魔法や罠の効果で蘇生が確定しているモンスターは、戦闘破壊されてもダメージを受けなくなる。
例)リビングデッドの呼び声、時の機械ータイムマシーン
攻撃されているモンスターを囮に、復活しているモンスターで攻撃を仕掛ける。みたいな理屈らしい。
だから攻撃力0になって二度と復活しなくなった骨塚の"ドラゴンゾンビ"は城之内の"格闘戦士アルティメーター”に攻撃されてダメージを負い、敗北したみたい。
「行くぜ、俺のターン! "振子刃の拷問機械”攻撃表示!」
キースの目の前に、仰々しい身体から凶悪な刃物を突き出したまがまがしいモンスターが姿を現す。
その様子を見た勝利は、少し汗を垂らした。
「
振子刃の拷問機械
闇属性 機械族 星6
攻撃力 1750
守備力 2000
「
(はっきり言って、下級モンスターで翻弄することで戦う勝利のBFデッキは相性がよくない。その上に……)
舞は軽くあたりを見回す。
ここは先ほどまでいた洞窟の目の前から少し森に入ったデュエルボックス。
(森80%、荒野20%……このフィールドじゃあ、勝利のBFたちもフィールドパワーソースを得られない。キースの
「勝利、気を付けて」
「うん。僕のターン! 僕は、モンスター1体をセット。ターン終了だ」
キース LP2000
振子刃の拷問機械
攻撃力 1750
伏せカード無し
勝利 LP2000
伏せモンスター1体
伏せカード無し
「なんだなんだぁ? やられ専門の雑魚モンスターしか来なかったか? 先が思いやられんなあ」
「……僕のデッキに、そんなモンスターはいない。一枚一枚が大切な仲間であり、友達だ。侮辱は許さないよ」
「うるせえ! 何が友達だ! だったらそのお友達を八つ裂きにしてやるぜ! 拷問機械の攻撃、『断砕処刑』!」
「……セットモンスターは"BF-上弦のピナーカ”」
BF-上弦のピナーカ
闇属性 鳥獣族 星3
攻撃力 1200
守備力 1000
墓地に送られたターン、仲間のBFを呼び寄せる
「破壊される……だが、上限のピナーカの効果発動! デッキのBFモンスター1体を、手札に加えることができる!」
「ちっ、"黒き森のウィッチ"と同じ、後続を呼び出す効果か……だが、所詮は貧弱な鳥モンスターの集まり。俺の
「……その減らず口を、黙らせてみせる。僕はデッキから、"BF-蒼炎のシュラ”を手札に加える」
BF-蒼炎のシュラ
闇属性 鳥獣族 星4
攻撃力 1800
守備力 1200
相手モンスターを破壊したとき、デッキからさらなるBFを呼び寄せる
「よし! 高攻撃力のBFを呼び寄せたわ!」
「行くよ! 僕は"BF-蒼炎のシュラ”を召喚! カードを一枚セットし、バトル! シュラの攻撃! 『ブルーインパルス』!」
BF-蒼炎のシュラ
攻 1800
振子刃の拷問機械
攻 1750
キース LP 2000 ー 50 = 1950
「いいわよ! オープニングヒットは勝利のものね!」
「それだけじゃないよ! シュラの効果発動! デッキからさらなるBFモンスターを場に召喚できる! 現れよ! "BF-逆風のガスト"!」
BF-逆風のガスト
闇属性 鳥獣族 星2
攻撃力 900
守備力 1400
フィールドに風を巻き起こし、逆風空間を作る
「ガストは守備表示。ガストの効果によって、そっちのフィールドに逆風が巻き起こる。そっちのターンの攻撃時のみ、モンスターの攻撃力が300ポイントダウンすることになるよ」
「ちっ! こざかしい真似しやがって!」
(返しのターンの相手の攻撃力も対策できている。さすがは勝利、隙が無いわ)
感心する舞だったが、キースはすぐに苦い表情を消したことに気づき、気を引き締める。
奴の言葉の通り、勝利の一手を『こざかしい真似』以上に気にしていないようだった。
「はっ! この程度のダメージはくれてやるぜ! その代わり、ご自慢のモンスターを俺様のパワーカードで返り討ちにしてやる! 俺のターン、"デビルゾア”召喚!」
デビルゾア
闇属性 悪魔族 星7
攻撃力 2600
守備力 1900
「……デビルゾア?」
(確かにかなりのレアカードだけど……ここで悪魔族カード?)
