姫川大輝は逆行する_が、どうにも弟が弟じゃない。 作:ある日の残り香
ふと見かけた。アクア一周忌の文字。
もう3年ぐらい経った気分だった。私の推しはみんな死ぬし、その中でも復讐者属性を持った君はほぼ確実に死ぬんだろうなって思ってたよ。せめてどうか死後安らかに。
みんな言及してるだろうけど、姫川さんの葬式の時の絵が悲痛すぎて可哀想。姫川さん救われて欲しい。(叶わぬ願い)
この二次創作では救ってみせるからね。アクアくん。姫川さん。
俺は失敗したのかもしれない。漠然とそのような気がしている。
今朝からアクアの顔色が悪かった。飛行機で酔ったのかと思ったが、そもそも飛行機は酔うものではない。だが、飛行機では気圧の差などで体調が悪くなる人間が多いというのは事実。そうならないために飴ちゃんを舐めたりするのだが、アクアはそれを忘れていたのだろうか?
そんなふうに思っていると、黒川がそれを心因性のものだと言い当てた。この子本当に探偵みたいだな。
それに対して、アクアの答えは"幽霊が死体を探して欲しいと乞うてくる"というものだった。なにこれ、ホラー?
流石の俺でも、これが俺たちを心配させないための冗談だとわかっている。思えば、前回の人生では黒川のSNS投稿を見る限り、この時点でアクアからは憑きものがとれ、しばしの平穏を過ごしているはずだった。
だが、アクアの復讐を中途半端に妨害した俺(俺の母親処女懐胎発言等)によって、上原清十郎が俺の本当の父親ではないことは俺の言葉の文脈からバレており、上記の平穏期間をスキップしてしまったのだ。
本来なら、この旅行も心の底から安らげるものだったのだろうと考えると、罪悪感で胸がいっぱいになる。
ルビーたちは撮影に向かい、俺たちはフリーになった。よくよく考えれば今の状態の俺は、客観的に見れば百合に挟まる男であり、抹殺対象となりうる。単独行動すべきだろうか。そう思い、申し出るとアクアから止められる。
「いやだ。姫にいも一緒がいい。」
服の裾を引っ張りながらそんなこと言われたら、もうその言葉に甘えるしかない。少し離れたところでアクアが黒川に何かしらの苦言を呈していたが、俺の耳には届かなかった。
「あかね、流石にアレはキツイものがある。」
「よくできました、アクアちゃん!あれなら誰でもイチコロだね☆」
「アイになれば誤魔化せると思ったのか?」
「……ごめん。でも、アクアちゃんにとっても大事なことだから。」
「はぁ?」
アクアは自分が生まれた病院に行きたいらしい。幸いにも原付免許は所持していたので、電動キックボードで向かう。
到着すると、アクアは確認したいことがあるからと一人で向かった。そんな時、黒川が声をかけてくる。
「姫川さん、今日のアクアちゃんのことどう思いますか?」
「心配だな。あんな沈んだ表情をして……これも、俺が復讐を遂げれば全て解決するのかもしれないが……」
「そういう意味じゃなくて……」
黒川がため息をつく。
「いつもより、甘えん坊じゃないですか?アクアちゃん。」
「ん……ああ、確かにそうかもしれないな。」
「珍しいんですよ、アクアちゃんがあんなに人に甘えるのって。」
「……。」
「この旅の間は、たくさん甘やかしましょう。アクアちゃんのこと。」
「……ああ。」
そんなふうに話しているとアクアが戻ってくる。
「おかえり、何の確認だったの?」
「俺が見た幽霊の話。」
「アクア……」
本当の悩みを打ち明けて欲しい。そう伝えようと覚悟を決めた時だった。
「あ。」
アクアが短く、驚いたように声を発すると山の中に入っていった。
「えっどこ行くの!?」
「アクア!?」
「いた。」
「「なにが……!?」」
アクアの背中を追い、山の中、獣道を進む。
「あの時の医師の幽霊だ。手招きしてる。」
「こんな真っ昼間に?!」
「あ、アクア!ビビらせようとしてるにしては淡々としすぎてて別の意味で怖いぞ!!」
アクアは止まらない。後ろの俺たちには目もくれず、進み続けた。俺はこのあたりから、アクアの幽霊話を少しだけ信じ始めていた。
