遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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あけましておめでとうございます。
この一話が三が日を潤すものになればうれしいです。

本年も「遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~」をよろしくお願いします。


LP 150

 

 

『ぴぃー!』

 

『かぁー!』

 

「……ふぁーーー。おはよう、みんな」

 

ペガサスに割り当てられた部屋の中、友達の声を目覚ましに勝利はベッドから体を起こす。

洗面所で軽い洗顔と歯磨きを済ませ、鏡でじっと自分の顔を見た。ワクワクを隠し切れない自分の表情に、思わず笑う。

部屋に戻って早々に寝間着を脱ぎ去り、脱ぎ捨てられた昨日の服をしまい、青のシャツと黒の革ジャケットを取り出す。勝利なりの、勝負服だった。

ダークグレーのタイトパンツにデッキホルダー付きのベルトを装着し、勝利の準備は完了する。

 

勝利は窓際に立ち、朝日を望んだ。

眩しくも確かな熱を持ったそれは、勝利の身体にエネルギーを与えてくれた。

 

 

行こう。

 

 

勝利が思い至り、部屋のドアへと向かおうとしたちょうどその時、部屋にノックの音が響いた。

 

「勝利ー」

 

「……舞さん」

 

声の主を確信し、ドアを開ける。

そちらも準備万端の舞が、そこに立っていた。

 

「迎えに来てくれたの?」

 

「……寝坊してたらたたき起こしてやろうかと思っただけよ。気合い入ってるじゃない」

 

勝利の服装を見て、呟く舞。

その反応に勝利は、調子に乗って返す。

 

「かっこいい?」

 

「……馬鹿」

 

 

そっぽを向く舞。

勝利は一つ笑って、その後、軽く気を引き締めた。

 

「……よし、行こう」

 

「……ええ」

 

決闘者としての顔を作り、二人で決闘場へ出向く。

ウキウキとした心がバレたくないので、小走りを必死に抑えながら歩く勝利だった。

 

 

 

 

 

決闘場へ到着した二人。周りを見たが、ペガサスも遊戯たちもいなかったため、自分たちが一番乗りなのだろうと思った。

 

「ちょっと早すぎたかな?」

 

「すぐ来るでしょ」

 

おとなしく待つしかないので、近くの手すりに軽く腰かけた。

舞もそれに倣い、勝利の隣で腰掛ける。

 

「……ねえ、舞さん」

 

「何?」

 

「あのトーナメントを額面通りに受け取るなら、僕らが1回戦、舞さんたちが2回戦だ」

 

後ろのモニターに表示されているトーナメント表を親指で指さしながら、勝利はいう。

 

「そうね」

 

「別に、答えたくなければ、答えないでくれていいんだけどさ」

 

少し頬を書きながら、勝利が続けた。

 

 

 

「舞さんは……遊戯君と、僕。どっちに上がってきてほしい?」

 

 

 

「……」

 

黙る舞に、変なこと聞いたかな、と反省する勝利。

しかし、舞はすぐに口を開いた。

 

「何を言い出すかと思えば……あたしが目指すのは、優勝賞金よ。あんたが来ようが、遊戯が来ようが、全力で戦って、賞金を手に入れるだけ」

 

「……そうだよね」

 

納得の言葉を吐いて、すぐに質問を回収しようとする勝利。

しかし、話を切ろうとした勝利に気づいてか、舞が続けて宣言する。

 

 

 

 

「……あんたは何も気にしないで、楽しんでくればいいのよ」

 

 

 

 

「っ!」

 

驚いて、舞の顔を見る勝利。

その勝利と目を合わせた舞が、さらに言った。

 

 

 

 

 

「あんたは、『楽しんでるときが一番強い』。そうでしょ?」

 

 

 

 

ばしっ。っと勝利の背中を叩く舞の顔は、見惚れるような美しい笑顔だった。

その笑顔から、じんじんと痛む背中から、エネルギーが流れ込んでくるのを感じた。

 

