遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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お気に入り、感想、評価をくださる方々へ
いつもありがとうございます。
仕事に疲れた時や風邪ひいて寝てるときにたまに見ては活力にさせていただいています。
前話の竜崎に関する感想とかも見てて面白かったです。

これからも頑張りますので、本作を楽しんでいただけるとありがたいです。



孔雀舞失格!? 想いの交差と襲い来る闇

 

「さすがに夜は静かだね」

 

「わざわざ暗くなってからデュエルしようなんて考える奴はいないってことね」

 

勝利と舞は月光が照らす森の中を歩きながら言う。

決闘者王国の戦いは二日間にわたって行われる。いくら城行きのチケットが先着順だからといっても、まだ焦るタイミングではないという判断だろう。決闘者も寝静まる夜の刻だった。

 

「じゃあそろそろキャンプの準備ね……土下座して頼んだら、私のテントに入れてやってもいいわよ、勝利?」

 

「……土下座してでも断るよ」

 

疲れた様子を隠そうともせずに答える勝利に、「あらそう? 残念」と悪戯っぽく笑う舞。それを見て勝利はもう一つため息をこぼす。

 

夜ぐらいゆっくり心を休めたい、というのが勝利の本音だった。

 

竜崎のデュエルを境に心の余裕を取り戻した舞は、再び軽口で勝利を揶揄うようになった。

腕に引っ付かれる度に、体の柔らかさが思考を溶かし、鼻孔をくすぐる香水の香りが心を乱す。

いいように扱われ続けた勝利の精神はくたくただった。

 

(日中はいろいろありすぎて気にしている余裕がなかったけど……年上美人と二人旅なんて、やっぱり僕には精神が持たないよ……)

 

「……さあ、さっさと夕飯の準備をしてしまおう。もっと暗くなっちゃったら水の用意もままならなくなっちゃうよ。缶詰の用意はあるけど、明日のエネルギーにするためにもできる限りちゃんとしたものが食べたいからね」

 

「ああ、ご飯の準備は後回しでいいわよ。労働力のあてがあるから。寝床だけ作っちゃいなさい」

 

「……あて?」

 

勝利が疑問符を返すと、舞がにやりと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「揃いも揃って……ひもじい顔してるわねーあんたたち」

 

「ああ、なるほど……労働力」

 

 

「げ、孔雀舞!」

 

「勝利君も」

 

「遊戯君たち。もしかしなくても、野営の準備は全くしてこなかったのかい?」

 

「うっ……」

 

図星のようだった。

それを見た舞は嬉しそうに笑う。狙い通り、といった表情だった。

 

「ねえ、城之内。私の食料と、あんたの星1個、交換してあげようか?」

 

「ふざけんじゃねー! この星は俺の命なんだぞー!」

 

「冗談よ。冗談。そんな飢えた顔して、私にかみつかないでねー」

 

「っ~!!!! 勝利!! この性格ブスさっさと連れて帰れー!!!!」

 

「まあまあ、一応君たちにメリットのある提案しに来たんだから、そう邪険にしないでよ。舞さんも、揶揄ってばかりじゃ話が進まないよ」

 

「提案?」

 

怒り心頭の城之内を本田と獏良が押さえつけている隙に、遊戯が前に出て会話を進める。

 

「そっ。要は一時休戦よ。お互い決闘者なんだから、休息は必要でしょう?」

 

「僕らはお互いに食料をもってきているから、分けてあげる余裕もある。準備を手伝ってくれるなら、一緒にご飯を食べようよ。って提案しに来たんだ」

 

「っ……誰がその女の世話になんか」

 

「おい黙ってろ城之内! 勝利様、孔雀舞様! ありがとうございます!」

 

「おい、本田!? てめーにプライドはねえのか!?」

 

「ねえ、あなたは杏子ちゃんだっけ? この男どもに今から水を汲みに行かせるから、軽くあっためてシャワーを浴びるといいわ。そこに携帯シャワーとプライベートテントがあるから」

 

「ホント!? ありがとう~~!」

 

「て、てめえらなあ! 昼間は敵だったやつに、簡単に手のひら返しやがって!」

 

「……まあ、意地を張るのもいいけどね、城之内君。遊戯君と獏良君はもうご飯の準備始めちゃったよ。君も働かなかったら、食いっぱぐれちゃうぜ?」

 

「っ! やべえ! おい、水汲みに行くぞ! 城之内!」

 

「~~~~~~!!!!」

 

悔しさやら屈辱やらに悶える城之内を本田が抑え込み、水を汲みに行った。

 

「ははっ、みんなでキャンプみたいで楽しいねー!」

 

