キヴォトスにおける男子生徒についての説明を終えた日の夕方、日も暮れて暗くなってきたアビドスの寂れた街並みの中、本来ならば帰宅している筈のトキオの姿がそこにはあった。
「全く…思い出せていたから良かったが、こんなにも簡単に命が散りかねない出来事が起こる等、度し難いにも程があるぞキヴォトスよ…」
左腕には気絶しているセリカを抱えてスマホでケイゴへと連絡を入れたトキオは、セリカを誘拐しようとして気絶させた直後にトキオによって制圧され気絶したカタカタヘルメット団達に目を向け、直ぐに興味を無くした様に近付いてくるケイゴの歪な気配に目を向ける。
「………」
「落ち着け、自分が担当している地区だったからと言って何でも出来る訳じゃないのは分かりきっている事だろう」
月明かりがあるのにも関わらず昏い気配を纏って現れたケイゴに対し、ため息を吐きながら落ち着く様に宥めるトキオ、腰に掛けたシャムシールに添えてある手から、いつでも抜き放ち気絶しているカタカタヘルメット団へと振り抜きかねないのを悟っての説得だった。
「無駄な殺生なんぞしようものなら全てが台無しになりかねないのはオマエも知っているだろう」
「…」
「もう直山場が来るのだからその怒りはそれまで取っておけ、それよりもさっさと受け取って帰らせてくれると有難いんだがな?」
「…すまん」
そう短く告げて滾らせていた殺意を押し込めると、トキオからセリカと彼女の銃を受け取ったケイゴは学校へと送り届ける為に歩き出す。
一人残ったトキオは気絶しているカタカタヘルメット団を一応凍死したりしない様、彼女達が乗ってきていた車両へと詰め込み乗せてあった毛布(長さ足りてない)を掛けてやり、物思いに耽るかの様に空に浮かぶ巨大なヘイローを見上げた。
「不審な動きにならない様にとはいえ、面倒な制約をしてくれたモノだなまったく…」
そう呟いた後、トキオは視線を戻して帰路へと着くのだった。*1
〜翌日〜
何時もの如くマトモに進まないアビドス復興に向けた定例会議、拉致入学やらマルチ商法やらアイドルグループやら銀行強盗やら…『提案』というよりも『ネタ』が飛び交う何時ものグダグダ会議にキレたアヤネを宥める為、連日ではあるが柴関ラーメンへと足を運んでいた。
因みにケイゴの提案はその希少性故に給付金やらなんやらで小金持ちも多い男子生徒をターゲットにしたブートキャンプであり、自身の経験を元にジムの様に鍛え上げ、その対価として金を貰うという内容だったのだが、一見皆も良さそうだと思ったこの意見を当のケイゴ自身が初期費用やら各学校へのある意味内政干渉に成りかねない事に気付いた事で却下した。
そんな訳でアヤネのご機嫌取りをしながら皆してラーメンを食べていると、殆ど客がバッティングしない柴関ラーメンに珍しく客が入ってきた。
「あ、あのぅ…」
(うん…?)
なんだかアビドスではやけに珍しい気弱な声に思わずラーメン*2を啜りながらもカウンター席から視線を向けたケイゴは、その何処か見覚えのある顔をしたゲヘナ生にラーメンを食べる手を緩めながら注目する。
…因みに一人だけカウンター席に居るのは先日の底無しレベルに喰らい続けたケイゴの事を、後になって知り胸焼けを起こした後輩達(それと先生)が席を分ける事を申し訳なさそうに提案し、ケイゴ自身も食事は楽しめなければダメだという考えの元、一人だけ分かれて食べる事となったのである。*3
「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「…こ、ここで一番安いメニューって、お、御幾らですか?」
(あ〜…所持金少なくてリーズナブルなヤツ探してる感じか? まぁ、それなら当たり引いたなあの子)
そういえば表に値段表記されてなかった事を思い出し、そんな中この人情溢れる柴関ラーメンを引き当てた運の良さに関心するケイゴ。
尚食う速度は落ちてはいるが一切食べる事をやめない辺り食い意地が張っており、側から見れば暴食している様に見えるのに体型は平均的という全世界の女性に喧嘩売ってる様なヤツである。
「えっと、一番安いのは……580円の柴関ラーメンです! 看板メニューなんで、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
(んえぁ…?)