「この辺か。」
そう言って辺りを見回すアクアに、妙な空気感を感じる。本当に、幽霊を追いかけてこの場所まで来たような……ああ、アクアの隣に白衣の眼鏡男の幻覚が見える。これ絶対プラシーボってやつだ。
「……ないじゃない。死体なんて、どこにも。」
アクアがボソッと呟く。その声は、拍子抜けたような、安心したような……乾いた笑い声に似ていた。そのアクアを見て、俺は少しばかりの恐怖心を抱いた。
「埋められちゃったのかな、吾郎さん。ならいっか。誰にも知られないなら、それで。」
続けで小さな声で呟かれたその言葉を、普段はそんな言葉は聞き取れないはずの俺はしっかりと聞き取れていた。まるで、アクアに他の誰かがとり憑いたかなようなその声色と顔が、印象的すぎて。
「あとは……いや、あそこには行かなくていっか。」
アクアがそう呟くと、手を合わせてから向き直る。
「ごめん、二人とも。戻ろう。」
そうして、メンコがひっくり返るようにソレはいつものアクアに戻った。今になって思えば、この時点でアクアは壊れていたんだと思う。
その後はルビーたちのMV収録に同行した。アイドルのMVってお金かかってるんだなぁと思った。(小並感)
そこから解散となり、ルビーは黒川と共に宿に戻った。俺はアクアが心配なので、もう少し見学すると言ったアクアを待ってから宿に戻ることにした。
「アクアちゃん、もしアイドルだったらウチで可愛く撮ってあげられたのにー」
「俺はアイドルを推しますけど、自分がそっち側に立つのは興味ないです」
「もったいなーい」
アネモネさんに絡まれている。しかし気持ちはわかる。俺の妹は可愛い。アイドルをやってもきっと普通に通用する。
俺の脳内には歌って踊り、アイドルとして振り付けをこなすアクアの動きが再生されていた。これは__完璧で究極なアイドルだ。
「姫にい、ニヤけてんのキショい。」
「お前がアイドルとして舞台に立ってる姿を妄想してた。」
「うざ。」
「あら、見る目があるわね姫川。」
「有馬、お前もわかってくれるか。」
「お前ら……。」
そんなこんなで、まだ残っていた有馬も連れて3人で宿を目指して歩き始めた。そんな時、パトカーが数台走っていくのが見えた。
「パトカー?なんか事件でもあったのか?」
俺が呑気そうにそう呟いた時、アクアの顔色が変わった。
「アクアっ!?」
次の瞬間には、アクアはパトカーを追いかけるように走り出した。俺と有馬もそれを追いかける。
辿り着いた先では、規制線が張られ始めていた。
「なんだなんだ……遺体でも見つかったのか?」
「そんな……」
「アクア……?」
アクアの方を見れば先ほどよりも顔を白くして、震えていた。
「なんで、こんなところにいたの……?」
「おい、アクアしっかりしろ……!!」
「アクア?!」
呼吸が浅くなり、数度嘔吐をすると彼女は意識を失った。
「もしかして……」
俺の脳裏によぎったのは、アクアが話していた幽霊のこと。あの幽霊は死体を見つけてとアクアに頼んだ。思えば、正確な位置ではなくとも、ここは昼に来た場所と近い。だとすると、アクアは本当に幽霊を見て__
「ちょっと!姫川、しっかりしなさい!アンタまで顔青くしてどうしたの!!アクアを宿まで運んで寝かせるわよ!!」
「……!あ、ああ!悪い、気が動転していた。」
俺はアクアを背負って、宿を目指して歩き始めた。アクアの身体は、びっくりするほど軽かった。俺の横には心配そうにアクアの顔を覗き込む有馬がいた。
宿に着くと、まだ誰もいなかった。フロントに確認すると、ルビーと黒川は遺体の第一発見者となったため、警察で事情聴取を受けているらしい。
ひとまず、アクアたちの部屋の鍵を使ってアクアを部屋に回復体位で寝かせた。それから、俺のスーツケースにもしもの時のために入れていた氷嚢シートとタオルなどを使用する。
アクアが目を覚ますまでの間、俺はミヤコさんや関係者に事情を連絡していた。これ以上のことは、同性である有馬に任せた方がいいだろうし、自分は部屋に戻るべきかなどと考えていると、アクアが目を覚ました。
