物語シリーズ×トランスフォーマー二次創作   作:嘘烏

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Final battle.


第変話 こよみフォーム其ノ玖

062

プライム(PRIME)

屋上からジャズの残骸を放り捨てたメガトロンが、咆哮と共にダイブする。落下の最中、その巨躯が銀色のエイリアンジェットへと歪曲し、大気を切り裂く衝撃波を撒き散らしながらオプティマスへと突進した。

回避は間に合わない。オプティマスはその衝撃を正面から受け止め、二体の鉄の塊は組み合ったまま低空を飛行。

そして、遂に沿道のオフィスビルへと突っ込んだ。

ドォォォォォンッ!!

鉄骨を拉ぎ、コンクリートを粉砕しながら、二体の巨神はビルを完全に貫通。反対側の通りへと、瓦礫の雨と共に投げ出された。

 

「人間は生きるに値しない」

メガトロンが土煙の中から立ち上がり、冷酷な電子音を響かせる。その足元では、逃げ遅れた人々の悲鳴が渦巻いていた。

 

「人間にも運命を選ぶ権利はある!」

 

「ならば、お前も奴らと共に死ね!」

メガトロンが力任せにオプティマスを突き放すと、その両腕を複雑に展開。内蔵された重火器が結合し、巨大なフュージョンカノンへと変貌する。

 

「人間諸共、滅びるがいい!」

オプティマスも瞬時に背中のタンクをスライドさせ、イオンブラスターを展開して迎撃の火線を走らせる。だが、メガトロンの放った高エネルギー弾がその均衡を破った。

二発目の直撃がオプティマスの胸部装甲を焼き、その巨体を後方へと弾き飛ばす。

 

「ぬゔっ……!」

オプティマスはビルの二階部分に激突し、窓枠と外壁を粉砕しながら地面へと転落した。

 

その頃、戦場と化した大通りを、僕は心臓が破裂せんばかりの勢いで疾走していた。手の中にあるオールスパークは、まるで脈打つように熱を帯びている。

 

「走り続けろ暦! 止まるな!」

アイアンハイドの怒号が響く。脇に抱えたオールスパークの重みは、走れば走るほどに増していく。心臓が早鐘を打ち、肺が灼熱の空気に焼かれる。

その時、頭上から巨大な影が飛び込んできた。

MH-53ペイブロウから変形したブラックアウトだ。

奴は走る僕をすれ違いざまに視界に捉えると、テイルローターとおぼしき巨大な回転刃を腕から展開した。

ギギギギギギィィィィン!!

死神の鎌のようなその刃が、路上に駐車されていたタクシーを一瞬で切り裂き、爆発させる。

僕はその熱風を背中に感じながら、タクシーの残骸の間を縫うようにしてすり抜けた。

切断刃が僕の鼻先数センチを通り過ぎ、冷たい風圧が頬を撫でた。

パーカーのフードが斬り裂かれるが、止まらずに無我夢中で走り続ける。

 

「行かせんよ、人間!」

正面からは、F-22から変形したスタースクリームが立ちはだかった。

アイアンハイドとラチェットが前に出て射撃を開始するが、スタースクリームは静止することなくガトリングガンとミサイルランチャーを乱射。圧倒的な制空権の利を活かし、二体のベテラン戦士を爆炎の中に押し込める。

スタースクリームは二体の動きを封じたことを確認すると、再びジェット形態へと変形。

僕のすぐ頭上、触れられそうなほどの超低空を爆音と共に通過していった。

 

「構わず進め! 屋上へ行くんだ!」

アイアンハイドの叫びを背に、僕はただ目的地へと足を動かす。

だが、背後から地響きが迫っていた。

 

「キューブをよこせ、小僧!」

破壊大帝メガトロン。奴は僕を追いながら、行く手を阻む乗用車を片手で掴み、ゴミのように握り潰した。

 

「……っ!」

逃げ切れない。焦燥と疲労で足がもつれる。

前方に駐車された車に気づかず、僕はその側面に激しく激突した。

 

「ぐあぁっ!」

衝撃で手からオールスパークが滑り落ち、硬いアスファルトに叩きつけられる。

その瞬間、立方体から青白いエネルギーの奔流が、波紋のように周囲へ広がった。

ジジッ……ガガッ、ガギギギ……ッ!