(明らかに怪しい……勝利、何か仕掛けてるわよ)
舞の懸念を感じ取ったのか、勝利は目線だけ舞に送り、こくりとうなづく。
「カードを一枚セットし、バトルだ! "デビルゾア”で、"BF-蒼炎のシュラ”の攻撃! 『デビル・エックス・シザース』!」
デビルゾア
攻 2600 ー 300(逆風のガストの効果) = 2300
BF-蒼炎のシュラ
攻 1800
勝利 LP 2000 ー 500 = 1500
「くぅ!」
シュラがやられた衝撃に、思わず勝利は腕で顔を守る。
その様子に、嬉しそうにキースが騒ぐ。
「オラオラ! これくらいのパワーカード、俺様のデッキにはいくらでも入ってるぜ! ご自慢のお友達がズタボロにされる前に、さっさとサレンダーしな!」
「誰が! 僕のターン! 僕は、"黒羽の宝札”を発動!」
黒羽の宝札
魔法カード
BFモンスターを手札から除外し、カードを2枚ドローする
「手札から"BF-尖鋭のボーラ”を除外し、カードを2枚ドローする!」
(いいタイミングでの手札交換ね。キースに流れを持っていかれないためにも、ここで逆転につながるカードを引いておきたい……)
罠が仕掛けられている恐れは当然あるが、"デビルゾア”に時間をかけているうちに、より強力な
(となれば、ここは当然……)
「僕は"BF-漆黒のエルフェン”を召喚!」
(攻めの一手よね!)
BF-漆黒のエルフェン
闇属性 鳥獣族 星6
攻撃力 2200
守備力 1200
味方のBFを陽動として、相手の攻撃態勢を崩す
「エルフェンの効果! ガストを従え、"デビルゾア”の攻撃態勢を崩す」
「ちっ……クソ鳥どもが。鬱陶しい効果ばかり使いやがる!」
デビルゾア
守 1900
「なるほど! "デビルゾア”は攻撃力こそ高いモンスターだけど、半面守備力はさほどでもない! エルフェンの攻撃力で十分に破壊できるわ!」
(くくっ、やってみろ。だが、オレ様の場の伏せカードに用心しな!)
「バトルだ! "BF-漆黒のエルフェン”で、"デビルゾア”に攻撃! 『ウィンドミル・カッター』!」
BF-漆黒のエルフェン
攻撃力 2200
デビルゾア
守 1900
デビルゾアにエルフェンから放たれた黒羽の刃が襲い掛かる。
だが、キースに動き出すような様子はない。
(……あのカードは、攻撃反応型の罠じゃあないのか?)
勝利の疑念をよそに、エルフェンの攻撃が着弾し、爆発と"デビルゾア”の断末魔の声を引き起こした。
その様子に、キースはにやりと笑う。
「くくく、かかったな! 伏せカードオープン! "時の機械-タイム・マシーン”!」
「っ! このタイミングで伏せカード……タイムマシーンだって!?」
時の機械-タイム・マシーン
罠カード
自軍のモンスターが攻撃を受けた時、1ターン過去からそのモンスターを呼び戻し反撃することができる
その瞬間、巻き起こった爆炎の中に、仰々しいカプセル型の機械が姿を現した。
勝利がごくりと生唾を飲み込むと同時に、カプセルの扉がゆっくりと開く。
デビルゾア
攻 2600
「何っ!? "デビルゾア”!?」
「しかも、攻撃表示で!?」
衝撃を受ける勝利たちの様子に、キースは上機嫌でカードを見せびらかす。
「ククククク。この罠カードはなあ、戦闘破壊されたモンスターの1ターン過去の姿を今の時間に呼び寄せ、時間差で攻撃することができるカードよ」
「……なるほど。1ターン前のデビルゾアは、守備になっていない」
「だから、蘇ったデビルゾアは反撃の権利があるってことね……」
「そういうことだ! さあ、"デビルゾア”の反撃! 『デビル・エックス・シザース』!」
デビルゾア
攻 2600 ー 300(逆風のガストの効果) = 2300
BF-漆黒のエルフェン
攻撃力 2200
勝利 LP 1500 ー 100 = 1400
「エルフェン撃破! そして、カードを一枚セット。へっ、全国大会1位の実力も大したもんじゃねえな! この程度の罠に引っかかるとは!」
「くそっ……」
(こんな押されている勝利、初めて見た……ガストを先に召喚しておいたことで、ダメージ自体は抑えられているけど、いまだ反撃の糸口はつかめていない)
初めて見る勝利の苦戦の様子に、少々焦りを覚えた舞は、思わず声を上げる。
「勝利! 気合い入れなさい! こんな奴に負けたら、許さないわよ!」
「もちろん、わかっているさ!」
声を張り上げて舞に応答する勝利。
その声で、まだ心はキースの戦術に負けていないということが伝わってくる。
