竜崎&勝利 LP 4750 手札1枚
伏せモンスター1体
伏せカード2枚
スピードカウンター 7
スカルライダー LP 1500 手札3枚
終焉の王デミス(効果無効)
攻 3200
ゼラ
攻 3600
センジュ・ゴッド
攻 1400
神の恵み
スピードカウンター 5
「キヒヒ……さあ、はじめようぜぇ。お前たちの最後のバトルをよぉ!」
「くっ……」
竜崎はフィールドのカード、手札、すべてを見直して、最後ににやつく"スカルライダー"の顔を睨む。
その苦しさを背中で感じながら、勝利も状況を分析した。
(……僕らのLPは4750。一見余裕はあるように見えるけど、相手のモンスターたちの攻撃力を考えたら、1撃で吹き飛ぶ圏内にいる。それに……)
「へっへっへ……」
"スカルライダー”の顔を眺める。
その様子から、「当然、気づいているだろうな……」とぼそりと呟く。
竜崎もその呟きに心で同意した。
(この決闘には、デッキマスターっちゅう要素がある。つまり奴はいつでも、攻撃力1900のスカルライダーで追撃を仕掛けるチャンスがある。ワイらのデッドラインは、想像より近い場所にある……)
竜崎は、自分のセットカードを見る。
1枚は、逆転にかけて伏せた永続罠カード。
しかし……敵の行動を止めるためのカードじゃない。
(もう一枚も、本来はワイの恐竜カードを出して敵を返り討ちにするためのカードや……せやけど、今の状況じゃたとえワイの恐竜でもうちかてん……ワイらが、逆転するためには……)
賭けるしかない。
負けがちらつく自分の頭を、必死に振って払い落とす。
(……馬鹿たちが、ワイみたいなもんの決闘を信じるって言っとるんや。これでワイがビビっとったら……ワイを信じたこいつらが、ホンマに馬鹿になってまうやないか!)
「……こいや!!」
気合の入れた竜崎の声が、場に響く。
それを合図にするように、モンスターたちが動き出した。
「ヒヒッ! いくぜぇ! "センジュ・ゴッド”で、セットモンスターに攻撃! 伏せモンスターを蹴散らせ!」
センジュ・ゴッド
攻 1400
クリッター
守 600
「やっぱり雑魚モンスターじゃねえか! そのまま粉砕だ!」
「だが、"クリッター”の効果発動や!」
クリッター
闇属性 悪魔族 星3
攻撃力 1000
守備力 600
墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える
「この効果によって、ワイはデッキから、攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える。ワイが手札に加えるんは……」
竜崎が、勝利のことを見る。
それを感じた勝利が、そのまま頷く。
「……ワイは、"BF-砂塵のハルマッタン”を選択や!」
「へっ! そんなカード、使う機会は来ねえよ!」
「……」
『……』
(大丈夫だ。ハルマッタン。信じてろ。必ず、お前の出番が来る!)
「さあ、くたばりやがれ! "終焉の王デミス"でプレイヤーにダイレクトアタック! 『"嘆きの斧撃"』!」
「……ここや!」
「っ!!?」
「伏せカードオープン! "カウンター・ゲート"!」
カウンター・ゲート
通常罠
相手の直接攻撃宣言時に発動可能
その攻撃を、1枚ドローに変換する
ドローしたカードがモンスターだった場合、
そのモンスターを召喚する
「うおおおおおお!!」
迫る斧の一撃をハンドルを切って躱した勝利が、デミスにバイクをぶつける。
その瞬間に、2人の間に漆黒のゲートが開く。
「な、なにを!?」
「"カウンター・ゲート"は、相手の直接攻撃1回を無効化できる! そんで、その攻撃を次なるドローに変換するんや!」
「……キ、キヒヒ! 何が起こるのかと思えば、その程度! 何枚カードをドローしようが、お前はこのターンで終わりなんだよ!」
(次の"ゼラ”の攻撃が通れば、奴らのLPは風前の灯……あとは俺自身をデッキマスターとして召喚し攻撃すれば、奴らは何をしても耐えきれない!)
