遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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感想でペンギン君が人気で何より。
決闘カットしたのはこれでチャラかな。


激昂の鳥戦士! 貫け、BF!

 

 

 

BIG5 LP 8000

 

「「「デュエル!」」」

 

遊戯&勝利  LP 4000 & 4000

 

 

 

3人、いや、2人と5人の変則決闘が、幕を開ける。

開始の宣言と同時、まずが勝利がカードを引いた。

 

「先行は僕からだ! ドロー! 僕は、"BFー上限のピナーカ”を守備表示!」

 

 

 

BF-上限のピナーカ(チューナー)

 

闇属性 鳥獣族 星3

 

攻撃力 1200

 

守備力 1000

 

墓地に送られたターン、仲間のBFを呼び寄せる

 

 

 

「タッグ決闘では、すべてのプレイヤーのターンが回るまで攻撃することはできない。僕は伏せカードを1枚セット。これでターン終了だ!」

 

 

 

「ピナーカ。初手は悪ないな。それに守備……ひとまず、怒りに身を任せて攻撃表示で突っ込むようなことはなかったようや」

 

『そんなことしたら、今すぐあたしがあの場に行ってぶん殴ってやるわ』

 

「だがよお、勝利の奴、大丈夫なのか?」

 

「確かに……舞さんの体の事もあるからしょうがないとはいえ、あんなに怒ってる勝利君初めて見たわ……」

 

「勝利さん……」

 

「大丈夫。遊戯君もいるんだ。そう簡単に手玉に取られたりしないさ」

 

 

 

 

「……勝利君」

 

「……大丈夫だよ、遊戯君。僕は、至極冷静だ」

 

「……」

 

 

 

 

落ち着いた声でそういう勝利。しかし、言葉の一つ一つに力がこもっている。

普段の優しい瞳はつりあがり、力強さが増している。

腕を中心に、体に不要に強張っているのが見ているだけで伝わってきた。

 

 

 

「おい……ホンマに大丈夫か、あのアホ」

 

『駄目ね……あんたが何とかしなさいよ、竜崎』

 

「できるか。お前がなんとかせー。おまえの男やろがい」

 

『あのこはあたしのために怒ってるのよ。あたしのことを意識させたら、逆効果じゃない』

 

「……打つ手なしか」

 

『遊戯に期待するしかないわね……』

 

 

 

「フフフフ。ではまずはわたし、"深海の戦士"こと大下幸之助が相手をしよう」

 

 

 

その宣言と同時、舞の体の後ろに"深海の戦士"が登場する。

 

「……お前か」

 

「フフ。こんなにも早くリベンジの機会が巡ってきてくれるとはな。今度こそ、貴様の身体をいただくぞ。黒羽勝利」

 

「無理だな。『BF』の価値も、舞さんの魅力もわからない。お前らには、この体はもったいなさすぎる」

 

「ほざいていろ! わたしのターン、ドロー! 私は、"伝説の都 アトランティス”を発動!」

 

 

 

フィールドゾーンにカードがセットされ、どこからともなく場に津波が襲い掛かる。

ピナーカは空に舞うことでその波を回避するが、荒野の大地は一瞬にして深い青に染まる。

 

 

 

「アトランティス!? 梶木と同じ、海デッキか!?」

 

「そうか……奴のデッキマスター、"深海の戦士”は、『海』フィールドで進化を発揮するモンスター!」

 

「そういうことだ」

 

 

伝説の都 アトランティス

 

フィールド魔法

 

このカードは「海」として扱う

フィールドの水属性モンスターの攻守は200アップ

互いの手札・フィールドの水属性モンスターのレベルは1つ下がる

 

 

「このカードにより、私の手札の"ジェノサイドキングサーモン”を、レベル4モンスターとして召喚する!」

 

 

ジェノサイドキングサーモン

 

水属性 魚族 レベル5(4)

 

攻撃力 2400

 

守備力 1000

 

 

大きな鮭が、海を跳ねる。

そして特大の水柱を上げるとともに、海へと姿を消した。

 

その様子に、ギャラリーが思わず声を上げた。

 

