天文十九年(1550年) 十月 近江高島郡朽木谷 朽木城 朽木竹若丸
あれから、何日かたった。
ちーうえの葬儀? やおじうえが来たりして、忙しい毎日だったと思う。
そして、吾がちーうえの跡を継いで朽木の当主になる日となった。
「竹若丸、大丈夫か?」
広間の前におじいが話しかけてくる。
その周りには白っぽい何かが浮かんでいる。だけど、少し黒いものも混じっている。
この数日の間皆と話しているとわかったが、みなの周りにある何かはどうやら、怖いといった想いには黒くなり、安心すると白くなるらしい。
「うん、大丈夫だと思う」
おじいを安心させるようにゆっくりいう。
「そうか、では参るぞ!」
そして、おじいと共に広間に入る。
広間にはみなが集まった。おじいとともにみなのうえにたつ。
「本日、只今より竹若丸が朽木家の当主となる」
「おめでとうございまする」
おじいのちからづよいこえにおおおじうえがみなを代表して祝うと皆がそれに続いた。拍手が響いた。空気が明るい、皆が竹若丸の当主就任を喜んでいる。
「竹若丸、なんぞ有るか?」
おじいが吾を見てくる。
うーん、吾は自分なりにやってみたい。
でも、今「吾に自由にさせろ」というのもみなが嫌がりそう……
考えているとちーうえのいきていたときのことをおもいだした。
ちーうえとおじうえとはなしていたとき、
「公方様は三好の傀儡のような扱いを受けている。御労しいことだ……」
といっていることをおもいだす。
あのときはいみがわからなかったが、クグツというのはすきにできないといういみらしい……
われもクグツにはなりたくない。
「……おじい、吾が当主か」
「そうじゃ」
「クグツか?」
クグツになるのだろうか……
ざわめきが起きた。みなおどろいている。吾は何か悪いことを言ったのだろうか?
みなのまわりにある何かがよくわからないいろにかわっている。
でも、きもちわるいいろにはなっていない。
みなのなかでもわかっていないんだな……
「そうではない。この御爺が手伝うが紛れも無く本当の当主ぞ」
みなを落ち着かせるためにかな?
おじいがハッキリといってくる。
「そうか……。では好きにやって良いのだな」
「良い」
おじいの返事を聞いて吾はたちあがり、みなをみる。
みなが吾をふしぎそうにみている。
ちょっとくすぐったい。
「みな三年待て。何も言わずに吾に仕えよ。三年後、いやだとおもったら吾に言え。聞こう!」
みなが困惑している。
でも、みなのめがあかるくなっている。
おじいが吾の頭に手を置いてみなにかたりかける。
「皆、聞いたな。三年、何も言わずに竹若丸に仕えよ」
「はっ」
改めて皆が竹若丸に頭を下げた。
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天文十九年(1550年) 十月 近江高島郡朽木谷 朽木城 朽木竹若丸
みなが大広間から下がっておじいと吾しかいなくなった。
おじいがといかけてくる。
「如何するつもりじゃ、竹若丸」
「? ……とにかく、はじめにちーうえがのこした朽木を護らないと、その上で朽木を豊かにする」
「豊かに?」
何となくだけど、できる気がする。
おじいのめがキラキラしている。
きれい……
不思議と吾もわらっていた。
おじいのためにも、朽木をよくしよう。
「何をするつもりじゃ?」
う~ん、どうしよう。
考えると、いくつかの言葉が浮かび上がってくる。
これにしよう!
「うん、富国強兵じゃ! ちーうえよりもつよくなって、はーうえがなかないようにくつきをゆたかにする!」
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■天文十九年(1550年)の朽木家■
◆石高:8000石
◆人事
●当主:朽木竹若丸
●後見:朽木稙綱
●軍事
・郎党: 50名
・百姓兵:200名