「さあ、覚悟しやがれ! "ゼラ”よ! あの愚か者どもを、闇の彼方に葬り去るがいい!」
そういって、"スカルライダー”が腕を振り上げる。
そしてそれに合わせるように、竜崎も腕を天に掲げた。
「……まだや!」
そして竜崎が振り上げた右手の先に、
先ほど開いたゲートの先から、漆黒の力が集まっていく。
やがてその闇は形を成し、1枚のカードへと姿を変える。
「"カウンター・ゲート"で引いたカードはこのターン、攻撃表示で召喚される権利を得る。このカードがモンスターだった場合、問答無用で場に出すことになるっちゅうわけや」
「ひひっ。何に縋っているのかと思えば……」
真っすぐな目で、こちらを見つめる竜崎。
しかしその視線を受ける舞は、決して変わらぬ表情を不安いっぱいに塗りつぶした。
(……召喚行為の権利。それすなわち、
舞は、目を背けたくなる想いを堪えながら、勝利と竜崎を見る。
勝利は後ろを振り向くことなく、真っすぐに自分の走る道を見据える。
そして竜崎は……目を瞑り、手に集まる力をその身に感じていた。
(……ホンマは、こんなことやりたない……こんな、運否天賦の、アホみたいなギャンブル。まるで……)
『竜崎! しっかりやれよ!』
『竜崎さん! 頑張って!』
瞳の奥で、耳の奥で響き渡るその声に、竜崎はふっと笑った。
「……ドロー!」
闇が爆ぜるように散る。
そして、竜崎の手に1枚のカードが加わった。
『……ぴぃ!!!』
「……ククク。アハハハハ!!!!」
「召喚! "BF-極北のブリザード”や!!!」
「何ぃ!!?」
BFー極北のブリザード
闇属性 鳥獣族 星2 (チューナー)
攻撃力 1300
守備力 0
このカードは特殊召喚できない
召喚時に、墓地から仲間の星4以下のBFを守備で蘇生させる
ブリザードは、バイクに並走しながら勝利の周りを嬉しそうに飛び回り、全身で喜びを表現する。
そして最終的に竜崎の腕に止まり、嘴で竜崎の墓地をつついた。
「"BF-極北のブリザード”の効果発動! このカードが召喚に成功した時、墓地のBFモンスターを守備表示で呼び戻すことができるんや! 来い、"BF-銀盾のミストラル”!」
BF-銀盾のミストラル
闇属性 鳥獣族 星2(チューナー)
攻撃力 100
守備力 1800
破壊された後1回だけ相手の攻撃からプレイヤーの身を守る
「ちぃ!! またミストラル!」
『すごい……本当にすごいわ! 二人とも!』
竜崎&勝利 LP 4750 手札2枚(ハルマッタン)
BFー極北のブリザード
攻 1300
BF-銀盾のミストラル
守 1800
伏せカード1枚
スピードカウンター 7
スカルライダー LP 1500 手札3枚
終焉の王デミス(効果無効)
攻 3200
ゼラ
攻 3600
センジュ・ゴッド
攻 1400
神の恵み
スピードカウンター 5
「お、おのれぇ……」
"スカルライダー”は、竜崎がなした奇跡を正しく理解し、ハンドルを握る拳に力を籠める。
誤ってバイクのコントロールを失うまいと落ち着くことに、必死だった。
(ブリザードの攻撃力は1300。"ゼラ”の攻撃でも奴らを葬ることはできない。デッキマスター召喚で敵を攻めようにも、今出てきたミストラルが邪魔をする……このターンでLPを削り切る方法は、完全になくなった。か……)
"スカルライダー”は大きく息を吐いて、目の前の快調にマフラーを鳴らすバイクを見据えた。
そして再び、人を不快にさせる笑みを勝利たちに向けた。
「……キヒヒ。いやあ、見事見事。まさか本当に耐えきるとは、大したもんだねえ」
「……なにがおかしいんや?」
不機嫌に聞く竜崎。
しかし、奴は態度を崩さない。
まるで、『どうせ決着は確定している』。と言わんばかりの笑みだった。
「ああ、無駄なあがきだっていうのに。ご苦労なことだと思ってよ」