波及したエネルギーが、周囲の「機械」たちに強制的な進化を促す。

異変は一瞬だった。

僕がぶつかった車の運転席から、一人の女子大生が顔を出した。

 

「ちょっと!車へこんじゃったじゃない!」

彼女が嘆くより早く、その手に握られていたハンドルが、意志を持つかのように細かく分割され、機械の脚を生やした。

 

「えっ……きゃあああ!」

変形したハンドルは彼女の顔面に飛びつき、その視界を塞ぐ。

それだけではない。

向かいの家電量販店では、展示されていたテレビが棚から飛び降り、逃げようとした不運な買い物客の頭部をその角張ったフレームで押し潰した。

店先では通行人が抱えていたXboxの箱が内側から突き破られる。むき出しになった細い腕が、狂ったように周囲を引っ掻き回した。

路上に設置されたマウンテンデューの自販機は、四肢を生やした凶悪な小型ロボット――ディスペンサーへと変貌し、装填されていたジュース缶をガトリングガンのように通行人へ撃ち込む。

ライムの匂いに脳漿と血の匂いが混じり、通りはたちまち電脳地獄か、はたまたエレクトリカル付喪神の百鬼夜行絵巻のような光景と化した。

まさしく狂乱のパレード。

 

「ぐああっ!」「助けてくれ!」

オールスパークの奔流。

それは「物」に命を与える奇跡の光であり、今の僕たちにとっては、街中のすべてが牙を剥く悪夢への合図だった。

 

「はぁ、はぁ……っ!」

心臓の鼓動が耳の奥で鐘のように打ち鳴らされる。僕はオールスパークを抱え直し、狂った街を駆け抜けた。

通りのショーウインドーではテレビというテレビが、一斉に青白いノイズを噴き上げ、奇怪な「洗脳放送」を撒き散らしている。

画面の中に映るのは、禍々しいマークと、扇動的なテロップの羅列。

『[b:ディセプティコン万歳!メガトロン様万歳!(ALL HAIL DECEPTICON!ALL HAIL MEGATRON!)]』

早くも破壊軍団広報担当としての自我が芽生えているらしい。

不協和音の合唱が、逃げ惑う人々の精神を削り取るように響き渡る。

 

「テレビの悪魔か何かかよ……っ」

僕は毒づきながら、その場を駆け抜ける。

日常を支えていた利便性の象徴が、瞬時にして人類を嘲弄する怪物へと反転する。その光景は、怪異に侵食された僕の日常よりもなお、救いがないように思えた。

 

「遅いぞ阿良々木先輩! 恋の駆け引きならともかく、死神との追いかけっこでその足の遅さは致命的だ!」

 

「神原……!」

神原だった。彼女はレッカー車での作業を終えたのか、その猿の左手をアスファルトに叩きつけ、獣のような跳躍で僕を追い越さんばかりの勢いだ。

 

「戦場ヶ原先輩たちがビーの積載を完了させた! 殿はオートボットが引き受けてくれている。私は先輩の盾になりに来た!」

 

「恩に着る! でも、この街全体が敵になってるぞ!」

僕が叫ぶと同時に、僕の影が不自然なほど濃く、深く、横へと長く伸びた。

 

「……お前様。四の五の言っておる暇はないようじゃの」

影の中から這い出したのは、金髪の幼女――忍野忍。

だが、彼女の瞳には普段の怠惰な光はなく、かつての怪異の王『キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード』としての、冷徹なまでの捕食者の色が宿っていた。

 

「この際、致し方あるまい。ガエンの小娘やあの死体娘には事後報告じゃ。お前様、少しばかり痛いぞ?」

 

「え、あ――」

返事をする間もなかった。

忍が僕の首筋に跳びつき、鋭い牙を深々と突き立てる。

熱い。

血管を逆流するような、沸騰するエネルギー。

僕と忍、双方の吸血鬼としての本質が共鳴し、眠っていた「怪異」としてのパーセンテージが爆発的に上昇していく。

オールスパークの神秘のエネルギーが、吸血量のボーダーラインを延長させた。

バチバチと空気が爆ぜ、蒸気が上がる。

僕の視界が冴え渡り、全身の筋肉が鋼のように引き締まる。そして僕の隣では、忍の身体が骨格ごと再構築されるような音を立てていた。

幼い四肢がしなやかに伸び、外見年齢が十八歳ほどまで急成長する。

黄金の髪を高い位置でポニーテールに結び、身に纏うのは以前、影縫さんや斧乃木ちゃんと死闘を繰り広げた際にも着ていた、あのゴージャスなジャージ姿。

 

「……整ったわい。これならば、あの鉄屑どもとも『対話』ができそうじゃ」

十八歳姿の忍が、不敵に笑う。

その時、先ほどの自販機ロボ――ディスペンサーが、禍々しい電子音を上げながら路地裏から飛び出してきた。

砲口をこちらに向け、高速でジュース缶を発射する。

バババババ!

「うぐッ!」

僕の後頭部に鈍い痛みがいくつも走った。

視界が揺れるも、忍の支えで何とか走り続ける。

 

「黙ってろ、この粗大ゴミが!」

神原がその超人的なバネで地を蹴ると、ディスペンサーの金属製の顔面に、肉眼では捉えきれない強烈なストレートを叩き込んだ。

ドォォォォンッ!!