(ああ……この人は本当に……いつも僕の欲しい言葉をくれる人だ)

 

胸が熱くなり、気を抜いたら涙がこぼれ落ちそうになる。

感情の器の限界が来る前に、勝利は言葉を紡いだ。

 

 

 

 

「ありがとう、舞さん……楽しんでくるよ」

 

 

 

できる限りの笑みで、舞に返す。

舞はそれを見て、満足げにもう一度笑った。

 

 

 

 

 

 

ほどなくして、遊戯たちも集まってきた。

これで、決勝トーナメントのメンバー全員が、この場にそろった。

そしてそれを見計らってか、ペガサスが決闘場上部のテラスから現れる。

 

 

 

「誇り高き決闘者たちよ。聖戦の地へようこそ!!」

 

 

 

全員が反応し、顔を上げる。

特に遊戯の顔は、一際険しく歪んでいた。

 

 

 

「今ここに、優勝者決定トーナメントを開始しマース!!」

 

 

 

全体が引き締まり、ピリピリとした空気が場を支配する。

ペガサスは空気を無視するように軽い言葉を続けた。

 

 

「四人の中からトーナメントで勝ち残ったものは、優勝賞金を手にすることができマース。それを今お目にかけましょう……賞金の20万$デース!」

 

わざとらしい宝箱のようなデザインの入れ物に、これ見よがしの宝飾品がこれでもかと詰め込まれていた。

 

(20万$……大体3000万円か。十分な額だね)

 

ちらと隣を見ると、城之内や舞が燃えているのが伝わってくる。

 

「ただし! この賞金はトーナメントを勝ち上がるだけでは手に入れることはできません! 最後に王国の頂点に君臨するペガサス様に勝たなければならないのです!」

 

「そのとーり。フフ……果たして私に挑むのは誰でしょうネー。とても楽しみデース」

 

楽しそうにこの城の玉座にかけるペガサスには、人生における楽しいイベントの一つくらいにしか思っていないように見られた。

それだけの自信と、それを裏付ける実力があることの証明だろう。

 

 

(……まあいい。ペガサスのことは、ペガサスと戦うことになったその時に考えよう。僕にできるのは……目の前の決闘に、全力でぶつかることだけだ!)

 

 

 

 

「それでは始めましょう! トーナメント第1回戦は……武藤遊戯vs黒羽勝利!」

 

 

 

その宣言を聞き、城之内たち、そして舞がその場を下がり、応援用のテラスがある階へと足を運ぶ。

勝利はその際に舞と目が合ったため、軽くウインクをすると、舞は足を止めないまま軽く手を振った。

 

それを見た後遊戯に向き直り、改めて気合いを入れて遊戯に向き直った。

 

 

 

 

 

「さあ、とうとう来たね。遊戯君。悪いけど全力で行くよ」

 

「……ああ、勝利君。悪いが俺は、こんなところで負けるわけにはいかない。先に進むため、倒させてもらうぜ」

 

 

 

 

その言葉に、勝利はかすかに顔を歪める。

それに気づくことができたのは、舞とペガサスの二人だけだった。

 

「勝利……」

 

「……フフ」

 

 

 

「さあ、行くぜ! 勝利君!」

 

 

「……うん!」

 

 

 

 

勝利 LP2000

「「デュエル!!」」

遊戯 LP2000

 

 

 

「フ……(いい手札だ。この手なら、圧倒できるぜ)」

 

「……(遊戯君。僕は、全力を尽くすよ。それがこの王国でここまで戦ってきた、君と、すべての決闘者に対する礼儀だ)」

 

決闘がスタートする。

しかし、向かい合う二人の心があまりにかみ合っていないことに、ペガサスは気づいていた。

 

(遊戯ボーイ……私にはユーのマインドが手に取るようにわかる……今のユーでは私はおろか……勝利ボーイの相手になることもできまセーン。フフフ)

 

「僕のターン。"BF-逆風のガスト”を守備表示で召喚」

 