「……ほざいてろ。次のターンで、竜崎君とBFたちが、必ずお前を討つ!」
「キヒヒ。その次のターンが、果たして来るのかな?」
「……なに?」
「適当抜かすのも体外にせえや。この状況から、ワイらのLPを削り切ることなんぞ、でけへん!」
「LPはな」
言いながら、"スカルライダー”はわざとらしくバイクを左右に振った。
バリバリと荒れた地の小石を飛ばしながら、絶妙なバランスを維持して走る。
腕が違う。
それだけの行動だがしかし、今まさにはっきりと見せつけられた勝利はそっと唇を嚙む。
(決闘の腕は、互角。だが……運転の腕は、間違いなく奴の方が上。だがこの状況じゃあ、その腕もさして役には……)
そんな勝利の考えを見透かしたかのようなタイミングで、"スカルライダー”がまた笑った。
「言ったよなあ? この決闘はLPのほかに、『決闘の途中でバイクがコケるようなことがあったとき、そいつの敗北』だってよお?」
言いながら、"ゼラ”に支持を出す。
"ゼラ”が口を開けて力を籠める。
その矛先には、ブリザードがいた。
「ああ。そっかそっか。お前たち、まだこの決闘中に大したダメージ受けてなかったもんなあ? そりゃ、ダメージ受けたらバイクがどうなっちまうか、わからねえよなあ?」
「っ!!?(しまった!? この空間は、ダメージがプレイヤーに反映される特殊空間! "ゼラ”の攻撃で大ダメージを受けたら、僕らの体は!?)」
「ぐっ!?(あかん! ダメージを防ぐカードはない……この攻撃、受けるしかあらへん!)」
そして、すぐさま"スカルライダー”が宣言した。
それは勝利たちの心の準備が間に合う前に決めてしまおうという、くだらない魂胆。
だがその小細工に抗う術すら、今も必死な勝利にはなかった。
「食らえ! "ゼラ"の攻撃! 目標、極北のブリザード!」
ブリザードが竜崎の肩を離れ、バイクの前に構える。
身構え風を纏うその姿に、勝利たちは見覚えがあった。
「ブリザード……」
『あれは……倉庫の時の……』
(お願い、ブリザード! もう一度……勝利たちを!)
「吹き飛べ! 『ゼウス・アウス・ブラスト』!!!」
『ぴぃーーーーー!』
「がああああああ!!!!」
「うおおおおおお!!!!」
竜崎&勝利 LP 4750 ー (3600 -1300) = 2450
『勝利!!!! 竜崎!!!!!』
爆発とともに、爆煙に包まれる勝利と竜崎。
それを煩わしそうに払いながら、"スカルライダー”が前に躍り出る。
「キヒヒヒヒヒ! クラッシュ! クラーッシュ!! 俺の、勝ちだ! きひゃひゃひゃひゃひゃ!」
笑いながら、カードを2枚伏せて、エンド宣言。
そしてターンが、竜崎に回る。
「さあ、お前らのターンだぜ。って言っても、もう聞こえねえか。キヒヒ」
そして悠々とコーナーを曲がるスカルライダー。
その様子はさながら、ウイニングラン。
(落車してるなら、それで終わり。万が一落車せずに走り続けたとしても、こんだけ距離を開けておけば奴らは俺のモンスターに触れることすらできねえ。そうなりゃ伏せカードを使って回復と、儀式をもう一度行ってデミスと組み合わせりゃ奴らのLPは0。どのみち、ここから俺の負けはねえ)
「っ! おっと、なんだ。道が荒れてきやがったな。俺までクラッシュしちゃあ笑えねえ」
そういいながら"スカルライダー”は軽くアクセルを緩める。
たったそれだけで、コーナーの途中に突如現れた岩山や穴の隙間をぬうようにすり抜けていく。
それだけで、この男のバイクの腕が伺える。
『……なんでよ』
「ああ?」
『それだけのバイクの腕と、それだけの決闘の腕があって……あんたは、なんでこんなことをしてるのよ! いったい、あんたは何が目的なの!?』
