでいる。

 

「カミキヒカルは私の父親でもありますよ。た……姫川さんが謝ることじゃないと思います。」

「でも……」

「それに、私はあなたたちに救われたんです。父も母もきょうだいもいないと思っていた私に、血の繋がった肉親がいたんですから。」

 

 私は、優しく笑って見せた。

 

「……。」

「嫌でした、か?」

「そんなわけ、ない……!!」

 

 大輝が私を抱きしめる。

 

「生きででくれて、あ゛りがどう……っ!!」

「……こちらこそ、ありがとうございます。__お兄さん。」

 

 私も優しく抱きしめ返した。思い出すのは、宮崎旅行。アクアセラピーだ。あの時は確か、結果的に私がセラピーを受ける形になってしまったんだよなぁ。

 

「お兄さんも辛かったよね……大切な弟とようやく出会って、心を通じ合わせたのに……奪われて……」

「うん……うん……」

「私は彼の代わりにはなれないけど、ずっとそばにいるからね。絶対に、置いて行ったりしないから。」

 

 流石に今の年齢の私が「姫にい」なんて呼ぶわけには行かない。かといって、大輝というのはインパクトが少ない。だからこそ、選んだワードは「お兄さん」だった。彼には、これが効く。

 

 そんなふうに抱き合ったまま、10分が経った。

 

 ちょっと、恥ずかしくなってきた。

 

「えっと、お兄さん……大輝、あの。ちょっと恥ずかしくなって……きて……」

「……。」

 

 大輝は寝ていた。心労が溜まっていたのだろう。

 

「これは、動けないかな……。」

 

 彼が起きるまで、私は動けなかった。横目に見た彼の寝顔はとても愛おしかった。

 

 

 

「んぁ……?」

「おはようございます、お兄さん。」

「……わりぃ、初対面なのに。抱きついて眠っちまうなんて。」

「いいんですよ、私も嬉しかったですし。」

 

 結局大輝が目を覚ましたのは3時間後だった。

 

「それにしても、なんてこんな急に……いや、来てくれたんだ?こういうのって一度タイミングを逃したら、会いに来づらかっただろうに。」

「黒川あかねさんとは知り合いなんですけど、彼女からあなたが元気がないと聞いて。血縁上の妹がいることを知れば、少しでも元気になるかなぁって……まあ、ルビーさんもいるのであまり関係はなかったかもしれませんけど。」

「……そうか、心配かけたな。」

 

 私は立ち上がると、持ってきたものを取り出す。エプロンと、食材だ。ぽかんとしている大輝を脇目に私は髪を縛り、エプロンをつけた。

 

「どうせ、ちゃんとした食事を食べられてないでしょう。たまには人の作った料理を食べてください。」

「いや、それは申し訳__」

「いいから。」

 

 彼の部屋の台所を借りて料理を始める。なんか、通い妻みたいだなと思って、一人で笑う。

 

「辛い時は、人とご飯を食べるといいって職場のおばちゃんが教えてくれたんです。だから、今日は一緒にご飯を食べましょう。」

「……ありがとう。えっと五里……ちゃん?」

「五里でも、イツでもいいですよ。」

「……じゃあ、イツ。ありがとうな。」

 

 これで掴みとしては完璧だろう。あとはこういう関係を継続することで、大輝の生きる理由を増やしていこう。

 

 ……大輝に恋人ができたら、私はどうなるんだろうなんて考えは捨てた。考えたくもない。

 

 

 

「「いただきます。」」

 

 まあ、料理の出来はまずまずといったところだ。でも、やっぱり大輝と一緒に食べるご飯は美味しい。

 

「どう?」

「……美味い、美味しいよ。」

「ふふ、よかった。」

 

 大輝は泣きながら食べていた。ゴミ箱にあったのは冷凍食品の袋ばかりだったし、人の手作り料理なんて食べるのは久しぶりだろう。

 そこからは、取り止めのない雑談が続いた。

 