笑う遊戯を見て、舞は怪訝な顔を浮かべた。

 

「遊戯……噂には聞いてたけど……ほんと昼間とは別人ね……」

 

「だね。でも、どちらの遊戯君もデュエルの天才だよ。そして、僕たちの目指すべき山巓だ。それは変わらないよ」

 

「……そうね」

 

そのセリフに、杏子ははっとする。

 

(この二人、もう遊戯の人格が二人分あるかもしれないことに気づいてるんだ……しかも、すでにそれを受け入れている。決闘者としての特有の感覚みたいなものがあるのかな……ちょっと妬けちゃうなあ……)

 

「そういえば、なんで舞さんは私たちに世話を焼いてくれてるの?」

 

「……ふふっ、なんでかしらね。正直に言うと、私にもよくわかっていないのよ」

 

「……舞さん」

 

「さっ、シャワーの準備しちゃうわよ。料理の準備は男どもにやらせておきなさい」

 

そういうと舞は自分の荷物に向かっていく。

 

 

「杏子ちゃん」

 

「なに、勝利君?」

 

「よかったら、舞さんと仲良くしてあげてね。杏子ちゃんにだったら、いろいろ話せることもあるかもしれないし」

 

「えっ……うん、それはもちろんオッケーだけど。勝利君じゃあだめなの? 一日一緒にいた勝利君のほうが、仲良くて、信頼されているんじゃない?」

 

「うん、ダメ。僕は、男で、決闘者だからね」

 

「……?」

 

「じゃ、頼んだよ」

 

いうと勝利は遊戯たちに合流し、カレーの準備に着手した。

 

 

 

 

「う、うめー! これうめーぜ獏良!」

 

「ははっ。よかったー! それにしても勝利君、結構料理の準備が本格的だったね。料理得意なの?」

 

「まあ、そうだね。普段から料理してるから、結構自信があるよ」

 

「たくさん食べておきな! 明日はまた決闘が始まるんだからね」

 

「ハイですハイ!」

 

「てめーは決闘者じゃねーだろ! 本田!」

 

「英気を養うのは大事なことさ。決闘も、それを応援するみんなも、今日は疲れただろうからね」

 

「おう、勝利! お前はわかってんなあ。城之内の決闘なんざ、見てるだけで消耗しちまうからよぉ」

 

「なんだとぉ! 昼間っからずっと言いたい放題いいやがって、このシロートどもが!」

 

「何おう!」

 

「ハハハ!」

 

この王国に足を踏み入れてから、初めて行う大人数での和やかな食事、楽しい空間に勝利の顔が思わず緩む。

そして舞をちらりと見ると、同じく少し緩んだ顔を見せたが、勝利に見られたと気づいてか気づかずかすぐに顔を引き締めた。

 

「舞さんはすでに星8個だから、明日は城に一番乗りできるかもね!」

 

「……ええ、そうね。でもいずれあなたとは決着をつけるわよ。遊戯。勝利とも、城之内ともね」

 

「ねえ……今は決闘の事を忘れましょうよ……」

 

「いえ、今はこうして一緒にいるけど……明日はみんな敵。それが決闘者なのよ! そうでしょ、勝利」

 

「……まあ、そうだね。概ね、同意見かな」

 

「勝利君……」

 

「ごちそーさま。あたしはテントに行ってる。杏子ちゃんもそこで一緒に寝たほうがいいわ。勝利と遊戯くらいならともかく、危険そうな男もまじってるからね」

 

「誰の事だてめー!」

 

城之内の怒号を無視して、舞はテントに向かっていく。

杏子も、言われるがまま舞についていった。

 

「けっ。とんがった女だぜ。勝利、お前よくあんな女と二人で旅なんかできるな」

 

「あはは。成り行きだけどね。口の強さほど悪い人じゃないから」

 

「……なあ、勝利。実際のとこ、お前どうなんだよ。あの女のこと」

 

少し声のトーンを落とした本田が、勝利の耳に口を寄せる。

 

「……どうって?」

 

「好きなのかってことだよ。一日中孔雀舞と二人っきりで一緒にいたんだろ?」

 

「けっ、あんな高飛車女好きになるなんて、気がしれねーぜ」

 

城之内がそう吐き捨て、頭に腕を組んで木によりかかる。

聞きたくもない。というような様子だった。

 

 

「……そうだねぇ」

 

 

だが、興味のないふりをしつつも、勝利の答えに耳を澄ませているのは丸わかりだった。

城之内だけでなく、遊戯も、本田も、獏良も耳を澄ませている。

 

 

「……正直に言うと、よくわかんないや」

 

 

「勝利君……」

 

