淡海乃海 ~麒麟が駆ける時~   作:無難

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竹若丸の軍勢再編です。
全て竹若丸視点で書いていくと10話以上になりそうだったのでまとめて執筆しました。


火力

天文二十二年(1552年) 七月  近江高島郡朽木谷  朽木城 日置五郎衛門

 

パーン

パーン

パーン

 

「打ち方止め!」

 

儂の命に鉄砲隊が打つのを止めて整然と並ぶ。

その姿を確認して、儂は的を見る。鎧を着せた人形で本格的な調練が出来るようになったが、その鎧人形は細かい穴というよりも胴の部分が抉り取られたような状態になっている。これは長年の調練で鎧が壊れたためではない。昨日新しい的に取り換えたばかりのものだ。

 

儂はこの一年で起こった数々の出来事を振り返る。

 

殿は澄酒や椎茸、綿花などを作ることで領内を豊かにした後、軍勢の再編に勤め始めた。

当初こそ、御父君である宮内少輔様の軍制を引き継いでおられたが、儂を筆頭に家臣たちによって軍のことについて聞かれて以降は朽木家の方針を大きく変えられた。殿は軍勢を再編するにあたって百姓を兵として使わないことを筆頭に様々な方針を打ち立てた。

 

①「戦の調練よりも早く走ること」

当初、我らはこの意味が分からなかったが、殿が実際に20人ほどの兵に徹底的に走らせて長く、早く走られるようにすると同時に武術の調練は10日の内2日ほどしか行わない兵を育成された。そして、今まで我らが率いていた兵と演習を行わせて分かった。殿が言う戦法は「孫子曰く、兵は拙速を尊ぶ」を徹底的に体現していたことだった。言葉ではわかっていた。だが、殿は彼の戦法を徹底して体現した。少しでも迅速かつ確実に進軍することで敵の機先を制して戦えることが分かった。今では殿の指示に家臣だけでなく、足軽たちも納得を示した。

それだけでない。殿は足軽たちを広間に集め、「我が朽木の軍勢が勝利するためには其方らの武術の腕ではなく、足にこそ勝利の鍵がある!」と宣言されて家臣や足軽たちを爆笑させた。

 

②「鉄砲の改造」

今までの種子島は打つのに手間のかかるものであった。まず初めに鉄砲の先から火薬と弾を詰めて更に火縄で火薬に点火して撃つという方式だった。つまり、雨を筆頭に水に弱いという状態で撃てないという問題を抱えていた。

これを殿は鉄砲鍛冶を召し抱えて変えた。まず初めに火縄の代わりに火打石で放つ方法を開発し、多少複雑な構造となったが、ある程度の水に耐えられる鉄砲を開発された。また、鉄砲の調練を視察されていた時に一人の足軽の手の親指と人差し指の間から血が出ているのを見て鉄砲を安定して撃てるように鉄砲の台株の一部をくりぬいて当て木を付けられるようにしたことで鉄砲の弾が的に当たる確率を上げられた。さらに驚いたのは当て木を合わせて鉄砲を長くしたことで「短槍か薙刀として仕えるのではないか?」と考えられて鉄砲の先に槍に近い刃を取り付けられるようにしてしまわれた。

この鉄砲は種子島とは一線を画す能力を持っているとされて「朽木一式」と名付けられた。これは種子島の火蓋などを改良するだけで出来てしまうので、今後は一から作らずに改造していく方針を殿は示されて現在では100丁の鉄砲を有するようになっている。

 

それ以外にも鉄砲を大きくして特殊な改造を施した荷車に乗せる「大砲」を作られて破壊力が強化された。

 

 

③「硝石の発見」

偶然だが殿が硝石をご覧になられたときに臭いを嗅がれた。その日の夕刻、殿は儂と新次郎、大伯父上様が集まって古い肥溜めに向かわれた。何でも、硝石と同じ匂いがするとおっしゃられた。「何を言っているのだ?」と思ったのが肥溜めの淵にある白い粉のようなものを少し採って硫黄と炭に混ぜて火をつけると爆発して驚いた。これは間違いなく火薬であると!これ以降は蔵人様が西山城で「新しい肥料」として開発が始まり、古い肥溜めから糞尿を集めて本格的に作り始めている。あと数年で量産できるとのことだ。

 

 

④「焙烙玉と擲弾の開発」

当初、殿は「全ての兵を鉄砲隊にする」と仰られたたが、儂を筆頭に家臣たちは反対した。鉄砲の使い勝手、金食い虫であることもあった。それ故、殿は理解を示されて取りやめた。殿が初めて失敗したということが不謹慎だが面白かった。

しかし、家臣に反対されたからと言ってタダで引き下がる殿ではなかった。まず最初に組屋に「火薬に関わる武具を買いたい」と頼んで持ってきてもらったのが瀬戸内の海で猛威を振るっているという焙烙玉と焙烙火矢だった。

殿は焙烙玉を量産させると同時に、焙烙火矢を腰だめで撃つのを肩に背負う形で撃つ方法に改造された。

 

「陶器は高価じゃ」といって殿はこれを大きな竹筒に変えてしまった。木地師や鍛冶師たちも奇妙なものを見る眼をしながら、とにかく作ってみた。その際に殿は鉄砲のように引き金を引いて撃つ形式を採用したが、

 

ある時、「何故、竹にしたのか?」と殿に聞いた時に「陶器は割れやすい。持ちやすいうえに捨てやすいものとして目を付けた」と仰られた。

実際に撃ってみると撃ちやすく、戦いやすいと思った。

 

 

⑤「兵制の改革」

殿は百姓を兵として扱わないといったが、雇われ兵ではどうしても士気が低いことが多い。そのため、殿は大胆なことを言ってのけた。

ある日、かつて兵として参加した経験を持つ百姓を集めて「軍に入ってくれる兵を出した世帯は四公六民から三公七民に税を引き下げる」と宣言されたのだ。

 

この宣言で村は数日で活気づいた。殿の初めの治世で税が安くなっただけでなく、更に税が安くなるというのだ。百姓たちはこぞって志願するだけでなく、ある世帯では他の村から養子を迎え入れて志願させている始末でもある。おかげで300人の定員は一瞬で埋まった。

 

 

「・・・・50になったというのにまだまだ死ねぬな・・・」

 

 

様々な改革を行ったことで朽木の軍勢は変わった。

これなら、高島七頭と戦っても負けることはあるまい。

ここ最近、奴らは朽木が豊かになったせいで百姓たちが住みづらくなって逃げだしていると聞く。いずれは朽木谷に攻めてくるであろう。

いや、大方様の涙、先代様を打ち取られた我らの無念を晴らすためにも必ず勝たねばならぬ!

その思いを胸にして儂らは日々、走っては調練に励む。

 




・引用、参照元
①ナポレオンの「皇帝は我々の足で勝利を稼いだ」から(Wiki情報)
②マスケット銃への進化
③原作よりも逃げ若風に
④逃げ若風
⑤独自に考えました。
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