偶然遭遇したブラックバードに目を奪われた村田
しかし彼の感情は変わらない
自動車はノーマルが一番いいと
メーカーを知っている人間だからこそ良く解っている
しかし またあのポルシェターボに会いたい
どんな人が乗っているのか知りたい
そんなことをぼんやり考えていた村田は
その日に再び阪神高速に上がる
うーん・・
頭から離れへん
あの漆黒のポルシェターボ────
なんやったんやアレは────
チューニングカー?それにしては出来すぎてる
チューニングカーごときに俺は興味あらへん
せやのに────
なんでこんなにも惹かれとるんや────
もやもやする────
仕事が手につかへん
環状────
もしかしたら会えるかな────
ワンチャンいってみるか
ま 会われへんくても カルく気晴らしになるし
\キューッキュキュッ/
\ブルルルルォォォォ/
\ブォオオオオオ/
こっちの方も久しぶりやな
久しく湾岸線クルージングしかしてへんかったし
それすら半年に一回あるかないかやったし
港大橋────
いっつも眺めてるだけやったけど
いざ久々に乗ったらキレイなもんやなァ
地元の大阪港エリアがこうもキレイやとはな
朝潮橋のPA
子供の頃は後部座席から
不思議そうにこの円形の建てモン見てたなァ
おっ・・ココのカーブ・・
こんなジェットコースターみたいやったっけ?
なんか楽しいな
こういう感じのカーブ大好物やわ
阿波座の合流・・
こっから阪神高速環状線や────ッ
この6車線もあるストレート
昼間はこの先の分岐に分かれる車で
右に左に車線変更でごった返しや
でもフシギと事故少ないらしいんよな
ほんで中之島方面
カーブにカントがついててなかなか楽しい
サーキットみたいで非日常を味わえるよな
そら環状族みたいなのも湧くわ
ほーら言ってたら────
\パァアアアアアアアア/
いや ホンダの音じゃないな
直4ターボ・・シルビアがランエボか
そんなとこか────?
\パァアアアン/
白のランエボ・・
ん?まだくる────
\ゲァアアアアアアアアアア/
おい────これってまさか────
くる────!!
\ボォオオオオオオオン/
!!
ポルシェターボ!!
[島と北見]
北見さん あのレガシィ 今朝見た・・
ああ だろうな
オトしますか────?
くくく────好きにしろ・・と言いたいトコだが・・
俺もあの乗り手には少し興味がある
待ってやれ
わかりました
\ボロロロロァアアアアアア/
[村田]
あかん こんなNA165馬力のレガシィの全開じゃア 到底追いつけるわけが────
!?
止まってる まさかトラブル────?
いや ケムリ吹いてないしな
てかむしろ 追い上げてきた────ッ
\ボロロロロ/
一瞬で抜かれた────ッ
何やこの車は────!?
いくらポルシェターボゆーても こんな速ないやろフツーは
\チッカッチッカッ/
ん?ハザード────
俺に向けて────?
[島]
北見さん どうやら反応してくれたみたいですよ あのレガシィ
[北見]
ああ そうみたいだナ
[村田]
なんや 付いてこい言うことか────?
とりあえず付いていってみるか────
せやけど こーやって再び拝めるとはな
夜になったら雰囲気が倍増、いや5倍増ぐらいしとるわ
[島と北見]
でも北見さん、ランエボの彼はどうします?
フン 大丈夫だろう 気付いたらシゲのガレージに戻ってくるはずだ────
それもそうですね では レガシィを先導しましょう 付いてくるかどうかわかりませんが────
もし付いてこなかったら それまでのヤツ ただそれだけだ
\チッカッチッカッ/
[村田]
ここで降りるんか・・?
どこ行くんやろ
んでわざわざ大阪まで来た目的て何なんやろ
\ボロロロロォォォ/
ここ────なんや町工場っぽいとこ
\カコッ/ \バムッ/
おっ 降りてきた────
こっち来る────
俺も────
\カコッ/ \バムッ/
[村田]
あっ どーもーすんません何か付いてきてもーて
あまりにも雰囲気あるもんやから・・
[島]
こちらこそ初めまして いえ 正確には二回目ですかね
[村田]
えっ・・わかっとったんですか・・?
