姫川大輝は逆行する_が、どうにも弟が弟じゃない。 作:ある日の残り香
ってことでアクア視点を書きます。
深夜テンション継続!!
目が覚めると推しの子供だった。
天国はここにあったのか、そう感じた。しかし、その天国は一瞬にして崩れ去る。
俺が生まれ変わっていた先、星野愛久愛海の性別は女性だったのだ。
もし叶うのなら女の子になってみたいと思う男は多いという話を聞いたことがある。しかし、生憎と俺はそうじゃない。職業柄上、女性に生まれることのリスクやデメリットを熟知しているというのもあるが、この男性として成熟した精神で、赤子から女の子としてやり直すのは、俺にとっては苦痛でしかない。
いっそのこと、性自認が男であるとして乗り切ろうかとも思っていたのだが__
この家族にはもう一人住民が居る。星野瑠美衣。俺の双子の妹として生まれた子供だ。それだけならまだ良かった。
「待って……Nステもう始まってるじゃん!!どうして起こしてくれなかったの!?」
この妹も、俺と同じ転生者である。それに気づいたのは、俺が転生して女の子になってしまったという現実を受け入れた頃だった。アイが寝静まった深夜、アンチと壮絶なリプ合戦を繰り広げているところを目撃したことがきっかけだ。
俺はこの時思った。
__コイツに正体(男であること)がバレたら、消される。
俺の頭は即座に、カバーストーリー……いや、キャラクターシートを作成し始めた。偽りの前世、看護師の女性という存在を。具体的にはこんな感じだ。
私の名前は雪宮五里(ゆきみやいつり)、28才。前世では田舎の病院で看護師をしていました。日々の激務の中、私の疲れ果てた心を癒してくれたのがアイでした。私はやがて、アイを崇拝するに至りましたが、そんな中で発表されたアイの活動休止……私の生活から、光が消えました。その結果、過労と憔悴により私は凍った水たまりに気づかずに転んで死んでしまいました。
自分で組み上げておいて吐き気がする。雨宮吾郎をもじって作った名前に、同情の余地しかないエピソード。この最低暴君の妹から家族として認められるにはこれくらいのエピソードがなければ難しい。そう判断しての決断だった。
流石に名前や年齢はまだ出す必要はないだろうとして、エピソード部分だけを話したところ、妹……ルビーの反応は思っていたどれとも違った。
「そう……なんだ。」
そう、神妙に頷くだけ。それでも、拒絶されなかっただけヨシとしよう。そう思ったが、よくよく考えれば俺はこれから先の人生、この設定を守りつつ"女の子"として振る舞い、成長していかなければならないことが確定したのである。
俺の、雨宮吾郎の尊厳はこの瞬間消失した。
それから紆余曲折ありながらも、俺とルビーは成長した。俺に関して言えば、もはや俺が誰なのかもはやよくわからない。俺は、いや私は誰だ?雨宮吾郎か?雪宮五里か?もはや俺の精神は解離性同一性障害一歩手前まで到達していた。
ルビーの方は相変わらずだ。ただ、あの日から日に日によく甘えてくるようになった。もしかすると、前世から家族の愛というものに飢えていたのかもしれない。そう思うと、少し同情の気持ちが湧いてきて、つい甘やかしてしまう。
明日は、ついにアイが夢見たドームライブ当日だ。俺もルビーも、首を長くして待っている。アイが夢を叶える瞬間を、絶対に見届けるんだ。それは前世からの願いであると同時に、今の、アイの子供としての自分の夢でもあった。
俺は、アイを救えなかった。
それからの日々は、まるでバラバラになったパズルのように連続性を持っていなかった。ただ、面としての記憶が偏在するだけ。
"私"たちは高校生になった。ルビーとは同じ高校、だけど違う学科に入学することにした。私はこの学校生活で素晴らしい青春の日々を送ろうだなんて考えてない。私は、復讐のために生きているのだから。
かつて共演した有馬かなと再会した。私が女だと知るや否や、変な声で発狂してて面食らった。聞いてもその理由は教えてくれない。
彼女の出演する「今日あま」に参加して、メチャクチャにした。出演したのは鏑木プロデューサーとの関わりを作るためだった。だけどメチャクチャにしたのは、あの現場で便利な道具のように扱われる有馬を見て、少し苛立ったからだ。結果として上手く収まったが、なんであんな博打をしたんだろうか。
鏑木プロデューサーに接触した私は、復讐に繋がる手がかりを求めた。正直、ここで身体を売ることになってでも情報を得る覚悟があった。芸能界に足を踏み入れた以上、その程度の覚悟ならすでにしていた。だが、そのような展開にならずに済んだ。その代わりに、恋愛リアリティーショーに参加することになった。ある条件付きで。
私は、"俺"を再び呼び起こした。あの事件以降、壊れ、錆びついてしまった雨宮吾郎を。今回の撮影における契約、「男性として参加し、適切なタイミングで正体をバラして場を掻き回す舞台装置となること」をこなすためには、男だった前世の記憶を生かして男になりきる必要があったのだ。
普段の学生生活では普通に女子の制服を着て、女の子として生活している。そのため、身バレによる番組のネタバレを防ぐため、出演にあたって私は変装を行った。黒髪のウィッグにメガネ、それから体格を誤魔化すために服装はパーカーを着用し、特徴的な目を隠すためにカラコンも入れた。一見すれば星野アクアなどとは思えないほどの完成度だ。