自販機の巨体は、一撃でビルの中まで殴り飛ばされる。

ディスペンサーは回路を火花で焼きながら、勝てないと悟ったのか、不気味なノイズを吐き捨てて路地裏へと撤退していった。

 

「阿良々木先輩。……これなら行ける。あの屋上まで、最短距離で突き抜けよう!」

 

「殿は儂に任せろ。後ろのインスタント付喪神どもを本物のスクラップに変えてやるわ」

神原と忍の決意に満ちた言葉。

覚醒した吸血鬼の力、そして神原の怪力。

僕たちは地獄と化したミッションシティを、光り輝く立方体を抱えたまま、弾丸のごとく突き進んだ。

 

063

「お前様!来るぞ!」

見上げれば、ブラックアウトが再び旋回し、ガトリング砲をこちらへ向けようとしていた。

忍が心渡を片手に飛びかかろうとする。

だが、その射線を遮るように、一台の救急車が猛烈なスピードで割り込んだ。

 

「私の患者に手を出すな!」

ラチェットが変形しながら、先ほどブロウルの腕を切断した丸鋸をブラックアウトの機体後部へと投げつけた。

ギィィィィィィンッ!

金属を噛む悲鳴。

「今だ!行け、暦!」

ブラックアウトが体勢を崩した隙に、僕らは指定されたビルの入り口へと飛び込んだ。

ガラス張りのロビー。自動ドアはすでに電力を失い、半開きになった隙間を無理やりこじ開けて中へ滑り込む。

背後で、鼓膜を震わせる咆哮が轟いた。

 

「逃がさんと言ったはずだ、小僧!」

凄まじい衝撃。正面入口の壁が、巨大な鉄の塊によって内側から爆発するように弾け飛んだ。土煙を切り裂いて現れたのは、戦車と戦闘機を人型に凝縮したような凶悪なシルエット。メガトロンだ。

彼はビルの天井をその頭部で削りながら、容赦なく歩を進めてくる。一歩ごとに大理石の床が粉々に砕け、建物の構造そのものが悲鳴を上げた。

 

「……阿良々木先輩、上へ! ここは通させない!」

 

「すまん!頼んだ!」

僕は階段を駆け上がる。

吹き抜けから見ると、メガトロンの前に神原が立ちはだかっていた。

彼女の「猿の左手」が、戦闘態勢に入りミシミシと音を立てて膨張している。

だが、その神原の肩を、大人の背丈に成長した忍が鋭く制した。

 

「下がっておれ、猿娘。お主ではこの鉄屑の足止めすら荷が重い」

 

「忍さん……! しかし!」

 

「案ずるな。儂が盾になる」

忍は神原を背後に隠すように一歩前へ出ると、影から引き抜いた妖刀『心渡』を正眼に構えた。

メガトロンの冷徹な光学センサーが、自分たちの足元に立つ二人の「少女」を捉える。

 

「……何だ、その骨董品のような獲物は。我らサイバトロン星の戦士を、そのような原始的な刃で斬れると思っているのか?」

メガトロンが嘲笑とともに、右腕の爪を振り下ろす。

 

「斬れぬよ。これは怪異しか斬れぬ刀ゆえな」

忍は不敵に笑い、あえて回避を選ばず、心渡の腹でその巨大な爪を受け止めた。

ギギギギギィィィィンッ!!

火花が散り、衝撃波がロビーの窓ガラスをすべて粉砕する。

心渡は怪異以外の物質――メガトロンの超硬合金を切り裂くことはできず、この状況だとただの鉄棒でしかない。

しかし、そこに忍による絶大な怪異パワーの供給を加えると、どれほどの質量と圧力を受けても「決して折れない」という絶対的な物理的強度を得る。

 

「ぬっ……!?」

メガトロンが驚愕に声を漏らす。

自らの怪力をもってしても、目の前の細い刀身が微動だにしない。

忍は神原に飛んでくる破片や衝撃をすべてその背中で受け止めながら、歯を食いしばって耐えていた。

 

「行くぞ! 隙を見て奴の関節を狙え!」

 

「了解だ、忍さん!」

神原が忍の影から飛び出し、メガトロンの膝関節に渾身の左拳を叩き込む。

ドォォンッ!

