遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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王国編特殊ルール②

基本的に、1ターンに攻撃できるモンスターは1体のみ

※羽蛾と竜崎って東日本代表、西日本代表として戦ってたんですね‥勝利がどこ代表とか考えてなかった‥お見逃しをよろしくお願いします。


王国への船出

「勝利君。優勝おめでとう!」

 

「昨日のデュエル見てたぜ! お前やっぱすげえんだな!」

 

「……みんなありがとう。本当にうれしいよ」

 

 

 

翌朝、登校と同時にクラスメイトからの祝福を受けながら、自分の席について一息つく。登校までの道のりで、老若男女問わずありがたいお言葉を頂いたことで、やはり『M&W』というゲームは、世界の注目が集まる一大興業なのだという事を勝利は改めて痛感した。

 

(さてと……)

 

昨日同様、窓際へと目線を向ける。するとそこには遊戯を中心に、昨日の面子に本田ヒロト、獏良了を加えた五人が一つのビデオカメラを囲んでいる。

 

(遊戯君……)

 

緩む頬も、軽い足取りも、上ずった声さえも抑えきれない。

それでも、今は彼と話したかった。

 

(君を一目見た時から、僕のデッキで、君たちと戦うと決めていた。)

 

勝利は席を立ち、遊戯たちに近づいていく。

 

「やあ、遊戯君。昨日のデュエル、見てくれていたかい?」

 

「あっ、勝利君……うん、おめでとう」

 

そう返してくれる遊戯の顔が、無理やりな笑顔であることは付き合いの浅い勝利にでもわかるものだった。

 

「……ずいぶん、元気がないみたいだね。何かあったのかい?」

 

「えっ! そ、そんなことないよ! あはは……!」

 

昨日、仲間だと言ってくれた彼から、明確な距離を感じる。

寂しくないといえばウソだが、深入りするのも野暮だろう。そう判断した勝利は、質問をつぐんだ。

 

「そ、そういえばさ! 勝利君、あのペガサスにあってきたんでしょ? どんな人だったの?」

 

杏子が、そんな言葉を投げかけてきた。おそらく話題をそらしつつ、昨日の大会の話に持っていって盛り上げようとしてくれているのだろう。

その心遣いを察した勝利は杏子のやさしさに丸乗りすることにした。

 

「ペガサスさん? とてもいい人だったよ。身分を鼻にかけたりしないし、フレンドリーに話しかけてくれたし。けっこう仲良くなったよ。その時に遊戯君の話もできたしね」

 

「……僕の話?」

 

「行くんだろ? 『決闘者王国(デュエリストキングダム)』」

 

伏目がちだった遊戯の表情が変わった。

困惑と覚悟がまじりあった、弱弱しくも鋭い目だった。

 

「っ! 君も……」

 

「ああ。僕だけじゃない。準優勝のインセクター羽蛾君や、三位入賞のダイナソー竜崎君。そのほかにも大会で結果を残している指折りのデュエリストたちを集めて、NO.1決闘者を決める。って言ってた。賞金も副賞も用意されていて、それ目当てで参加する人たちも集まりそうだから、めちゃくちゃ大きな大会になる予定だってさ」

 

「……そうなんだ」

 

「……勝利、賞金ってのは、いくらぐらいなんだよ」

 

「ん? 詳しくはまだ聞いてないかな。ただ、期待していい。とは言われたよ。僕の今大会の優勝賞金くらいは軽く超えてくるだろうね」

 

勝利の言葉に優勝までの道のりの険しさを感じたのか、少々怯むような様子の遊戯。

そしてその隣には『賞金』という言葉に強く反応している城之内の姿があった。

 

(城之内君は確か、苦学生なんだよね。バイトしたりして、カード買い揃えるお金もないって、この前嘆いていたっけ……)

 

