姫川大輝は逆行する_が、どうにも弟が弟じゃない。 作:ある日の残り香
姫川が逆行してない√。
つまり、アクアセラピーが発生しないし、復讐が終わったと思い込んで落差ダメージを受けるし、あかねが勝手に動く。
その上、本作中盤のカミキヒカルと有馬のエンカウントと、原作のアクアのアレが合体事故を起こす。
……緩やかに自給自足。
第一話【復讐の終わり】
「異母兄妹……そういう事も……まぁ、あるのか。」
やっとだ。
やっと、復讐に……父親につながる情報を得ることができる。
目の前の男、姫川大輝のDNA鑑定の結果はこの男が俺たち双子の遺伝子学的な兄であることを示していた。つまり、この男の父親こそが、俺たちの父親……アイを死に追いやった仇だ。
「こんな所で話す内容でもないな。おっさんも寝かせたいし、三軒目行くか。」
「どこに?」
「んー……俺んちで__よくねえな。」
「別にいいよ。流石に女好きでも、妹には手を出さないだろ?」
「じゃあ、俺んち。」
結論から言うと姫川の父親である上原清十郎は、すでに死亡していた。俺の復讐対象は、すでにこの世にはいなかったのだ。
「他に聞きたいことは?別になんでも答えるけど。」
「……いや、ない。」
「じゃあ、飲み直そうぜ。」
姫川は愉快そうに笑いながら、冷蔵庫からお酒の缶を取り出し俺にはジュースやらお茶やらを差し出した。
「__妙な気分だよ、俺に突然半分とはいえ血の繋がった人間が現れるんだから。しかも俺と同じ役者、笑える。」
復讐は、どうなる?
「そうだ、試しに俺のこと兄さんとか呼んでみてくれよ!」
「呼ばねー」
「ははっ」
だが、今はそんなことは忘れよう。考えていると、疲れで頭が割れそうだ。
「……あっ」
「どうした星野?」
「よく考えたらこの状況……」
「んぁ……?」
チラッと窓から外を見る。地上、建物の入り口前に隠れている人影を見つける。
「やられた、週刊誌だ。」
「あー……そうか、俺たち以外はこの事情を知らねえから、だいぶ不味いな。」
「題をつけるなら、姫川さんは未成年の連れ込み、オレは不倫ってところか。まったく笑えねえ状況だな。」
が、それは俺と姫川が二人きりの場合の話。俺たちは視線を金田一さんに移す。
「まあ……今から帰れば、金田一さんの介抱をしていたってことで説明しても説得力も足りる。半分事実だしな。一応、週刊誌の記者が金田一さんが映らないように撮ってた時のため、金田一さんの写真撮っておくか。」
俺と姫川は、金田一さんの前でピースをした。まるで釣り上げた魚の前で記念撮影をする釣り人だ。
「はぁ……マジで肝が冷えたぜ。」
「それじゃ、またな。姫川さん。」
「おう、気をつけて帰れよ。アクア。」
「……。」
こいつ、しれっと俺の呼び方を苗字から名前に変えやがった。
週刊誌の記者には毅然と対応した。分が悪いと判断したのか、男は敗走する。俺は夜の暗い道を、家に向けて歩き出した。
「兄貴、か。」
ふと口からこぼれた言葉。前世でも縁のなかった、年上の兄弟。
「なんか、少しむず痒いな。」
俺にとって、家族とは庇護すべきものだった。前世では祖母、今世ではルビーとアイ。全てが俺よりも弱く儚く、守るべき対象だった。だからこそ、自分よりも強くて頼りになる家族というのは……少し、いやかなり新鮮だった。
帰る頃には、もう深夜も深夜だった。俺は静かに家に上がる。
「お姉ちゃん!夜遊びなんて不良じゃん!!信じられないんだけど!!!」
「……起きてたのか、ルビー。」
こんな夜遅くなのに、ルビーはドアの開くわずかな音に反応し、俺を出迎えた。
「いや、姫川さんの所にお邪魔してただけ__」
「お姉ちゃん……??」
「……別に変なことはない。」
危なかった。あらぬ誤解が生まれる所だった。まあ、ルビーは事情を知らないからな。
「いずれお前にも紹介する。」
「は?」
「ん……?」
あれ、なんかルビーの様子がおかしいな。
「お姉ちゃん……」
「なに?」
「彼女がいるのに、彼氏を作ってソレを妹に紹介するって……どういうつもり?」
「ん……?」
俺は数秒間のスペースキャットの後、ルビーに生じた誤解に気づいた。
「あのな……オレが浮気したと思ったのか?」
「いや……信じては、いるけどさ。」
「姫川とはそういうのじゃない……。勿体ぶってたらこれからも誤解を招きそうだから今言うか。」
予定では、ミヤコさんのいるところで家族会議として姫川も呼んで紹介するつもりだったのだが……。
「姫川は、オレたちの遺伝子上の兄だ。」
「……なんて?」
「あいつは、兄貴。」
「……?????」
ルビーは情報を飲み込めていない様子だった。その間に俺はスマホを確認する。あかねから心配のメッセージが来ていたので、返信を行なっておく。
「……。」
俺たちの父親は、とっくに死んでた。アイの仇はもういない。
じゃあ、どうするんだ?
俺は……復讐は……。
良いのかな?
もう、良いのかな?
もう自由になって、普通に生きて、普通に幸せになっても__
「ルビー、今日はもう寝よう。」
俺は憑き物が落ちたかのように、晴々とした顔でそう言った。
第二話【高千穂の夜】
東ブレの千秋楽を終え、俺は仕事のない期間を過ごすことになった。そんな折、ルビーからの提案でB小町のMV撮影で宮崎ロケに同行することになった。
復讐が終わった以上、俺があかねを縛り付けている理由もなくなった。あかねの人生にとって大事な取り返しのつかない時間を、これ以上俺なんかが奪ってしまうわけにはいかない。ここで、一度今後について話し合いたかったところだ。そのため、あかねも誘った。
行きの飛行機で外の景色を眺めている俺に、ルビーが小声で話しかけてくる。
「お姉ちゃん、楽しみ?」
「え?」
「だってほら、お姉ちゃんにとっては帰省みたいなものでしょ?」
「……あ、ああ。うん。そうだね。」
雪宮五里のことか。ここしばらく使っていない人格だったから、適応するのに時間がかかってしまった。
__そうだ、"私"にとっては十余年ぶりの帰省になる。
「同僚のせんせにも会えるといいね、お姉ちゃん。その時は、私も紹介してね。」
「吾郎さんも驚くでしょ、生まれ変わったあなたの友達で〜す!なんて言ったら。きっと受け入れてはくれないよ。あの人、オカルトとか興味なさそうだし。」
「__ははは、そうかもね。」
「……ルビー?」
ルビーが突然、遠い目になって雲を眺め始める。どんな心境の変化があったのか、彼女の目からは光が薄ら消えていた。その姿がとても、可哀想に見えて……雨宮吾郎の時に見た、病室のさりなちゃんのように見えて、"私"は彼女を元気付けたいと話題を探した。
「話は変わるけどさ。ルビーは本当に、私の話す吾郎さんのことが好きだよね。ルビーは年上のお兄さんが好きなの?」
「……ごろーせんせだから好きなんだよ。」
「さりなちゃんみたいなことを言うんだね。」
つい、声に出てしまった。それは懐古の気持ちからだろうか、自分がかつて救えなかった少女と同じ雰囲気を纏い、雨宮吾郎に恋心を寄せる妹に、彼女を重ねてしまったのだ。
姉として失格だな。自分の妹を他人と重ねてしまうなんて。そう思って話を逸らそうとした時、ルビーの口から耳を疑う言葉が飛び出した。
「うん、だって私は天童寺さりなだもん。」
「え……?」
「それにしてもお姉ちゃん、知ってたんだ?さりなのこと。」
「ぁ、うん。吾郎さんが、何度も彼女の話をしてたし、彼の携帯の待受も……さりなちゃんだったから。」
「でも、今までさりなちゃんの話をしたことはなかったよね?」
「そりゃあそうでしょ……患者のプライバシーについて妹に話すほど、意識の低い看護師じゃなかったもの。」
ルビーがさりなちゃん?私は、その情報を咀嚼できずにいた。
「それって本当のこと?」
「本当だよ。」
「……お姉ちゃんさ、あれ以来も姫川さんと一緒に遊びに行くこと増えたけど、満更でもなさそうだったよね。それって、兄だからっていうよりも姫川さんがせんせに似てるからだよね?」
「なんでそんなこと……」
いや、たしかに釣りとか一緒に行ったりしたけど……姫川ってそんなに雨宮吾郎に似てるか?