キース LP1950
デビルゾア
攻撃力 2600
伏せカード1枚
勝利 LP1400
BF-逆風のガスト
守備力 1400
伏せカード1枚
「さあ、僕のターン。カードドロー、今度はこいつだ! "BFー流離いのコガラシ"!」
BFー流離いのコガラシ
闇属性 鳥獣族 星6
攻撃力 2300
守備力 1600
「……次から次へと鬱陶しいぜ。大したパワーもないくせによぉ」
「……もう一度いうよ。僕の友達を馬鹿にすることは許さない。装備カード、"グローウィング・ボウガン”をコガラシに装備!」
グローウィング・ボーガン
魔法カード
BFのみ扱える弓矢。装備した者は攻撃力500アップ
BFー流離いのコガラシ
攻 2300 + 500 = 2800
「これでコガラシの攻撃力が、"デビルゾア”の攻撃力を上回った……」
(でも……まだキースには伏せカードがある)
不安そうに見つめる舞。
しかし、勝利は焦る様子や必死な素振りなどなく、冷静そのものだった。
(あんたがしっかり勝利を見据えられているのなら、あたしは、それを信じるだけ)
「ククククク。何度もこんな罠にかかるとは、日本チャンプも大したことねぇなあ」
「……なんだって?」
勝利の言葉に、キースがまた愉快そうに笑う。
「ハハハ! 伏せカードオープン! "メタル化・魔法反射装甲”!」
「メタル化ですって!?」
メタル化・魔法反射装甲
罠・装備カード
場のモンスター1体をメタル化し魔法攻撃を跳ね返す。その後装備カードとなる。
攻撃力+400 守備力+400
「そう! このカードによって"デビルゾア”はメタル化し、攻守を上昇させる!」
メタル・デビルゾア
闇属性 機械族 星8
攻撃力 3000
守備力 2300
「っ! このために機械族じゃないモンスター、デビルゾアを……!」
「その通り! これで"流離いのコガラシ"の攻撃力を、"メタル・デビルゾア"が上回る。無計画に何度も突っ込んできたことを後悔して、死んでいけ! 黒羽勝利!」
キースの高笑いに、勝利は顔を伏せ、ほんの少し笑いを返した。
「……何がおかしい!」
「……さっきはタイミングを外されちゃったけど、僕だって、あんたのカードは読んでたよ!」
「……何?」
「伏せカードオープン! "異次元からの埋葬”!」
異次元からの埋葬
魔法カード
除外されたモンスターを3体まで墓地に戻す
「このカードは、すでにゲームから取り除かれたカードを墓地に戻すことができる!」
「除外されたカードだと……そんなカードは」
「いや……ある、あるわ!」
『手札から"BF-尖鋭のボーラ”を除外し、カードを2枚ドローする!』
(まさかあの時の"黒羽の宝札"はカードのドローではなく、モンスターを除外して準備するために……)
「だが、そんなモンスターが返ってきたところでなんになる!?」
「こうなるのさ! 墓地に戻ってきた、"BF-尖鋭のボーラ”の効果発動!」
BF-尖鋭のボーラ
闇属性 鳥獣族 星5
攻撃力 1900
守備力 300
墓地に存在する場合、一度だけBFの戦闘を手助けする。
「ボーラの効果によって、コガラシは戦闘では破壊されず、その戦闘によって相手モンスターはダメージを介さずに破壊される!」
「なんだと!?」
「食らえ! 『ボーラスナイプ』!」
そういうと、コガラシの後ろに、ボーラの姿が現れ、ボーラの羽ばたきが冷たい風を巻き起こす。
すると"メタル・デビルゾア"の身体に霜が張り、動きが落ちる。
「め、"メタル・デビルゾア"が……」
「いまだ、コガラシの攻撃! 『木枯らし荒らし-弓矢の嵐』!」
飛び上がったコガラシから、数多の弓矢が放たれる。
何度かその身で矢をはじき返した"メタル・デビルゾア"だったが、弾き飛ばそうと腕を動かした瞬間に、霜が張った機械の身体に罅が入る。
「いけぇ、コガラシ!」
最後に思い切り弦を弾き、弓を放つ。
その弓が"メタル・デビルゾア"の身体を貫き、機械と化したデビルゾアの身体が崩れ落ちていった。
「"メタル・デビルゾア"、撃破だぜ!」
「こ、この餓鬼……」
「すごい……キースの手を、完全に超えていった! これでキースの場にカードは消えた。勝利が、完全にゲームの流れをつかんだわ!」
「このままいくよ! コガラシ、ガスト。それにみんな!」
『ピー!』
勢いに乗る勝利に対し、悔しそうに顔を伏せるキース。
流れは移った。舞も勝利もそう思った。