まあ、普段休み時間に見ている城之内の実力的にいって招待されるかどうかも怪しい……というのは、わざわざこの場で言う必要もないことだろう。

だが、たとえ王国で、昨日「仲間」と呼び迎え入れてくれた城之内と敵対することになったとしても、勝利は一切の情けもなく戦うことを覚悟していた。

そして……

 

 

「僕は賞金も、副賞も、もっと言えば、No.1決闘者にも興味はないよ」

 

「えっ……」

 

遊戯の目が、丸くなる。

その様子に、笑いながら言う。

 

「君が出る。そうペガサスさんから聞いたから、僕は行くんだ」

 

「勝利君……」

 

「過程はどうあれ、僕はこの機会と、それを用意してくれたペガサスさんに感謝するよ。君がどんな思いで今回の大会に出場するかはわからない。だけど、これだけは約束してくれ。僕とデュエルすることがあるならばその時に君は、全力で僕と戦うと」

 

そう言って手を差し出すと、遊戯はその手を握って返した。

その姿に、もはや、困惑も怯えも見当たらなかった。

 

「わかった。僕は、全力で戦うよ!」

 

強く握り合い、お互いの熱が伝播する。

さあ、いよいよだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……でっけえ」

 

船を見上げながら思わずつぶやく。

招待状に記載されていた時刻に港に到着するとそこには、自分たちのために用意されているであろう、超がつくほどの巨大豪華客船が停泊していた。

 

ほどなくしてインダストリアル・イリュージョン社の役員と思われる黒服より船の上からの演説があった後、決闘者たちが次々に船の中へと乗り込んでいく。

 

(さて、いよいよ始まりか)

 

僕も乗り込もう。

そう思い足を踏み出しかけたところで、勝利は何やら遊戯たちに絡んでいる、一人の女性を視界に収める。

 

(……で、でっけえ……)

 

女性のとある一部分を見据え、思わずこぼれそうになった言葉を飲み込む。

 

「ん? おお、勝利じゃねえか!」

 

「ああ、城之内君。遊戯君。それにみんなも来てたんだね」

 

「……ふーん。あの子が大会優勝者の……」

 

城之内に声をかけられて近づいた勝利を品定めするように見てくるのは、甘い香水が香しい大人の雰囲気を感じさせる巨乳美女。思わず遊戯たちの方向に目をそらしてしまう。

そちらには、呆けた表情のお三方と、明らかに不機嫌な様子の杏子が勝利を見ていた。

 

「あたしは孔雀舞よ。よろしくね、ボーヤ」

 

「……どうも」

 

孔雀舞、と名乗った女性はそらした僕の顔を追従して覗き込む。

恥ずかしいから、勘弁してほしいところだ。

 

余談だが、勝利はペガサスと話をした後参加者となりそうな決闘者の情報を軽く調べてからきているのだが、この『孔雀舞』を筆頭に今埠頭に見えている面々の決闘者としての実績と呼べそうなものはほとんど出てこなかった。いったいI2社はどんな情報網をつかって実力を調べたのやら……と関心半分、あきれ半分だった。

 

「……ふーん。あっちのボーヤと一緒で、そんなに強そうには見えないんだけどなあ。君みたいな子が、クリエイターなんて呼ばれ方をしてるなんてねえ……」

 

「ははは。まあ今回の大会では、デッキは一つしか持ち込みできないみたいなので、ご期待ほどの活躍が出来るかはわかりませんが」

 

「……まあ、いいわ。相手がだれでも、デュエルでは容赦しない。まったねぇ~」

 

そう言って孔雀舞は、軽く投げキッスをしてから船へと入っていった。

 

「……すげー女だ」

 

「大人の魅力だ」

 

「……美女のあま~い香水の香り」

 

「……うん。まあ、きれいな人だったね」

 

「ばかぁぁ!」

 

杏子の一喝でその場を占めた遊戯たちは、他の人たちに続くように船に乗り込んでいった。

 

 

 

汽笛は旅立ちの合図。

決闘者たちの決意を乗せて、船は「王国」に向かう

 

 

 

(ペガサスを倒し、じーちゃんを取り戻す!)