 

BF-逆風のガスト

闇属性 鳥獣族 星2

 

攻撃力  900

守備力 1400

 

フィールドに風を巻き起こし、逆風空間を作る

 

 

「このモンスターがいる限り、そっちのターンの攻撃モンスターは、攻撃力が300ポイントダウンすることになるよ」

 

「ふっ。それだけの効果じゃ、俺の攻撃を止めることはできないぜ!」

 

「……カードを一枚セット。ターンエンドだ」

 

静かにターンを終える勝利に対し、遊戯は言葉の勢いのままにターンを始める。

 

「俺のターン! 行くぜ、"ブラック・マジシャン”召喚!」

 

 

ブラック・マジシャン

闇属性 魔法使い族 星7

 

攻撃力 2500

守備力 2100

 

 

「よっしゃ! 早速来たぜ、遊戯のエースモンスター!」

 

「……」

 

歓喜に沸く遊戯陣営に対し、舞は冷たい表情のまま、状況を見つめていた。

舞の視線の先にいるのは遊戯……ではなく、勝利だった。

 

(勝利……あんた……)

 

 

(勝利君のデッキは、『BF』という鳥獣モンスターをコンボで強化していくデッキ。だが、俺の"ブラック・マジシャン”の敵じゃないぜ!)

 

「カードを一枚セットし、バトル! "ブラック・マジシャン”で、"BF-逆風のガスト"に攻撃! 『黒・魔・導(ブラック・マジック)』!」

 

 

 

ブラック・マジシャン

 

攻 2500 ー 300 = 2200

 

BF-逆風のガスト

 

守 1400

 

 

 

遊戯の宣言に、勝利は特に表情を動かすこともなく、セットカードに手をかける。

 

 

「伏せカードオープン。"鎖付き尖盾(スパイクシールド)”。ガストに装備するよ!」

 

「なにっ!?」

 

 

鎖付き尖盾(スパイクシールド)

 

罠カード

 

発動後、武装カードとして装備。

相手を引き寄せ、守備力と攻撃力を合計したダメージを与える。

攻撃力+500

 

 

「ガストの武装カードとなり、このまま"ブラック・マジシャン”を引き寄せ、強制バトルする。その時に、ガストの守備力に、攻撃力を加算するんだ!」

 

「なんだと!? つまり、ガストの守備力は……」

 

 

BF-逆風のガスト

 

攻撃力  900 + 500 = 1400

 

守備力 1400

 

 

 

ブラック・マジシャン

 

攻 2500 ー 300 = 2200

 

BF-逆風のガスト

 

守 1400(守備力) + 1400(攻撃力) = 2800

 

 

 

遊戯 LP 2000 ー 600 = 1400

 

 

 

「ぐああ!?」

 

「遊戯!!」

 

「ちきしょう……遊戯が罠にかけられるなんて……やっぱさすがだぜ、勝利の奴!」

 

いきなりダメージを受けてしまった遊戯に対し、杏子が悲鳴を上げ、城之内が悔しそうに呟く。

しかし、そんな二人の台詞に対し、舞はあまりにも無機質な顔のままだった。

 

「……どうかしらね。今のは明らかに、遊戯の失策よ」

 

冷たい言葉を浴びせた舞に、城之内は怒り、杏子は困惑していた。

 

「なんだと!? 舞、お前、遊戯がミスってるとでもいうのかよ?」

 

「ええ。『とでも』も何も、明らかにミスしている」

 

「んなっ!? まだ一回罠にかかっただけじゃねえか!?」

 

「そのかかり方が重要なのよ。勝利は今の一戦、わざとわかりやすく罠を仕掛けた。今の遊戯の状態を図るためにね」

 

舞の言い分に、目を丸くする城之内たち。舞はそのまま続ける。

 

「遊戯はそれに気づかないどころか、勝利の罠を探ろうという気配もなかった。はっきり言って今の遊戯は……勝利の前に立つに値する決闘者の器じゃない」

 