 久しぶりに摂取した大輝成分に、緊張しっぱなしだった私の心も癒されていた。

 

「また来るね、大輝。」

「ありがとう、イツ。」

 

 なんか初々しいな。変な扉を開きそうだ。

 

 

 

 

 

 私はB小町のライブを、スマホの小さな画面で見ながら応援していた。画面の中ではルビーとMEMちょと新顔たちが踊っている。やはり、有馬はもうアイドルを引退して、女優業に専念しているようだ。

 

「はぁ……ルビーは可愛いなぁ。流石はアイの遺伝子を継いでるだけあるね。輝いている。」

 

 でも、その姿が少しだけ痛々しく思えた。理由はわからなかった。あれだけ"本物の笑顔"を見せているというのに、そう感じたのは。

 

 

 

 

 

 

「星野アクアさんの死から一年、芸能界はどうあるべきか。」

 

 ふと目に入ったネットニュースの記事。内容は無難な啓発系だ。ふと、私はそのコメントを読み始めた。ほとんどが、星野アクアを偲ぶ声ばかりだ。中には、ガチ恋勢と思しき書き込みもある。

 

「……。」

 

 ただ中には、カミキヒカルを攻撃するものと、それが行きすぎてついには子供であるルビーや大輝を攻撃する者までいた。

 

「何も知らない部外者が……好き勝手言わないでよ。」

 

 気分が悪くなった私は、その記事を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 ある日の仕事中、カントクから声をかけられる。

 

「なあ、イツ。お前演技できるか?」

「え?」

「今度撮る映画、キャストが一人諸事情あって抜けちまってな……」

「なんで私なんですか。」

「勘だ。」

「勘って……。」

 

 本音を言えば、私も演技はしたかった。でも、芸能界に入ればきっと、私は話題になってしまう。演技の上手い下手ではなく、その顔やクセが。

 

「多分、演技はできます。でも、怖いです。」

「怖い?」

「ネットの悪意に晒されるのが、怖いです。」

「あー……。」

 

 私が叩かれるだけならそれでいい。だが、きっとカミキヒカルと星野アクアのことが蒸し返されて、大輝やルビーにも迷惑がかかる。だから、私は怖かったのだ。

 

「……とりあえず、今週いっぱいまでに最終的な答えを聞かせてくれ。」

「……わかりました。」

 

 怖い、のは事実だ。でも、演技をできるかもしれないということに胸が高鳴っているのも事実だった。

 

 

 

「で、相談相手が俺たちか。」

「あ……カントクから二人と相談する許可は取ってます。」

「私はいいと思うよ。五里ちゃんは役者の才能あると思うし、このまま裏方として埋もれちゃうのも勿体無いかなぁって。」

「俺は反対だな。人の悪意ってのは、顔を隠すだけで恐ろしいものになる。そんな世界に、イツを晒すべきじゃないと思う。最悪の場合、アクアみたいに……。」

「……。」

 

 というわけで、二人に相談しにきたのだが、空気が一瞬でお通夜になってしまった。

 

「じゃ、じゃあやめとこう……かな?」

「五里ちゃん、でもやりたいんでしょ?演技。」

「や、やりたいけどさ……怖いのも事実だし……それに……」

「それに?」

「お兄さんに……大輝に、嫌な思いはしてほしくない。」

 

 正直、私の結論はここに辿り着くのだ。

 

「カントクには、断っとく。」

「ごめんな……イツ。」

「……。まあ、仕方ないよね。」

 

 あかねはあまり納得していなかった。

 

 

 

 帰り道、あかねが口を開く。

 

「逃げ続けることだけじゃ、解決にはならないよ。」

「……。」

「姫川さんを苦しめたくないからって理由は、姫川さんが乗り越えることを邪魔してるんじゃないかな?」

「そう、かもしれないけど……私は解決よりも、安定が欲しいかな。」

 

 そう、解決よりも安定が私は望ましい。解決するために傷つくのも、何かを失うのも御免だから。

 