「お姉ちゃんの享年を考えると、ごろーせんせはお姉ちゃんより年上。その上で、姫川さんはごろーせんせによく似ている。」
「だったらなんだっていうの?」
「お姉ちゃんは、ごろーせんせに対して本当は恋心を持ってた。だから、さりなっていうごろーせんせの心に永遠に残り続けた少女、ライバルについては無意識下で省いて説明していた。違う?」
「ちが……」
本当に違うよ、さりなちゃん。落ち着いて。
勘違いがまずい方向まで捻れ始めていた。しかし、私はこれまで完璧に"雪宮五里"を演じてきた。演じてきてしまった。
今更自分が本当は雨宮吾郎だと明かしたとて、ルビーには言い訳や嘘のように感じられてしまうだろう。雨宮吾郎しか知らないような情報も、雪宮五里の"設定"なら、知っていてもおかしくはないことばかり。もしもセンシティブな内容……たとえば黒子の位置や性的趣向などといった部分について言及しようものなら、彼女の疑いがさらに強まることになる。
自分はもう、雨宮吾郎には戻れなくなっていた。だからせめて……
「……さりなちゃん。」
「なに?五里さん。」
「うん、これは私……雪宮五里からのアドバイス。」
私は、呪いを残すことにした。雨宮吾郎が、天童寺さりなに伝えたかったことを。
「吾郎さんはきっと、あなたのことなら、転生というオカルトだろうと受け入れてくれる。アイドルになった姿を見て、きっと喜びの涙を流してくれる。」
「……。」
「結婚は……彼のことだから、現役アイドル、それも歳の差がだいぶ離れているからと言って尻込みするだろうけど、さりなちゃんのことが好きだから、押し続ければきっといつか素直になって受け入れてくれるよ。」
「……五里さんは?」
「私は元から彼とは釣り合わない。それにほら、私にはあかねがいるから。前世は前世で、今は今。私はそうやって割り切るよ。」
「……。」
「さりなちゃん、いやルビー。私はあなたを愛してる。幸せに生きてほしい。」
「ありがとう、五里さん……いや、お姉ちゃん。」
とても残酷な話だ。雨宮吾郎はすでに死んでいて、私はその生まれ変わり。それなのに、雪宮五里などという保身のために作った殻のせいで、その魂すら濁らせてしまった。もう彼は、この世のどこにもいない。少なくとも、ルビーの前に……さりなちゃんの前に現れることはできない。
……今回の宮崎で、しなければならないことが増えてしまった。
横では、先ほどとは打って変わって幸せそうに目を輝かせ、恋する乙女のようにそわそわと手遊びをしているルビーがいる。彼女の心を、守らないといけない。"俺"は覚悟を決めた。
復讐は終わったが、その後始末はまだ残っている。
だめだった。
「ここは……?」
「目を覚ましたのね?アクア。ここは宿よ。あなたはさっき、急に吐いて倒れたって有馬さんから連絡があったの。」
「アクア、あんた大丈夫……?」
「そう……」
私の顔を心配そうに覗き込む、ミヤコさんと有馬。
「あんた、本当に大丈夫?喋り方が昔に戻ってるみたいだけど__」
「あそこの遺体は……?」
「私は確認してないけど、第一発見者はルビーたちらしいわ。身元はまだわからない。でも、たぶん……」
「ルビー……が?」
「……今事情聴取を受けてるけど、きっとすぐ__」
「あああああああ!!!!」
「……アクア!?」
私は発狂し、頭を掻きむしり始める。
「この無能……っ!!保身女……っ!!なんで、なんで私なんかが生きてるの……っ!!ああっ!!うあぁ……っ!!!」
掻きむしっていたのは、頭だけではない。心の中、そこにいる"雪宮五里"の存在を切り裂くかのように、赤が満たしていた。
ミヤコさんや有馬が血相を変えて私に駆け寄って何かを叫んでいる。でも聞こえない。何も聞こえない。
ふと、そんな中で声が聞こえた。
「俺が転生さえしなければ、こんなことにはならなかった。俺が死んでさえいなければ。」
振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。
私は痛みと疲労により、意識を手放した。
高千穂の夜は、少しだけ寒かった。
第三話【残り火】
朝日が窓から差していた。俺は……いや、私かな。こっちの方がしっくりくる。
私は、吐き気を抑えながら目を覚ます。何か酷い夢を見たような気分だった。
「寒い……。」
布団に入っているのに、寒くてたまらない。風邪でも引いたのだろうか。体の内側から冷えている感覚がする。何か、大切なものが抜け落ちて、そこを風が吹き抜けているかのようだった。
「アクアちゃん、起きた……?」
「あかね……おはよう。」
私の顔を覗き込んで来たのは、私の恋人。私が今回、別れ話を切り出すために呼んだ女性だ。
「昨日の記憶、ある?」
「昨日……?」
言われてみて初めて、昨日自分が何をしていたのか何も思い出せないことに気がついた。
「なにも……記憶がない。」
「そう……。私たちが事情聴取から帰った後、かなちゃんから色々聞いたよ。」
「……事情聴取?」
あかねは、私に大雑把ではあるものの昨日の出来事を語った。
「ルビーは?」
「ミヤコさんの部屋で寝てる。遺体を見ちゃったから……。」
「……ルビー。」
私は起き上がると、ルビーに会いに行くことに決めた。その時、私の服が昨日の服のままで、少し酸っぱい臭いがすることに気づいた。
「……もしかして、私ゲボ吐いた服のまま寝ちゃった?」
「そうかも……。」
__シャワーを浴びて着替えてから、ルビーの元へ向かった。
ルビーの発言は支離滅裂で、錯乱しているのが見てとれた。曰く、今回見つかった遺体は彼女が前世で愛した人であり、彼女には前世の記憶があるのだと。曰く、私も前世の記憶があり、その人とは共通の知り合いなのだと。
まあ、そういう時期か。あるいは、遺体を見たことで精神的に参っているのか。私はただ、無言で彼女を抱きしめた。
「ごめんね……辛い時、そばにいてあげられなくて。私も遺体を見てショックだったからか、昨日のことは覚えてないんだ。ルビーがいう前世のことも、私にはわからない。」
「……五里、さん?」
「でも、私はルビーのお姉ちゃんだから。星野愛久愛海だからさ。ルビーが辛いなら、こうして抱きしめてあげたい。」
「ぁ……ああ……っ」
ルビーはそんな私を突き飛ばして、外へ出て行ってしまった。追いかけようとしたら、「ついてこないで!」と叫ばれた。
「……私は、何かを間違えたのかな。」
復讐がやっと終わったのに、私にはまだ幸せは訪れないらしい。
部屋に戻ると、あかねが待っていた。私はこれまでのことを説明すると、あかねの前に座った。本題を、話すために。
「あかね。」
「……うん、わかってる。」
「前に言った私が探していた人は、もう見つかった。死んでいた。」