セリカから値段を聞いて表情を明るくしたと思いきや、何故か外に出て行く姿に二人して首を傾げていると、今度は外に居たらしい三人のゲヘナ生を連れて戻ってきた。
どうやら所持金が六百円しかなく、一杯を四人で分け合いながら食べれる様な場所を探していたのだとか。
(ダニィッ!?)
だがそれが逆に食い意地の張った大食いの逆鱗に触れたッ!!
「大将替え玉、後あのケチ臭い食い方しようとしてる馬鹿共にオレの奢りって事で追加の三杯やってくれ」
「あいよっ!!」
「えっ、ちょ、ちょっと何のつもり!?」
唐突に見ず知らずの他人から送られてくる奢りのラーメンに、思わず驚くリーダー格の女子に他の三人も言葉には出してないが同じ様に驚いている。
「バーロー、ただでさえ食事ってのは人間が生きる上で必須の行動なのに、それに手を抜くのは人間を辞めるって宣言してる様なもんなんだよ、それにここの美味いラーメンをそんなみみっちい食い方するのは常連として許せないんでね」
「いや、流石にそれで三杯も奢られるのはちょっと…」
「いいか、よく聞けよ…食えないってのは辛いぞ? 確かに人間その気になれば雨晒しの地べただろうが適当な廃材で風除けにして寝る事だって出来るがな、飯だけは下手なモノ口にしようものならその時点でアウトな場合だって多いんだぜ? アビドスに至っては残飯さえあるだけマシな環境だぞ? そんな場所で折角美味い飯が食えるんだ、食える時に食っておかないで後で後悔するのは嫌だろう?」
矢鱈と食に対して力説しているケイゴだが、その目元には力強さよりも影が差している為に薄っすら口元が笑っているのもあって奇妙な迫力があり、対面している四人は思わず何も言えずにコクコクと頷くだけだった。
「ほらほら、折角食うって時にそんな圧迫されてちゃ折角の飯も喉を通らなくなっちまぜ」
「む、それはダメだな、飯を食う時は楽しんで食べないと人生の損だ」
「特製柴関ラーメン四人前、お待たせしました!!」
やけに圧が強いケイゴの説得が続くかと思われたが、芝大将とセリカが四人のラーメンを持って来た為中断され、緊張が解れたのと目の前のラーメンから漂う食欲を誘う香りに思わず視線が釘付けとなる。
「うん? どうした、折角出来立てなんだから早く食べた方が良いぞ? それとも猫舌だったのか? 冷ます為の小皿ならテーブルの奥側にあるぞ?」
「…はっ!! な、なんだか色々唐突過ぎたけど奢られてもう現物出されたのに食べないのは流石に失礼過ぎから皆いただきましょう、いただきますっ!!」
何やら早口になりながらも箸を手に取り手を合わせて挨拶をするリーダー格のゲヘナ生、その姿勢は不良が多いと言われるゲヘナ生とはとても思えない位しっかりと背筋が伸びたものだった。
「それじゃあいただきまーす!!」
「…いただきます」
「いっ、いただきますっ!!」
「おう、しっかりと味わえよー」
四人が食べ始めたのを見て自分も届いた替え玉を食べ始めるケイゴ。
因みにケイゴが柴関ラーメンに来る際は事前に連絡を入れており、替え玉の事前予約をしていたりする…本当に某美食の暴食に匹敵する食欲である。
ケイゴはちょくちょくアビドスから他の学区へ出張して色々稼いでいるのもあり中々稼ぎはあったりします…まぁ、その大半がカイザーに取られるので常にストレスが溜まっている状態なんですがね…。
後感想無いのが寂しいけれど、個人的にはあまり乞食っぽい事するのは好きじゃ無いから言い出せないジレンマ…でも感想あるとやる気にも繋がるので、あれば嬉しいので出来ればお願いしたいです。
そういえば前回ポロッと言ってた主要メンバー以外の男子生徒とか皆さん知りたかったりしますかね? 多分掲示板回とかでちょっと触れる程度の内容でしょうけど、アンケートとかとってみた方が良いのかな?
主要メンバー以外の男子生徒について知りたいですか?
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知りたい
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興味無い