古の中華において、とある国があった。
その国では王の弱みに付け込んで僧侶や奸臣が悪政をしいたことで、秩序は乱れた。
皆は己が欲を先にして争い、世が乱れていった。
乱世の中、ある村において不思議なことが起こる。
顔は龍に似て、牛の尾と馬の蹄のような獣が空を駆けていったのだ。
丁度その日、村においてある男が生まれる。
その男は成長して力をつけると乱世を鎮め、王になった。
王は民を慈しみ、善き政を行った。
民は安心して眠れるようになり、子宝に恵まれ、世は平らかになった。
しかし、そんなときも終わりが来る。
王が死んだとき、また獣が空を駆けていった。
その姿を見てから数年後、王が築き上げてきた国は分かたれて、再び争いが起こるようになった。
そんなことになって民は思った。
ああ、あの獣は王の死と善き政が無くなることを悼んでいたのだな・・・・と
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「・・・・と、父上の話は、そんな話だったかのぅ・・・」
そういって、公方様は御伽噺を終わらせる。
吾と公方様は庭園の中を二人だけで歩いている。
普段いる幕臣の方々はいないためか、いつものような黒い何かはない。
穏やかで、憑き物が落ちたかのような穏やかな表情だ。
「公方様、ジン、とは何ですか?」
吾は分からない言葉が出たので、公方様に聞くと嬉しそうに答えられる。
「フフ、仁とはな、力で押さえつけるのではなく、人々の心に寄り添い、道理を通すことをいう」
「道理を通す・・・」
吾は上手く分かっていないことを察したのか、公方様は続ける。
「例えて言うなら、力自慢の者が力が弱き者に対して非道を行っても罪にはならない。このことに対して竹若丸はどう思う?」
公方様の問いかけに、答える。
「?そんなのは決まっています。強き者が間違っています!」
吾の答えに公方様は頷かれる。
「そう、そのように言えることが仁というものである。其方にも弱き者を慈しむ仁の心があるのだ」
そう言って、公方様は吾の胸をコンコンと叩く。
「だからのぅ、余は待っているのだ。麒麟が来るような世を作れるような男を」
そう寂しそうに仰られる。
公方様の呟きに吾は口を開く。
「公方様は、ご自分の政で麒麟が来る世が作れると思っていないのですか?」
その一言で、一瞬公方様は戸惑いを隠せないように御笑いになられた。
「余には力がない。だから、誰か助けてくれるものが必要なのだ」
「?」
公方様の言っている意味が分からなく、首をかしげてしまう。
その姿が面白かったのか、公方様は御笑いになられる。
「今の余は奸臣や悪しき者たちによって奪われた王にあたるのじゃ。柵が多い余では善き政ができぬ」
「・・・では、悪しき者たちがいなくなれば、公方様の善き政が出来るのですね!」
そういうと、公方様は苦笑いされる。
「いや、それも難しいであろう。征夷大将軍の肩書だけについてくるものが多いのだ。例え奸臣一人を排除してもまた次の奸臣が生まれてしまう。頼れるのは朽木など極少数じゃ。どうしたものか・・・」
吾は公方様のお悩みにどうすることもできない。だが、確かな事を言った。
「なら、吾はこの朽木をつよくゆたかにすることで麒麟が来るような楽しい地に変えて見せます!」
公方様の笑みが深まる。
「ああ、そうせよ!、だからのぅ、竹若丸よ」
そう言いながら、公方様は吾を抱き上げる。
「其方と共に麒麟がくる世を共に作ろうぞ!」
「はい!頑張ります!」
そういって、吾と公方様は笑いながら歩く。
だが、吾は気づいていなかった。
公方様から僅かに吾が恐れている"黒い何か"が蠢いていたことに・・・・・・
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うん、こいつは使えるな