 その日はそうして、あかねとも別れた。

 

 

 

 

 

 

 その日は、例の映画の現場を見学することになっていた。件の役は、なんとかギリギリではあるものの代役が見つかったらしく、今回で撮影は最後だ。

 キャストの中には、知ってる名前があった。有馬とメルトだ。この世界のメルトも、東ブレを機に覚醒している。あれからさらに腕を磨いたのだろう、お手並み拝見だ。

 

「カントク。この鳴嶋メルトって人、鏑木組の子ですよね。よく借りれましたね。」

「逆だ。鏑木から頼まれてな。まあ、だが演技力は心配していない。『15年の嘘』でも医者役を無事にやり遂げてくれたからな。」

「……。」

「そういや、イツは観てないんだったな。やっぱり、キツイものあるか?」

「ええ。興味半分、怖さ半分……ですかね。」

 

 メルトって『15年の嘘』で雨宮吾郎の役をやってたんだ……ルビーからの風当たり強かっただろうな。やばい、すごく気になる。

 

「本日もよろしくお願いします!」

 

 元気の良い挨拶が現場に響いた。メルトだ。裏方の全員にも挨拶して回る勢いで現場をうろうろしている。本当にまっすぐいい子に育ったなぁ。

 しばらく回ったのち、監督の元へやってきた。

 

「監督、今日もよろしくお願いします!不肖鳴嶋メルト、精一杯頑張ります!」

「おーおー元気があって何よりだ。」

「えっと、隣の……方は?」

 

 メルトは、私の方を見てまるで死人でも見たかのように目をぱちくりさせていた。

 

「初めまして、イツリと申します。カントクの元で主に動画編集などをお手伝いさせていただいております。」

「い、いや、こちらこそ……よ、よろしくお願いします。」

 

 きっと、星野アクアのことを思い出しているのだろう。なんか、こうしてみるとメルトって少し可愛いな。同世代だったから気づかなかったけど、後輩力が高いかも。

 

 それから少しして、有馬も現場入りする。有馬も挨拶回りをして、本番に備えた。

 

 映画の内容は、一言で言えば「相続トラブル」だ。主人公の父が亡くなり、その遺産の相続を行うことになるが、祖父に隠し子がいることが判明する。果たして、遺産は誰の手に……という内容だ。とてもドロドロしている。

 主演は有馬、隠し子役はメルトだ。私に打診されていたのは隠し子の妻役である。あまり出番がある方ではないが、要所要所で出番がある脇役だ。

 

 役者たちの演技は大したものだ。全員が、遺産相続の場特有の緊張感と、張り詰めた空気感を作り上げている。セリフ一つ一つにうまく芝居が落とし込まれ、観るものを惹きつけていく。現場で観ているだけでこの没入感だ、これを編集して実際に映画にしたら、どれほどの完成度になるのだろうか。

 口惜しい。そんな感情が湧き出した。こんな空間で演技ができたら、きっと楽しかっただろうと。

 だが、選んだのは私だ。大輝を苦しめないためにも……私は、安定を選ぶ。裏方でいいのだ、自分は。

 そうだ、私はそれを選んだ。なのに、どうしてか悔しい。

 

 

 

 撮影が終わると、カントクが私に感想を聞いてきた。私はそういう悔しさを隠し、思った感想を述べた。何もわからない人間にはお世辞にしか聞こえないだろうが、カントクはそれが私の本心からの感想であるとわかったらしい。

 

「で、どうだ。出てみたいって思ったか?」

「……ノーコメントで。」

 

 やはり、それが狙いか。カントクは僕が演技に興味があることに気づいている。僕にとって、復讐とは無関係の演技は楽しくて好きなことを。だからこそ、僕の恐怖心を演技への興味が勝るように、こんな特等席で見せつけたのだ。

 