「うん……。(そっか、話の流れからしてそれって雨宮吾郎のことだったのかな?芸能界に関わりがあるとは思えなかったけど。)」
「私の目的は、自分たちの父親を見つけて……復讐することだった。」
「うん……(雨宮吾郎がアクアちゃんの父親だったのかな……?)」
私が別れ話を切り出すことをわかっていたあかねは、真剣な眼差しで私を見つめていた。
「別れよう、あかね。お願いだから、私なんかに囚われず幸せになってほしい。」
私は、あかねの目を見てこの言葉を伝えた。
「私はアクアちゃんのことを愛しているよ。ねえ聞かせて、アクアちゃん。アクアちゃんは、私のこと好き?」
「……少なくとも人として、好き。それに、本音を言うとあかねが他の誰かと付き合うのはちょっと嫌。でも恋愛感情があるのかは、わからない。だって、利用するために、付き合ったから。父親のことや、他にもたくさん……たくさん利用してきた。ごめん……ずっと。」
私は、ここで嘘をつくのは不誠実だと思い全てを正直に話した。
「__うん、知ってたよ。やっとわかった。私の気持ちをやっと言語化出来そう。」
あかねは目を閉じ、微笑むと続けた。
「君は優しくて全部しょいこもうとするから、その罪悪感ごと私は寄り添いたいって思ったんだ。」
私は、彼女の言葉に息を呑む。心の底から、何かが溢れてくる感覚があった。
「でも、わかってる。アクアちゃんは、私がいない方が良いんだよね?」
……違う、いない方がいいんじゃない。あかねが私に縛られないでほしいのだ。
泣いているあかねに、この言葉を伝えたかった。でも、これを伝えたらあかねはきっと、私から離れなくなる。私が、突き放さないと……彼女は本当の意味で幸せになれない。私みたいな変な女じゃなく、もっといい人と出会ってほしい。幸せになってほしい。
だから、私は。
「あかね__」
だめだ。突き放さないと……。
__私の手は、あかねの涙を拭っていた。
「……違うよ。私は、あかねに幸せになって欲しかったんだ。泣かせるつもりなんて、なかった。ごめん。」
「じゃあ、なんで……」
「私は、あかねの隣に立つのにふさわしくない。私みたいな汚れた存在が、横にいていいわけがない。」
私は、復讐のために身体を売ることも選択肢に入れるような(実際に売ることはなかったが)女だ。周りを利用して、平気でいられるような女だ。そんな女が、あかねのような存在の横に立ってていいわけがない。あかねを幸せにできるわけがない。
なのに……。
「私は、どうすればいいの。あかねの幸せを願って、離れようと思ったのに……それが、あかねを傷つけるなら……私は……」
涙が溢れ出して、止まらなくなってしまう。本当に、自分が情けなくてたまらない。
「……なら、一緒にいてよ。これからも。」
「……いい、のかな?私は、あかねと一緒にいても。」
「うん、アクアちゃんだからそばにいてほしい。」
部屋には、泣いている少女が二人、お互いを強く抱きしめあっていた。
それからしばらくして。まだ目元は赤いが、涙はおさまった私たちは目を合わせられずにいた。お互いが向き合って正座して、視線を逸らしている。よく見れば、二人とも目元だけじゃなくて頰も紅い。
その気まずい沈黙を破ろうと、私は口を開く。
「そ、そういえば!父親を探す過程でね、私には兄がいることがわかったんだよ。ちなみに、あかねも知ってる人。」
「え!?」
お、空気を変えられそうだ。
「め、メルトくんとか?」
「違うよ。メルトは兄って感じはしないでしょ。」
それから、あかねは真剣に考え込むと口を開く。
「姫川さん?」
「正解、姫川さんと遺伝子鑑定したから父親がわかったんだよ。上原清十郎が、私たちの父親だって。」
「……!?ふ、ふーん。そう、なんだ?」
「これ、まだ内緒ね。私と姫川さんが兄妹だってこと。姫川さんとルビーしか知らないから。」
ああ、幸せだな。
その幸せに溺れて私は、あかねが何かを考え込んでいるのに気づかなかった。
第三話【瓦解】
「ある筈なのっ!!どこかにっ!!!」
私の金切り声が、釣り堀で反響する。目の前の薄汚い格好をした男……斎藤壱護はそんな私を見て、自分の発言が招いた残酷な運命に対して冷や汗を垂らしていた。
きっかけはルビーがアレ以降、周囲に大きな歪みを発生させながらも芸能界を駆け上ったことだ。きっと、背後には誰かがいる。そう睨んだ私は、ルビーの後を付けることにした。
結果、苺プロの元社長__斎藤壱護にたどり着いた。そして、彼の口から語られたのは、上原清十郎がアイを殺すことは不可能だという事実と、復讐すべき相手がまだ生きていることだった。
雨が冷たい。頭の中で、耳慣れない声がする。男と女の声だ。白衣を着た医者の男と看護師と思しき女。それと、遠い記憶の中の声。小さい頃の私の声。
「良かったね、また始められるよ。憎しみに駆られるだけで良い。アイを殺した男を見つけ出して、この世界で可能な限界まで苦しみを与えてやるんだよ。」
「僕は苦しむべきなんだ。アイを見殺しにした僕がのうのうと生きて良いはずがない」
「これは罰よ、報いなの。」
「違う……だってっ!だって私は……やっと普通の幸せを……っ!!」
「ここしばらくの安息は夢のようなものだ」
「忘れて良いよ、だって私たちは何一つ終わらせてないんだから。」
「復讐を。」
「報いを。」
「アイの受けた苦しみを。」
「罰を。」
「永遠に手遅れになったものを__」
「うるさいっ!!」
私が手を払った先。そこにいたのは……
「……ぁ、りま。」
「私……なにか、そこまで嫌われるようなこと……した……?」
待って。
「私、馬鹿だから全然気づかなくて……」
違う。
「ごめん、アクア……」
声が、出ない。全てが崩れ去っていく。
有馬には、連絡できなかった。謝ろうにも、言葉は出てこなかった。有馬も、私を避けるようになった。
MEMちょから、有馬がどこぞの誰かと最近いい感じらしくて、B小町を抜けることも考えているんという話を聞いたが、私にはもはや何も言う権利はなかった。
B小町は、気づけばルビー以外とそれ以外で決定的な溝ができており、有馬はそれで心労が溜まっていた中、私から(勘違いとはいえ)拒絶されたのだ。他ならぬ、アイドルの道に引き込んだ私から。もう、アイドルなんて続けたくもないのだろう。それでもいいのかもしれない、彼女の幸せは、きっとステージの上じゃないのだから。
あかねと正式に付き合うようになってから幸せな日々を送っていたのに、突然全てが壊れていった。
「あかね。私はあなたと出会ってからずっと救われていた。こんな私のことを肯定してくれて、寄り添ってくれて、駄目な事は駄目と言ってくれて、少しずつ救われていた。」
ある日の電話。私はあかねの「私は今、幸せだから」という言葉に対して、私もあかねのおかげで救われていたことを吐露する。心が弱っていたからだろうか、恥ずかしくて胸の中に秘めていた言葉がスラスラと出てきた。