「おいおい……いきなり攻撃力2000超えのモンスターって……」

 

「ちっ……本来あんな風にキーカードを揃えるのは簡単やないが……手札10枚やからな。そりゃ好きに揃えれるわ」

 

「遊戯……勝利君……」

 

 

「カードを3枚セット。私はこれで、ターンエンド」

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊戯は自身の手札を眺めながら、横目に勝利を見る。

深呼吸の音が、やたらと耳に届く。

勝利が必死に自分の怒りを抑え込むために戦っているのが、よく伝わってくる。

 

(……奴はすでに上級モンスターを展開している。闇雲なモンスターの召喚は逆効果……だが、この変則タッグ決闘では、相手のターンが自分のターンの2倍の速度で回ってくる。竜崎もこの条件で、静香ちゃんを狙われ苦しんでいた。俺たちが奴らに勝つには……)

 

「……俺は伏せカードを2枚セット。モンスターを守備表示にして、ターンエンド」

 

 

 

BIG5(深海の戦士) LP 8000 手札6枚

 

ジェノサイドキングサーモン

 

攻 2600

 

伝説の都 アトランティス

伏せカード3枚

 

 

勝利 LP 4000 手札4枚

 

BF-上限のピナーカ

 

守 1000

 

伏せカード1枚

 

 

遊戯 LP 4000 手札3枚

 

伏せモンスター1体

 

伏せカード2枚

 

 

 

「フフフ。早速防戦一方といったところか。さて、次のターンの私から攻撃の権利がやってくる。私の戦略というものを思い知らせて……」

 

(ンフフ。いいですねぇ大下。変わりなさい。アトランティスに水属性モンスター。ここは私の出番です)

 

「何っ!? ちょっとまて。私の出番はまだ終わっては……」

 

(だまらっしゃい! 私のデッキマスター"ペンギン・ナイトメア”は、水属性モンスターの攻撃力をアップするのですよ! ここは私に任せなさい。勝利を手玉に取り、あの忌々しき遊戯に復讐する! たわいもない事です)

 

 

 

「……ンフフ」

 

 

 

「っ!? 雰囲気が、変わった。遊戯君」

 

「……ああ。おそらく、奴らの中身が」

 

 

 

「おやおや。女の趣味は悪いですが勘はいいですねえ、黒羽勝利。さてと、ここから先は大瀧修三55才。"ペンギン・ナイトメア"がお相手します。さっさとあなたたちを始末して、こんな年増女の体を捨ててぴちぴちギャルの身体を手に入れますよお!」

 

「……」

 

「……しょ、勝利君……?」

 

「……なに?」

 

 

 

大瀧の発言を聞いた遊戯の脳裏には、怒りや苛立ちの前に、嫌な予感が走る。

恐る恐る視線を横にずらすとそこには、額に青筋を浮かべ、とんでもない形相を浮かべる勝利の姿があった。

 

冷静。冷静。と、静かに呟く声がする。

だがその声自体が怒りによって響くように震えている。

 

 

 

「……」

 

「……勝利君」

 

「どうすんだよ、あれ……」

 

「竜崎君が言ってただろ。どうしようもないだろ、あれは」

 

「勝利さん……」

 

 

 

いつもは冷静沈着で、穏やかな表情の下で熱い闘志を燃やす男、黒羽勝利。

そんな誇れる友の姿が見るも無残に歪められてしまっている事実に、悔しさともどかしさが皆々の表情からにじみ出ていた。

 

 

「……ちなみに。ボロカス言われとるが、お前はキレなくてええんか?」

 

 

呆れが一周回って冷静になってしまった竜崎が、静香の手元の舞に話しかける。

そして同じく、冷静な様子の舞が答える。

 

 

 

『……体を返してほしいのは間違いないし、不愉快でむかついてるのはその通りなんだけどね……あたしよりキレてる奴がいるから、怒りづらいのよ。あたしまでキレてたら収集つかなくなるでしょ』

 

 

「……納得や」

 

 

 