「私みたいな素人が出たら、この調和がとれた空間が壊れますよ。」

「そうならないと思うがな、俺は。」

「……勘ですか?」

「そう、勘だ。」

「いい年して、理屈じゃなくて感情で判断するんですね。」

「そういう人間の方が、人生うまくいくもんさ。」

 

 カントクの勘は割と信用できる。なんせ、元の世界において私とアイの関係に気づいた数少ない大人だからだ。

 

「このあとスタッフたちで打ち上げに行くけど、お前も来るか?」

「……あんまりお酒は飲まないですし、お酌もあんま上手くないですよ。」

「酌なんてしなくていい、時代的にあんましそういうのは褒められたもんじゃねえからな。」

「そうですか。」

「……俺もあと何年この業界にいられるかわからねえ。俺はお前に早熟と……星野アクアと同じ才能を見てる。お前が俺と同じ監督になるにしろ、役者になるにしろ……スタッフの連中と縁を作るのは悪いことじゃねえと思うぜ。」

「あと50年は元気に監督やっててください。」

 

 そのなんとなしに出た私の発言に、カントクは目を丸くすると、一拍置いて爆笑した。

 

「50年、50年かぁ!そん頃には俺もお爺ちゃんだ!」

「孫どころか息子も娘もいないじゃないですか。ただのこどおじですよ。」

「もう結婚なんてできる年じゃねえ。お前が俺の弟子になってくれりゃあ、そのさらに弟子を孫って呼べるんだろうが……どうだ?」

「私は、カントクの弟子になれるほど優れた才能は持ってません。」

「謙遜しやがって。」

「事実です。」

 

 現場を撤収し、私たちは打ち上げの会場へと移動を始めた。

 

 

 

「「「かんぱーい!!」」」

 

 未成年のメルトと、まだお酒に慣れていない有馬と、お酒が好きではない私を含むスタッフはソフトドリンクを、カントクたちはお酒を掲げ乾杯をした。

 

「お疲れ様でした、有馬さん。鳴嶋さん。お二人とも、凄い演技でした。」

「あら、ありがとうね。」

「そう言ってもらえると嬉しいな。」

 

 途中で席替えはあるものの、最初の席には私と有馬とメルトが座っていた。年が近い分、話しやすいメンバーを集めてくれたのだろう。

 

「にしてもメルト、あんたいい身分ね。両手に花じゃない。」

「かなちゃんはどっちかというと先生とか師匠だから、花ってよりかは御神木だな。」

「は?」

「ひっ、ごめんなさい……」

「お二人って仲が良いんですね。」

「まあ、そこそこ共演もしているし……お互い、あーくんとは親しかったからね。」

「そういえば、イツリさんってアクアと似てない?かなちゃん。」

 

 あ。

 

「……そういえばそうよ、最初会った時は髪の毛黒く染めてたから気づかなかったけど、あーくんにそっくり!!」

「ははは……他人の空似ですよ。」

「今専門家に検証してもらうわ、ちょっとツラ貸しなさい。」

「え?わっ、え?ぴーす?」

 

 そういうと、有馬は私を写真で撮ると誰かに送信した。

 

 ……誰かに送信した?

 

「え、待ってください!だ、誰に送ったんですか??」

「ルビーと姫川よ。」

 

 終わった。

 

「る、ルビーさんってB小町の……?」

「そうそう、俺の弟子だ。」

「弟子!?」

 

 メルトの弟子!?ルビーが!?どういう経緯でそうなったの!?

 本当にこっちは何があったんだ!?

 あっ、そういえばメルトは『15年の嘘』では雨宮吾郎役か!メルトのことだから、さては雨宮吾郎というキャラを完全に読み切って理解した上でパーフェクトコミュニケーションを決めたな?そうでもなきゃルビーがメルトの扱いを「大根さん」から「師匠」に格上げするわけがない!