「あなたが傍に居てくれる日々を、手放したくないって思った。」
もはや、自分で考えるのすら疲れた。ただこの優しさに浸っていたい。復讐も何もかも忘れて、幸せな夢に溺れていたい。
「私は、どうしたら良い?決めてほしいの、あかねに。」
お願いだから、逃げていいと言ってくれ。
「私は、このまま何もかも忘れて幸せを目指してもいいの?それとも……あかね、私はどうしたら……。」
「駄目だよ、アクアちゃん。自分のことは自分で決めないと。」
あかねに仕掛けた盗聴器から、あかねのしようとしていることはわかった。私は、あかねを止めるべく家を出た。
「あかねは本当に聡いね。」
歩道橋から転落しそうになった彼女を救ったはいいが、私がここにいること自体が妙であると気づいた彼女からそれを指摘されてしまった。
あかねは、私がプレゼントしたキーホルダーに目を移すと、それを破き始めた。
「アクアちゃん……これは駄目だよ。これは、やって良い事じゃない。」
仕掛けていたGPSがバレたが、お陰であかねの単独行動を防ぐことができた。当然、あかねとの間の信頼関係はこれで完全に潰えてしまったのだが。
あかねが持っていた花束にはナイフが隠されていた。それが指す意味は一つだけ。
「あかね。もう関わらないで。このGPSタグも外すから。二度とあなたのプライバシーを侵すような真似もしないから。」
嫌だな。でも、しょうがないよね。
「私も、二度とあなたに関わらない。危ない真似は、やめて。」
もっとちゃんと、早く拒絶するべきだった。
「私の事利用してるとか言ってるくせに、優しいこと言うんだ。」
「……。」
「付いて来てって言ってくれたら、地獄だって一緒に行くのに。」
「そんな所にあかねを連れて行く気なんて毛頭ない。私は一人で行く。」
あかねの足取りから、誰に接触しようとしていたのかは推測出来る。これしかなかったんだ。これであかねには危害が及ばないし、手を汚させる心配もなくなった。
幸せな日々はもう終わり。
私は道を間違えた。
カミキヒカル。復讐を果たすべき相手。
もう戻れない、この道を進むしかない。
第四話【ねじれた関係の末路】
私は足を引きずりながら、彼女から距離を取ろうとしていた。床に広がる鮮血は、私からどんどんと生気を奪って行く。
「アンタが悪いのよ……アンタが、アンタが全部……っ!!」
一番安全な場所であるはずのここ、苺プロで私は命の危機に瀕していた。腹からは、いまだにドクドクと血が流れている。
「はぁ……ひゅっ……ごぽっ……」
口からも血を吐き出す。どうして、こんなことになってしまったんだろうか。
始まりは、カミキヒカルと有馬が一緒にいるところを見たことから始まった。MEMが言ってた、有馬といい感じな男というのが、あろうことかカミキヒカルだったのだ。
カミキヒカルは才能ある女を狙う。有馬の首筋には、奴の爪がすでに伸びていたのだ。私は有馬も失いたくない。だから、有馬をあの男から引き剥がすことを画策した。
「有馬、今日一緒にいたのは誰……?」
「……アンタには関係ないでしょ。」
「__確かにそうだけど、あの人だけはやめといた方がいいよ。」
「あっそ。」
作戦は失敗に終わった。有馬と私の関係は今、冷え込んでいたため私の助言なんか通ることはない。それに私はカミキヒカルについて話せることはあまりない。それどころか、何故か有馬の私を見る目が日々冷たくなって行くのを感じていた。その目は、妬むような、憎むような目に変わっていった。
これはもう、強硬手段を取るしかない。そう思った私はミヤコさんに相談した。結果として、有馬には面談が行われることになった。有馬は当然、私が密告したことには気づいた。もう私には失う信頼なんてない。有馬からの好感度も他の底まで落ちている。有馬を救うためなら、もうこれ以上嫌われても構わない。私は、この世の誰からも嫌われたとしても、構わない。大切な人たちを守るためなら、私は幸せを求めてはいけないのだ。
「……有馬さん、B小町を辞めるらしいわ。」
「え?」
ミヤコさんの面談で、カミキヒカルと彼女を引き裂けると思っていたのだが、その目論見は失敗に終わった。
「な、なんで……。」
「アイドルを続ける理由もないし、今のB小町には自分は必要ないからって……そう言ってたわ。引き止めても、意思は変わらなかった。」
「……。」
「卒業ライブも行う気はないらしいの。もう、すぐに卒業するって。事務所も……移るそうよ。」
誤算だった。いつから知り合ったのかは知らない。だが少なくとも、私やルビーどころか、B小町や苺プロですら彼女を引き止められないほど、彼女はカミキヒカルと強い信頼関係を結んでいた。いや、カミキヒカルに洗脳されていた。
誰も頼れる人はいない。こんな時、あかねがいたらなんて考えてしまう自分が嫌いだった。もう巻き込まないと決めたのに。
その翌日の夜。有馬が苺プロからの移籍を発表するまで残り一週間という時。
「ミキさんはさ、私のことをちゃんと見てくれてたの。」
「……。」
「アンタみたいな、打算で私を誘った奴とは違う。ルビーみたいな、自分だけ良ければそれでいいみたいな奴とも違う。ミヤコさんとMEMには本当に悪いと思ってるけれど、私はここにもういたくない。」
「……私は、有馬にいなくなってほしくない。」
「はははっ、今更どうやってそんなの信じろっていうの?」
「ごめん。全てが、遅すぎたね。」
「ええ、そうね。」
苺プロの一室で、私は有馬と話していた。
「私ね、恋をしたのよ。」
「……カミキヒカルに?」
「やっぱり彼のこと知ってたのね。アンタも。」
「……。」
「私はあの人のことが大好き。心の底から愛してるんだと思う。あの人は、私の乾いた心を癒してくれるから。」
「奴だけは、やめておいた方がいい。」
「わかってるわよ、アクア。」
有馬の言葉に、私は顔を上げる。わかってくれたのかと、そう言う期待を胸に抱きながら。でも、その後に続いた言葉は__
「アンタがなんで、ここまで私とミキさんの関係を邪魔しようとするのか……その理由が。」
次の瞬間、私の腹には何か冷たく、それなのに熱い感覚がザクリと響いた。
「ミキさんの最推しはね、私じゃなくてアンタだった。」
「……っ、ぁ?!」
私の腹から引き抜かれたそれを見て、私の顔は青ざめた。
「ぇ……あ、りま?」
「知ってるわよ、アンタがミキさんと裏で会ってるってこと。ミキさんに色目を使ってるってこと。新野さんから聞いたもの。」
身に覚えのない罪状。
「違う……私は、有馬が心配で……」
「うるさいわよ、この嘘つき。アンタの言葉をどうやって信じろっていうの?」
再び振り下ろされた私の血で汚れた包丁をすんでのところで躱す。
