姫川大輝は逆行する_が、どうにも弟が弟じゃない。 作:ある日の残り香
深夜テンションの時か、眠い時にしかこの作品のネタが思いつかないため、ガバがどんどん増えていく。タグに「ガバガバ設定」とでもつけておきましょうかね。
最終話まで幾つの設定が無事に変わらず残っているのだろう。
誰か私よりもちゃんとした人がこの題材を書いてくれないだろうか。(他力本願)
ってか、最終回どうやって着地させましょうね。
無計画に走り出したのが仇になってきましたねえ〜!!
ハッピーエンドの保証ができないのはそういうことです。
アクアと別れてから1時間経ったか経たないかという時のことだ。俺のスマホに電話がかかってくる。アクアからだった。
「もしもし姫川だ。」
「姫に……いや、姫川さん、困ったことになった。」
《今なんて言いかけたのお姉ちゃん!!》
《アクアちゃん説明して。姫川さんと何があったの。》
「困ったこと……?」
電話越しから既にまずいことになってるのはわかった。しかし、身に覚えがない。一体どういう状況になっているのだろうか。
「説明してくれアクア、何が起きた?」
「お前の家から出てくるところを週刊誌に撮られた。」
「はぁ……はあ?!」
そういえば今のアクアは女の子だったし、俺とは異性だった。接している感じが前回とほぼ同じすぎてすっかり感覚が麻痺していた。
それにしても週刊誌に撮られるなんて、本当に運がない。
「ど、どどどどどうすればいい!?あ、あくあくあ、アクア!!」
「……姫川さん、責任取るって言ったじゃん。」
《お姉ちゃん?!!》
《アクアちゃん……?浮気したの……?》
《アクア、あんた……ほんと、男を見る眼ないわね。》
「待ってくれ、言語を圧縮しすぎたせいかすごい誤解を生んでないか?」
「とにかく苺プロに来てくれ。本題はそれからだ。」
電話が切られたが、電話越しに聞こえる阿鼻叫喚と、電話越しでも届く冷たい殺意に足が竦む。防刃ベストぐらいは着込んだ方がいいだろうか。俺はとりあえずコップ一杯の水を飲んだ。
苺プロダクション。新生B小町やぴえよんなどが所属する芸能事務所。俺はそのオフィス前へとやってきた。全ては俺の軽率さが招いたことであるとはいえ、俺は命を失うかもしれない。
神様仏様、どうか俺の命をお守りください。そう念じながら俺は事務所内に足を踏み入れた。
「いらっしゃい。姫川くん。うちのアクアに何をしたのか説明してもらってもいいかしら?」
斉藤ミヤコ。この事務所の代表であり、アクアとルビーの母親である女性だ。彼女の声は冷たく、俺は弁明を間違えたら彼女によって東京湾に沈められるのだろうということを本能的に理解した。
「姫川さん。酷いじゃないですか。人の恋人に手を出すだなんて。もう、殺すしか……」
黒川あかね。俺の後輩であり、アクアの彼女。優しく穏やかな子だと思っていたが、今の彼女が抱える闇は悍ましく、俺の魂を喰らわんとしているかに思えた。
「姫川さん、だっけ?お姉ちゃんに手を出して、生きて帰れると思ってるの?」
星野ルビー。アクアの双子の妹であり、俺の妹でもある女性だ。シスコンだという話は前々から聞いていたが、想像以上の圧である。とりあえず、今手に持ってるペンチは何のために持っているのか、聞きたくもないし、とりあえず置いてほしい。
「アクアぁ……俺ァ死にたくねえよ……」
「被害者ぶるな、今後の身の振り方を考えるぞ」
中心に正座する俺とアクア、それを囲むように立つ皆様。遠巻きから眺めるだけで関わろうとしない有馬かなとMEM。俺という罪人を裁く審判場が、今ここに形成されていた。
「まず、ひとつ聞くね。姫川さん。」
黒川の声が響く。その他には、いつのまにかバットが握られていた。
「アクアちゃんと寝た?」
「寝てないです。そっちの意味じゃなくとも、一睡もしてないです。」
「……アクアちゃん、彼は嘘をついてる?」
「一睡もしてないかは知らないけど、一晩中話してただけだ。手は出されていない。」
この瞬間、全員が安堵のため息をついた。だが、状況は変わっていない。あくまでも最悪の状況は避けているが、未だに俺の行動は彼女らにとって、無罪とは言い難い行いである。