 

「うるさいわよ二人とも……あ、返信が来たわ!」

「えっと、ル…ルビーさんはなんと?」

「「どこにいる?」って」

「答えちゃダメですからね、有馬さん。私は推しとは適切な距離感を保ちたいタイプで、認知もされたくないタイプなんです。」

「アンタ、面倒なヲタクだったのね……。」

 

 今のうちに大輝に連絡をする。口止めの連絡を。

 

 メッセージは書き込めた、あとは送信ボタンを押せば……

 

「あら、姫川からも返信が来たわ。」

 

 終わった。(本日2回目)

 

「……マジ?」

「どうしたの、かなちゃん?」

「アンタ……」

 

 バレてしまった。私が彼らときょうだいであるということが。

 私は観念して項垂れた。

 

「そうですね、私は__」

「姫川の、コレ?」

 

 有馬は小指を立ててこちらを見ていた。

 

「んぇ?!」

 

 何か大きな誤解が発生したらしい。

 有馬がニヤニヤしながらスマホの画面を見せてくる。

 

 そこにはキッチンに立って料理する私の写真に、姫川の「俺の家に来て、料理を作って一緒に食べてくれる関係」というメッセージが添えられていた。

 メルトはそれを見て呆れ顔を浮かべていた。

 

「……姫川さん、マジか。弟にそっくりな女の子に……いや、そういやルビーの水着姿に見惚れてたしな。」

「え?」

 

 え?大輝、どういうこと?説明してもらっていいかなそれ。

 大輝がルビーの水着姿に見惚れる?は?そんなことあるわけないじゃん。大輝だよ?大輝がルビーに見惚れるなんて……私にすら性的な反応を示さなかった大輝が??は??

 

「で、どうなのよアンタ。実際のところ!」

「こ、恋人ではない……けど、たしかに通い妻っぽいことは、してます……」

「うわ、顔真っ赤だ。」

 

 く、くそー!年下二人に弄ばれている!!

 でもまあ、私と大輝の血縁関係がバレなかったからヨシとしようか。

 

「もー!!私だけが標的なんて不公平だ!!鳴嶋くん、恋バナ!!!」

「え!???」

「おうおう、メルト〜!あんたもあるでしょう?色恋の一つや二つくらい!」

 

 悔しかったので、メルトに飛び火させた。すると、メルトは神妙な顔で語り始めた。

 

「そうだな、昔の俺はそういうところがあったかもな。顔が可愛ければファンとも付き合えるとか平気で言っちゃうような自覚が足りてないやつだった。」

「なんかつまんない話になりそう。」

「茶化さないでくれよ……でも、かなちゃんやアクアと会ってから、今日あまの現場を経てから、芸能人としての自覚が湧いてきたんだ。俺はいくら演技を磨こうが、結局はイケメン枠でしかない。職業イケメンなんて揶揄されたりもする。」

「ゴフッ」

「有馬さん!?」

「でも、だからこそ俺は職業イケメンを遂行すべきだって思ったんだ。ファンに対して誠実に向き合うべきだって。だから、俺は彼女を作るつもりはない。強いていうなら、ファンが俺の恋人だ。」

「……なんか変なものでも食べました?」

「あんた、意外とちゃんとしてるのね……」

「悪かったな!意外とちゃんとしてて!次は有馬の番だぞ!!」

「聞くまでもあるかしら?」

 

 気まずい空気が流れた。どうするんだこの空気。そんなふうに思っていると、席替えの掛け声がかかる。

 連絡先だけ交換して、私たちは別々の席へと移った。

 

 

 

「こいつが俺の新しい弟子だ。」

「弟子じゃないです、バイトです。」

 

 そんなコントみたいな挨拶から始まった。このテーブルは人が多く、ほとんどが裏方の人たちだ。

 

「皆さんが撮影してくれた素晴らしい映像は、私たち編集者が責任を持って映画として完成させます。本当に、素晴らしい撮影でした。皆さん、お疲れ様です。乾杯!」

 

 そんなふうに挨拶しつつ、コップの中身を飲み干す。

 