重戦車の装甲を凹ませるほどの一撃。だが、メガトロンのボディには傷一つ付いていない。

メガトロンは痛くも痒くも無い様子で、空いた左手で神原を薙ぎ払おうとする。

その軌道を、忍が再び心渡で強引に逸らした。

 

「……くっ、防戦一方じゃな。これではラチがあかぬ」

忍の額に汗が流れる。

斬ることができず、ただ衝撃を「受け流す」だけの戦い。不死身の吸血鬼といえど、幾多の惑星を滅ぼしてきた破壊大帝の猛攻を凌ぎ続けるのは、薄氷を踏むような危うさだった。

 

「阿良々木先輩! 早くしろ! このビルが保たない!」

神原の叫びが吹き抜けの階段を上る僕の背中に刺さる。

僕は階段を一段飛ばしで駆け上がった。

足元では、鋼鉄と妖刀が激突し続ける、この世のものとは思えない金属音が、狂った不協和音となって響き続けていた。

 

僕らがロビーに飛び込んでいる頃。

路肩に放置されていた古びたレッカー車の運転席に滑り込んだひたぎ。

爆煙と鉄錆の匂いが充満する車内で、彼女は乱れた前髪を無造作に払い、ビルに駆け込んでいく僕らの姿を捉えていた。

ステアリングに額をつけ、自然と荒くなる呼吸を整える。

彼女も恐怖を必死に抑え込もうとしていた。

ステアリングから顔を上げる。

バックミラーには、荷台に乗せられたビーの姿が見える。

彼はひたぎを信頼するかのように、ゆっくりと頷く。

それが合図だった。

 

「……暦、神原。……ここは、私たちが繋ぎ止めるわ」

彼女の細い指がシフトレバーを叩き込み、アクセルを踏み抜く。

ひたぎが選んだのは、前進ではない。脚を失い、レッカー車の荷台にその身を預けたバンブルビーを、最強の「可動砲台」として機能させるための逆走――バック走行だった。

 

「ビー! 狙いは外さないで。私の運転に振り落とされないようにしなさい!」

ひたぎの叫びに応えるように、吊り下げられたバンブルビーがその腕のカノン砲を咆哮させた。

肩からミサイルポッドも出現し、無数の弾幕を形成する。

猛スピードで後退するレッカー車。ビル風を切り裂き、瓦礫を跳ね飛ばしながら、ひたぎは魔法のようなハンドルさばきで、死の淵に立つ黄色い戦士をエスコートしていく。

その正面には、不沈の怪物、ブロウルが立ち塞がっていた。

砲塔から放たれる徹甲弾が、レッカー車のすぐ側のアスファルトを爆ぜさせる。だが、ひたぎは眉ひとつ動かさない。

彼女にとって、この戦場はもはや「史上最悪のデートコース」に過ぎない。

 

「撃ちなさい! バンブルビー!」

ビーの連射が、ブロウルの分厚い装甲を叩く。

それだけではない。レノックス大尉率いる陸戦部隊が、一斉に側面から弾幕を浴びせ、エップスの誘導に合わせて、高熱のAPDS弾がブロウルの内部機構を焼き切っていく。

鋼鉄の悲鳴。

無敵を誇った重戦車の動きが、目に見えて鈍っていく。

 

ひたぎが急ブレーキをかけ、車体をスライドさせる。

その反動を利用し、至近距離まで肉薄したバンブルビーが、残されたエネルギーのすべてを右腕のカノンに注ぎ込んだ。

ドォォォォォンッ!!

放たれた最後の一発。

それは、幾重にも重なるディセプティコンの装甲を貫通し、ブロウルの胸部中央、その「心臓」へと正確に着弾した。

光が溢れ、内部爆発が巨躯を震わせる。

戦場を蹂虙した破壊の化身は、沈黙という名の重力に屈し、ゆっくりと、しかし確実に崩れ落ちた。

 

「……お見事」

 

『こちらこそ』『お嬢さん』

 

「今のでこいつも死んだな」「さあ、もう一仕事だ」

硝煙が晴れ、束の間の軽口を叩くレノックスら。

そんな中、レッカー車の窓から見えるひたぎの視線は、すでに僕が消えたビルの上層へと向けられていた。

上空にはすでに近づいてくるヘリの影も見えている。

彼女の戦いは終わった。

あとは、僕が僕の戦いを終わらせる番だった。

 

064

ひたぎの遥か頭上。

非常階段を駆け上がる僕の鼓動は、もはや警報機のようなリズムで胸を叩いていた。一段飛ばしに踏み込む足が、乳酸の蓄積で鉛のように重い。

肺が潰れそうなほどの呼吸を繰り返し、僕はついに屋上へと続く重い鉄扉を蹴り開けた。

遮るもののない午後の陽光が視界を白く染め、同時に地上からは想像もつかないほどの強風が、僕の体とオールスパークを激しく煽る。

 

「……ハ、ハァ、ハァ……来たぞ!」

ヘリポートの向こう側、救いの神であるはずのブラックホークがホバリングしながら、機門から兵士が身を乗り出していた。

 

「こっちだ! アララギ! 早くしろ!」

ハッチから身を乗り出した兵士が必死に手を振っている。僕はオールスパークを抱え直し、アスファルトの上を滑るように駆けだした。あと数メートル。

これを渡せば、この地獄に終止符が打てる。

だが、空は僕たちに微笑まなかった。

キィィィィィィィン!!