 

(待ってろよ静香! 俺の命に代えても、お前の光を失わせはしないぜ!)

 

(……とうとう君たちの初陣だ。絶対、勝ち残って見せる)

 

 

 

 

 

「なるほど。それで城之内君は、遊戯君とスターチップを分け合って参加してるんだね」

 

「そう。でも僕も城之内君も、全力で戦う。だから勝利君もデュエルすることになったら、全力で戦ってほしい!」

 

「もちろん。そのつもりさ」

 

歩きながらそんな会話をしていると、後ろから見知った面々から声がかかる。

 

「やあ、遊戯君。それに勝利君」

 

「あっ。君は、羽蛾君! それに、竜崎君も!」

 

「よお、お前さんが羽蛾をやっつけたクリエイター勝利っちゅう奴かい」

 

「ああ、よろしくね。ダイナソー竜崎君」

 

「残念やったのお。お前程度の実力やったら、ワイが決勝に行ってれば優勝間違いなしやったのになあ」

 

「なんだと!? てめえ、勝利をバカにしやがって!」

 

「いいんだ。城之内君。気にしないで」

 

城之内を制しながら、にやつき去っていくダイナソー竜崎を見送る。

 

「おい勝利! なんで黙ってんだよ! おめー、全国大会の優勝者なんだぜ! あんな関西人になめられたまんまで!」

 

「馬鹿にしたい奴にはそうさせておけばいいさ。彼が口だけじゃないのなら、どのみちどこかで戦うことになるんだ。力は、その時に示せばいいよ」

 

「お、おう……それならいいんだけどよ」

 

「……勝利君は大人だなあ」

 

「まっ、けんかっ早さだけが自慢の城之内よりはな」

 

「獏良! 本田! てめえら!」

 

怒る城之内が二人を追っかけて行くのを見て、遊戯と杏子が思わず笑う。

それにつられて勝利も笑う。

彼らのいう、「仲間」の輪に入れたことが実感できて、なんだか照れくさいが、うれしかった。

 

 

「ああ、そういえば遊戯君。知っているかい? 王国でのデュエルにはこれまでの『M&W』にはない、新しいルールが導入されるらしいんだ」

 

「え!? 新しいルール!?」

 

「そう。まあ、僕も詳しいことは知らないんだけどね。君の友達なら、もしかしたら知っているかもしれないよ?」

 

「えっ?」

 

羽蛾と遊戯が勝利の方へ目線を向けていた。

 

(ああ、あのルールのことか。どうやら、羽蛾君もペガサスさんと王国の情報を先行してもらっているらしい。)

 

「……まあ、僕としては先に喋ってしまっても構わないんだけど……」

 

『あのルール』は、所謂わからん殺しの側面がある。おそらくみんなが最初に気付くのは、どれだけ早くてもボックスについてフィールドを確認してからだから、もし知っている者と知らない者が戦うのであればそれは圧倒的なアドバンテージの差になってしまう事だろう。

遊戯や城之内のことを思えば教えてしまった方が今後の為だ。だが……

 

「やっぱり、やめておこうか。他の出場者のアドバンテージをつぶしてしまうのはあまりよくないことだろうし、それに……遊戯君たちなら、どんなルールでも勝ち残れる。そうだろ?」

 

「……勝利君。うん! どんなことがあっても、勝ち残ってみせるよ!」

 

「……さすがだねえ、遊戯君は。やっぱりあの、海馬君を打倒しただけのことはある」

 

(……なんだ? 今の、いやな感覚は)

 

 

 

「なに~~~!?」

 

 

 

その時の、羽蛾の怪しい笑みへの違和感は、遠くの城之内の怒号によってかき消された。

 

 

 