朝の湾岸線で見かけてついランデブーしてしもて・・
あまりにもキレイなポルシェやったもんで────
[北見]
くくく────わかる奴にはわかる 例えクルージングでも そいつがどんな人間か どんな走りをするのか────
[村田]
おっ・・そーですか・・
[島]
僕は東京からこのシゲさんという人の所に 排気系の部品を取りに来まして・・
\パァンンンンンンン/
くくく────キタキタ────
\カコッ/ \バムッ/
[マキ]
島さん北見さん どないしたんすか?そのレガシィ
[北見]
訪問客・・といったところか?
[村田]
まァ・・そんなとこですね・・
あなたは さっき通り過ぎたランエボですかね・・
[マキ]
え!?通り過ぎとった!?
[島]
ええ だからペースを落としてレガシィの彼に合わせたんです
実は朝 彼に会ってまして
[マキ]
あれまァ・・知り合いですか?
[島]
いえ 初めてです 朝 こっちの湾岸線で 彼を見かけまして
走りが普通じゃないなと思って 気になったんです
その時はそれきりでしたが────
偶然さっき環状で再び見かけたものですから
[マキ]
普通じゃないって・・
見た感じノーマルっすよね?このレガシィ
ダクトもないからターボやないし
こんな車で普通じゃない走り────?
[エイジ]
わかっとらんなぁマキ 普通じゃないゆーんは ただ速いだけのことちゃう 運転がものごっつー洗練されとったんやろ
[北見]
その通りだ 流石だなエイジ この男は特別攻めたような走りは何もしてない ただ 目の前のアクシデントに 全く動じず そして流して走る時も 常に車線の真ん中を行き そしてブレない ハンドルもアクセルも一定 とにかく変動がナイ ほんとうに車をわかってるヤツは そーゆー運転をする
[島]
朝 無謀な速度で飛ばしてたランボルギーニがいたんです でも そのランボルギーニは レガシィの彼の目の前で大クラッシュをして────
周りの車がみな パニックになって急ブレーキで避けている中 彼だけは加減速一切なく 最低限のステアリングワークだけで避けていました 一目で普通じゃあないナ と────
[村田]
そうやったんですか(笑) いやあのランボ 絶対あのコーナーでイクな って確信したんで もう身構えとったから 最低限で済んだんですよ
[北見]
そーゆーとこだヨ 並の人間なら そこまでの予測なんかできやしない
[村田]
何か・・たくらんではります?
[島]
いえ たくらみというか・・ ただ どんなドライバーなのか あの時興味が湧いていて────
それきりで終わりかと思ったら さっきたまたま見かけたものですから
[村田]
まさか────ッ 僕も気になって 今日環状来たんですよ!
こんなトコ 滅多に来ーへんのに
[北見]
お前さん 昔何か乗ってただろう
[村田]
バレました・・?
[北見]
くくく────走りを見りゃわかるサ
[村田]
あんだけで────?
[北見]
わかる奴にはわかる──── たとえどんな運転をしていてもナ
俺だってダテに長年チューナーをしていたわけじゃねえ 下手すりゃ走りを見なくても 雰囲気でわかるヨ お前にはそれがある
[村田]
・・
[村田]
確かにそうです 昔ヴィヴィオやらインプやら乗って 山走ってました
でも もういいんです メーカーの完成品を シロートが下手にいじってとか それで意味もない暴走行為したりとか そーゆーのは意味がナイ やってもしょーがないって ある時気付いて 車に対しての情熱みたいなんが プツンとなくなってもーたんです
[北見]
じゃあなぜ付いてきた
[村田]
うっ・・
[北見]
付いてこないという選択もできたはずだ でも今お前はここにいる
[村田]
・・
初めて見たんですよ この彼のポルシェターボみたいな車
[北見]
くくく────そらドーモ
[村田]
あなたが組みはったんですか?