鼓膜を切り裂くような金属音が上空を支配した。ビルの影から、猛烈な速度で反転したF-22――スタースクリームが姿を現す。

それと同時に、ビル下層から急上昇してきたブラックアウトの重厚なローター音が重なった。

 

「ミサイルだッ!伏せろッ!」

兵士の叫びが響いた刹那、二条のミサイルがブラックホークの機体に吸い込まれた。

ドォォォォォォォォン!!

凄まじい爆発。救助ヘリはオレンジ色の火球となり、制御を失って屋上の端へと激突した。

機体がガリガリとビル端を削る。

 

「うわあああああ!」

被弾したメインローターが火を吹き、ブラックホークは制御を失って回転しながら、地上へと墜落していった。

爆音と黒煙が、僕の唯一の希望を文字通り「墜とした」のだ。

 

「……嘘だろ」

絶望に膝をつきそうになったその時、ビルの外壁を砕きながら、巨躯が這い上がってきた。

オプティマス・プライムだ。

肩の装甲を焼き、満身創痍の彼は、執拗に追撃してくるスタースクリームを片腕のブラスターで牽制しながら、屋上へと着地する。

 

「暦、離れるんだ! 奴が来る!」

オプティマスの警告が終わるよりも早く、足元のコンクリートが激しく波打った。

ドガガガガガッ!!

一階ロビーで忍や神原と対峙していたはずの破壊大帝が、最短距離を選択したのだ。

彼はビルの構造材を素手で引き千切り、忍たちを瓦礫の山の下へと強引に生き埋めにし、そのまま垂直に屋上の床を突き破って現れた。

砕け散るコンクリートの破片を浴びながら、僕は後退する。背後は、数百メートルの高さがある奈落だ。

 

「……はぁ、はぁ……っ」

目の前に、銀色の悪魔が立つ。メガトロンは、自身の爪に付着したコンクリートの粉を厭わしげに振り払うと、その赤い光学センサーで僕を……正確には僕が抱える「火種」を射抜いた。

 

「震えているな小僧。それは恐怖か? それとも武者震いか?」

メガトロンの声は、氷を噛み砕くような冷徹さに満ちていた。彼は僕の矮小な存在を愉しむように、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。その一歩ごとに、ビル全体が落成するかのように震動した。

僕はアールデコの彫刻に掴まり、落ちないよう必死に耐えようとする。

 

「オールスパークを渡せば、ペットとして生かしておいてやろう。我がディセプティコンの統治下において、貴様という標本は面白い観察対象になるはずだ」

 

「……絶対、渡すものか……!」

声が震える。足の震えが止まらない。

僕は、ただの高校卒業生だ。

『阿良々木暦、見たまんまの男さ』なんてカッコつけた事なんて、もう言えない。

吸血鬼の眷属という「異形」の端くれに名を連ねてはこそいるが、本質的には臆病で、独り善がりな偽善者の人間に過ぎない。

目の前の怪物は、惑星を一つ滅ぼすだけの力を持っている。

振り向いて、下までの高さを見る。

おおよそ50メートルくらいか。

最悪、僕は死なない。

吸血鬼の再生能力があれば、この高さから落ちても、メガトロンに踏み潰されても、肉の塊として生き残るかもしれない。

だが、そうなればキューブは奪われる。

この、神秘の塊をさらに神秘で梱包したかような立方体が奴の手へと渡れば、人類は、そして僕の大切な人たちは、本当の意味で終わる。

 

「ふん、勇敢だな。言葉の鎧は立派だ。その勇気は称賛に値する」

メガトロンが低く笑った。

周囲のビルの屋上にはスタースクリームとブラックアウトが登り、じりじりと距離を詰める。

奴らの機銃の照準が、微かな駆動音を立てて僕の胸元を狙う。

 

「だが、力の伴わない勇気ほど愚かなものはない。貴様の信じる道、貴様の守ろうとする弱者……それらすべてが、今ここで無に帰す。その現実を噛み締めながら、塵となるがいい」

 

「暦! 跳べッ!!」

オプティマスの叫びと同時に、スタースクリームとブラックアウトの機銃の一斉掃射が屋上を耕し始めた。

 

「愚か者め!」

メガトロンが吠える。その右腕から放たれたチェーンメイスが、質量と速度を伴った鉄の暴風となって屋上を薙ぎ払った。厚いコンクリートの床が、まるで乾いたビスケットのように粉々に砕け散り、僕の足場は一瞬にして消失する。

浮遊感。

肺の中の空気が、急激な気圧の変化とともに吸い出される。

重力に身を任せ、僕はオールスパークを抱えたまま、彫刻と共にビルの外壁をなぞるように落下を始めた。

視界がゆっくりと回転する。

青い空と、燃え盛るミッションシティのビル群が、万華鏡のように交互に現れては消えていく。このまま地面に叩きつけられれば、吸血鬼の再生能力をもってしても、元の形を保つのは難しいだろう。