その時になってようやく思い出す。カミキヒカルは、才能ある女を殺すだけじゃない。使いやすい駒を、殺人に用いる。命を狙われていたのは、有馬じゃなかった。
「聞いて!!カミキヒカルは、私たちの__」
「うるさいっ!!」
今の有馬は、奴に何を吹き込まれたのか……私の言葉は何も届かない。ただ、私を殺すためだけにその刃物を握っている。
床にできていた血の水溜りに足を取られ、私は転んでしまう。私は足を引きずりながら、彼女から距離を取ろうとしていた。床に広がる鮮血は、私からどんどんと正気を奪って行く。
「アンタが悪いのよ……アンタが、アンタが全部……っ!!」
一番安全な場所であるはずのここ、苺プロで私は命の危機に瀕していた。腹からは、いまだにドクドクと血が流れている。
「はぁ……ひゅっ……ごぽっ……」
動けなくなった私に、有馬が近づいてくる。ゆっくりと、その包丁を両手に握って私に近づいてくる。
「アンタさえいなくなれば、私が彼の一番になれる。知ってる?どんな天才でも、ナイフで刺されたらお陀仏なのよ?」
私に跨った有馬が、私の目を見つめながら私の心臓に向けて包丁を構えた。
「じゃあね。アクア。あなたのこと、好きだったこともあったわよ。それも全部、過去のまやかしだけど。」
私は諦めて目を閉じた。
__だが、いつまで待っても私の身体にそれが突き刺さる感覚はなかった。
私は、目を開けた。
「ルビー……?」
「お姉ちゃん、大丈夫。気絶させただけだから。」
そこには、ルビーが立っていた。そして、その足元には有馬が倒れている。
「お姉ちゃん、お願いだから死なないで。すぐに救急車呼ぶから。」
ルビーの声には体温を感じなかった。まるで、死体のようだった。感情を抑えつけて、冷静に振る舞おうとしているのが目に見えていた。
「……ありがとう、でもお願い。警察は呼ばないで。あと、これは私が手を滑らせて刺さっちゃったのを、有馬が抜いてくれたことにして。」
「なんで?この女はお姉ちゃんを殺そうとしたんだよ?なんで庇うの?」
「有馬も、被害者だから。」
私は少しずつ、体が冷たくなって行くのを感じた。血を流しすぎたのだろう。
「お願いは、したからね。ルビー……。」
「お姉ちゃん……?お姉ちゃん……!!」
「愛してる……愛してるよ、ルビー。」
私は、抑えられないほどまでに重くなった瞼を閉じた。
「もう一度聞きますよ、星野アクアさん。あなたの腹部には第三者の手によって刺されたとしか思えない形跡があり、有馬さんとルビーさんはあなたを有馬さんが刺したと証言しています。何があったんですか?」
「だから……転んだんですよ、偶然刃物を持ってる時に。有馬はそれを抜いてくれたんです。ルビーはそれを見て勘違いして有馬を殴って気絶させました。事故です。」
私は病院で事情聴取を受けていた。どうやら、ルビーと有馬は真実を話したようで、有馬を庇うには現状とても分が悪かった。
でも、私はアイとカミキヒカル……二人の嘘つきの子供。嘘を真実と思わせるくらい、造作もない。両目に輝く星が、刑事たちを惑わせていく。
「……マスコミは好き放題報じてるね。」
「B小町の有馬かなさんが事務所内でタレントの星野アクアさんを刃物で刺したなどの疑いで逮捕されました。星野アクアさんの妹、星野ルビーさんの証言が逮捕の決め手となりました。有馬かなさんは容疑を認めておりますが、星野アクアさんは有馬かなさんの犯行を否定しています。」
SNSは炎上していた。有馬を叩く者、苺プロの監督責任を追求する者、有馬を庇う私へ不信感を向ける者。そして、それらの悪意に対して牙を向く者。
「……これも全部、カミキヒカルが悪いんだ。」
「……アクア、大丈夫か?」
「キズ自体は縫ったし、臓器もそこまで損傷してない。姫川さんこそ、その顔色大丈夫じゃないでしょ。」
嘘だ。臓器も縫合しなきゃいけないくらいの大怪我だった。助かったのが奇跡というくらいの致命傷だ。
「ごめん……肝心な時に、そばにいられなくて。」
「姫川さんが気にすることじゃないよ。お兄ちゃんだからって全部背負わなきゃいけないわけじゃないでしょ。」
正直、姫川も気が気じゃなかったのだろう。再び、肉親を失うところだったのだから。この人も本当に、不憫な人だ。
「今回の件、有馬のことをどうか恨まないで。あの子も利用されただけだから。」
「利用……って?」
「私ね、たぶん命を狙われてるんだ。お母さんを死に追いやった男から。」
だからこそ、私は自分が嫌になる。彼を利用しようとしている自分が嫌になる。でも仕方ないじゃないか。もはや私一人で復讐をするには、厳しいものがあったから。
彼は有馬やあかねと違って、部外者ではない。巻き込んでも構わない。そう言い訳ができた。それにどうせ、この人も私と同じで、もう失いたくない人なのだろうから。
「そいつは卑怯な奴でね。殺人教唆とは呼べないくらいのギリギリで、人を死に追いやってる。」
「厄介だな……逮捕するには証拠を集めるのも難しい。ちなみに、身元はわかってるのか?」
「私たちの本当の父親だよ。」
「……どう、いうことだ。」
「上原清十郎は、私たちの遺伝子上の父親ではない。彼もまた、そいつに追い立てられて人を……姫川愛梨を殺した被害者。」
「おい、それって……」
「あなたの親の仇でもあるの、カミキヒカルは。そして__」
姫川は私の目から目を逸らすことができなくなっていた。
「__彼は、きっとルビーと私の命を狙ってる。」
自分の才能に吐き気がする。私は言葉巧みに姫川さんを抱き込んだ。復讐に巻き込んだ。カミキヒカルがそうしたように
第五話【うまくいかない】
「それで、どうするつもりなんだい?」
「私はひどく残酷な手を打つ。姫川も、ルビーも悲しむかもしれない。だけど、これが一番マシな手だと思うから。」
「君は悪手ばかり打つね。」
「好きに言えば?あと、あなたがルビーに何かを吹き込んでいること、知ってるから。余計なことはしないで。あの子にこれ以上、復讐の道を歩ませないで。」
「おお、こわ。」
疫病神がルビーに何かを吹き込んでいると気づいた私は、退院後に彼女への牽制も行った。この少女の目論見はわからないが、ルビーを復讐に駆り立てているという事実だけを見れば、敵だ。
「わかったよ。本当に、不器用な子だ。」
「子供の姿をしたあなたにそう言われるのはとてつもなく不快だよ。」
カミキヒカルは既に私や有馬に手を出した。その上で、今回の事件で彼が罪に問われるような証拠も罪状もない。
もはや猶予なんてない。直接的な方法で殺すしかない。でなければ、次はルビーが危ない。
私は姫川と会う機会が増えた。ルビーに悟られないように、復讐を前に進めていく。
「"兄さん"、定期報告会をはじめよっか。」
「ああ。」