しかし、やがてキースは、また不気味に笑い始めた。
「……何?」
「……エースモンスターをやられて、おかしくなっちゃったのかな?」
「へっ。"デビルゾア"ごとき倒した程度でいい気になってんじゃねえよ……だが、まあ決闘者としての腕ぐらいは認めてやるよ。確かにお前は大した腕だ。オレ様が出ていない大会とはいえ、全国1位も頷ける」
今度は突然に勝利を褒めたたえるキースの姿に、舞はうすら寒さを覚える。
語るキースのその目は、淀み、濁り切っていた。
「だがなぁ、小僧……一つお前に聞いといてやるよ。てめえ、ギリギリの人生を歩んできた経験があるか?」
「……何?」
「地獄を見たことがあるかって聞いてんだよ……」
右手で拳銃の形を作って頭に持っていき、悪魔のような形相で子供の悪戯のように「バァン!」と口にしてまた笑う。
舞の背筋に、ぞわりと悪寒が走った。
「地獄をさまよってきたオレにはよお……王国にいる奴らも、他の奴らも、クソみたいにぬるく見える。世の中のどん底、惨めな絶望。俺が這いずってきた場所は、一歩踏み違えれば二度と上がってこれねえ底の淵。オレの地獄の出口は、ペガサスのいる場所だ」
そう言って、キースはちらと後ろを見る。
森の間から見える山の頂上。そこに、ペガサス城があった。
「そこにたどり着くためだったら、オレはなんでもするぜ。黒羽勝利。てめえに、オレを超えるための覚悟があんのかって聞いてんだよ!」
キースの形相に、舞は思わず後ずさりする。
執念、怨念、渇望。善悪の判断はさておき、キースが見せるそれは決してはったりや誇張の無い彼の強さを支える根幹そのものであることが感じとれるものだった。
(……こんなとんでもない男に、勝利は勝てるの?)
勝利を信じる。
そう誓った舞にすら揺らぎを与えるほどに、キースの勢いは強力だった。
せっかく奪い取った決闘の流れを、言葉で、気迫で、キースが取り戻そうとしていた。
「……地獄……ねえ」
そんな張り詰めた空気に、勝利の、静かで、冷たい声が響き渡った。
「あるよ。地獄、見たこと」
「……何?」
勝利の言葉に、キースは反応し、思わず俯き気味の勝利の目をのぞき込む。
キースが見たこともない、光と闇が混濁するような、微睡と鋭さを兼ね備えた不思議な目をしていた。
「世界に自分しかいなくなったと感じるようなどん底の孤独も」
「……勝利?」
語る勝利の様子に、舞は、言い知れぬ不安を覚える。
舞が、見たことのない勝利の姿。そして、聞いたことのない勝利の声だった。
「誰よりも、自分自身を信じられなくなるような絶望の只中も」
一つ、また一つ。
自分の胸に手を当てながら、指を折りながら言葉を紡ぐ。
自分の心から苦しい思いを、一つずつ引きずり出しているような様子だった。
「そして……一人では決して這い上がることのできなかった……地獄の淵も」
勝利が顔を上げる。
その表情に、キースが、声を上げた。
「なんだ……その表情は!? 見るな! そんな目で、オレを見るんじゃねえ!」
闇と、光。
憐憫と、希望。
相反する二つの瞳の意味を、キースはとらえきれずに拒絶していた。
(……なんで自分がキースと戦いたがっていたのか……今わかった)
初めて見た時から、自分の優秀だと自負する勘が鐘を鳴らし続けていた。
彼とは、戦うべきだ。戦う運命にある、と。
その勘の正体に、勝利は納得する答えを見つけだした。
(この人は……バンデットキースは……僕だ)
昔、絶望に飲み込まれていた時の自分。
信じられるものが何もなかった自分。
そして……
(友達に……みんなに……BFに、出会うことができなかった自分)
友と出会うことができず。
決闘を楽しむことができなくなり、勝利の渇望のみで戦いを続ける自分。
(この男は……救われなかった世界の、自分だ)
「……負けられない。あんたにだけは」
「……あ?」
「僕が正しいだなんて、そんなことは思っちゃいない。でも、それでも……僕が選んだ道を、間違ったものにはしない。そのためにも……僕と違う道に進んだあんたには、負けるわけにはいかない! あんたのすべてを超えて、僕は勝つ!」
「……けっ、ひねりつぶしてやるよ。クソ餓鬼! 行くぜ、"リボルバー・ドラゴン”!」
希望と、絶望。
得たものと戦うものと、得るために戦うもの。
2人の戦いは、まだ終わらない。
唐突な過去伏線は主人公(オリ主)の特権。
勝利は別の世界のキースさん……
つまり、勝利はクソコラ次元のキースさんだった……?(そんなわけはない)