死の淵で、思考が加速する。

最後に見る景色にしては、少しばかり騒がしすぎやしないか。

 

ひたぎ、羽川、神原、忍、扇ちゃん、斧乃木ちゃん、妹達、父さん母さん。

ごめん。僕は、最後まで阿良々木暦だった。

お節介で、独善的で、けれど、誰かのために死ねることをどこかで誇りに思っているような――。

 

「――暦ッ!」

意識が白く染まりかけたその瞬間、巨大な、そして温かい「鉄」の感触が僕を包み込んだ。

墜落するブラックホークを回避し、ビルの壁面を駆け下りてきたオプティマスが、空中で僕の身体をその左手で完璧にキャッチしたのだ。

 

「……オプティマス」

 

「よくぞ持ちこたえた。君の勇気に、私は敬意を表する。……しっかり掴まっていろ、暦。まだ終わらせはしない!」

オプティマスはビルの窓枠に右手のフックを叩き込み、落下の衝撃を殺しながら地上へと滑り降りる。だが、頭上からは太陽の光を遮るほどの巨大な影が、凄まじい殺意を伴って肉薄していた。

 

「逃がさぬと言ったはずだ、プライム!!」

上空から突き出されるメガトロンの鋭利な爪。

オプティマスは僕を胸の装甲の隙間へと滑り込ませ、自由になった左腕からエナジーソードを再展開する。地上まであと数十メートル。超重量の金属生命体二体が、絡み合いながら、激突の瞬間へと加速していく。

 

065

凄まじい質量が地上に叩きつけられた。

ドォォォォォンッ!!

衝撃波が円形に広がり、周囲のビルの窓ガラスを一斉に粉砕する。アスファルトは巨大なクレーター状に陥没し、もうもうと立ち込める土煙が太陽の光を遮った。

 

「……反吐が出る」

視界の端でメガトロンが、不運にも逃げ遅れた男を指で弾いて吹き飛ばす。

 

「がはっ……、……」

オプティマスの分厚い胸甲の隙間で、僕は肺の中の空気をすべて絞り出されたような衝撃に耐えていた。

全身の骨が軋み、吸血鬼の再生能力をもってしても意識を保つのがやっとだった。

オプティマスは重い金属音を立てて立ち上がると、慎重な手つきで僕を地面へと降ろした。彼の装甲は、先ほどの墜落とメガトロンの猛攻によって、至るところが赤熱し、歪んでいる。

 

「暦……」

オプティマスの青い光学センサーが、僕の瞳を静かに見つめた。その声には、覚悟を決めた者だけが持つ、透き通った重みがあった。

 

「君は自らの命をなげうって、この『キューブ』を守ってくれた」

 

「――『犠牲無くして、勝利なし』」

僕が呟く。

 

「……もし私がメガトロンに勝てなかったら、私の胸の中央にキューブを押し込め。私自身のスパークと融合させ、すべてを終わらせる。……それまでは、下がっていろ」

 

「オプティマス、君……死ぬ気なのか?」

僕の問いに、彼は答えなかった。

ただ、右腕のエナジーソードを再び起動させ、そのオレンジ色の熱線で暗雲を切り裂く。

 

「一対一で勝負だ。メガトロン!」

 

「まだ弱いもののために戦うのか、だからお前は勝てん!」

クレーターの向こう側から、悪魔のようなシルエットが立ち上がる。メガトロンの銀色の装甲は、土煙を浴びてなお禍々しい輝きを放っていた。

 

「戦いが終わる時、どちらかが倒れ、どちらかが残る」

オプティマスが、静かに、けれど揺るぎない宣戦布告を口にする。

 

「残るのは俺だけだ、プライム!」

メガトロンが吼えた。その右腕から放たれたフュージョン・カノンの熱波が、周囲の空気を焼き焦がす。

僕はオールスパークを抱え、震える足で物陰へと退いた。

目の前で、この宇宙で最も長く、最も悲しい兄弟喧嘩の最終章が始まろうとしている。

鋼鉄と鋼鉄が激突する火花。

それが、僕たち人類の明日を照らす光になるのか、それともすべてを焼き尽くす終末の炎になるのか。

クレーターの中心で、二体の王が正面から激突した。

オプティマスのエナジーソードが空気を焼き、メガトロンのチェーンメイスがアスファルトを砕く。金属が噛み合い、火花が散るたびに、周囲のビルには落雷のような衝撃波が木霊した。

だが、オプティマスの動きには精細さが欠けている。度重なる激戦のダメージが、その巨躯を蝕んでいた。

 

その時、ビル群の隙間から重厚なローター音を響かせ、ブラックアウトが再びその姿を現す。

奴は着地と同時に、自らの背面に備わったメインローターを力任せに引き抜く。超高速回転を維持したままのそれは、いまやあらゆる物質を消し飛ばす巨大な回転鋸と化していた。