「……キヒヒ。知らねえよ。目的なんざ。俺は、美味しい想いができるっていうからここにいるだけだ。ぶっちゃけお前らの事なんか、知ったことじゃあねえ。ヒステリックに喚くなら、今すぐてめえを捨ててやってもいいんだぜ?」
そういって"スカルライダー”は器用に片手を外に出し、抱えていた舞の人形を垂れ下げた。
『くっ……やめなさい……』
「ヒヒッ! どうせ、あのクラッシュじゃああいつらも助からねえだろうよ。奴を連れてく計画はどのみち失敗だ。なら今すぐに、後を追わせて……」
その時、後方の煙の中から。
一陣の風が突き抜ける。
煙を払い、その黒き風が駆け抜ける。
「……それ以上薄汚い手で……舞さんに触るなあ!!!!」
距離が遠くとも。
手が届かずとも。
その声は、すぐそばにいる。
舞の心に、届いている。
こんな体でなければ、涙が零れていただろう。
そんなくだらないことを考えて、舞は笑った。
快音を鳴らす。
怒りに任せた声が飛び交う。
その決死の表情は……未だ絶えぬ闘志の炎を燃やし、ただ愛しき人を見据えていた。
『勝利!!』
「ちぃ……生きてやがった。だが……この距離が空いちまった以上、お前らはもう俺に攻撃することはできねえよ!」
"スカルライダー”は言いながら、体を倒してコーナーを攻める。
それに対し勝利たちは現在、ようやくコーナーに差し掛かるところ。
落車を免れたものの、このスピードがものをいう決闘で一度失ってしまった速度というアドバンテージはあまりにも大きい。
だが、勝利には。そしてその後ろにいる竜崎にも。
怯みも怯えも。陰りもしなかった。
「ええか! 勝利!」
「うん!」
2人の叫びが、荒野に響く。
"スカルライダー”はその2人の声に、ただただ驚く。
その表情から、とうとう余裕の笑みが消えた。
(なんだ……なんだ! ここから、一体何ができるってんだ!?)
「ワイの事はええ! お前は、舞に追いつくことだけ考え! そうすりゃワイが、絶対にあいつを倒す!」
「ああ! わかった!」
そして勝利が、目一杯にアクセルを捻る。
安全に曲がろうという意識などかけらもなく、すさまじい音をたてて小石を吹き飛ばしながらコーナーに入っていく。
「馬鹿が! そんな運転で曲がり切れるもんかよ! そこのコーナーは、自然の罠でいっぱいなんだ!」
"スカルライダー”のいう通り。
勝利たちの目の前には、岩が。穴が。ガタガタの道が。
ありとあらゆる障害が、決死の想いで走る勝利たちの足を奪う。
「っ!!?」
グリップの聞かない荒れ地のコーナリングに、タイヤを取られたバイクが体制を崩す。
速度こそ必死に保とうとしているが、進行方向が最短距離から大きくずれて、車体がコーナーの内側を向く形に崩れた。
「は……ハハハ!! く、崩れやがった! やっぱり駄目なんじゃねえか! このコーナーは、俺の勝ち! この決闘は、俺の勝ちなんだよお!」
『勝利!!!!!』
「まだだだああ!!!!!!!」
そう叫んだ勝利は滑った車体をそのままに、最大限までアクセルを回す。
勝利たちのバイクがコーナーの内側に突っ込む形となり、とんでもない速度で斜めに走り出す。
「な、なんだ……なんだってんだ!!?」
「竜崎君! 合わせて!」
「乗ったるわ!! 日和ったら許さへんぞゴラァ!」
勝利が、一気に体を起こす。
その勝利を後ろに引き落とすかのように、勝利を掴んだ竜崎が思い切り体を後ろに引く。
そして……黒い巨体の、前輪が浮き出す。
「な、何ぃ!!?」
『う、ウイリー!!!?』
「さあ……行くぜ!」
言って勝利は、バイクで突っ込む。
その先にあるのは……岩山。
"スカルライダー”が危険と判断し、避けた岩場。
突っ切ればバイクが跳ね上がり、バランスを崩してしまうと判断し、華麗に交わした岩山。
(っ!!!!!? まさかこいつら!!!? まさか!!! まさか!!!!!?)