「さあ、行きますよ! 私のターン、ドロー! 場の"ジェノサイドキングサーモン”はアトランティスの効果によって200攻撃力アップ! さらに私、"ペンギン・ナイトメア”のデッキマスター能力によって、攻撃力をさらに200アップ!」

 

 

 

ジェノサイドキングサーモン

 

攻 2400 + 200 + 200 = 2800

 

 

 

「うぉ!? 一気に攻撃力が!」

 

「最上級モンスター並みの攻撃力になった! まずい!?」

 

 

 

「さあ、まずは遊戯! あなたのモンスターからですよ! "ジェノサイドキングサーモン”で、遊戯のセットモンスターに攻撃! 『ピンク・スプラッシュ』!」

 

 

 

そういって海から大きく跳ね上がったモンスターが、遊戯の場に襲い掛かる。

しかし、伏せ状態から現れたそのモンスターは、"ジェノサイドキングサーモン”の攻撃を受け止め、思い切り弾き返す。

 

「な、なにっ!?」

 

「残念だったなペンギン野郎。お前が出てきて、水モンスターで俺を攻撃するであろうことは読んでいたぜ。俺が伏せていたモンスターは、"翻弄するエルフの剣士”だ」

 

 

翻弄するエルフの剣士

 

地属性 戦士族 星4

 

攻撃力 1400

 

守備力 1200

 

このカードは攻撃力1900以上のモンスターの戦闘では破壊されない

 

 

「このカードは、高攻撃力モンスターとの戦闘では破壊されない効果を持っている。せっかくの攻撃も、無駄に終わったようだな」

 

 

「よっしゃあ! いいぞ遊戯!」

 

「そんなペンギンに負けちゃだめよ!」

 

 

「ひとまず、遊戯が冷静でいてくれとるのが朗報やな」

 

『ええ……あとは、遊戯があの勝利の手綱を握り切れるかどうか……』

 

 

 

歓喜と、祈りが入り混じるギャラリーの声。

しかしそこに、"ペンギン・ナイトメア”の深いな笑い声が割り込んでくる。

 

 

 

「ンフフフフ! まさか、この程度で終わると思っているわけではないでしょうね!」

 

 

 

 

「っ! 何?」

 

「私は手札から、"カタパルト・タートル”を守備表示で召喚!」

 

 

 

カタパルト・タートル

 

水属性 水族 星5

 

攻撃力 1000

 

守備力 2000

 

味方のモンスターをカタパルトから射出し、玉砕!

 

 

 

 

海上に、大きな亀が鎮座する。

 

「あのモンスター、遊戯も使っている……」

 

「そうか。"カタパルト・タートル”も水属性モンスターだから、レベルが1下がって召喚できるようになる」

 

「ちっ……まずい。あいつの効果は……」

 

 

 

「さて、では今度はあなたを狙いましょうか。黒羽勝利」

 

 

"カタパルト・タートル”の砲身が、勝利を向く。

勝利は一切目を逸らさずに、その砲身の先の"ペンギン・ナイトメア”を睨み続けている。

 

 

「その威勢、いつまでもつか。"カタパルト・タートル”、効果起動! 自軍のモンスターを弾丸に、その攻撃力の半分を使ってプレイヤーに直接攻撃を行う。"ジェノサイドキングサーモン”、射出準備!」

 

 

その宣言と同時に、海面から飛び出た"ジェノサイドキングサーモン”が"カタパルト・タートル”の背に乗り、その身をそのままエネルギーに変換する。

 

 

 

 

「さあ、食らいなさい! "カタパルト・タートル”、弾丸射出!」

 

 

 

勝利 LP 4000 ー (2800 ÷ 2) = 2600

 

 

 

「ぐわっ!!?」

 

 

 

「勝利君!!?」

 

 

 

 

 

「ほらほらぁ。この年増女を取り戻したいんじゃあなかったんですかあ? そんな様子では、先が思いやられますねえ、ンフフフフ!」

 

 

 

 

「……」

 

 

細い指を唇に当てて喋るペンギンの声を聴きながら、勝利は痛みの走る体を静かに摩り、無言で立ち上がる。

遊戯も、他の皆も言葉を出さずに……いや、一声も出せずにそれを見つめていた。

 