「お前、酒飲んだ?」

「飲んでないですよ。」

「でも顔赤いぞ?」

「向こうで恋バナしたんですよ、私だけ恥かきました。」

「え〜俺らにも聞かせてくれよ〜」

「おっさんには無縁でしょ。」

「おっさ……」

 

 カントクに言葉の暴力を浴びせながら、私はテーブルの人たちと世間話をしていく。そこはかとなく、有意義な時間を過ごせたと思う。

 

 

 

 

 

 

 カントクたちは二次会へと向かったが、私はお酒を飲むわけでもないので一次会で解散する組と一緒に彼らを見送った。

 

「それじゃ、私たちも帰りましょっか。」

「ええ、そうね今日は楽しかっ__」

 

「はぁ、はぁ……見つけた……!!」

 

 何者かが、走って私たちの方へとやってきた。

 

「__先輩、なんで場所教えてくれなかったの?特定に時間かかったよ。」

 

 私と同じ金髪、天性の輝き。全てを惹きつける眼。

 

「ルビー!?」

 

 有馬の叫びは、私の心の中の叫びと一致していた。

 

 

 

「あ、ししょーもいたんだ。」

「おう。」

「で、その人は誰なの?」

「は、初めまして……カントク……あ、五反田監督の元でお手伝いをしてます、イツリとも、申します……。」

「ルビー、あまり詰めないであげて。この人、推しに認知されたくないタイプのファンらしいから。」

 

 そんな有馬の静止を聞くことなく、彼女は私に対して大股で近づくと、私の匂いを嗅ぎ始めた。

 

「ひゃっ……!?」

「あー、暴走してるわ。ご愁傷様、イツリさん。」

 

 しばらくして、ピタリとルビーの動きが止まる。

 

「あの、ル…ルビーさん……?」

「アクアの匂いがする。それから、あかねちゃんと姫川さんとカントクの匂いも。」

 

 警察犬か?

 

「あなたは、誰?」

「さっき言った通りですよ、カントクの元でお手伝いをしている……」

「本名を教えて。」

「……。」

 

 万事休す、だ。

 

「ルビーさん、耳貸してもらっていいですか?あまり、口外したくない内容なので。」

「ん。」

 

 私は、ルビーに耳打ちする。

 

「__神木五里です。」

 

 それから、ルビーから離れる。

 

「長年、自分の親も知らずに独りで生きてきました。20歳まで戸籍もなくて、あったのは生まれつきのこの容姿だけ……どんな人生を送ってきたか、わかるでしょう?」

「……。」

「私は、あなたに認知されたくなかった。私の存在は、あなたたちにとって、辛いことを思い出させてしまうキッカケになり得るから。」

「……そうだね。」

 

 重たい空気があたりを包む。有馬とメルトは私たちの会話の内容の全貌は掴めずとも、私の過去がそれなりに重いものであるということだけは分かったらしい。

 

「それで、あなたからあかねちゃんの匂いがする理由は?」

「あかねは、私を助けてくれたんです。私が今、戸籍を持って屋根の下で生活できるのは、あの人が知恵とお金を貸してくれたからに他なりません。」

「ふぅん……。」

 

 ルビーは納得したように頷く。それから、数拍おいて突拍子もないことを口にした。

 

「苺プロに来ない?」

「「「え?」」」

 

 

 

 

 

 

「__で、誘拐してきたと。」

「もー、みやえもん!人聞きが悪いよ〜!」

「いや、あれは誘拐だったわ。私も片棒を担いじゃったけど。」

「命だけは助けてください。」

 

 私は苺プロに拉致されていた。

 

「そもそも、なんで私はここに連れてこられたんですか……」

「一緒にアイドルやろ?」

「え゛」

 

 アイドルをやるのは、もう二度とごめんだ。

 

「無理無理無理無理無理っ!!!アイドルはやりたくないです!!!私は推し専です!!!私を舞台に上げないでください!!!舞台に裏方を上げないでください!!!編集室にアイドルを閉じ込めますよ!!!」

「うわ、すごく暴れてる。」

「放してあげなさい……。」

「なんで私なんですか、てかそもそも私はアイドルなんてできるほど身綺麗じゃないんですよ!!ルビーさん話聞いてました?!」

「?」

「いやだから__」

 

"長年、自分の親も知らずに独りで生きてきました。20歳まで戸籍もなくて、あったのは生まれつきのこの容姿だけ……どんな人生を送ってきたか、わかるでしょう?"