何かに気づいた"スカルライダー”がアクセルを捻り、対抗して速度を上げる。
しかし、理性が勝るその運転に、勝利たちほどの速度を出す力はなかった。
漆黒のバイクは、前輪を浮かせた奇怪な状態のまま真っすぐに、コースを横断するかのように走る。
そうして……コースの途中にそびえたった、岩山を上り始めた。
(今日出会ったばかりだっていうのに……無理させて、ごめんね)
勝利は、唸るように音を鳴らすバイクを一瞥して、一瞬だけ笑う。
今日であっただけのただのバイク。
また次に会えるかどうかはわからない。
だが今この瞬間、彼は確かに、勝利たちと共にあった。
荒野に飛び出た1つの出張りに乗り上げ、勢いよく車体を浮かせる。
(頼む……前へ、上へ! 行かせてくれ! 行きたい場所が……行かなきゃならない、場所があるんだ!)
2度のタイヤへの衝撃を経て。
黒い鋼の鳥が、宙を舞う。
「飛べっ! 『ブラック・バード』!!!!!」
「何ぃ!!!!!?」
コーナーの、上を飛ぶ巨体。
その巨体が、まるでコーナーを必死に回る"スカルライダー”を嘲るかの如く真上を通過し、地に戻ってきた
「どらああああ!!!」
バリバリと地面に痕を残しながら着地したその漆黒の巨体は確かに、速度を維持し、止まることなく、自分たちの前に踊り出た。
その事実があまりにも信じがたく。"スカルライダー”は茫然としていた。
「抜いた……抜いたぜ! 竜崎君!」
「よおやった!! あとは、まかせぇ!」
竜崎&勝利 LP 2450 手札2枚(ハルマッタン)
BF-銀盾のミストラル
守 1800
伏せカード1枚
スピードカウンター 7
スカルライダー LP 1500 手札3枚
終焉の王デミス(効果無効)
攻 3200
ゼラ
攻 3600
センジュ・ゴッド
攻 1400
神の恵み
伏せカード2枚
スピードカウンター 5
「ふぅ……またせたのお、骸骨男。さあ、ラストバトルや!」
「っ!!(こいつら……まさか本当に、たった1ターンで、この状況をひっくり返す気なのか!?)」
ありえない。
そんなことが、起こるわけがない。
だが、目の前にいるこいつらはなんだ?
初挑戦のはずのライディングデュエルで、自分に肉薄し。
とんでもない賭けを制して、逆転のターンをつかみ取り。
命を懸けたライディングで、自分の前に立ちふさがる。
(駄目だ……こいつら、いかれてる!? 次のターンでケリを……決着を……)
「残念やったなあ……次のターンはないわ!! ワイのターン! ドロー!」
竜崎&勝利 スピードカウンター 7 → 8
スカルライダー スピードカウンター 5 → 6
「ワイは手札から、"BF-砂塵のハルマッタン”を特殊召喚!」
BFー砂塵のハルマッタン
闇属性 鳥獣族 星2
攻撃力 800
守備力 800
BFがいるとき特殊召喚できる
召喚時に、味方BFの分だけ星を上げる
「ミストラルが存在することで、ハルマッタンは特殊召喚できる! そして、ハルマッタンの効果発動や!」
ハルマッタンがミストラルに寄り添い、その身に力を集める。
そして、ハルマッタンの体が、大きく成長する。
「ハルマッタンの効果によって、ミストラルのレベルを、ハルマッタンが吸収する!」
BFー砂塵のハルマッタン
星2 + 2(ミストラルの星) = 星4
(なんだ……? レベルの調整? いったい、何が起こる!?)