まるで、危険物を避けようとする動物の本能に従うように。

 

 

 

「……デッキマスター、"ブラックフェザー・ドラゴン”の、効果起動。『玄翼の羽』」

 

 

 

そして、"ブラックフェザー・ドラゴン”が吠える。

その後ろに、3枚のカードが舞った。

 

 

「僕がダメージを受けた時、そのダメージの400の倍数分、僕のデッキからカードを墓地に送る。そしてその墓地に送ったBFモンスターの数だけ、"ブラックフェザー・ドラゴン”に玄翼(くろばね)カウンターを乗せる」

 

 

勝利が空に手を翳す。

すると"ブラックフェザー・ドラゴン"の周りを舞う羽根が2枚、鋭く光る。

 

 

「カウンター1つにつき、"ブラックフェザー・ドラゴン”が召喚された時の攻撃力が、400ポイントアップする。今は墓地に行った『BF』は2体。カウンターを2つ乗せる」

 

 

 

 

ブラックフェザー・ドラゴン

 

攻 2800 + 400 × 2 = 3600

 

 

 

 

 

「ダメージを受ければ受けるほど、攻撃力が上がるってことやな」

 

『普段の"ブラックフェザー・ドラゴン”とは、まるっきり逆の効果ね。まるで……』

 

(怒りに震える今の勝利の心を、体現するかのような効果……)

 

(その効果なら、持久戦になりゃなるだけ有利になっていくんや。頼むから、耐えてくれや……)

 

 

 

 

もはや祈ることしかできない2人は、勝利の後姿を見る。

 

表情すらないその姿。

がしかし、2人の祈りが届いているとは到底思えない、烈火のごとく燃え盛る男の背中だった。

 

 

 

 

「ほお。それで後半に逆転を狙おうというわけですか。果たしてそううまくいきますかねえ……」

 

 

 

 

「ああ……その予定だったんだけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

そして勝利は、カードを勢いよく開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、限界だ! 罠カード発動! "ゴッドバード・アタック”!」

 

 

 

 

 

 

ゴッドバードアタック

 

罠カード

 

鳥獣族モンスターに、1ターン限定で力を授ける。

2回の即行動を可能にし、カードを破壊する。

 

 

 

 

 

『っ!!? ここで!!?』

 

「だああ!!!? どあほおおおお!!!」

 

 

 

 

 

「ピナーカを生贄に捧げ、効果発動! 貴様のフィールドのカード2枚を、破壊する! アトランティスと、右の伏せカードだ! 消え去れ! 『紅蓮のムーン・ストライク』、2連打ぁ!!」

 

 

 

 

 

勝利の場で燃え盛るピナーカが空を飛ぶ。そして燃える全身で弓を2本番え、敵の場に向ける。

 

 

 

 

「くらえ!!」

 

 

 

 

弓が、2本同時に放たれ、場のモンスターたちに弓が飛ぶ。

しかしその弓もまた、モンスターたちに届く直前で弾き飛ばされ、消えていく。

 

 

「っ!?」

 

「ンフフ! 本当にあなたはわかりやすい男だ! カウンター罠カード発動! "大革命返し”!」

 

 

 

大革命返し

 

カウンター罠

 

カードを2枚以上破壊する効果を持つカードが発動した時、その発動を無効にし除外する

 

 

 

海の底から突如現れた城の城壁が、矢をはじく。

攻撃を受けられたピナーカは、意気消沈して消えていった。

 

「カードを2枚以上破壊するカードが発動した時、そのカードを無効にしてゲームから取り除く。最初の手札の差を埋めるために一気にカードを破壊しようとすることが、読めないとでも思いましたか?」

 

(……偉そうに。ワシが伏せたカードじゃないか)

 

「ンフフ! 私はこれでターンエンド」

 

「……エンドフェイズに、ピナーカの効果。デッキから、ブラストを手札に加える」

 

 

 

 

BIG5(深海の戦士) LP 8000 手札6枚

 

カタパルト・タートル

 

守 2200

 

伝説の都 アトランティス

伏せカード2枚

 