「……舞さん」

 

「今の遊戯の瞳には勝利の姿は映っていても、勝利の心を見ていない。確かに今はまだ、罠に一回かかっただけ。でも、すぐにもっとぼろを出すわ」

 

舞はそれだけ言って、決闘場に向き直った。

杏子と城之内は顔を見合わせた後、少々不服そうにしながらも舞に倣い、決闘場を見つめなおした。

 

 

 

 

遊戯 LP1400

 

ブラック・マジシャン

 

攻 2500

 

伏せカード 1枚

 

 

 

勝利  LP2000

 

BF-逆風のガスト

 

守 1400 (+ 鎖付き尖盾)

 

 

 

 

 

「遊戯君の手がこれ以上ないなら、ターンを移すよ。僕のターン」

 

悔しそうに勝利を見る遊戯の視線を軽くいなしながら、勝利がカードを引いてターンを開始する。

 

「僕は、"BF-激震のアブロオロス"を召喚」

 

 

BF-激震のアブロオロス

闇属性 鳥獣族 星7

 

攻撃力 2600

守備力 1800

 

攻撃力を下げることで、爆風を巻き起こし、カードを手札に戻す。

戦闘を行うことで、台風を巻き起こし、モンスターを手札に戻す。

 

 

「……最上級モンスターか」

 

(……よし、攻撃してくるがいいぜ! 今度はこっちが、罠にかける番だ!)

 

そんな遊戯に、勝利はため息交じりに宣言する。

 

「アブロオロスのモンスター効果。攻撃力を1000ポイント下げることにより、セットカードを遊戯君の手札に戻すことができるよ」

 

「なんだと!?」

 

「アブロオロスの効果起動、『爆風陣ーエアリアル』」

 

アブロオロスが自身のこん棒から風を巻き起こし、遊戯のセットカードにたたきつけた。

遊戯は、悔しそうにセットカードを手札に戻す。

 

「だが、アブロオロスの攻撃力を下げたことにより、君はこのターン"ブラック・マジシャン”を倒すことはできなくなった! これはプレイングミスだぜ!」

 

「……それはどうかな。僕は魔法カード、"一時休戦”を発動するよ」

 

 

一時休戦

 

魔法カード

 

お互いにカードを一枚ドローし、次のターンの開始時までお互いにいかなる手段でもダメージを与えることができなくなる。

 

 

「このカードで、お互いは次の僕のターンまで、ダメージを与えることはできなくなるよ」

 

「くっ、次のターンまでの時間稼ぎか……」

 

 

深呼吸し、一つ言葉を飲み込んだ勝利は、続いて宣言した。

 

「……カードを一枚セットし、バトル! アブロオロスで、"ブラック・マジシャン”に攻撃!」

 

「何っ!? ダメージが受けないとはいえ、攻撃力の低いアブロオロスで攻撃だと!?」

 

「行けっ! アブロオロス! 『爆風震源ーエアブラスト』!」

 

 

BF-激震のアブロオロス

 

攻 1600

 

ブラックマジシャン

 

攻 2500

 

 

"ブラック・マジシャン”が自分の杖で、余裕そうにアブロオロスの攻撃を受ける。

そして、アブロオロスのこん棒を弾き、反撃の一撃を与えた。

 

「いけっ! "ブラック・マジシャン”! 反撃の『黒・魔・導(ブラック・マジック)』!」

 

アブロオロスが、声をあげて消えていく。

だが去り際は、勝利のほうを向いてにやりと笑い、愉快そうな声をこらえて消えた。

 

 

勝利 LP 2000(一時休戦中のため、ノーダメージ)

 

 

(ありがとう。アブロオロス)

 

「どうした、勝利君。今のプレイは、焦った攻めにしか見えないぜ!」

 

「そう見えるってことは、やはり君の眼が曇っているということだろうね」

 

「……なんだと?」

 