「ここは……?」
「目を覚ましたか、アクア。ここは宿だ。お前はさっき、急に吐いて倒れたんだ。大丈夫か?」
「アクア、あんた大丈夫……?」
「そう……」
アクアの返事は、力無く感じた。
「あんた、本当に大丈夫?喋り方が昔に戻ってるみたいだけど__」
「あそこの遺体は……?」
「俺たちはブルーシートとかもあって確認できなかったが、第一発見者は黒川たちらしい。身元はまだわからない。」
「あかねたちって……まさか、ルビーもいたの?」
「ああ……今事情聴取を受けてるが、きっとすぐ__」
「あああああああ!!!!」
「……アクア!?」
アクアが発狂し、頭を掻きむしり始める。
「この無能……っ!!保身女……っ!!なんで、なんで私なんかが生きてるの……っ!!ああっ!!うあぁ……っ!!!」
「落ち着け、アクア……くそ、どうすれば……」
ここまで取り乱したアクアを見たことがなかった。有馬も横でどうすればいいのかと慌てふためいている。
今のアクアの姿は、自分の存在そのものを憎悪しているような、とても痛々しくて、悲しい姿に見えた。その身体は小さいはずなのに、黒く重く広がるオーラのようなものに包まれているように見える。
「俺は……どうすれば……」
この旅の間は、たくさん甘やかしましょう。アクアちゃんのこと。
ふと、黒川の言葉が脳裏をよぎった。
そうだ、俺はアクアのお兄ちゃんだ。アクアが辛いなら、その苦しみを受け止めて、慰めてやるのが兄としてあるべき姿だろう。
俺はアクアをただ抱きしめた。
「……大丈夫だ、落ち着け。アクア。」
「……ぅ、離してっ!!私なんか、私なんか……っ!!」
「もう、消えてしまいたい。」
この旅の最中に二度、アクアが稀に自分のことを"私"と呼び、口調も変わるところを目にした。いつものアクアとは違う雰囲気を纏った、そんな彼女を含めて、俺は抱きしめる。
「お前にどんな事情があるのか、俺は知らない。だがお前は、俺の妹だ。お前がいくら自分を責めようが、少なくとも俺だけはお前の味方だ。」
「……かんけい、な__!!」
「俺だけじゃなく、きっと黒川もそうだ。そこにいる有馬も。ここにいないルビーもミヤコさんもMEMちょも皆、お前の味方だ。」
彼女が暴れたことで、顔には爪でいくらか切り傷ができていた。それでも、俺は彼女を離すことはない。
「だから、落ち着いて深呼吸をしろ。ここに、お前の敵はいない。アクア、大丈夫だ。お前は、俺の妹……星野アクアなんだ。かけがえのない存在なんだ。だから、自分を否定するのは……やめてくれ。」
アクアは段々と、暴れるのをやめた。俺はアクアの背を優しく撫でてやった。しばらくアクアは堰を切ったような泣いていた。それから少しして、泣き疲れたのか船を漕ぎ始めた。
寝るのなら横にしてやるべきだと思い、寝かそうとするも離れようとしない。有馬と顔を見合わせる。有馬はスマホを取り出し、その光景を写真に収めた。
「おい。」
「そばにいてやんなさい。お兄ちゃんなんでしょ。」
「あのな……」
「こういう辛くてたまらない時、1番近くにいて欲しいのは肉親なのよ。」
有馬が、どこか遠くを見るような、過去を振り返るような目でこちらを見据える。しかし、俺が言いたいのはそういうことじゃない。
「ここ、お前とアクアが今日寝る部屋だろ。こいつを俺の部屋に連れていくのも問題があるし、どうすんだ。」
「……。」
結果として、俺は自分の部屋にアクアを連れ込むこととなった。ミヤコさんと相談した結果である。
「現役のアイドルと同室に男がいるよりは、こっちの方がまだ世間体として言い訳が効くわ。もしも週刊誌にリークされても、兄妹ってことをバラした上で体調不良で離れられなかったと言えばまだ何とかなるもの。」
「そういうもんですかね。」
というわけで、アクアは俺にくっついたまま寝ている。下ろそうとしても、下ろそうとした途端に力が入って下せなくなる。寝ぼけているのか、それともなんらかの筋肉の反応的なsomethingなのか。