「なんで俺たちはこんなタコ部屋なんだよ~~!?」

 

「個室に入れるのは前大会の上位入賞者のみと決まっています!」

 

 

(ああ……そういえば、個室を用意されてるのって僕たちだけなんだっけか。すっかり忘れてた。まあ、大人数部屋が悪い部屋だとは思わないけど、確かにこの長い船旅の中で雑魚寝は厳しいものがあるよね。I2社の財力を考えれば、船二隻ぐらい用意して全員分の個室を用意してくれたっていいような気もするが……まあ、経費削減なのか。ペガサスさんの趣向なのか)

 

 

「っ!? てことは、勝利!? お前は個室付ってことか!?」

 

「え、ああ、うん。そうだよ?」

 

「なにぃ!? おい、勝利! たのむ、俺たちもその個室に泊めてくれえ!!」

 

「頼むぜ勝利! ダチのよしみでよ!」

 

そう言って本田と城之内が勝利の体に縋り付く。

 

「いや、泊めてあげたいのは山々なんだけど……城之内君に本田君に、遊戯君に杏子ちゃんにバクラくんでしょう? いくら豪華客船の個室と言っても、六人も一緒に寝るスペースはないんじゃないかなあ。タコ部屋より狭くなっちゃうと思うよ?」

 

「ぐっ……た、確かに……」

 

それに、タコ部屋の方が情報収集には適している。ここまででも話題に出ているが、カードゲームにおける『情報』というのはとても大切で、トレードを仕掛けたり、模擬戦という名のデュエルを仕掛けたりすることによって相手のデッキを探ることもできる。今回の王国大会に持ち込むことのできるカードは限られているから、ここで得た情報が島についてから役に立たなくなるようなことはそうそうない。むしろ勝利の方が、あとでこっちに顔を出そうと思っていたぐらいだった。

そう言う旨の発言をして城之内を宥めようとしたところで、後ろからの甘い香りと柔らかい感触が、勝利の意識をすべて持って行った。

 

「なら、一人くらいなら泊まれるんじゃない?」

 

「ひやぁ!」

 

耳元でささやく声に、思わず間抜けな声を出す。目の前では城之内と本田が、顔を赤くしてわなわなと身を震わせていた。

 

「あ、あなたは、孔雀舞さん……」

 

「あら。名前、覚えててくれたのね。うれしいなあ、あ・た・し」

 

「は、ははは。それは勿論」

 

こんなエッチなお姉さんの名前を忘れるわけが……なんていうわけにはいかない。

だが、よろしくない思考に脳がジャックされてしまい、適切な言葉をうまく紡げずにいたところに、孔雀舞の二の矢が刺さる。

 

「ねえ、いいでしょう? もちろん、泊めてくれたら、ちゃーんとお礼はするから。ね?」

 

「「「お、お礼~~~~~~!!!!!!?」」」

 

遊戯たちが血走った目で勝利と勝利に腕を絡める舞を交互に見る。

 

(や、やわらかい……)

 

まずいな。

あまりの色気に頭がくらくらしてきた。

 

(しかし、いかん。せっかく遊戯君たちと、仲間たちのまえなんだ。今日初めて会った女性の色香に負けるわけにはいかない。)

 

特に男どもの後ろに見える杏子などは、とんでもない絶対零度の目を向けている。

 

落ち着け、勝利。ここは、しっかりと断りの言葉を述べなければ!