先ほどまでとは、様相がまるで違う。
"スカルライダー”から笑みは消え、震える体を必死に抑えるために不要なほどの力でハンドルを握りしめる。
(なんだ、これ……何が起こるのか、全くわからない……)
怖い。
怖い。
決闘が、怖い。
「っ!? ふ、伏せカードオープン! "デストラクト・ポーション”!」
焦ったような雰囲気でカードを開くその様を見て、竜崎はふっと笑う。
デストラクト・ポーション
通常罠
自軍のモンスター1体を選択して発動する。
モンスターを破壊し、攻撃力分だけ自分のLPを回復する
「俺はこのカードで、"センジュ・ゴッド”を破壊! そしてその攻撃力分、LPを回復する!」
スカルライダー LP 1500 + 1400 = 2900
「なるほど……そのカードでもう一度LP回復し、デミスの効果の再利用を狙っとるっちゅうわけや」
余裕を崩さぬ笑みでそういう竜崎に、歯を食いしばり睨む"スカルライダー”。
立場が、完全に入れ替わっていた。
「せやけど、さっき言った通りや。お前に、次のターンは回らん! ワイは、"ベビケラサウルス”を召喚や!」
ベビケラサウルス
地属性 恐竜族 星2
攻撃力 500
守備力 500
効果で破壊され墓地へ送られたとき
新たな恐竜族モンスター1体に生まれ変わる
竜崎&勝利 LP 2450 手札1枚
BF-銀盾のミストラル
守 1800
BF-砂塵のハルマッタン
守 800
ベビケラサウルス
攻 500
伏せカード1枚
スピードカウンター 8
スカルライダー LP 2900 手札1枚
終焉の王デミス
攻 3200
ゼラ
攻 3600
神の恵み
伏せカード1枚
スピードカウンター 6
「だ、黙れ! そんな貧弱なモンスターたちで、一体何ができる!?」
「……できるさ」
震えた声で叫ぶ"スカルライダー”に、勝利が静かに返す。
勝利は左手で、ネックレスにそっと触れる。
「行けるやろうな?」
「当然さ。静香ちゃんが、君が届けてくれた力だ。『早く行かせろ』って叫んでるよ!」
(なんだ……いったい、何が起こるってんだよ!)
そして勝利たちを中心に、漆黒の風が竜巻となり吹き荒れた。
その渦の中心で、モンスターたちが光り輝く。
「いくで! レベル4となった"BF-砂塵のハルマッタン”と、レベル2の"ベビケラサウルス”に、レベル2チューナーモンスター、"BF-銀盾のミストラル"を、チューニング!」
「ちゅ、チューニング!!?」
吹きすさぶ風。
目に見える、圧倒的な力。
それが形となり、速度の世界に舞い降りる。
「「黒き疾風よ! 秘めたる想いを力に変えて、その翼に現出せよ!」」
その赤き瞳は、怒りに満ちていた。
「「シンクロ召喚! 舞い上がれ、"ブラックフェザー・ドラゴン"!!!!!」」
『ふぁーーーーー!!』
ブラックフェザー・ドラゴン
闇属性 ドラゴン族 星8
攻撃力 2800
守備力 1600
シンクロモンスター
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
効果ダメージを受ける場合、代わりにこのカードに黒羽カウンターを1つ置く
このカードの攻撃力は、黒羽カウンターの数×700ダウンする
このカードの黒羽カウンターを全て取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体の攻撃力を取り除いた黒羽カウンターの数×700ダウンする
攻撃力ダウンした数値分のダメージを与える
「ぶ、ブラックフェザー、ドラゴン!? シンクロ召喚!!?」
『いっけー!! 勝利、竜崎!』
チューナー。シンクロ。"ブラックフェザー・ドラゴン"。
データにない戦い。見たことのない召喚。
手元ではしゃぐ舞に苛立ち焦るが、そんなことをしている場合ではないと混乱する頭を必死に切り替えようとする。
(お、落ち着け……未知の召喚で突然大型モンスターが降臨したことに混乱はしたが、"ブラックフェザー・ドラゴン"! どう見てもドラゴンモンスターだ! ならば……戦いようはある!)