「舞さんは、魅力的な女性だよ。見た目だけじゃない。デュエルに対する誠実さや、気高くあろうとするその姿はとても尊敬できる、素晴らしい人だと思う」

 

「……そんな風には見えねーけどな」

 

「ああ、正直高慢ちきな癇癪持ちにしか見えねーな」

 

「ちょっと、二人とも……」

 

気を使って城之内と本田を制する遊戯。

それに対し、勝利は笑って言う。

 

「でも、みんなにご飯をふるまおうって言いだしたのは、舞さんなんだよ?」

 

「えっ?」

 

「そうなの?」

 

「うん。まあ、口では『働かせる』なんて言ってたけど。舞さんが自分でこれくらいの準備できないとは思えないから、この会は、みんなにご飯をふるまうためのものだ。彼女も、この王国にきて何かが変わったんだよ」

 

そういわれて、城之内たちは先ほどまで自分たちがたらふくになるまで食べたカレーの皿を見た。

これらすべてが、先ほどまで文句を言っていた舞がもたらしてくれたものだと気づくと、何とも言えない、情けない思いを覚えた。

 

「それに、変わることになったきっかけは間違いなく、城之内君とのデュエルだよ」

 

「俺の?」

 

「うん。あの決闘をきっかけに、舞さんの中で何かが変わり始めた。たった一人戦い続ける孤高の決闘者だった舞さんの心に、何かを与えたんだ。今舞さんは、変わろうともがいている」

 

そして、竜崎と城之内の決闘を見て、何かに気づいた。

城之内たちによって与えられた何かが、舞の中で芽吹きつつある。

舞さんの『孤高の決闘者』という硬い殻にはすでに罅が入っている。

勝利はそれに気づいていた。

 

 

 

「だから、僕はそんな変わっていく舞さんをもっと見ていたい。舞さんも、城之内君や遊戯君の強さに触れて、もっともっと強くなっていくのかもしれない。竜崎君が、そうだったように」

 

 

 

勝利は、息もつかずに話を進める。

どんどんと勝利の口調に力が入っていくのを、遊戯たちは感じた。

 

 

 

「遊戯君たちからいろんなものを吸収して、強くなっていく舞さんの決闘を、もっとそばでずっと見ていたい。今日僕は、心の底からそう思った。だから僕は、舞さんと一緒にいるのかもしれないね。これが、『恋愛』の情なのかどうかは、あんまり経験がなくて、正直わからないんだけどさ」

 

 

 

「勝利……お前……」

 

「ははっ……熱くなって、つい恥ずかしい話しちゃった。忘れてくれ。さあ、もう眠っちゃおうか」

 

 

城之内の言葉を無理やり遮った勝利は、話は終わりといわんばかりにそのまま持っていた寝袋に入り、火照った顔を見られたくなくて、寝袋を頭まで被った。

それを見て、遊戯たちは顔を見合わせ、クスリと笑った後で、同じように横になって目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

ところ変わり、舞のテントの中。

勝利に言われたから、というわけではないが、杏子は舞と話に花を咲かせていた。

 

「へー。舞さんはカジノのディーラーやってたの?」

 

「ああ、天涯孤独の身だったんでね。ギャンブル狂いの金持ちをかもって世界を回ってたのさ。身元なんかも詳しく聞かれないから都合がよかったしね。つまんない男たちを香水(アロマ)カードでカモにしてやってたけど。どんどん人間てやつが嫌いになっていってさ。言い寄ってくる男もうっとおしかったし、金にゃあなったけど嫌気がさしてやめちまったよ」

 

「!」

 

「あたしがこの島に来たのは、決闘者のプライドとか女のプライドとかそれ以上に、遠い昔大切にしていた何かを見つけるためかもネ」

 

「舞さん……」

 

「……不思議だね。あんたたちや勝利を見ていると、なんか、その何かが見つかりそうな気がしてくるんだよ……」

 

「……舞さんは、勝利君のことが好きなの?」

 

「……どう、なんだろうね。最初はただ、決闘に負けたプライドであいつに張り付いているだけだった。協定とかなんとか言ってたけど、あいつに負けっぱなしのままだったのが気に食わなかっただけ。だけど今は、一緒に城を目指して、必死に高めあっている。ほんと、あたしは、何がしたいのか……」

 

「舞さん、あなたは……」

 

「あたしよりあんたさ。あんた、遊戯にホレてんだろ?」

 

「ブッ! な、なに言い出すんですか急に!」

 

「女同士、照れることないだろ! 実はさ、さっき遊戯をこの先の丘に呼び出しておいたんだ。『杏子が話がある』って言ってね!」

 

「え~~~!?」

 