「それで、ウチのタレントが週刊誌に撮られたわけだけど……未成年の女の子を夜、自室に連れ込んだのは危機管理が足りてないんじゃないかしら?」
斉藤社長の正論が飛ぶ。それを言われてはぐうの音も出ない。
「アクアが未成年の女の子だという認識が抜けていました。大変申し訳ありません。」
「お姉ちゃん、やっぱりコイツ処そうよ。」
「ルビー、ステイ。ペンチはダメだ。」
カチカチと鳴るペンチの音に、骨が芯から震えているかのような錯覚を覚える。トングで威嚇されるパンはきっとこんな気持ちなのだろう。
それから何度かの尋問を経て。
「なるほど、つまり姫川さんとアクアは稽古中にどこか他人じゃないかのような親近感を覚え、試しにDNA鑑定をしたら父親が同じだった……と。」
「はい、そうです。」
「……うん。」
なんとかこの結論まで辿り着くことができた。できたのだが……
「……そういうことだったんだ。」
黒川はすごく深刻そうな顔をして頷くばかりだし。
「え、私のお兄ちゃんってこと……?この人が……!?」
ルビーは受け入れ難そうに俺の方を見ているし。
「「……!?」」
有馬とMEMは固まって動かないし。
で、問題はここからなんだよな。
「週刊誌の記者とは何とか穏便に"話し合い"をする機会を設けるって方向で一致したけど、記事になるまで残り3日。それまでになんとかこちらの答えを決めなければならない。」
「なるほど……」
週刊誌には今回の件について説明をしなければならない。説明をしなければアクアが俺と浮気していたということになる上、俺に関しては未成年者を家に連れ込んだことになるので双方の社会的信用が損なわれる。しかし逆に全部正直にいえば大手マスコミも食いついて俺の過去も星野家の過去も掘り返され、下手をすればアイの事もバレる恐れがある。その結果としてカミキヒカルが吊し上げられる可能性も否定はできないが、この場合はアクアとルビーにとってはこの世で何よりも大切なアイの名誉が貶められてしまう。
そういえば、そもそもアイとアクアたちの関係についてはこの事務所の人間はどの程度が把握しているのだろうか。ルビーと斉藤社長はおそらく知っているだろう。だが、有馬とMEMが果たして知っているのかと言われれば、そんな気はしない。そこでアクアに耳打ちする。
「この中で、お前らの母親について知ってるのは?」
「……。」
アクアは声には出さず、目線だけでルビーと斉藤社長を示す。なるほど、俺の予想通りか。そうなると、ここでアイについて喋ってしまうわけにはいかない。
最初に口を開いたのはアクアだった。
「俺は、たとえ誤解を生んだとしても黙っておくべきだと思う。俺たちが血のつながった兄妹であることを公表するのは、父親が不明であることを含めてリスクが大きい。」
「でもそれだとお姉ちゃんは浮気者で、姫川さんはロリコン扱いされちゃうよ?」
「アクアちゃん、考え直そ?」
「……そうだアクア、その方向で行くと黒川にも迷惑がかかるし、それどころかまだ終わってない『東京ブレイド』にも影響が出かねない。あまり得策とはいえないな。」
「じゃあどうするんだよ。」
俺は、深呼吸した。一つだけ、いいアイデアが思いついたと思ったのだ。
「バーター記事を出すんだよ。」
「……なにか他にスキャンダルでも持ってるのか、姫川さん?」
「俺の家族に起きた出来事の真実についてだ。」
よくよく思い出せば、俺はアクアとルビーさえ死ななければあとはどうでもいい。カミキヒカルさえ何とかしてしまえば、それでいいのだ。
前回の人生において、アクアを殺害した後のカミキヒカルはその死と共にいくつかの余罪がポロポロと出てきたはずだ。それはきっと、カミキヒカルか犯罪者であるという刷り込みが社会に行われた結果、捜査が容易になったお陰なのではないだろうか。
映画の内容に怒り、カミキヒカルはアクアを刺した。ならばカミキヒカルを怒らせ、刺される相手を俺にしてしまえば、アクアたちは無事にカミキヒカルを現行犯逮捕させることもできるのではないだろうか?