「……キヒヒ! 強力モンスターをそろえてさぞご満悦の事だろうが……ドラゴンで攻めたのは失敗だったな!」
「っ……」
「伏せカードオープン! 2枚目の、"ブービートラップE"だ!」
ブービートラップE
通常罠
手札を1枚捨てて
自分の手札・墓地の永続罠カード1枚を選んでセットする
このカードはセットしたターンでも発動できる
「このカードによって手札を1枚捨て、墓地の永続罠カード1枚をセットできる! 俺が墓地から戻すのは……"ドラゴン族・封印の壺"だぁ!!」
ドラゴン族・封印の壺
永続罠
場のドラゴンカードの力は封印され、守備を強制される
『っ!!? まずい! "ブービートラップE"で伏せたカードは、すぐに発動できる!?』
「その通り! これで自慢のモンスターは封印だ! 発動、"ドラゴン族・封印の壺"!!」
そしてフィールドに邪悪な壺が生まれ、"ブラックフェザー・ドラゴン"に力の手を伸ばす。
「キヒヒ! このターンに攻撃できなけりゃ、どんなモンスターでもこわかねえ! さあ、封印されちまえ!」
壺から出てくる靄のようなエネルギーが、"ブラックフェザー・ドラゴン"を包み込む。
"ブラックフェザー・ドラゴン"の体が縮こまり、その身を小さくまとめる。
(勝った!!!)
だが、次の瞬間。
靄が弾け、"ブラックフェザー・ドラゴン"の姿が変化していく。
嘴は、頑丈な顎に。
鋭い目つきは、さらに鋭くとがり。
呼吸が、獰猛さを伴ってうなりを上げる。
『ぐるるるるるる』
響く音が、戦いの意志を感じさせる。
効いていない。
それが、よく伝わった。
「ば、馬鹿な……なぜ……?」
「そんなこったろうとおもっとったわ。"ブラックフェザー・ドラゴン
"を召喚した瞬間に、ワイの最後の伏せカードを発動させてもろたで。"DNA改造手術”や」
DNA改造手術
永続罠
フィールドのモンスターの種族を、宣言した種族に統一する
「このカードによって、場のモンスターの種族はすべて、ワイの宣言した種族に変わるんや」
「貴様の宣言した種族……ま、まさか!?」
「当然、これしかないやろ。ワイは、『恐竜族』を宣言。これにより、"ブラックフェザー・ドラゴン”の種族は、『恐竜族』になる! これでこいつは、空と大地を力で支配する究極のモンスター! "ブラックフェザー・ダイナソードラゴン”や!!」
『がおおおおおおお!!!!』
「ぶ、"ブラックフェザー・ダイナソードラゴン”……」
「……クックック!」
『すごい……これこそが、竜崎と勝利の、絆のエースモンスター!!』
「ちぃ!! だ、だが! 恐竜族になったからと言って、何が変わるわけでも……」
そこまで言って、はっとした様子で"スカルライダー”が青ざめた表情を浮かべる。
それを見た竜崎は、ほー、と零した後、にやりと笑った。
「さすがに気づきよったか。やるやないか。もう遅いけどな! ワイは、デッキマスター、"二頭を持つキング・レックス”のデッキマスター能力発動や! 『二頭竜』!!」
竜崎が、最後の手札を伏せる。
そしてキング・レックスの力が、"ブラックフェザー・ダイナソードラゴン”へと伝わっていく。
「"ブラックフェザー・ダイナソードラゴン”は、モンスターへの2回攻撃が可能になる! そんで、これで最後や! 今伏せた魔法カード発動! "Sp-スピード・エナジー”発動!」
Sp-スピード・エナジー
通常魔法
スピードカウンターが2つ以上ある場合に、
自分のモンスター1体を選択して発動する
モンスターの攻撃力はスピードカウンターの数×200ポイントアップする
「これによって、"ブラックフェザー・ダイナソードラゴン”の攻撃力は、ワイのスピードカウンターの数×200ポイントアップ。つまり……」