 

「……応援は60秒後に着く」

少し離れたビルの影では、エップス軍曹が無線を片手にF-22部隊と通信している。

その手にはレーザー誘導用のターゲット・ポインターが握られていた。

「敵味方が入り乱れている、標的をマークする!」

「……おい!」

レノックスがエップスの肩に手を置く。

 

「……撃ちまくれ!いいな!?……あいつらをぶっ潰す!」

レノックスの鼓舞に、エップスは頷くと駆け出した。

部隊が展開し、ブラックアウトの背後の瓦礫に隠れる。

 

「行け行け行け!」

「胸の下を狙え!そこが弱点だ!」

エップスの指がトリガーを引き、グリーンの線が戦場を射抜く。それは死の宣告を告げる「道標」だ。

ブラックアウトの脚部が小さくポイントされる。

「……ターゲットをマークした」

『確認。攻撃まで20秒』

上空。はるか高高度から、本物の空軍機――第1戦術戦闘航空団のF-22ラプターが、雲を切り裂いて急降下してくる。

空気が極限まで張り詰め、誰かがカッターナイフを振るえばそのまま切れてしまいそうな程だった。

「F-22、まだか……!?」

焦燥感がエップスの手元を僅かに狂わせる。

グリーンレーザーが、偶然にもブラックアウトの腕に当たった。

一瞬。

電子眼が光を捉え、冷酷な視線がエップスたちの潜む遮蔽物へと向けられる。

 

「バレた! 散れ、散れぇッ!!」

ブラックアウトは振り向くと同時に、左腕を構える。

プラズマキャノンが発射され、爆風がエップスたちを掠めた。

「……来るぞぉぉぉ!」

ブラックアウトが回転鋸を振り上げ、掃射の準備に入る。

その絶体絶命の瞬間、廃墟の静寂を切り裂いて、一台のバイクが爆音を上げた。

跨っているのは、レノックス大尉だ。

彼は誰かが乗り捨てた、無骨なオフロードバイクのアクセルを限界まで捻り上げた。

ギアを叩き込み、前輪が浮き上がるほどの加速。レノックスは、巨神の足元――死のローターが唸るその「懐」へと、迷うことなく突っ込んでいく。

 

「野郎……死ぬ気か!?」

エップスの絶叫を置き去りに、レノックスは疾走する。

ブラックアウトの巨体からすれば、バイクに乗った人間など、足元の虫ケラに過ぎない。だが、その虫ケラは音速を超える意志を宿していた。

ローターが風を切り裂き、タクシーの残骸を紙細工のように弾き飛ばす。レノックスはその破片の雨を、バイクを深く寝かせた超絶的なリーンウィズで回避した。

ブラックアウトが全身の火器を撃とうとした。その刹那。

レノックスは走行の勢いを殺さぬまま、バイクを横倒しにスライディングさせた。

金属とアスファルトが擦れ合い、火花の尾を引く。

彼は滑り込む勢いを利用して、ブラックアウトの股ぐら――唯一装甲が薄いセンサーの密集地帯へと潜り込んだ。

 

「喰らえッ!!」

彼は絶叫しながら背負っていたグレネードランチャーを、至近距離から連射する。

ドォン、ドォン、ドォン!

内部機構を直接焼き切る衝撃。ブラックアウトが苦悶に悶え、体勢を崩したその瞬間を、空の「翼」は見逃さなかった。

 

『――攻撃準備完了!』

急降下したF-22から放たれたミサイルが、レーザーの導きに従い、ブラックアウトの胸元へと吸い込まれていく。

連鎖爆発。

数千度の熱風が地上を覆い、かつてカタール基地を壊滅させたディセプティコンの巨躯は、内側から噴き出す炎に焼かれ、力なく崩れ落ちた。

熱風の中、バイクから跳ね飛ばされながらも、レノックスは立ち上がる。

「……やった!よし…よし!行け……行けぇ!」

その視線の先では、なおもオプティマスとメガトロンが、互いの命を削り合う最終局面へと突入していた。

 

「その程度か、プライム!」

メガトロンがチェーンメイスでオプティマスの顔面を打ち据え、蹴り飛ばす。

その余波でアスファルトが砕け散り、僕に降りかかった。

 

『第二波、攻撃!』

その時、銀翼の編隊がミッションシティの空を切り裂いた。

ネリス空軍基地から飛来したF-22ラプターの編隊。

だが、その一糸乱れぬフォーメーションの真っ只中に、物理法則をあざ笑う一機が混じっていた。

スタースクリームだ。

彼は本物の戦闘機と寸分違わぬ姿に擬態しながら、機体を不自然に振動させ、異質な電子ノイズを撒き散らす。

 

『……リーダーより各機! 五番機の挙動がおかしい! 』

 

『なんだ、この金属の塊は!? 』

パイロットたちが戦慄の声を上げる。

変形し、正体を露見させたスタースクリームは他の機体にミサイルを撃ち込み、数機を破壊した。

しかし、混乱を立て直した残りの編隊は即座にロックオンを完了させる。

 

『照準ロック!攻撃しろ!』

『化け物め、空を汚すな!』

放たれた数発のミサイルがスタースクリームに着弾する。

F-22に偽装し直した彼は、再び編隊へ紛れ込んだ。

『見失うな!追うんだ!』

 

「ぶっ倒せ!」

レノックスら地上部隊が合流し、総火力がメガトロンへと集中する。

ドォォォォォンッ!