 

 あれ、もしかしてルビーにはこの言葉の裏が読めてない?

 

「あの、ルビーさん?もしかして私のあの発言をただの容姿自慢か何かと間違えてません?」

「え、違うの?」

「戸籍も家もお金も何もなかった私が20歳までどうやって生きてきたと思ってるんですか?」

「__っ!」

 

 ミヤコさんは気付いたようだ。顔色が変わった。

 

「んー……歌とダンス?」

「あの、社長さん。この子、闇を知らなさすぎませんか?」

「……いい子なのよ。」

 

 ということで、無事にアイドルの話は御破談となった。危ないところだった。

 

 

 

「そっか……大変だったんだね……。」

「……今が一番大変かも。」

 

 ルビーがずっと私の頭を撫でてくる。横で有馬がその写真を撮っていた。

 

「有馬さん、その写真絶対に外に出さないでくださいね。」

「姫川に送るわ。」

「やめてください。」

 

 ミヤコさんは、そんな光景を眺めながら私の顔を見て考え込んでいる。

 

「……有馬さん、社長とルビーさんに内密な話があります。席を外していただいても構いませんか?」

「もう、仕方ないわね。」

 

 有馬が部屋から出ていくのを見計らい、私は深呼吸をした。

 

「申し遅れました、私の名前は神木五里です。今の姓は1年ほど前に、彼の死後強制認知調停を行って就籍した時についたもので、実際に彼と会ったことはありません。血縁上はルビーさんや大輝さんとは異母兄妹の関係です。」

「やっぱり……それだけ近い雰囲気を纏ってて無関係なわけがないわよね。」

「正直、私がこの姓を名乗っている関係もありまして、星野家にはあまり接触をしないように生きようとしていたのですが……」

「捕まったと。」

「はい。」

「捕まえました☆」

「誇るところじゃないわよ、ルビー。」

「……あなたの母親は、どんな人?」

「わかりません。でも、私を施設の前に捨てていくような親です。」

「そう……。」

 

 私は、静かに彼女の続く言葉を待った。

 

「あなた、今はどうしてるの?」

「五反田監督のもとで映像編集のお手伝いをしています。給料もかなりいただけているので、今は部屋も借りて伸び伸びと生きています。」

「よかったわ、今も野宿しているとか言われたら卒倒してたわ。」

 

 ミヤコさんは安心したように笑った。その顔を見て、こちらも頰が緩んでしまう。が、咳払いをして真面目な表情を作り直す。

 

「えっと、これ以上の要件がなければそろそろお暇させていただいても構いませんか?やっぱり、星野アクアさんのことを考えると、私がこの場にあまり長くいるのは……」

「私たちは気にしないわよ。あなたはあなた。神木の姓を継いでいるからと言って、恨んだり呪ったりはしないわ。」

 

 本当に、ミヤコさんは優しい人だ。

 

「……五里さん、あなたは私のお兄ちゃんによく似ている。アクアに、本当にそっくりなの。」

「それ、あかねにも言われましたよ。「アクアくんとの間に娘が生まれてたら、こんなふうに育ったのかもなぁ」って。」

「あかねちゃんそんなことを……って、そうじゃない!」

 

 ルビーはぶんぶんと首を振ると、私の手を握った。

 

「だから、自分の生に罪悪感を抱かないで。お兄ちゃんみたいに、罪悪感や使命感で命を焼き尽くさないで。」

「……ぇ、あ?」

 

 涙が流れてくる。理由はわからない。

 

 そういえば私はこの世界に来てから、心の底から何かを楽しめただろうか。何かと理由をつけて、縛ったりしてこなかっただろうか。

 