私たちが最初に行ったのは、カミキヒカルの残弾数の確認だ。カミキヒカルが使える鉄砲玉の女、あるいは男たち。カミキヒカルと戦う上では、これは重要な情報となる。
「……一番警戒すべきは彼女か。」
「うん、新野冬子。旧B小町メンバー、ニノ。カミキヒカルの鉄砲玉の一つにして、カミキヒカルの一番そばにいる協力者。今回、有馬を私に差し向けるためにも一役買っていた疑惑がある。」
有馬による襲撃時、彼女が口にした新野さんという人物。それはほぼ高確率で新野冬子だろう。壱護さんに聞いたところ、アイを刺した犯人と彼女は恋人関係だった。無関係ではない。
「彼女の動向は知っておかなきゃいけない。彼女が実行犯になる可能性は薄いけど、可能性はゼロじゃない。ルビーや私を次に狙うのは、彼女かもしれないから。」
「……にしても、カミキヒカルはひでえ女誑しだな。こんなところで遺伝は感じたくなかった。」
「兄さんはこれを機に反省して誠実に生きてね。兄さんも人生まだまだこれからなんだから、カミキヒカルとは違うってきっと証明できるよ。」
カミキヒカルの殺害計画。これを果たす上での必達事項は「ルビーの生存」「アイの秘密の保持」「カミキヒカルとの親子関係隠蔽」だ。ルビーや姫川は、これからも生きていく。そんな二人が、「殺人鬼の子供」だなんて謗りを受けるのは勘弁願いたい。そして、「アイ」という私たちの推しであり、母親の墓を荒らすような真似もしたくないし、させたくない。
だからこそ、カミキヒカルを社会的に抹殺するという選択肢は初めから存在しない。何らかのトリックを用いて、事故や向こうの過失に見せかけて肉体的に抹殺するしかない。
そうだ、私の命を引き換えに奴を殺そう。あとは、奴が私を殺す動機と、殺害するシチュエーションを用意できれば完璧だ。姫川さんには、その手伝いをしてもらうが、罪や風評を被らないように、最大限慎重に扱う。
「……ありがとね、兄さん。」
「どうした、いきなり?」
「いや、私一人じゃ短時間でここまで相手の情報を探るのは難しかった。それに、一人じゃないってだけで心強かった。」
「俺だって、妹一人に戦わせるわけにはいかねえよ。」
私はどうやら、カミキヒカルには成れない。利用するつもりで近づいたのに、すぐに情が湧いてしまう。今や、姫川も私にとっては大切な存在になってしまった。
私は今、どんな表情をしていたのだろう。私の顔を見た姫川が鎮痛な面持ちを見せたところを見るに、酷い顔をしていたんだろうな。
「……今度、気分転換に出かけようぜ。」
「出かけるって……どこに?」
「海。」
約束の日、姫川が私を迎えに来た。
__車で。
「いつの間に免許取ったのとか、いつの間に車買ったのとか聞きたいことはたくさんあるけど……一番気になるのは……。」
「アクアさん、久しぶり。お邪魔してごめんね。」
「アクたん、別に二人を邪魔するつもりはなかったんだけど……って、やっぱり私だけ場違いじゃない?」
「__にいさ……姫川さん。両手に花どころの騒ぎじゃないね。誠実に生きるんじゃなかったのかな?」
「いや、まあ……はは……」
車の後部座席には、不知火フリルとMEMちょが座っていた。
「そっか、可愛い私がいるのに、それだけじゃ満足できなかったかな〜?サイテーだよ姫川さん。」
「やはりお二人はそういう関係?美男美女は目の保養になるわ。いまなら水平線の先に隣の大陸が見えそう。」
「アクたん……」
「まて、アクア。その言い方だと誤解を招きかねない。」
「……じゃあ、話す?私たちの関係。この2人なら、芸歴も長いし口も固いでしょ。」
私は相変わらず女の子を侍らせている姫川に少しムカついたので、誤解を招くような発言して揶揄った。その上で、この誤解が長続きすると面倒ではあるので、2人には私たちの関係をバラしても構わないかなと判断した。
私が死んだ後、姫川と私の血縁関係を知ってる人が少しはいた方が、彼の傷に寄り添ってくれる人も増えるだろうから。姫川の周りには、たくさんの人がいてほしい。私はどうなってもいいから。
「……アクアは俺の妹だ。腹違いの。」
「「え?!」」
「ってわけで、裏では兄さんって呼んでるの。これ、オフレコね。」
海に向かうまでの車内、口を開いたのはMEMちょだった。
「ルビーは大丈夫?」
「有馬の件、だよね。正直だいじょばない。私が有馬を庇ってることもあって、少し面倒なことになっちゃってる。」
「そう……なんだ。アクたんは、恨んでないの?かなちゃんのこと。」
「恨むわけがない。だって、私のせいだから。有馬があそこまで追い詰められたのも、なにもかも。」
MEMちょの顔が悲しげに歪んだ。そんな顔をさせたくはなかったが、この質問にはしっかりと答えるべきだと思ったから。
「MEMちょはさ、最近のルビーのことどう思ってる?」
「……正直、わからない。最近のルビーは何でも1人でやっちゃうから、私はもう必要ないんじゃないかなって思っちゃうこともある。」
「ごめん……。」
「でも、感謝してるよ。私、アイドルになるのが夢だったから。」
「今のルビーの急進的なやり方を、私はあまり評価してない。そりゃ、妹が人気になるのは嬉しいけど、有馬やMEMちょを蔑ろにはしてほしくなかった。」
「……ごめんね、アクたん。こんな話を振っ__」
「__兄さん!前!!?」
「俺もう車運転するのやめるわ。怖い。」
「ハート弱っ……」
姫川の運転は盛大に事故った。警察に連絡などをして事故の処理を済ませた私たちは逗子の海岸に座っていた。
「兄さん、ああ見えて繊細だから……」
「アクたんと一緒だね」
「私はそこまで打たれ弱くない。」
私は海を眺める。ザァザァと押しては返す波の音が心地よかった。なぜ、ここまで私は海に心を奪われるのだろう。
そんなふうに私がぼうっと海を眺めていると、不知火フリルが近づいてきた。
「アクアさん、どうして黒川あかねさんと別れたんですか?」
「ちょ!不知火さ__」
「いいよ、MEMちょ。話せない話じゃないから。」
不知火フリルのどストレートな質問に、MEMちょはギョッとして慌てていたが、私はそれをある意味ではチャンスだと思い口を開く。
「……私は、あかねに甘えすぎた。私と一緒にいると、あかねは不幸になる。だから、別れた。もう二度と、関わるつもりもない。」
「彼女、幸せそうだったよ。少なくとも、私はそう思った。」
厄介だな。不知火フリルの性格上、このままだとお節介で復縁を画策されかねない。なんとかしてわかりやすい"もう終わっている"という理由を考えなくては。いや、それどころかこの二人が"私"を軽蔑して離れていくようなものの方がより都合がいいだろう。私が死んだ時、泣いてほしくないから。
……私は目に星を宿す。騙すための演技をするために。最低な設定を自分に付与するために。