そうだ、俺名義でカミキヒカルにちょっかいをかけ続ければ、アイツはアクアやルビーではなく俺に注目し、アイツの悪名がアイや星野兄妹に波及する前ににすべてを終わらせることができるじゃないか。
「俺の両親の心中事件について、週刊誌に情報を小出しにして出す。週刊誌ってのは基本、その巻だけで取材した情報を出しきっちまうし、スキャンダルに関しては連続性がないことが多いから、その巻だけ買った奴が次の巻を買う可能性は低い。」
「何言ってるのかわからないけど、すごくバカなことを言ってるのはわかるぞ。姫川さん。」
「名付けて、週刊連載『姫川・上原夫妻心中事件の謎に迫る』だ。」
俺は胸を張ってこのアイデアを提唱した。だが__
「……姫川さん、多分それだと情報が釣り合わない。アクアちゃんと姫川さんのスキャンダルの方が、ゴシップとして強い。」
「え?」
「あんたにとっては両親のことだし、デカいことだと思えるのはわかる。わかるが……一般の人々からしたらそこまで注目度が大きい出来事じゃないだろ。」
「……確かにそうか。」
世間はそんなことより若い二人の下衆た話の方が好きらしい。
「も〜!結局どうするの!お姉ちゃんが姫川さんに脅されてヤってたって話にする?」
「ルビー、関係各所に迷惑かかるからそういう嘘はダメだ。」
「あ、あく、アクアちゃんの貞操が、がが……」
「あかね……!?おい、しっかりしろ!」
場が混沌としかけたとき、パンパンと手を叩く音が聞こえた。斉藤社長が鳴らした音だった。
「あなた達、難しく考えすぎよ。そもそも人様の不幸で金を稼ごうだなんて週刊誌なんかに下手に出て、上手く行くわけがない。強行姿勢でいくわ。」
「強行姿勢って?」
「そもそも。あなたたちに後ろ暗いことがあったかしら?ただ二人で話していただけでしょう。それに、記事が浮気の方向で攻めようというのなら、黒川ちゃんが彼女として弁護をすればマトモな人は黙るわ。姫川さんの未成年淫行で攻めようとするなら、姫川さんが必死に身の潔白を証明すればいいのだし。」
「「「「……。」」」」
「所属タレントに非があるなら事務所は謝罪する。でも、記事が嘘偽りなら事務所は徹底的に抗戦する姿勢を示すわ。事務所はね、タレントを守るためにあるの。」
「……すみません、焦って冷静な判断を失ってました。ミヤコさん、迷惑をかけます。」
「……ほんと、俺の軽率な行いのせいでおたくのタレントにご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
そういえばよくよく考えたら俺はアクアに手を出してなかったし、元はと言えば俺の家の前に何故か張り込んでいた週刊誌側の方に問題があるじゃないか。そんな連中のためにわざわざ重要な情報である俺と星野姉妹が血縁関係であるという話をバラすわけにはいかない。
こうして、結論は出た。事務所側としては「遊びに行ったのは事実であるが、やましいことはしていない。当事者だけでなく恋人からの証言もあるし、もしも写真と記事の掲載断行するならばこちらは法的措置をとる」との姿勢を示した。
週刊誌側は、リスクとリターンを天秤にかけ、今回は記事を掲載しない方向で決定を出した。ただし、しばらく俺とアクアをつけ回す週刊誌の記者がおり、真偽を確かめようとしていたようだが、それも徒労に終わったようだ。こうして俺たちは自由の身となった。
俺やアクアが清純であるべしとされるアイドルをやっていたならば、こんな上手くはいかなかっただろう。アイドルであれば、異性との密会は真偽問わず記事として売れる上、一度炎上すれば火消しはほぼ不可能であり、野次馬が野次馬を呼び記事が売れ続けただろうから、リスクとリターンを比べてもリターンが勝っていたのだろう。この時ばかりは、アクアがアイドルじゃなくて本当に良かったと心の底から思った。
そんな事件から数週間後、俺はふらふらと街を歩いていた。ただの買い出し、一人暮らしをする人間としては当たり前のルーティンをこなしていた。そうして歩き、人影が少ない場所を通った時、背後から声がかかる。
「動かないでください、姫川さん。」
背後に立つ人物の気配を、直前まで感じることができなかった。それほどまで気配を殺して俺に近づいてきた後もわからなかった。
「何のつもりだ__」
「__黒川。」
黒いフードを被り、白い花束を抱えた黒川あかねが、そこにいた。
「ちょっとお話ししたいなと思いまして。」
あかねの目に、星が煌めく。
姫川大輝
徹夜1日目で呼び出し。頭が回っていない。
ルビーからの第一印象(第一印象ではない)は最悪。
星野アクア
徹夜1日目で頭が回っていない。誤解を招く発言を連発する。
寝てないので、うっかり姫川のことを姫にいと呼びそうになる。
このあと、あかねの機嫌を取るためにオフの日に数日連れ回された。
星野ルビー
お姉ちゃんの貞操が無事だったから一安心。
でもまさか異母兄妹がいるなんて思ってなかったのでびっくり。
それはそれとしてお姉ちゃんは私のなんだけど?
黒川あかね
ルビーからの連絡を受け、苺プロに急行した。すると朝帰りアクアと遭遇。問い詰めると姫川さんと一夜を明かした(文字通り)と供述。
もしも姫川さんがアクアちゃんに手を出していたら殺してしまおう。それからアクアちゃんと一緒に心中しよう。そんなことを思っていた。
姫川大輝はアクアの異母兄妹である。アイはアクアたちの母親であり、アクアの目の前で殺された。アクアは芸能界に殺したい人間がいる。それはアイ殺害の関係者である可能性が高い。きっとそれは父親。アクアたちと姫川さんの父親は同一人物である。姫川大輝の戸籍上の父親である上原清十郎はアイの事件当時すでに死亡している。姫川大輝の両親の心中には、姫川さんだけが知る"真実"がある。
姫川さん、ちょっと突いてみるか。
有馬かな
え、アクアと姫川が異母兄妹……?
MEM
ちょっと胃痛。
斉藤ミヤコ
頼りになる大人。かなり胃痛。壱護は早く帰ってこい。
カミキヒカル
何も知らないからまだ笑っていられる。
車で轢かれるか、あかねに刺されるか、車で海に落ちるか、普通に逮捕されるか、アクアと相打ちになるのか。それは私もまだ知らない。
次回も、ライブ感で走り抜けろ!