F-22から放たれた幾多のミサイルの弾幕が、破壊大帝の右肩を容赦なく粉砕した。火炎が奔り、凄まじい衝撃波が地表を抉る。

ガギィィィィンッ!

悲鳴のような金属音が響き、メガトロンの右腕が、肘の関節から先が、千切れ飛んだ。火花を散らし、灼熱の鉄塊となった右腕がアスファルトの上を転がる。

 

「二匹倒れたぞ!」

 

「……ぐ、ガァァァッ! 虫ケラどもがぁッ!!」

片腕を失いながらも、メガトロンの執念は衰えない。むしろ、その損傷が彼を狂戦士へと変えた。

彼は残された左腕で地面を叩き、凄まじい跳躍で僕――阿良々木暦へと迫る。

 

その瞬間、視界の端から赤と青の閃光が突き抜けた。

満身創痍のオプティマス・プライムが、自らの残ったエネルギーのすべてを注ぎ込み、メガトロンの軸足を引っ掛けたのだ。

ドガァァァンッ!

メガトロンの巨躯がバランスを崩し、崩れ落ちる。

しかし、破壊大帝は膝をつきながらも、剥き出しの殺意を込めて僕を睨みつけた。

 

「……殺してやる! 寄越せ! ……オールスパークをぉぉッ!!」

 

「暦! 今だ! キューブを私に寄越せ、急げ!」

オプティマスが叫ぶ。彼は自身の胸部装甲を左右に展開し、その中心で激しく明滅する「スパーク」を剥き出しにした。キューブの全エネルギーを自分に叩き込ませ、メガトロンもろとも自爆する。

それが彼の、この惑星を守るための最終回答だった。

僕はオールスパークを抱え、駆け出す。

目の前には、愛する地球を守るために死を選ぼうとしている鋼鉄のヒーロー。

そして、片腕を失いながらもなお、世界を塗り替えようと足掻く破壊の王。

 

だけど。

「――ごめん、オプティマス!」

僕は、彼の指示に従わなかった。

『犠牲無くして、勝利無し』だって?

ふざけるな。

自己犠牲なんて、怪異に晒された日常で何度も見てきたし、してきた。

そして、その結末がどれほど寂しいものかも、僕は痛いほど知っている。

 

「暦!?何をしている!?よせ、暦!」

1年前。

僕は伝説の吸血鬼キスショット・アセロラオリオンハート・アンダーブレードにこう言い放った。

『ごめんな、キスショット。僕はお前を助けない』

今回は逆だ。

オプティマス。僕は、君を助けたい。

エゴでも偽善でも何でもいい。

でも君に死なれて、明日から僕はどんな顔をして生きていけばいいんだよ!

僕は吸血鬼の呪いが生み出す、人間離れした瞬発力を全開にした。

視界が加速する。メガトロンが這い上がり、その胸部を露わにする瞬間を、僕は逃さなかった。

僕は、オプティマスではなく、メガトロンの胸へと跳んだ。

 

「――これを持って、地獄へ堕ちろッ!!」

僕は全力で、オールスパークをメガトロンのスパークへと押し当てた。

一瞬の静寂。

そして、宇宙が誕生した瞬間のような真っ白な光がすべてを飲み込んだ。




次回豫告
「阿良々木暦、僕だ」

「いやはや車を買ったときは、世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれるだなんて想像もしていなかったけど、どうやら人生というものは車検も保険も意味を成さないようだ」

「でも鋼鉄の巨人たちと出会い、日常が変化し、変貌し、変形していく中で、僕は大切なことを教わった気がする」

「――ひたぎの献身に支えられ、羽川の知識に救われ、忍の誇りに助けられ、神原の剛腕に守られた」

「扇ちゃんとの問答も、レノックスさんの勇気も、ジャズの犠牲も、アイアンハイドとラチェットの絆も……そして、オプティマスの高潔な魂も」

「皆が、僕の手を引いてくれたから、僕は今ここに立っている」

「例えこれが偽善だとしても、僕はここまでの決断を……絶対に後悔しない」

「次回、こよみフォーム其ノ拾」

「もちろん、最終回だ」
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