淡海乃海 ~麒麟が駆ける時~   作:無難

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天文二十二年(1553年) 五月  近江高島郡朽木谷  邇々杵神社 朽木竹若丸

 

きょうはごこくほうじょう?、米がたくさん穫れることを願うためのお祭りが行われる。

吾ははーうえとともに造られた高台から祭りを見ている。

ここ最近の祭りは大きく変わった。進物として捧げられる酒が澄酒、竹酒、桃酒になったことが大きい。

そして、吾の発案でこれらの酒をくじ引きで当たったものに吾とはーうえが下賜する儀式がおこなわれたことだ。

これに領民だけでなく、商人たちも狂喜乱舞して積極的にくじを買うようになったという。おかげで朽木と邇々杵神社の懐はホクホクになったらしい。

 

あ、雫の舞が始まる。

 

シャラン

シャラン

 

巫女鈴が美しい祝詞を鳴らす。

 

シャラン

シャラン

 

雫と出会った時を思い出す。

 

雫とは朽木谷城で祈願が行われたときに神主の父に帯同していたときに出会った。吾とはとしが三つうえだ。

吾が塀の上で昼寝をしている時に声を掛けてくれたことが始まりだ。

 

一目見て美しいと感じた。

 

そして、直ぐに仲良くなった。

 

それ以来、邇々杵神社に吾が訪れて話し相手になってもらったり、朽木谷城に神主と共に来てもらった時に遊び相手になってもらっている。

聞いた話によると、雫ははちーうえに拾われたらしい。

なんでも、若狭で母娘で奴隷として売られていて、はーおやが鞭で打たれているところにちーうえが不快感を感じ、居ても立っても居られなず買い取って神社の巫女の養女にしたらしい。

はーおやはびょうじゃくで早くに死んだが、ちーうえは雫に名を与えて巫女として生きる道を与えていた。

以来、雫はちーうえのことを尊敬してよく話してくれる。

 

シャラン

シャラン

 

雫と共にいると心が温かくなる。

そして、雫が神に舞を捧げている姿が好きだ。

楽しく、美しく、綺麗で吾はいつも有難い気持ちになる。

あ、舞が終わったようだ。雫が頭を下げた。

 

吾は高台から降りて頭を下げているところに向かう。

するとけんぶつしていた客たちがザワザワと驚く。

だが、吾にとってそんなことは興味ない。

 

「雫、見事であったぞ!」

「あ、・・・かたじけのうございます・・・」

 

雫の目が少し開いたと思ったら、直ぐに元の無表情に戻る。

だが、少し恥ずかしがっているのは分かる。

 

言い終えると吾ははーうえのもとにもどる。

はーうえは眉をひそめていた。

 

「竹若丸、神事に土足で入ることは良くないことです」

「?でも、神事の舞は終わっていました」

「それでもです。巫女が頭を下げてもまだ終わっていないのですから・・・」

 

そうか、巫女の舞だけでなく、終わった後も続いているのか。

 

「申し訳ございません。以後は気を付けます」

 

吾が頭を下げて反省していることが分かったのか、はーうえが頬を緩める。

 

「さぁ、次は私たちが酒を下賜する儀式が始まります。お行儀良く座りなさい」

「はい!」

 

そして、神事は恙なく進んでいく。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

祭りが終わって、片付けも終わって、大人たちがいなくなった深夜。

吾は重蔵に頼んで夜に雫と星を見るために会う手筈をつけてもらった。

 

「雫」

「竹若丸様、お久さしぶりです」

 

いつもの無表情で雫は頭を下げてくる。

だが、その頬と手は僅かに赤くなっている。

吾も同じだ。なぜだろうか、雫といると温かい気持ちになる。

 

「さぁ、星を共に見よう」

「フフ、そうですね。竹若丸様はまだまだ子供ですから」

「ム、吾はもう七つだぞ」

「それでもです。わたくしからしたら、まだ子供ですよ~」

 

そういって、吾と雫は手を取り合って夜空を見上げる。

 

ああ、この幸せな夜がいつまでも続いて欲しいなぁ~

 

 




恋愛のお話は難しい。
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