一生同じデッキを擦れる世界で生きていく   作:コダワリー

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2 モノトゥーンカードは、プライドを賭けるカードゲーム

 「モノトゥーンカード」、それは譲れない一つの信念(モノトーン・プライド)を賭けた熱い戦いの軌跡。

 そんな語り出しから始まるカードゲームアニメが、俺の前世では大流行した。

 いっときは社会現象にすらなったそのカードゲームを、俺は幼い頃からプレイしていたのだ。

 当時から俺はこだわりの強い方で、転生した今でも使用するデッキ、<ヘルフィナイト>デッキは俺が初めて組んだデッキである。

 それを大人になるまで、常に使い続けてきたのだ。

 

 <ヘルフィナイト>デッキは、モノトゥーンカードのアニメで敵の一人が使うデッキである。

 その敵はなんというか、()()()()()()()()()()()

 とにかく濃いキャラ付けと、敵としてのかっこよさを併せ持つことでアニメの代表的な人気キャラの一人となったのだ。

 しかし、決して主人公やライバルという物語の主役というわけではない。

 主人公と因縁のある悪の組織の幹部といった立ち位置だ。

 使用する<ヘルフィナイト>デッキはその特徴的な運用方法から、人気は高い。

 だが、常に強化される主人公やライバルのデッキと比べたら、強化の優先度が下がる立場だ。

 

 カードゲームは、基本的にインフレを避けて通れないゲームである。

 毎月何かしらの商品が発売され、一年、ないしは数年に一度がらっと環境が変化するものだ。

 その中で、強化がされない過去のテーマというのは少しずつインフレに置いていかれてしまうもの。

 残念ながら前世の<ヘルフィナイト>も、俺が転生する時点で最後に強化されたのは数年前という有り様だった。

 更にはその強化の中に当時基準でも微妙としか言いようのないカードが含まれていたりして、それが未だにネタとしてこすられたりと、扱いはあまり良くない。

 

 俺自身、使っていく中で何度も何度も改修を試みて、混ぜ物をしたりして現代環境でも<ヘルフィナイト>を擦れるよう努力した。

 しかし数年前の遺物としか言いようのないデッキは最新の環境デッキにても足も出ず。

 <ヘルフィナイト>で大会に出ると暗に「やる気がない」とバカにされるほどだった。

 とはいえ、幾らこだわりが強くとも当時の俺にとってあくまで「モノトゥーンカード」は遊びである。 

 <ヘルフィナイト>デッキ以外にもデッキを組んだりするし、大会で使うデッキもその時の環境デッキかそれに通用するデッキを選択していた。

 

 それでも、思ってしまうのだ。

 <ヘルフィナイト>を現代環境でも運用できたら、と。

 果たしてその考えは、間違っているだろうか。

 少なくとも俺は、最後まで<ヘルフィナイト>を諦めることはできなかった。

 そして――転機が訪れたのだ。

 

 俺は、「モノトゥーンカード」が世界中でプレイされる世界に転生した。

 転生したのは特に深い因縁とかはない現代日本の一般家庭、衣食住には困ることはなく、転生者としてはかなり恵まれた環境と言えるだろう。

 残念ながら前世でよく見ていたアニメ世界への転生ではなく、「モノトゥーンカード」がプレイされている以外は全く見知らぬ世界への転生だったが。

 おそらく、俺が死んだあとに新規アニメシリーズでも始まったんじゃないだろうか。

 所々で過去作アニメの残滓を感じるし。

 初代アニメのエースカードが「伝説のカード」扱いだったり、とか。

 んで、大好きだったモノトゥーンカードの世界に転生し、さらには使用デッキが<ヘルフィナイト>だと知った時、俺は運命を感じた。

 神様が、俺にこの世界で生きて行けと言っているかのように感じたのだ。

 

 以来、俺は<ヘルフィナイト>の純構築を擦って生きている。

 この世界に生まれ落ちて十六年、一時も他のデッキに浮気したことはない。

 カードゲームで無数にデッキがあるにも関わらず、一つのデッキに拘るとどうしても飽きが来てしまう事がある。

 だが俺は、飽きることなく<ヘルフィナイト>を擦った。

 それこそが、この世界で生きるということだと思ったから。

 

 結果として、周囲から変わり者だと思われてしまっても、俺はこの生き方を辞める予定はない。

 そのためにはまず、俺の前に現れたカードの妖精”ファイアリィ”に関する対処が必要だ。

 なにせ、放っておくと俺はファイアリィのパートナーとして事件に巻き込まれてしまう。

 毎日どこかしらで世界が滅びかけているというこの世界で、事件に巻き込まれたくない、というのは無茶な話なのだが。

 デッキに異物が入り込みそうな立場は、遠慮願いたかった。

 では、どうするのか?