 

勝利 LP 2600 手札5枚(ブラスト)

 

モンスターなし

 

伏せカードなし

 

 

遊戯 LP 4000 手札3枚

 

翻弄するエルフの剣士

 

守 1200

 

伏せカード2枚

 

 

 

 

「おいおい……やっぱり勝利の奴、やべえんじゃ……」

 

「はなっからいっとるやろ。やばいって。あんな状態で、あいつの複雑なコンボを要するデッキがうまく回るわけあらへん」

 

「竜崎君! だったら、止めないと!」

 

「それも最初から言っとる。止めれやせんから、諦めろってな」

 

「じゃあ、どうしたら……」

 

 

 

「ワイらにできんのは祈るだけ。遊戯が勝利をちゃんと制御できるか。勝利が正気を取り戻すかをな」

 

 

 

「そ、そんな……」

 

「竜崎さん……」

 

杏子と静香。女性陣2人が思わず竜崎に訴えるように見る。

すると竜崎の胸元で組んだ腕を、指先がせわしなくたたく。よく見ると足も、せわしなくその場で何度も地を踏みつけている。

 

もどかしいのは、みな同じだった。

万全ならば、遊戯と勝利。あの2人が負ける道理はない。

 

しかし、今の状態では危険である。

奴らの目論見通り、暴走した勝利が遊戯の足を引っ張るようなことさえ起こりかねない。

 

今の勝利を見た誰もが、そう思っていた。

 

 

 

 

 

『……勝利?』

 

そう。勝利のその荒々しくも、優しく燃ゆるその想いを感じとった、舞以外は。

 

 

 

 

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

そんなギャラリーの想いを裏腹に、勝利のターンがスタートする。

 

「虎の子の罠カードも怒りに任せて暴発させ、モンスターも伏せカードも消えた。すでに打つ手なしといったところですかね、ンフフ」

 

「……心外だね」

 

「はぁ?」

 

 

 

勝利は"ペンギン・ナイトメア”の素っ頓狂な声を割くように、カードをディスクにたたきつけるようにセットする。

 

 

 

「僕の怒りが、あの程度で終わりだと思われていることが! 心外だって言ってるんだ! 召喚! "BF-暁のシロッコ”!」

 

 

 

 

BF-暁のシロッコ

 

闇属性 鳥獣族 星5

 

攻撃力 2000

 

守備力 900

 

相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、生贄不要となる

フィールドのBFの攻撃力を結集させる

 

 

 

 

「何ぃ!? あなたも上級モンスターを!?」

 

「このモンスターは、敵フィールドにのみモンスターが存在する場合、生贄が必要なくなる!」

 

 

 

 

それを聞いた遊戯は、はっと声を漏らし、もう一人の遊戯もそれに反応する。

 

「そうか……勝利君、君はシロッコで攻めるために、"ゴッドバードアタック"を囮にして、ピナーカをフィールドからどかしたのか!」

 

『すごい……相手にカードを使わせるためのブラフと次のターンを見据えた準備を同時に進めた……なんて的確な判断なんだ!』

 

 

 

 

「さらに『BF』が場にいることにより、僕は手札から"BF-黒槍のブラスト”を特殊召喚!」

 

 

 

 

BF-黒槍のブラスト

 

闇属性 鳥獣族 星4

 

攻撃力 1700

 

守備力 800

 

BFがいるとき特殊召喚できる

モンスターの守備力にもダメージを与えることができる

 

 

 

 

「そして手札から、"翼の恩返し”を発動!」

 

 

 

翼の恩返し

 

魔法カード

 

鳥獣族モンスターが2体以上存在する場合、600LPを払って2枚ドローする

 

 

勝利 LP 2600 ー 600 = 2000

 

 

 

「デッキからカードを2枚ドロー! さあ、行くぞ! シロッコの効果発動! BFモンスターの攻撃力を、ブラストに集約する!」

 

 

 

(ぐっ! おい大瀧、まずいぞ! 確かあのブラストとかいうモンスターには、守備モンスターにもダメージを与える効果がある! このまま貴様の"カタパルト・タートル”が狙われたら!)