「ほら、いったいった。香水貸してやろうか?」

 

「~~~~~!!」

 

顔を真っ赤にする杏子を舞はテントから無理やり追い出す。

 

「杏子! どんなゲームでもね……夜は女のほうが有利なんだよ」

 

「もう~……」

 

とぼとぼと丘へと歩き出していった杏子を見送り、舞はテントに戻る。

水のペットボトルを開け、のどを潤して一息ついた。

 

「フフッ。半分揶揄っただけなのに、顔真っ赤にしちゃって。あたしにも、あんなウブな時があった気がするよ……」

 

そう呟くと、潤ったのどにもう一度水を灌ぐ。

 

(……あんなウブな女だったら、こんな思いもしなくてすんだのかね……勝利)

 

 

 

 

 

 

 

「ここにも一匹!」

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

 

「さあ、決闘の時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?」

 

勝利は、寝袋から跳ね起きた。

頬をぬぐうと、熱くもないのに汗がぐっちょりと張り付いていた。

 

(なんだ? なんだ!? なんだこの嫌な予感は!?)

 

「みんな!? 何が起きている!?」

 

「な、なんだぁ!?」

 

「おい、勝利? 何だってんだよ?」

 

自分の声に反応して飛び起きる城之内や本田たちを無視して、なりふり構わずに『友達』と会話を始める。

 

『ピー! ピーピー』

 

「ブリザード! わかるのか?」

 

勝利の周りを、バタバタと暴れる。

ついてこい、と言っているようだった。

 

「わかった。案内してくれ!」

 

『ピー!』

 

「お、おい! 勝利! どこ行くんだよ!? おい本田、獏良たたき起こしてこい! 俺は、勝利を追ってくるぜ!」

 

「わ、わかった」

 

 

 

 

 

勝利は走る。

何かを振り払うようにどんどんと速度を上げるが、心のざわつきがうなりを増す。

 

(何かわからない、でも、何かが起こる!)

 

頼む。間に合え。

そればかりを願う。

 

(……舞さん!)

 

 

 

 

 

 

 

『ダーク・サイレント・バーン!』

 

「キャーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

「っ! 舞さん!?」

 

 

声のした方向に顔を向ける。

暗闇の森の中に、デュエルボックスが見えた。

 

「舞さん!」

 

勝利がボックスにつくより一瞬先に、遊戯が舞に声をかける。

どうやら、二人も舞の声に反応して集まってきたようだった。

 

「遊戯、杏子。それに勝利……」

 

「ほほう。武藤遊戯に黒羽勝利。これは手間が省けた。ミスターペガサスから受けた最優先指令はお前らを倒すことだからな」

 

「遊戯、勝利! 気を付けて。こいつは島を徘徊して決闘者から星を奪うプレイヤーキラーだ!」

 

「プレイヤーキラーだって!」

 

「……まさか、舞さん!」

 

「武藤遊戯、黒羽勝利! お前たちもこの女と同様に失格にしてやる。どちらからでもいい、決闘だ!」

 

「……馬鹿な」

 

勝利が打ち震える。

ブリザードが、肩で不安そうな表情を浮かべる。

崩れ落ちそうになる体を、ボックスに手をついて無理やり支えた。

 

 

 

「勝利……あたしはここまでだよ。あんたとの再戦は、かなわなかった。それに……ごめんね。一緒に星10個集めることもできなかった。これじゃ、協定違反だ」

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 

『ひとまずはお互いの(スターチップ)10個獲得を目指して……ってことで構わないかな?』

 

『ええ。協定は成立ね』

 

 

 

 

 

(自分が脱落したばかりだっていうのに、そんなことを……そんなことを……)

 

 

「ウシシシシ。よもやそれしきの腕で本気で生き残ろうとしていたとはな。とんだお笑い種だ! シシシシシシシシシシ!」

 

「その程度? その程度だって……?」

 

勝利が男の言葉に、震える声を何とか言葉にして返す。

その様子を見て再び、こらえきれないといった様子で笑い出す。

 

「そうだ! この程度の女がペガサス様の城へ行こうとしていたことも、この程度の女を慕っている貴様も、お笑いだと言っているんだ。シシシシシシシシシシ!」

 

 

勝利が、力強く手を握る。

今にも自分の意識を無視して飛び出していきそうな拳を、ぐっと抑え込んでいた。

 

 

 

「貴様ぁ! もう許さねえぜ!」

 

 

 

瞬間、プレイヤーキラーの下種な言葉に反応するかのように、遊戯の千年パズルが光り輝く。

もう一人の遊戯が姿を現し、男の前に立った。

 

 

 

 

「貴様の相手は、この俺……

 