「……でも私は、汚れすぎた。あかねのそばにはいられない。そんな私のそばにいたらあかねの品位まで、落ちてしまうから。」
「それって……」
MEMちょが私が望んだ通りの反応を示す。
「無理なんだよ、私みたいなのが……綺麗なままでこの芸能界で売れるなんて。兄さんやあかね、不知火さんやルビーみたいな才能がないんだから。」
私は彼女の中に生まれた誤解を、さらに確信を強めようと演技する。
「あ、アクたんってまだ17歳……だよね?」
「うん。酷い話だよね、ほんと。」
私は自嘲気味に笑う。目には黒い星が浮かぶ。騙していることに罪悪感はあるが、この嘘を信じて私から離れていってもらうことが目的なのだ。私はこれから死ぬのだから、私のことを大切に思ってくれてる人は少ないほうがいい。だから、私をどうか軽蔑し、嫌ってくれ。そのためなら、この罪悪感も喜んで享受しよう。
私は色んな人と仲良くなりすぎた。だから、最低限の人間関係だけを残して全てをここでゼロにしたいのだ。いつかはしようと思っていたことなのだが、ちょうどいい。
「「……。」」
二人は何も言えず、黙り込んでしまった。無理もないだ__
「え……?」
私を抱きしめる二つのぬくもり。見ると、私は左右から抱きつかれていた。右にMEMちょ。左に不知火フリルだ。
「辛かったよね、気づいてあげられなくてごめんねぇ……」
「きっと黒川あかねさんは、その程度のことじゃアクアさんを見捨てたりしないよ。話してみるべきだと思う。」
「え、え?」
私は困惑していた。気持ち悪いとは思わないのか、身体で仕事をとってくるような女を。自分の実力で勝負せず、身体ですべてを掴んでおきながら、被害者ヅラする女のことを。
そして私は、思い出す。MEMちょはあり得ないほどのお人好しだ。不知火フリルも、普通の感性で生きていない所謂面白い女だ。引くどころか、悲劇のヒロインとして彼女の中で得点が上がってしまったかもしれない。
「アクたん、ごめんねぇ……ごめんねぇ……」
「め、MEMちょが謝ることじゃ……」
そんなふうにしていると、1人でしょげていた姫川がやってきた。
「眼福だな……。」
「見せ物じゃない。」
私の嘘とはいえ、さっきの話は外部に漏らされては困る。だから私は口止めをした。想定以上にお人好しな二人のことだ。多分黙っててくれるだろう。
「あと、絶対にあかねには何も言わないで。引き合わせようとか考えないで。」
「「は〜い。」」
「どうだった?」
「……兄さんとはドライブ以外で出かけたいと思った。」
二人を家まで送った後、私は姫川と二人で夕食をとっていた。
「それより……二人を誘ったの兄さんだって聞いたよ。なんで誘ったの?」
「アクアが最近思い詰めてるのは見てわかってた。だから、少しでもその荷を下ろしたいと思ってな。あの二人なら適任だと思って声掛けたんだ。」
「ふぅん……。」
どうやら、姫川が二人を誘ったのは鼻の下を伸ばしたわけではなく、私のためらしい。私のため、か。悪くない響きだ。
「まあ、おかげで少しは気分が軽くなったよ。ありがと。」
嘘である。軽くなんてなっていない。それどころか、余計に復讐がしづらくなって焦りそうだ。私が死ぬと、このままじゃお人好しの二人は確実に悲しむ。これじゃダメだ。このままじゃ……。
「嘘だな。アクア、お前何か隠してるだろ……復讐についてのこと。」
「……あはっ、表情に出てた?」
気を抜くとすぐこれだ。やはり私はアイにもカミキヒカルにもなれない。姫川に見破られるくらいなら、及第点すらとれやしない。
「でもダメだよ、兄さん。なんでも答えを聞くのは。自分で見つけないと。じゃなきゃ、いつかどこかで悪い女に騙されちゃうよ?」
「……努力するよ。」
ごめんね。兄さん。
私の地獄への道を敷いていることに、まだ気づいてほしくないんだ。
第六話【満月】
満月の日は、月の引力によって海面が上昇する。まあ、目で見てわかるような変化ではないのだけど。
「来てくれたんですね、カミキヒカルさん。」
「もちろん、ファンだからね。」
あれからまたしばらく時が経った。私も18歳になり、高校の卒業も目前。
「にしても、意外ですね。あなたのことですから、駒を使って私ぐらい簡単に消せるかと思ったんですが。」
「……ふふ、なんのことやら。」
当然奴はしらばっくれる。当然だ、彼の殺人の証拠なんてこの世には一つもない。殺人教唆も、立件することができるほどの証拠がない。
今日、この日まで。
「__これ、何かわかりますか?」
私はSDカードを一枚をこれみよがしにカミキヒカルの前に突き出す。
「なんだい、それ?」
「あなたってプロ意識が足りてないですよね。芸能人と会う時、ただ少し変装するだけなんて。」
私は、目に星を宿す。それは、嘘をホントに変える目。
「このSDカードには、あなたが死に追いやった人々の__事故死などで処理された人々が死ぬ前に、お忍びであなたと会っていた時の隠し撮り写真が集められています。集めるのには時間もお金もかかったんですよ。」
「意味がわからないな。それがなんの証拠になるんだい?言いがかりにしかならないよ。警察はそんなお遊びには__」
「そうですね、警察は暇じゃないですからこんなお遊びには乗っかりません。」
カミキヒカルの目に、疑問が浮かぶ。私がなんのつもりなのか、測りかねているようだった。
「バカで、暇な人……たくさんいるんですよ。現代には。」
私は笑う。お前なんか怖くないと、お前を__
「法律はあなたを裁けない。だから私はネット上に種を蒔きます。あなたの真実を暴くための。」
「無駄だよ、所詮ネットは__」
「バカと大人の遊び場。だけど今は、ネットはエンタメの主戦場になりつつありますよね。ネット上に転がったオモチャは、消費者もクリエイターも見逃さずに食べ散らかします。」
__お前を、破滅させられる。
「芸能事務所の若手社長が、連続殺人に関わっているかもしれないという"陰謀論"。そして、それをこじつけられる証拠とは名ばかりの断片(フラグメント)……暴露系や世直し系の過激な配信者たちはまず噛みつきますよね。想像してくださいよ、あなたの家に毎日朝から晩までいろんな人が襲撃してくるんです。もう安心して眠ることはできないですよね。」
「……だが、その場合は道徳的優位はこちらにある。世間は僕に味方するよ。」
「いえ、味方するのは司法とオールドメディアだけです。今の病んだ世間は、無関心を貫くか、守られているあなたを"何か後ろ暗いことがあるんだ"と攻撃するでしょうね。無数の悪意が、あなたに食いつきます。」
私の手に持っているこのSDカードは、実のところ空っぽである。カミキヒカルのわずかな痕跡など、私は手に入れることさえ叶わない。
「……ふふっ、あはは!」