 

(ンフフ。問題ありませんよ)

 

 

 

「伏せカードオープン! "デモンズ・チェーン”! モンスター1体の効果を無効にし、拘束しますよ!」

 

 

 

デモンズ・チェーン

 

永続罠

 

悪魔の鎖でモンスターを縛る

対象モンスターは攻撃できず、効果は無効化される

 

 

 

海の中から今度は、邪悪な力を放つ鎖がシロッコに伸び、シロッコが大きく広げた羽を押さえつけるように拘束する。

 

 

 

「ンフフフフ! 甘いですよ! あなたがモンスター効果で攻めてくることなどお見通し! こうしてしまえばあなたの攻撃はもう……」

 

 

 

 

「……今一度言おう。僕の、怒りをなめるな!!! 速攻魔法カード、"スワローズ・ネスト”を発動!」

 

勝利がカードをディスクに追加する。

すると"デモンズ・チェーン”がとらえようとしていたシロッコの姿が、この場から消える。

 

「"スワローズ・ネスト”の効果によって、シロッコは別のBFモンスターに生まれ変わる。来い! "BF-追い風のアリゼ"!」

 

 

BF-追い風のアリゼ

 

闇属性 鳥獣族 星5

 

攻撃力 1200

 

守備力 1800

 

BFが2体以上破壊されたターンに特殊召喚できる

シンクロに使われたターン、600LPを回復する

 

 

「そして……シロッコを捉えることができなかったお前の"デモンズ・チェーン”は不発に終わる! つまり……アリゼの召喚が成功したこの瞬間、シロッコの効果が有効となって発動する!」

 

「な、なんですとぉ!?」

 

 

 

狼狽える"ペンギン・ナイトメア”。

だが、勝利の言葉の正しさを証明するように、姿を消したはずのシロッコの鳴き声が場に響き、ブラストに力が流れ込む。

 

 

 

BF-黒槍のブラスト

 

攻 1700 + 1200 = 2900

 

 

 

 

「す、すげぇ……」

 

誰かが漏らす、感嘆の声。

それにその場の全員が、心の中で同意する。

 

「な、なんや今のカード捌き……キレすぎやろ。あんなもん、狙ったってそうそうできるもんやない……」

 

「どうなってるんだ……勝利君は、怒りで我を忘れていたんじゃなかったのか?」

 

 

 

『……もしかして……あたしたちは、勘違いしてたのかもしれない……』

 

 

 

「……舞さん?」

 

勝利のらしからぬ……否、ここにきてらしすぎる完璧なプレイングに動揺が走るその時、舞が気づく。

 

『……勝利の強みは、決闘を楽しみ、自由に戦うこと。本人はそう言っているし、もちろんそれも事実。でも、勝利の本質はそうじゃないのかもしれない』

 

「……なんや、どういうことや。舞?」

 

 

 

『あたしは、勝利が怒りのままに、感情のままに決闘するところを見たことがある。確かにその時の勝利は、普段の決闘を楽しむ勝利ではなかったけど、勝利の集中力が落ちることは終ぞなかった』

 

 

 

「……」

 

 

言われて、杏子たちは思い出す。

 

王国で戦った、闇のプレイヤーキラー戦。

 

学校で戦った、辰巳大吾戦。

 

 

今ほどとは言わないまでも、勝利が怒りに染まった状態で決闘をする場面を目の当たりにしたことはある。

然し、その時の結果は、今我々が考えている懸念の全く逆。

 

完勝。完封。

 

 

勝利は、いずれの試合も圧倒的な力で勝利を収めていた。

 

 

 

 

 

 

『……楽しく決闘する勝利は強い。それは、自由に、想うがままに戦うときにこそ、勝利は最大のパフォーマンスを発揮できるから』

 

 

 

 

 

 

ならば。今はどうか。

今の勝利は。怒りの渦中ど真ん中の今の勝利は、果たしてどのような状態なのか。

 

 

 

「……勝利は、怒りのままに決闘しとる。怒りの感情のままに、想うがままに、力を振るっとる」

 

 

 