 

 

 

 

 

 

「僕だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「っ! 勝利君……」

 

臨戦態勢を整え、受けて立とうと一歩前に出ようとした遊戯を、勝利が片腕で制し、代わりに前に踊りでる。

 

 

 

 

「……悪いね。遊戯君、このデュエルは、僕がもらう」

 

 

 

 

月の光を背中に受け、勝利がプレイヤーキラーの前に来た。

にやにやと笑う目の前の大男に一歩も引かず、勝利がいう。

 

 

 

 

「貴様の相手は、この僕だ」

 

 

 

「シシシシシ。負けた女をかばって出てきたのか。闇に敗れた程度の実力の女を」

 

 

 

「それ以上その汚い口を開くなよ。闇に紛れて人を襲うことでしか、星を奪えない盗人が」

 

 

 

「な、なにぃ!」

 

 

 

「席につけよ。僕がこのデュエルで見せつけてやる。貴様が舞さんの足元にも及ばないデュエリストだってことをな」

 

 

 

 

「き、貴様ぁ!?」

 

 

男は憤慨し、勝利の胸倉をつかむ。

その様子に一瞬もひるむ様子もなく、勝利は鼻で笑った。

 

 

「……やっぱり、何か仕掛けてたんじゃないか。キレてるのは図星だからだろ。的外れならば相手の言葉なんか鼻で笑ってやればいい。僕が、貴様にそうしているようにな」

 

 

「だまれぇ! 黙らんと力づくで黙らせるぞお!」

 

 

男の腕力で無理やり持ち上げられた勝利は、首が閉まる。

だが、それでも、勝利は一つも目を背けることはなかった。

 

「やめろ! 貴様!」

 

「勝利君!?」

 

「勝利! もうやめて! あたしのことはもういいから!」

 

悲鳴のような声が皆から上がる。

だが、勝利は、何も臆せずに続けた。

 

 

「……ほんとに……実力があるっていうなら……決闘で僕を黙らせてみろよ。できるものならな!」

 

 

「……やってやる」

 

 

 

男は、持ち上げた勝利を投げ捨てるように離す。

軽く地面にたたきつけられた勝利は、けほけほとせき込んだ後、呼吸を整えて立ち上がる。

 

 

 

「星は8個がけ。貴様が舞さんからかすめ取った星。すべて出しな」

 

 

「……いいだろう。だが貴様は星6つ。差分の2つの星はどうするつもりだ? シシシシシ」

 

 

 

「……」

 

 

勝利は、ほんの少しだけ顔をゆがめ、デッキホルダーに手をかける。

 

負ける気などない。

 

だが、それだけはやりたくない。

友達を、賭けに出すなどということは。

 

 

だがそれでも、この男から。

舞さんを侮辱したこの男の前から逃げ出すことだけは、死んでもしたくない。

 

 

 

 

 

「「星は、ここにあるぜ!!」」

 

 

 

 

そんなほんの数秒の葛藤を、友の言葉が切り裂いた。

 

「っ!」

 

「「受け取れ、勝利(君)!」」

 

勝利はとっさに手をかざし、自分に飛んできたそれを受ける。

手のひらを開くと、星が二つ、輝いていた。

飛んできたほうに目をやると、遊戯、そして、たった今到着したばかりの状況もろくに把握していないであろう、息を切らした城之内が並び立っていた。

 

「遊戯君……城之内君」

 

「勝利君。君が敗北を憂う必要など、まったくない! 突き進め!」

 

「よくわかんねーけど、そのデクノボーをぶったおすんだろ? やっちまえ、勝利!」

 

「……ああ。ありがとう」

 

その星と、自分のグローブから外した6つの星を合わせ、テーブルにたたきつける。

 

「これでチップはそろったぜ」

 

「……ふん(もう少しでこいつのデッキを賭けに引きずり出せたものを……まあいい。遊戯の星を同時に減らせるのならかえって好都合だ)」

 

 

 

「勝利……」

 

 

 

不安そうな声を上げる舞に、勝利は一瞬だけ怒りの表情を和らげ、言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫だよ、舞さん。見てて。君の強さを、僕が証明して見せる」

 

 

 

 

 

 

 

「シシシシシ。安心しろ、すぐにお前もあの女のように、失格にしてやる。闇のフィールドの力によってな!」

 

 

 

「貴様は……貴様だけは、絶対に許さない!」

 

 

 

 

 

 

闇のプレイヤーキラー LP2000

 

「「デュエル!!」」

 

勝利         LP2000

 




勝利と舞、それぞれの心がちょっとだけ見えてからの、闇のプレイヤーキラー戦です。
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