[北見]
まぁ 半分そんな感じかもナ 元々こいつが他のトコに出してたのを 俺が引き継いだんだ
[島]
この人にしか任せられないんです 首都高最速を名乗るからには 他のトコじゃあ 満足に手を入れられません 他にも 高木というボディ職人にも手を入れてもらってます
[村田]
ほなひょっとして、この方もかなりの大御所チューナーさんやったり────?
[島]
この方は北見さんといいます かつてはそうでしたが 今は一線を退き 僕の車 しかも今はエンジンにしか 手を入れていません
[北見]
普段はただの自転車屋だ 前もずっとそうだった アイツが・・あのマシンが・・ 再び俺の前に現れるまでは────
[村田]
あのマシン・・?
[島]
僕と相反する いや 同じかもしれない コインの裏表のような そんな車が 首都高にはいるんです この北見さんが ずっと昔に作り上げ そして今でも現役で走るS30Z──── 悪魔のZと呼ばれる車が────
[村田]
悪魔の────Z────
[島]
見てみたいと思いませんか?そのZ
[村田]
・・
それは────このポルシェターボと同じくらい雰囲気あるモンですか────?
[島]
いえ このポルシェターボ ブラックバードの遥か上を行く 手をのばしても とどかない そんな車です
[村田]
このターボでもえげつないのに この更に上────?
[北見]
フン────決まりだな
[村田]
・・
いや────遠慮しときます もう僕 車の世界に戻る気ないんで
[北見]
くくく────
[島]
とりあえず 一旦僕の助手席に乗って 走ってみましょうか?
[村田]
!? いいんですか!?
[北見]
くくく──── 結局血には抗えないんだヨ
[村田]
だから!僕はもう戻る気は────
[北見]
さァ どうかナ────
[村田]
でも このポルシェターボ────ブラックバード言いましたっけ? それには乗ってみたい いやもし許されるんなら 運転してみたいです
[島]
わかりました そしたらまず僕が運転して あなたが・・えっと お名前は?
[村田]
村田・・村田哲です
[島]
僕は島といいます 島達也です
[村田]
島さんですね
[島]
よろしくお願いします そしてその後 どこかで運転を交代しましょう
[村田]
ありがとうございます! でもガソリン代とか高速代とか・・
[島]
要りませんよ ただ乗ってくれるだけで 構いませんから
[村田]
そんな・・何か申し訳ないですねえ・・
[島]
本当に気にしなくて 大丈夫ですよ そんなのとは比較にならないくらい お金かかってますから 気にしたことなんてありませんヨ
[村田]
ホンマすか・・ ほな そこまで言うんなら 遠慮なく乗らせてもらいますね もちろん絶対壊さんように 運転しますから
[島]
大丈夫です あなたほどの運転なら そこそこの走りをしても きっと壊さないはずですよ
[北見]
機械のコトも ちゃんと良くわかってるツラだしな
[村田]
たったこんだけの時間で そこまで見抜かれますか・・(笑)
[島]
では 行きましょう
[マキ]
あの 俺らはどないしてたら・・?
[エイジ]
ええ機会や お前も一緒にツルんで走ってこいや シゲさんには 俺が言うとく
[マキ]
ああ わかった!ほな行ってくるわ兄貴!
[村田]
ちょ ツルんで走るて 俺そんな飛ばしたりする気は・・
[マキ]
構わんっスよ! フツーに付いていくだけですから 自分のペースで走ってもろて構わんっス!
[村田]
ああ・・わかりました じれったくなったら 先行ってもろて構わんからね
[島]
それでは どうぞ \カコッ/
環状まで出た村田は、読み通りブラックバードに遭遇することができました。
それどころか、乗り手である島やチューナーの北見、更に同じ大阪の、マキやエイジとまで顔合わせするという急展開になりました。
しかし、それでも村田は車の世界に戻る気はないと言います。
ブラックバードのポルシェに乗り、村田に何か変化はあるのでしょうか……?
次回作、ご期待ください!