 __いや、割と大輝の家に通い妻したりとやりたい放題してたな。

 

「もっと、自由に生きて。人に迷惑をかけることなんて、普通にあり得るんだから。出生なんて関係ない、親がどうとか関係ない。もっと、自由に生きていいんだよ!」

「ルビー……さん。」

 

 自由に、生きる……。

 

 そう聞いて、最初に思い浮かんだのは……

 

「ごめんなさい、行かなきゃいけない場所ができました。」

 

 私はそう言って、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 大輝の部屋のベルを鳴らす。

 

「イツ?どうしたんだ、こんな時間に。」

「大輝、私……」

 

 言おう、私の決意を。

 

 

 

「__私、役者を目指したい!」

 

 

 

 

 

 

 

「っていうのが、私の役者人生の始まりでしたね。」

「まるでドラマみたいですね!」

「まあ実際は夜遅くに突然、目を腫らしたままやってきて決意表明するイツが目の前にいたって感じですけどね。ドラマもクソもなかったです。」

「もう、大輝は余計なことを言う……。」

 

 インタビュアーを前に、私と大輝はあの日のことを回想する。

 

「ところで、お二人はプライベートでも仲が良かったんですね……噂は本当なんですか?」

「「噂?」」

「では単刀直入に……お二人は、お付き合いをされているのですか?」

「「してないです。」」

「ただ家に行ってご飯作ったりお掃除したりする関係ですよ。」

「一緒にご飯食べたりもしますけど、恋人には絶対にならないですね。」

「……それって本当にどういう関係なんです??」

 

 私たちが血の繋がった兄妹であることは、まだ内緒。

 この秘密だけは、暴かせない。




星野アクア♀(神木五里)
 必死すぎて、元の世界の自分がどうなっているのかを振り返る暇がなかった。ある時ツクヨミを捕まえて尋問したが、「知るわけないでしょ」と怒られた。
 役者として活動し始めてからの芸名は「雪宮五里」で、事務所に所属はしていないが、五反田監督が事実上のマネージャー代わりをしていた。
 大輝に彼女ができるなんて考えたくもない。


黒川あかね
 星野アクア♀こと神木五里を「私とアクアくんの娘」という設定で扱うことでキチゲを発散している。五里に傾倒するので、オカルトに傾倒することはない。
 姫川さんが羨ましい。


五反田泰志
 早熟に似てる女が現れた。役者の才能もありそうだが、無理強いはできないよな……。
 え、役者になる?よしきた任せろ、俺が全力でバックアップしてやる。


有馬かな
 カントクが新しいバイト雇ったらしいので見に行った。黒髪の大人しそうな女ね。顔採用かと思ったけれど、ありゃ技術採用だわ。一瞬でもカントクを疑って悪かったわね。
 __って、顔があーくんにそっくりじゃない!?え、姫川の通い妻!?


姫川大輝
 鬱々してたら、可愛い妹が突如現れた。傷ついた心にじんわりと広がっていく。原作より少し早めに回復する。
 妹が可愛すぎて恋愛どころじゃない。


鳴嶋メルト
 美人な人だなって思ったけど、よくみたらアクアにそっくりで困惑。
 アクアが芸能界に入ってきてからは、努力を重ねて喰らいつく。負けないぞ。
 

星野ルビー
 兄にそっくりな可愛い女の子を拾って持って帰ったら怒られた。
 お姉ちゃんだった。苦労してきたんだね……自由に生きて。


斎藤ミヤコ
 アクアそっくりな子をルビーが連れてきて混乱。なるほど、カミキヒカルの血縁ね。苦労してたのね……。


MEMちょ
 アクたんそっくりな俳優が突如現れてびっくり。


アクアファン
 突如現れた推しの面影を持つこの女は一体__


ツクヨミ
 なにそれしらん……こわ……。


カミキヒカル(故人)
 なにそれしらん……こわ……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。