「よく見てみなよ。自分のモンスターを」

 

すると遊戯はようやく、自分のモンスターに目を落とし、驚愕する。

 

「こ、これは!?」

 

戦闘を終えた"ブラック・マジシャン”をよく見ると、足元に小さな竜巻が発生していることに気が付く。

"ブラック・マジシャン”は、実に居心地が悪そうだった。

 

「"BF-激震のアブロオロス"の効果起動! このカードと戦闘を行ったモンスターを、手札に戻すことができる!」

 

勝利がそう宣言すると、"ブラック・マジシャン”のカードが、竜巻に弾き飛ばされる。

モンスターはフィールドから姿を消し、はじかれたカードは遊戯の手札に戻っていった。

 

「なんだって!? くっ! "ブラック・マジシャン”が!」

 

「おいおい……戦闘では勝ってたのに、遊戯の場からカードがなくなっちまったぜ!?」

 

「勝利君……すごい」

 

「……そうね。最上級モンスターでさえも、トリックプレイの一要員。結束の力で戦う、ある意味一番、勝利の『BF』らしいモンスターかもね」

 

(……あの有様の遊戯に対しても、勝利は冷静に戦うことができている……でも……)

 

舞は、三度勝利を見る。

表情は、初めからずっと変わってはいなかった。

 

「くっ……だが、伏せカードも"ブラック・マジシャン”も、一度手札に戻されただけだ! アブロオロスが破壊された今、次のターンには再展開が可能!」

 

「できるといいね」

 

遊戯の宣言に、勝利は冷ややかに返してターンを渡す。

 

 

 

遊戯 LP1400

 

モンスター なし

 

伏せカード なし

 

手札:ブラック・マジシャンが確定

 

 

一時休戦中のため、ダメージ無し

 

 

勝利  LP2000

 

BF-逆風のガスト

 

守 1400 (+ 鎖付き尖盾)

 

伏せカード 1枚

 

 

 

 

 

 

「くっ! 俺のターン! っ!!(よし! "魔術の呪文書"を引いた! このカードがあれば、装備カードごとガストを戦闘破壊できるぜ!)」

 

 

 

魔術の呪文書

 

魔法カード

 

魔術師の攻撃力を500ポイント上げる

 

 

 

「俺はこのターンに、"ブラック・マジシャン”を再度……」

 

「待った。この瞬間に、僕の伏せカードを発動だ。魔法カード、"手札抹殺”!」

 

「!!!!?」

 

 

手札抹殺

 

魔法カード

 

お互いの手札をすべて捨て、同じ枚数分カードをドローする。

 

 

「このカードによって、お互いの手札をすべて捨て、同じ枚数のカードを引き直す!」

 

「なんだと!?」

 

「ってことは……さっき戻された"ブラック・マジシャン”も、セットカードも捨てさせられちまうってことか!?」

 

「勝利君はこのために、さっきのターンにカードを手札に戻していたのね!」

 

「……なんて無駄のないコンボ……」

 

城之内たちが想像もしていない勝利のコンボに驚愕の声を上げる。

勝利の優勢を疑っていなかった舞ですら、勝利の華麗な対処に感嘆の声を漏らした。

 

「くっ(俺の"ブラック・マジシャン”が……しかし、今の手札入れ替えで、俺はまた悪くないカードを引いたぜ!) 俺はこのターン、"デーモンの召喚”を場に出すぜ!」

 

 

デーモンの召喚

 

闇属性 悪魔族 星6

 

攻撃力 2500

守備力 1200

 

 

「("一時休戦"の効果で、このターンの攻撃はできない……だが、次のターンに目にものを見せてやるぜ!) 俺はカードを1枚セットし、ターン終了だ!」

 

「……("デーモンの召喚”に、僕のBFに対する対策カードといえば……なるほど) 僕のターン!」

 

勝利はフィールド全体を見た後、ちらと遊戯を見る。遊戯は怪しく微笑みながら、こちらを見ている。

 

