島とドイツと日本の深い技術話を交わし
遂にブラックバードの半開・全開走行に突入する
その強烈な加速Gの中で
村田は何を感じ、何を思うのだろうか────
\ボァアアアアアア/
[村田]
なんやッ この強烈なトルク感
環状入る時もそやったケド この感覚 普通やない────ッ
[村田]
島さん 今のはアクセル開度 どれくらいですか?
[島]
今ので40%から 50%くらいです
[村田]
半開であんなえげつない加速を・・
とりあえずこの調子でお願いします
[島]
何か感じましたか?
[村田]
何とゆーか そんだけのアクセル開度で ここまで恐ろしいトルク感が ここまで出せるんかと ターボカーで
[島]
このエンジンは先ほどの人────北見さんが組んだんです
地獄のチューナー 北見淳────
[村田]
地獄の────チューナー────?
[島]
ええ 彼の組むクルマは かつて誰にも負けないほど速く そして麻薬的だったそうです でも同時に 誰の手にも負えなかった そのパワー 速いからこそ突然くるスイートスポットの終わり 彼の組んだクルマは 多数の悲惨な事故を繰り返し 地獄のチューナー そう呼ばれるようになったんです
[村田]
ほォ・・
でも納得ですわ・・
麻薬的 その通りです
[島]
チューニングは麻薬・・この世界の人間にとっては 本当の麻薬よりもキク あの人はいつも そんなことを口にしますネ
[村田]
恐ろしい話ですね・・
そんな世界 僕には無理ですわ
[島]
その世界 少しだけ垣間見せましょうか?
[村田]
わかりました ほな 半周だけですよ?
多分 耐えられへん思いますから
\コクッ/ \ボワァアアアアアアアアアア/
[村田]
ぐおっ!!
なんじゃこの得体の知れへん加速Gは!!
RRやから こんだけパワーかけても ホイールスピンせーへん
二駆で こんなトラクション掛けれんのは RRしかない────!!
[島]
その通りです 加速だけじゃないですヨ
\バアァァァァァ/ \バアァァァァァ/
\キュルルルル/
[村田]
うそやろッ こんだけブレーキングしながら このノーズの入りは何や────ッ
[島]
RRの真骨頂は トラクションだけじゃないんですヨ
ブレーキング時のコーナリング ココがミソなんです
首都高でも 湾岸線だけでなく C1 横羽 どこでもイケます
実はコーナリングマシンでも あるんです ただ 扱い方を間違えなければ────
\ボワァアアアアアアア/
[村田]
またキタッ なんじゃこれは どこでも速いとか そんな事はどーでもええ キョーミもない せやけどこのフィーリング これだけはホンモノ────ッ
[島]
ここから長いストレートですよね それじゃあ ブラックバードの真骨頂 ここでお見せします
[村田]
カンベンしてくれ────ッ
\ボワアァァァァァ/
[村田]
なんやコレは 頭オカシイやろ フロントの接地感があらへん
こんな状況下で この男はなにをこんな 冷静な顔して 平然と操っとるんや────ッ
もういい──── もういいケド────
モノは経験や サイゴまで────
[島]
今300km/hを 超えました ここからが真骨頂なんですが ストレートは ここで終わりですね
[村田]
300km/h超えても 加速Gが 止まらんかった
なんて恐ろしい車なんや────
[島]
村田さん どうでしたか このブラックバードの走りは
[村田]
麻薬的────その言葉が ワカるような気しました 僕にはこの世界のことは 多分わかりません せやけど ここまでトリコになるワケは わかりました どーゆー世界に トリコになってるんかって
[島]
そうですか・・
では 次は乗り手に まわってみて下さい 見方が変わると思います
[村田]
わかりました・・
[村田]
にしても キレイな車や さっきまで 300km/hまで一瞬で スッ飛んでいってたようには 思われへん せやけど 何故か納得はする 魔力────みたいなもんか────?
\カチャッ/
[村田]
ほな 運転さしてもらいますね まずはクルージング
\カコッ/ \ボォオゥゥゥオオオオ/
[村田]
オイオイ・・アクセル3mmくらいしか 踏んでないゾ・・ それでこんだけ 前に進むんかいな────
その割にギクシャク感は 全くない
これは チューニングカーやない コンプリートカーや
[村田]
あんがいフツーに 乗れるもんなんですね アクセルのフィーリングを除けば 市販車とまるで 変わりませんわ
ターボカーとは思えんほど 下からトルク ありますね
[島]
これが 北見チューンなんです ただ速いだけでなく 普段使いでも 全く支障ない こんなエンジンを あの男は組めるんです
[村田]
そんな人間が 世の中におるんですね・・
ヘタすりゃ ヘタなレースメカニックより ウデありますヨ
[島]
そうでしょうね 彼は技術的には最高のモノを持ちながら 商売として成功しなかった そういう人なんです
[村田]
なんか 僕に近いもんがありますね
[島]
そうなんですか?
[村田]
うんと努力して 周りからも認められて でも 他のカンケーない紆余曲折に阻まれて 結局出世することは できませんでした そうやって今 くすぶって 地元に戻ってきたんです
[島]
そうでしたか────
あんがい波長が 近いかもしれませんネ
[村田]
たとえ波長が似てても もう車の世界には────
ちょっと体感する分には いいですけど 自分がやるんとは また話変わってくるでしょ────
せやから今 ものすごい貴重な経験 さしてもらってると思います
[島]
それはどうも・・でも 勿体ないですネ あなたほど知識もあって 経験もありそうな人が このまま普通の人間で終わるのは 僕は信じられません
[村田]
僕もそう思います いや誰よりも自覚してます せやけど────
ホンマにもう 疲れ果ててしもたんです
[島]
そうですか────過去色々あったようで 辛かったと思います
こちらが何を言おうと あなたの人生を他人が決めるわけにはいきませんよネ
[村田]
なんか────すんませんね・・
[島]
いえ────人には色々あるものですから
[村田]
ほな そろそろ踏ませてもらって いいですかね?
[島]
ええ どうぞ ご遠慮なさらず 全開してもいいですヨ
遂に村田はブラックバードの全開走行を体感し、そして実際に運転を始めました。その強烈な走りとは裏腹に、クルージングでは嘘のように安定した挙動を見せ、北見チューンの真骨頂を体感しました。それでも彼は、もうこの世界は勘弁だと言います。ですがその右足を踏み込んだ時、彼の心境はどうなるのでしょうか……?
次回作、ご期待ください!