幸いにも、こんな状況なのに俺の息子は無反応。流石に血の繋がった妹に欲情するほどの気狂いではなかったようだ。別にアクアに色気がないわけではない。確かに胸はないが身体は柔らかいし、髪の毛はサラサラだし、シャンプーの匂いもする。単に、血縁補正によって興奮しないようになっているのだ。妹じゃなかったら、そりゃもうお猿さんになってただろうなと思う。
風呂に入ろうにも、アクアを下ろすことができない。着替えることもできない。今日は風呂キャン界隈の仲間入りか。俺は途方に暮れながらも布団を敷く。
アクアの体調を考えると、布団に入って眠らせるべきだ。しかし、今のアクアは俺から何があっても離れない。この状況でアクアを布団に入らせるには、俺も一緒に布団に入る必要がある。
仮に普通の兄妹でも、一緒の布団で寝るなんてのは幼稚園か小学校低学年までが限界だろう。だが、今の俺は20才で、こいつは16才だ。よほどのシスコンでもない限り一緒に寝るなんて不可能な年齢である。
__俺は天井のシミを数えていた。
結論から言おう、俺は今アクアが上に乗った状態で寝ている。寝返りなんて打とうものなら、アクアが下敷きになってたぶん骨とかを折ってしまう。だから、極限まで眠気を抑えていた。
横向きに寝ようとするよりも、こちらの方が仮に寝てしまった時にも上に錘がある分、寝返りをすることを抑えられる。そういう計算である。
「少し重いな……。」
アクアの身長は160程度、体重はこの身長ならおそらく50〜59程度だろうか?いや、もっと軽いのだろうか。たしかに見た目はだいぶ痩せて見える。ちゃんと食べているのか心配になるほどに。だが、役者をやれるくらいには鍛えているはずなので、軽いにしても最低で50kgはあってくれという気持ちでの試算だ。
「ってか、本当に離してくれないな……。」
アクアの頭を撫でながら苦笑する。まるで幼児退行したかのように、アクアは俺から離れなかった。この夜の間ずっと。
「……もう二度と、俺のことを置いていくんじゃねえぞ。アクア。」
そう呟いて俺はアクアの額に口づけをした。
姫川大輝
お兄ちゃんを遂行した。シスコンレベルが上がった。
星野アクア
雨宮吾郎としての人格が完全に機能を停止した。彼によって作られた雪宮五里という設定が、雨宮吾郎を上書きしてしまっていたのだ。さりなちゃん発覚以降、雪宮五里を酷使した結果、ただでさえ種を蒔かれていた解離性同一性障害が悪化してしまう。もはや、雪宮五里は設定ではなく、形象をもった人格となった。
そんな彼女は、せめてルビーのために雨宮吾郎の生存を工作しようとした。だが、鴉に導かれたルビーは"彼"を見つけてしまう。
"私"のせいで、さりなちゃんは深い絶望に堕ちてしまった。それを掬い上げる手立ても、失ってしまった。全て、雪宮五里(私)のせいだ。
もう消えてしまいたい、死んでしまいたい。そんな時、優しい声が聞こえた。私は眠りについた。
目を覚ましたら、きっと"星野アクア"になっている。優しい声に甘えて、"私"は"私"を忘れて星野アクアを演じることにした。
ちなみに体重は46kgくらい。ガリガリ。姫川さん、ドボンです。
黒川あかね
遺体を見つけてしまった。しかも白衣を着ているということは医師……アクアちゃんの言っていた幽霊と一致する。これは一体__
星野ルビー
原作よりと同じ闇堕ち。ただし、特効薬使用不可能。
翌日、更なる追い討ちが襲いかかる。
有馬かな
心配させられたから、あとでこの写真でアクアをおちょくろうと思っている。流石の姫川も実妹に手を出すなんてことはないだろうと信じている。手を出したら軽蔑する。
それにしても、最近は俺っ娘のアクアばかり見ていたから、女の子らしいアクアは久しぶりに見たわね。昔はあのアクアのことはお姉さんっぽいなって思ってたけど……いや、なんでもないわ。
ここからどうなるのか私もわかんないです。
でも、どんな黒歴史になろうが完結はさせます。
駄作でも完結させる覚悟、それこそが人間の可能性。
女体化アクアと姫アク♀、増えろ……っ!!