「何がおかしいんですか、あなたはもう詰み__」
ドスと、私の胸に何かが突き刺さる。
「馬鹿だなぁと思っただけだよ。ダメじゃないか、アクア。こんな薄暗い、誰もいない場所を交渉場所に選ぶなんて。」
「……クロスボウですか、法規制品なのに……よくもまあ。」
「有馬かなのことで学ばなかったのかい?僕はいつでも君を殺せる。そんな僕に交渉を仕掛けた時点で、君は危機感が足りていなかった。まるで、疑うこともなく玄関を開けて刺されたアイのように。」
彼は私の手からSDカードをひったくると、それをパキッと二つに折り曲げてポケットにしまった。
彼の背後に立つのは、新野冬子だ。どこに隠れていたのか、クロスボウを手にこちらを冷たい眼差しで睨んでいた。
「__この女誑し。」
私は笑った。私たちの勝ちだと。
「……笑った?」
「遺体はどうしましょうか。」
「__凶器が特定されても面倒だね。矢は抜いた上で、それぞれ海に投げ捨てよう。」
薄れていく意識の中、引きずられる感覚を味わいながら私は目を閉じた。あとのことは、彼がうまくやってくれるだろう。
浮遊感を感じ、最後に目を開く。
「月が……綺麗、だなぁ。」
ゴッ
グチャ
ボシャン
アクアから届いたメールには、位置情報が添付されていた。俺はそこへ向かい、アクアが仕掛けたのであろう"カメラ"を回収する。
「……もっとはやく気づければ、何か変わったのか?アクア。」
カメラは、アクアの殺害とその遺体の遺棄について話し合い、実行するカミキヒカルと新野冬子の姿を映し出していた。
俺はそのカメラを警察に届ける。前後の文脈もしっかりと撮影されていることから、カミキヒカルがSDカードを処分したことから彼にはアクアの論じた事故や事件についてなんらかの後ろ暗い事情があることは読み取れるだろう。そこから捜査を進めれば、流石に証拠が一件かニ件は出てくるはずだ。有馬かなと新野冬子を利用した星野アクアへの計画殺人、そこに何かしらが加われば、終身刑……もっとうまくことが運べば死刑も望める。
「でも、博打がすぎるだろ……アクア。」
そうだ、これは大博打だ。最悪の場合、アクアが死んだ上で何も余罪が明かされず、奴が10年かそこらで出てくる可能性もゼロじゃない。全てが水の泡になるのだ。アクアのことだ、それもわかりきっていたはずだ。ならばどうして……。
「__信頼が重いよ、お前は。」
あとは俺次第、ということだ。俺が全てをうまくやってくれると信じているのだ。
最終話【星】
アクアの遺体が発見されたのは、俺が警察に例のビデオを届けた一週間後のことだった。遺体は主に頭部が酷く損壊していたが、歯形や腹部の傷痕、それからルビーとのDNA鑑定によってアクアだと確定した。
カミキヒカルは逮捕後、本件に対してのみは素直に自供し、反省するような態度を見せていたが、俺が警察に対してカミキヒカルが幼少期から演劇に明るいことを伝えていたため、警察はそれを演技だと辛うじて見抜くことに成功した。新野冬子は容疑を否認して喚き散らしていたが、ルビーの面会などを経て壊れたのか、次第に自供を行うようになった。
カミキヒカルの過去の殺人教唆について、証拠となるものはなかなか見つからなかったものの、彼の手駒となった者たちの情報を俺が警察へ引き渡したことで、いくらかの綻びが見つかり、そこを突き詰めることで数件は殺人教唆として立件された。すべてではない。
判決、終身刑。惜しくも死刑には届かなかった。だが、これで奴は塀の中から出ることはない。これで全てが終わったのだ。
そう安心しきった顔で俺は、警察に護送されながら法廷を出たカミキヒカルを目で追った。そして、彼が群衆の中から飛び出してきた男によって刺されるのを見た。
カミキヒカルは、死んだ。殺したのは、アクア推しの男だった。
有馬は真実を知ってショックを受けていた。自分はずっとカミキヒカルの手の上で踊らされていたのだと知って、そのカミキヒカルがアクアを殺したと知って。
今は彼女は精神病院にいる。気が狂ってしまったわけではない。ただ、今の状態の彼女はいつ自殺を図ってもおかしくないから、それを防ぐためである。
アクアが、彼女の生存を願った。だから俺は自分に出来得る最善手を打たなきゃいけない。
黒川は狂った。黒魔術やオカルトに傾倒し、アクアの蘇生を試みようとしている。一度俺の元にもやってきた。兄である俺の遺伝子さえあれば、より確実にアクアを"産める"とかなんだとか言って。だから彼女も精神病院にぶち込んだ。だが、すぐに出てきた。治ったとかなんとか言って。絶対治ってないが、もうこれ以上手の打ちようがない。
他にも、周囲の人々は大きな喪失感を抱えることになった。葬式の後、メルトが「俺、アクアのこと好きだったんだと思う。」と涙ながらに零したのを今でも覚えている。「お前に妹をやるつもりはなかったぞ」なんて言えるほど、俺は元気じゃなかったから、その時は「そうか」ぐらいしか言えなかった。
……ルビーのことだよな。大丈夫だ。アクアが死んですぐの時は本当に酷かった。すごく荒れてたよ。アクアの葬式にも出なかった。そりゃそうだ、カミキヒカルに全てを奪われたんだからな……ルビーは。
でもカミキヒカルの死後、ルビーはアイドルとして再び走り出した。苦しみも絶望も全てを飲み込んで、彼女は一番星のように輝いた。アイと同じように。
ルビーは「私の輝きが天国まで届くように」が口癖になっていた。アクアと母親と、せんせに届けるんだって。
__ところで、"せんせ"って誰だ?
「……だから、これからも見守っといてくれよ。アクア。あいつらのこと。」
俺は手を合わせるのをやめ、立ち上がる。「星野家の墓」と掘られた墓を背に歩き出す。
俺の部屋は、暗くて埃っぽかった。シンクには、放置された洗い物が残されている。俺は喪服を脱ぐのも面倒で、そのままベッドに倒れ込んだ。視界がぐるぐると回る。
「……俺だって寂しいよ、アクア。」
涙は出ない。もう枯れた。
「すぐにでもそっち行きたいけど、お前のことだからまだ早いって言うんだろうな。まだ、あいつらの面倒を見てくれって。」
作り笑いすらできない。心はひび割れた。
「……もう一度」
それでも心は叫びたい。声を絞り出した。
「__もう一度、兄さんって……その声で、呼んでくれよ。」
だが、姫川大輝は逆行しない。彼は、取りこぼした過去を変えることはできない。この喪失を抱えて生きていくしかない。
2等星は砕けて、散った。
自給自足しなきゃって思って久しぶりに書いたけど、なんでこんなバッドエンドになったんだろう。
悲しくないか?
悲しい。
でも可哀想は可愛い。
姫川さんも、アクアも。
アクアTS増えて。(定期)
そういえばアニメ3期PVのアクアくんのあのセリフよかったね。
今にも砕け散りそうなガラスの音色みたいで。