この姿を見たルビーが「その格好は誰かを参考にしたりしたか」などと聞いて来たが、雪宮五里の設定に基づいて"勤務先の同僚"に似せたと答えた。それからルビーの様子が少し変わった気がする。その"同僚"についてよく聞いてくるようになったので、少し設定をちゃんと練ったほうがいいだろうか。しかし、真の前世である雨宮吾郎を同僚であるということすれば設定を練る必要がないと気づき、そのようにした。ルビーの様子がさらにおかしくなった。「その同僚をどう思っているのか」などと聞いてくるようになったのである。その時の目が少し怖かった。
ともあれ、撮影は順調に進んでいた。だが、その中盤で事件は起こった。有り体に言えば炎上。演者の一人、黒川あかねが番組内で起こした出来事が過度に演出され、視聴者の怒りを買ったのである。
結論から言えば、"俺"は歩道橋から身を投げようとするあかねを助けていた。雨宮吾郎としての意思が、これ以上目の前で、手の届く範囲で誰かを死なせたくなかったのだ。
それから、演者のみんなと協力して火消しを行い、この先の撮影は何事もなく終わるかに思われた。俺の性別カミングアウトも、今やれば更なる火種になるとして番組側から止められることとなった。
黒川あかねが、アイを演じるようになってから、"私"による星野アクアエミュも、"俺"による"斉藤海"というこの番組用に作った存在のエミュも崩壊した。思えば、この時から俺の毎日は連続性を持った一つの永続に変わったのかもしれない。
日に日に、俺は黒川あかねにペースを崩されていったが、ようやく落ち着きを取り戻した頃、黒川あかねにからくりを聞いた。
彼女の才能は、復讐に使える。手放したくない。
だが俺は女であり、この番組では嘘をついている。カップル成立はありえない。騙していた以上、友人関係を築くことも難しい。すなわち、詰みだった。
最終回、俺はフラれるためにあかねの前に立つ。
「俺、いや__」
震える手で、ウィッグとメガネを取る。
「"私"は、実は男じゃない。騙していて、ごめんなさい。それでも、私はあかねのことが人として好き。だから、もしよかったら私と友達に__」
私がそこまで言ったところで、あかねが距離を詰めてくる。
「うん、知ってる」
次の瞬間、唇を奪われた。今世におけるファーストキスだった。
「__アクアちゃん、私と付き合ってくれる?」
「ふぁ、ふぁい……」
この瞬間、今まで作りあげてきた"私"の設定も崩壊してしまった。
「お姉ちゃん、最近変わったよね?」
「まあ、うん。世間的には"俺"としてのキャラの方が認められてるっぽいし……いや、言い訳だな。"俺"の状態じゃないとあかねに押し負ける。俺はヒロインなんかじゃない、せめて俺がタチ側でいたい。」
「そ、そっか。大変なんだね、お姉ちゃんも……でも、最終回のお姉ちゃんすっごく可愛かったよ!!」
「……慰めになってないよ、ルビー。」
星野アクア
女の子や男の子を反復横跳びしたせいで、もはや自分が誰なのかも曖昧になりかけてる男、いや女?
あかねショックによって、世界にメス顔を晒すが、同時に男として"彼女よりも男らしくありたい"という欲求が復活し、男口調だけど女の子っぽさもある曖昧な生き物に変化する。
あかねと付き合った以上、あかねよりは男らしくありたいという男心がある。今後これが打ち破られたら完全に女の子になってしまう。
感情演技の時、後ろから圧をかけてくる亡霊が一人増えてる。
星野ルビー
姉がセンセの同僚だった。もしかすると恋のライバルだったかもしれない。そう思っていろいろ探りを入れてみたけど、センセへの恋心はなさそう!でもセンセってやっぱりモテモテだったんだね。少し複雑。
お姉ちゃんは私のだから、センセと一緒に私が独り占めしたい。センセとの結婚式でお姉ちゃんにスピーチしてもらうんだ!
黒川あかねにお姉ちゃんとられちゃった(脳破壊)。まァいいかァ!よろしくなァ!
星野アイ
死亡済み。本編同様の流れ。たぶんあの世でアクアについてのネタバラシを受けたら爆笑する。
有馬かな
脳を破壊され続ける女。ノンケ。新生B小町のセンター。
あなたの推しの子イベントも無事発生。アクアがイケメンに見えている。たぶん、今後出会う男を見定める時の基準がアクアになる。でも、アクア本人に"恋愛感情"を抱くことはない。アクアへの執着は強いが、あくまでも恋愛感情ではない。"アクアに似た男"が現れたら少しまずいかも。
黒川あかねへの嫉妬はあるが、恋が絡まないため、本編ほどではなく、健全な範囲に収まる。
黒川あかね
アクアちゃんは私のもの。
アクアちゃんの本質は、どちらかというと今ガチで見せた"斉藤海"が近いんじゃないかと推測している。
クラスメイト
アクアの良さは俺が1番よくわかってる。
ああみえて少し抜けてるところが可愛いんだよな。
女の子が好きなら、告白すればよかった……。
よく妹の教室に行ってるから、休み時間に話した記憶がない。
五反田監督
「早熟。女の子なんだからオッサンの家に上がるのそろそろやめたほうがいいぞ。週刊誌に撮られて、「星野アクア、枕か?!」とか題をつけられたら困るだろ。」
「別に。その時はその時だし、そもそも私は裏方志望だから関係ないもん。」
「はぁ〜〜〜〜〜〜(クソデカため息)」
続いてくれ。