 

「あ、あの、舞さん、申し訳ないんだけど」

 

「ねえ……あたし、か弱いから、こんな男だらけのところに泊まれないの……それに、大会優勝者の勝利君にいろいろ聞きたいこともあるし……部屋に、入れてくださる?」

 

 

 

 

 

 

「……はい」

 

 

 

「「しょ、勝利ぃぃぃぃ!!!!!」」

 

 

 

城之内、本田の恨み節を背に、勝利は腕に絡みつく孔雀舞を連れて部屋へと向かっていく。

 

 

 

 

不覚。

16歳高校生男子の、経験不足による圧倒的敗北だった。

 

 

 

こうして仲間を裏切り、個室へと消えていくのだった。

 

 

 

 

「きゃー! 素敵なお部屋!」

 

「そ、そうですね。一応、大会優勝者ですから、特等の部屋を用意してくれたのかな? あはは……」

 

部屋に入って数秒後、気の利いた言葉を選ぼうと思って謎の自慢臭い発言しか残せなかった高校生(思春期 友情×)の図があった。

 

まずい。マジで頭がぼーっとしてきた。

 

なんなの。女性の香水の匂いは。なんでこんなに破壊力あるの?

男が付ける香水の臭いと、なんでこんなに格の違いが出るの?

 

同じカード(もの)でも使用する人によって性能差が出る。

そんな現実をまざまざと見せつけられた気分だった。

 

「そうよね! 勝利君って、カードつよいんだもんねー。尊敬しちゃうなあ!」

 

「そ、それほどでも……」

 

(……もういいんじゃないかな、このままでも。

母さん。もし無事に王国から帰ることができたなら、僕は報告するよ。

素敵な人に、巡り合えました。ってね。)

 

 

 

 

「強い男って好きよ……あたしよりね」

 

 

 

 

脳内ピンクの花塗れだった勝利を、そんな言葉が現実に引き戻した。

 

「……僕、一応大会優勝者なんだけど。そんなこと言うってことは、舞さんも強いんだよね?」

 

「どうかな~? ねえ、アタシとデュエルしない?」

 

「……いいのかい? 大会前に、そんなことしちゃって?」

 

「いいのよ。いったでしょ? あたし、誰にも負ける気ないから。何なら、あたしに勝ったらあたしのこと好きにしてもいいわよ。朝まで」

 

「くっくっく。そいつは魅力的な提案だね」

 

先ほどまで面白いほどに引っかかっていたハニートラップを、決闘者としての闘争心とアドレナリンが押さえつける。

舞が腰かけるソファの体面にそっと座り、腰のデッキホルダーをテーブルに置いた。

 

「なら決まりね。あたしのデッキ、シャッフルしてくださる? 体のシャッフルはあなたが勝った後で」

 

そんな色気満点の舞の言葉にさえ、もう心を惑わされることはない。

 

(僕もデュエリストだから。売られたデュエルは、買うのが礼儀。)

勝つ。それ以外のことは、もう心にない。

 

「さあ、切ったよ。はじめようか」

 

「その前に……あたしが目をつぶって、上から順番にそのカードをすべて当てて見せましょうか?」

 

「……余興のつもりかな? 面白いね。やってみてよ」

 

「……一番上のカードは、“誘惑のシャドウ”」

 

カードをめくり、確認する。確かに、一番上のカードは、“誘惑のシャドウ”だった。

 

「二枚目のカードは、“ハーピィ・レディ”。次は“ブロンドウェーブ”のカード。その次は“サイバー・ボンテージ”」

 

「……お見事。すべて正解だよ」

 

「ふふっ。いつでもドローするカードを知る事が出来るし、いつでも好きなカードを引く事が出来る。それがあたしのカードテクなの」

 

「……くっくっくっくっく」

 

「……何がおかしいのよ?」

 

舞は初めて、目の前で表情を崩す。

 

「ああ、ごめん。馬鹿にしたわけじゃないんだけどね。楽しくなって笑っちゃっただけなんだ。なるほど、まさに余興だった」

 

「へえ……あたしの力を、宴会芸呼ばわりとはね。言ってくれるじゃない?」

 

そう聞いた後僕は、デッキを舞の前に置き、目をつぶった。

 

「一番上のカードは、二枚目の“ハーピイ・レディ”だね?」

 

「っ!」

 

舞は焦った様子で、カードを一枚引く。

 