 別にファイアリィ自身に問題があるわけではない、俺のこだわりの問題だ。

 ならば、多少ファイアリィの助けになるよう動くことは、別にやぶさかではなかった。

 

 

 □

 

 

「というわけで、刑事さん、いつも通りこのファイアリィって子をよろしくお願いします」

「あいよ」

『……どうにかする方法があるって聞いたからついてきたけど、そのどうにかする方法って、警察にボクを突き出すことだったの?』

 

 ――というわけで、後のことは警察に任せることにした。

 いやだって、これが一番確実な方法だし。

 ジト目を向けてくるファイアリィに、俺は説得の言葉を向ける。

 

「まぁ落ち着けファイアリィ。俺は君をデッキに入れるつもりはない、けど君はダークストーカーの事件を解決するうえで大事なカードだ。だったら、ふさわしい持ち主を探すべきだろう」

『そ、そう言われるとそうかもしれないけど……』

「迷子の親を探してもらうなら、警察に任せるのが一番だ」

『人を迷子扱いしないでくれよ! 犯罪者扱いよりはいいけどさ!』

 

 落とし物扱いしないだけ、誠意ある対応だと思ってもらいたいものだ。

 というわけで刑事さん――俺が普段お世話になってる女刑事に後のことをおまかせする。

 刑事さんは背丈は俺と同じくらいだけど、それ以外は全体的にがっしりした体格の女性だ。

 性格は一言で言うと……雑。

 

「……あー、探すのはいいんだけどさ、持ち主が見つかるまでユヅミくんのところであづかってもらえる?」

「え、俺のところですか?」

「ユヅミくんから”因果”を検知しちゃってさぁ。いやまぁその子の相棒に選ばれるくらいなんだから当然だけど」

 

 そんな刑事さんに、近くのファミレスで話を聞いてもらってるのが今。

 時刻は夜の二十時、学校からの帰りにファイアリィがやってきて、ダークストーカーを倒したあとに刑事さんを呼んで……って感じだからもうこんな時間だ。

 禁煙でタバコがすえないからって、ストローをタバコ代わりにしていて大人っぽいんだか子どもっぽいんだかわからない刑事さんから”因果”の話がされる。

 

『因果って?』

「ファイアリィの世界だと、そういう話はなかったのか? この世界でモノトゥーンカードに纏わる事件に巻き込まれた時、どれだけ事件に深く関わってるかを表すのに”因果”って言葉を俺達は使うんだ」

「ピンチの時に、強い思いでカードをドローしたらいいカード引けたりするじゃん? ああいうのを因果が高まってるって言うよねぇ」

『そ、そうなのかい……』

 

 因果。

 他のカードゲームだと運命力とか呼ばれそうな概念だ。

 

「しかし因果ですか……面倒ですね」

「えー、そう? 事件に深く関われるんだよ? むしろワクワクするのがカードバトラーってもんじゃないか」

「普通の人はそう思わないでしょう」

「ユヅミくんくらいのカードバカで面倒って思うのが、珍しいって話だよ」

 

 そういわれても、これは単純な価値観の相違だ。

 この世界だと事件に巻き込まれることは、”光栄なこと”という考えをする人間がいる。

 解決すれば栄誉と強いカードが手に入ることが多いからだ。

 金銭の報酬だって出る可能性も高い。

 けど、俺は前世オタクの一般人、むしろそういう仕事を面倒だと思う人種だった。

 まぁカードバトルを挑まれたら受けるのはやぶさかではないんだが、積極的に受けたいほどではない。

 だからこうして、ファイアリィを刑事さんに任せようとしてるわけだし。

 

「残念ながら、ユヅミくんの因果はかなり高まってる。あたしに任せて全部解決……とは行かないだろうね」

「自分で探すしかないですか……」

「ま、頑張ってよ。こっちだって周りのプロや”オペレーター”にも声をかけておくからさ」

『と、とりあえずボクはしばらくユヅミの家で厄介になれば良い……ってことでいいんだよね?』

 

 が、そういうわけには行かないようなので、俺は諦めるしかない。

 あくまで一時的にあずかるというだけだし、俺以外にふさわしい使い手を見つけてしまえばいいのだ。

 ああでも一つだけ、ファイアリィには気をつけて貰わないと行けないことがあるな。

 

「そうだファイアリィ、俺の家にいる間はカードになっていてくれないか?」

『カードに? なんで? デッキには入れないんでしょ?』

「別にカードとして持ち歩く分には、流石になんとも思わないよ。ただカードになっておかないと色々大変なんだ」

 

 はぁ、と首を傾げるファイアリィ。

 俺の家には同居人がいるんだが、その同居人がなんというか……アレだからな。

 まぁそこら辺は置いといて。

 

「ただ俺の家の隣は、カードバトラー養成校の名門、プロフェッショナルモノトゥーンアカデミー、通称PMAがあるんだ」

『おお、そこでボクの相棒を探してくれるってことだね? たしか学校ってのは昼に行くものなんだろう? だったら明日早速、パートナーを探そう!』

「いや昼からは探せないぞ?」

『んん?』

 

 なんかファイアリィと話が噛み合わない。

 刑事さんはくつくつと笑っていて、俺はファイアリィと二人で首をかしげる。

 ……ああ、もしかしてファイアリィは勘違いしてるのか。

 

「ああ、俺はそこの生徒じゃないから、昼からはパートナーを探せないんだよ。学校が終わったあとの放課後なら探せるけど」

『……通ってないの!? 家の隣なのに!? それだけカードにこだわりあるのに!?』

 

 まぁ、うん、はい。

 俺の家の隣――本当に文字通り一軒となり――にはカードバトラー養成校がある。

 でも、俺はそこに通っていない。

 なんで通っていないかと言えば……まぁ、これまたとても単純な理由だ。

 

 

「いやだって……入試に使うデッキがトライアルデッキっていう、<ヘルフィナイト>を使わないデッキだったから……入試を辞退したんだよ」

 

 

 俺がそうやって返すとファイアリィは「ああ……」と何か納得したようにこぼす。

 たった数時間の付き合いなのに、この理由だけで納得された!?

 何か釈然としないものを感じながらも、俺は明日の放課後からファイアリィとパートナー探しをする約束をするのだった。




主人公の知らないアニメ世界に転生した感じです、多分新シリーズかなんかでしょう。
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