ブラックフェザー・ダイナソードラゴン
攻撃力 2800 + 1600 = 4400
2回攻撃
「こ、攻撃力、4400の2回攻撃……」
『す、すごい……』
「さあ、竜崎君」
勝利がそう呟く。
と同時、"スカルライダー”が、コース外側にハンドルを切る。
「ひ、ひぃーーーー!!!!」
「……なんや。もう終わりかい」
「所詮は決闘とバイクの腕があるだけ。決闘者の魂は、持ち合わせちゃあいないってことさ。まあ……逃がさないけどね」
勝利はそういって合わせるようにハンドルを切り、"スカルライダー”の前を陣取る。
ひっ。という声が、短く漏れた。
「もう、動きなや。墓地の、"ブレイクスルー・スキル”の効果発動や。お前のモンスターごと、動けなくしなる」
そういうと地面から、2本の腕が伸び、1本が"ゼラ”を、もう1本が"スカルライダー”を捉える。
「がぁ!!? や、やめて……」
「これで、お前に与えられた"ゼラ"の効果も無効化される。そうなりゃ、お前のモンスターの攻撃力も元通りや」
終焉の王デミス
攻 3200 → 2400
ゼラ
攻 3600 → 2800
「あ、ああ……」
抑え込まれ、ふらつく"スカルライダー”。
ため息を吐いた竜崎が、高らかに宣言する。
「次があるなら……腕だけやなくて、心を鍛えてくるんやな。"ブラックフェザー・ダイナソードラゴン"の攻撃!」
「「『ノーブル・ダイナストーム』!!! 二連打ぁ!!!!」
ブラックフェザー・ダイナソードラゴン
攻 4400
ゼラ
攻 2800
ブラックフェザー・ダイナソードラゴン
攻 4400
終焉の王デミス
攻 2400
スカルライダー LP 2900 ー 1600 ー 2000 = 0
「ぎゃああああああああ!?」
『きゃあ!』
「っ!? 舞さん!」
爆発に飲まれ、"スカルライダー”が消える。
だがそんな光景など一瞥もせず、勝利は空に投げ出された舞へ向かって走る。
バイクが、すさまじい音を鳴らす。
だが、加速するバイクの制御で追われる勝利には、舞の手を取る余裕はない。
「っ! 竜崎君!」
「ああ、わかった!!」
叫ぶ勝利が、思い切りバイクの車体を寝かせ、向きを横に倒す。
バイクは荒野の地をがりがりと削りながら、舞の下に滑り込むようにスライディングを決める。
決死の想いで、ハンドルを握る勝利。
そして、その後ろで、必死に腕を伸ばす竜崎。
「来いや!」
竜崎が、空を舞う舞の腕を掴む。
すぐに抱き抱え、後は祈る。
「うおおおおおおお!!!!!!」
勝利がバイクを振り回しながら、ブレーキを引く。
もはや、制御の範疇を超えた暴れ馬と化したバイクは、急ブレーキに抗うように荒野を駆けずり回り……あまりにも長い数秒を経て、静かに止まった。
「……はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った……」
「こっちのセリフや」
『こっちのセリフよ』
そういって三人は、疲弊した、あるいは、呆れた。さらには、怒りの表情で顔を見合わせる。
言いたいことなど、山ほどある。
無茶しやがって。
ようやく会えた。
どうしてこんなことまでして。
感謝。
文句。
愚痴。
謝罪。
恐怖。
友愛。
親愛。
言いたいことなど、山のようにある。
でも。
3人で揃って、顔を見合わせて。
落ち着いたときには、そんなことなどすべてどうでもよいような気がしてきて。
みんなで、笑いあった。
ライディングデュエル、完結。
書きたいことは色々あったのですが、色々足りなくて、一旦ここで切ります。
次回、3人で会話を挟んだあと、次の展開ですかね。