想うがままに、感情のままに。

カードという剣を振り上げている。

 

さながら、戦場の最前線で次々と敵を引き裂く、ウォリアーのように。

 

 

「それって……どうなるんですか?」

 

『……わからない』

 

 

 

 

 

「……1つだけ言えることがあるとするならば……今からの勝利の決闘は、誰も見たことのない勝利の決闘になるっちゅうことや」

 

 

 

 

 

竜崎の言葉に、場の空気が変わる。

勝利に向ける皆の瞳は、先ほどまでとはまるで違うものだった。

 

 

 

 

 

『……もう一人の僕』

 

 

 

(……ああ。今の勝利君は……すごい。ならば、俺たちは俺たちにできることで、勝利君を支えるんだ!)

 

 

 

 

 

 

(おい! 大瀧! 貴様何をしている!)

 

(ええい! うるさいうるさい! たかが1ターン、攻撃力2900のモンスターが現れただけ! 第一、そのためにLP8000を交渉で勝ち取ったのでしょう! 大したことはありません、すぐに私が逆転を……)

 

 

 

 

 

 

「リバースカードオープン! "戦線復帰”!」

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

戦線復帰

 

罠カード

 

墓地のモンスターを守備で特殊召喚する

 

 

 

 

 

唐突に発動した遊戯のカードに、意図を読み切れぬ"ペンギン・ナイトメア”大瀧が間の抜けた表情を晒したままになる。

そんな様子を見て遊戯はにやりと笑い、手を翳した。

 

 

「このカードによって、自軍のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。タッグ決闘では当然、味方の墓地のモンスターも自軍のモンスターとして扱う」

 

「味方の墓地……? っ!!!? そ、それは!!?」

 

 

 

「勝利君の墓地より、甦れ! "BF-暁のシロッコ”!」

 

 

 

黒羽が再び宙を舞う。

それを見た勝利が、この決闘中に初めてほんの少し頬を緩め、笑顔を見せた。

 

 

 

「遊戯君!」

 

「勝利君……君は、君の怒りに蓋をする必要など、全くない! 突き進め!」

 

「っ! ……ああ! 僕は蘇生したシロッコの効果を、再び発動! アリゼとシロッコの攻撃力を、ブラストに加算する!」

 

 

 

BF-黒槍のブラスト

 

攻 2900 + 1200 + 2000 = 6100

 

 

 

「げっ!!? げげげげげ~~~~!?」

 

 

ようやく、憎き敵の無様に狼狽える姿がお目にかかれた。と勝利はまた笑いを零す。

しかし今度はすぐに顔を引き締め、思いついた言葉を片端から紡ぐような勢いで話しながら、手を振りかざす。

 

 

 

 

 

「舞さんの身体を良いように使ったこと。舞さんの事を侮辱したこと。貴様らのその下種な思惑で、舞さんを汚したこと。その報いをその身で受けてみろ! ブラストで、"カタパルト・タートル”に攻撃!」

 

 

 

 

 

ブラストが、すさまじい勢いで飛翔する。

まさに、風を切るというにふさわしいその速度のまま、数度切り返しを行った後、自慢の槍を"カタパルト・タートル”へと向けた。

 

 

 

 

 

 

「『ヘル・ブレイク』!!!!!」

 

 

「どわあああああああああああああああああ!!?」

 

 

 

 

 

 

その一撃の衝撃に、"ペンギン・ナイトメア”が彼方に吹き飛んでいく。

ふう、と息を一つついた勝利は、再び正面に立つ舞を見据える。

 

 

 

 

 

 

「来いよ。まだお前らは、終わってないんだろ?」

 

 




さて、怒りの勝利と、ブラックフェザーの決闘。
そしてブラックフェザー・ドラゴンの効果は、玄翼竜の方から拝借しました。
ブラックフェザー大好きっ子としてあいつを蔑ろにするのもアレですが、アニメ次元である以上出番は見込めないので、こちらに実装。
ダメージを受けたら墓地肥やしと強化。受けたくない時はチェーンしてデッキマスター召喚でダメージを防げばいいという2段構えです。

では、また次回。
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