目を開くと、絶句した舞の姿があった。勝利の方からカードは見えないけど、当たったと思っていいだろう。

 

「『カードに香水を塗る』。面白いアイデアだったと思うよ。別にルールで禁止されている行為じゃないし、女性から香水の臭いがするのも自然な話だ。あっ、もしかしたら、その体から匂ってくる香水も、カモフラージュのために付けていたのかな? でも、デッキのカードはすべて別の匂いのほうがよかったんじゃないかな。二枚目以降のカードは、相手にもばれちゃうからね」

 

「……馬鹿にしてるの?」

 

強気な言葉が吐かれるも、動揺は見て取れた。

 

「いや、そんなつもりじゃなかったんだけど。でも、もうその手品。僕には使わない方がいいと思うよ。そういう、感覚とか、結構敏感なんだよね」

 

もう、今出たカードの臭いは覚えた(・・・)から

 

「っ!! 青臭いボーヤかと思ってたけど、なかなかやるみたいじゃない。こんなにも早く、あたしの香水戦術(アロマ・タクティクス)を見破るなんてね!」

 

「……さあ、始めようか」

 

 

 

憤慨しながらデッキをセットする舞の様子を見ながら、勝利は少し興奮していた。

 

 

(予想外の展開ではあったけれども、王国前に、肩慣らしをしておきたかったというのも事実。この展開は、僕にとっても願ったりだ)

 

 

この大会のために選んだデッキの初陣。

 

そして、喜んだ理由は、もう一つ。

 

 

 

(『ハーピィ・レディ』……素晴らしいデッキだね。舞さん)

 

 

 

 

「さあ、行くわよ!」

 

 

 

舞 LP2000

「「デュエル!!」」

勝利 LP2000

 

 

「私のターン。行きなさい、“ハーピィ・レディ”!」

 

 

 

ハーピィ・レディ

風属性 鳥獣族 星4

攻撃力 1300

守備力 1400

 

 

 

「くっくっく。やっぱり、“ハーピィ・レディ”だよね」

 

また楽しくなってしまい、笑いをこぼした勝利を、舞が不思議そうな目で見る。

 

「ねえ、舞さん。『運命』とかって信じるタイプかい?」

 

「はあ? 何それ、あなたのナンパの手口? それとも、あたしを惑わすためのクラッシュトーク?」

 

そんな反応にまた笑い、舞はさらに不機嫌になる。

 

「そんなんじゃないよ。ただ僕自身は、結構そういうオカルト系を信じるタイプでね」

 

 

見えるものもあるし、とは言わない。

 

 

「僕のメインデッキの記念すべき初戦に、こんな最高の相手を用意してくれた神様に、感謝したいと思っただけさ」

 

 

 

さあ……長く待たせちゃって、すまなかったね!

行くよ! みんな!

 

 

 

「僕が召喚するのは……こいつだ! “BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル”!」

 

「っ! ぶ、BF(ブラックフェザー)!? 鳥獣族ですって!?」

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル

闇属性 鳥獣族 星3

攻撃力 1300

守備力 400

 

攻撃を仕掛ける時、風で相手の勢いを半減させる

 

 

 

「……そういえば、まだちゃんと自己紹介してなかったよね」

 

 

 

僕の名前。

僕が大好きな友達と戦う、僕だけの名前。

 

 

 

「僕の名前は、『黒羽勝利(くろばねしょうり)』。BF(彼ら)といっしょに、勝利をつかむ!」

 

 

 

さあ、初陣だ!

 

 

『ピーーーー!』

 

 




はい。ヒロイン登場です。

また、主人公のフルネームが判明し、メインデッキもお目見えとなりました。
私が大好きなBFデッキになります。タイトルが隠す気0なのでタグにも書いちゃってますが。
できる限りいろんな種類のカードを出したいと思います。





シンクロ? いずれ出しますよ、いずれ。
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