(あのセットカードが遊戯君のブラフ(はったり)である可能性は0じゃない……が、僕を通して先の未来を見据えるあの瞳に、そんな余裕があるとは思えない……だったら)

 

「僕は、"BFー流離いのコガラシ”を召喚!」

 

 

BFー流離いのコガラシ

闇属性 鳥獣族 星6

 

攻撃力 2300

守備力 1600

 

 

「カードを1枚セット。僕はこれで、ターンを終了するよ」

 

 

 

遊戯 LP1400

 

デーモンの召喚

 

攻 2500

 

伏せカード 1枚

 

 

 

 

 

勝利  LP2000

 

BF-逆風のガスト

 

守 1400 (+ 鎖付き尖盾)

 

BFー流離いのコガラシ

 

攻 2300

 

伏せカード 1枚

 

 

「……勝利の奴、攻撃力でデーモンに負けてるのに、モンスターを攻撃表示で出してきたぞ?」

 

「おバカ。ガストがいるでしょ。たとえ勝利のターンに攻撃力が劣っていても、遊戯のターンにはガストの逆風が吹き荒れてるわ。遊戯のターンには攻撃力が下がるんだから、コガラシは攻撃表示でいいのよ」

 

「な、なるほど……」

 

「城之内……」

 

まるで状況を理解していない城之内に、思わず顔に手を当てて落胆する杏子。

そんな二人をよそに、舞はその先をさらに読んでいた。

 

 

(でも、ガストの効果に屈するくらいなら、さっきのターンに"デーモンの召喚"を攻撃表示で出したこと自体おかしい。ってことは、遊戯の伏せカードは、デーモンの電撃攻撃のサポートカード……でもそんなことを、決闘における読みが一級品のあの勝利に、見透かせないわけがない)

 

 

「俺のターン、行くぜ! 伏せカード、"魔霧雨”のカードを発動!」

 

 

魔霧雨

 

魔法カード

 

魔の霧が場のモンスターを包み込む

 

 

「"魔霧雨”の効果によって、勝利君の場の『BF』モンスターは濡れて動けなくなる! そして"デーモンの召喚"は、電気伝導率の上昇によって、攻撃力アップだ!」

 

 

デーモンの召喚

 

攻 2500 + 1000(魔霧雨によるパワーアップ) = 3500

 

 

水に濡れたことにより、飛ぶことができなくなったガストとコガラシが濡れた地に伏せる。これにより水を通すことによって、デーモンは勝利の場全体に攻撃することが可能となる。

雷の力をためるデーモンが、大きく腕を上げて構えた。

 

 

しかし、勝利に一切の動揺はなかった。

勝利のその目は、笑みはなくとも、まっすぐ誠実に遊戯だけをとらえている。

 

 

 

「バトルだ! "デーモンの召喚"の攻撃! 『魔降雷』!」

 

 

 

「……」

 

勝利は、我慢できずにこぼれかけた落胆の声を誤魔化すかのように、伏せを開いた。

 

「伏せカードオープン。盗賊系罠カード、"フェイク・フェザー”」

 

「何っ!? 盗賊カードだと!?」

 

 

フェイク・フェザー

 

魔法・罠カード

 

BFモンスターを一枚手札から捨て、相手の墓地のカードを一枚奪い取る

 

 

「……おいおい。盗賊カードって言ったって、遊戯はまだほとんどカードを使ってねーハズじゃあ……」

 

間の抜けた声を上げる城之内。

しかし、状況をすぐに理解した舞は、対照的に冷や汗を垂らした。

 

「……すごい。勝利の先を見通す能力は、読みが鋭いとかのレベルを超えてるわ……」

 

「……? 舞さん、何を……」

 

杏子は何が起きているのかがわからず、舞に尋ねようとしたが、それよりも先に、決闘の展開が答えを出した。

 

 

 

 

「さて、このカードの効果で、遊戯君の墓地からカードを一枚もらう……遊戯君の墓地には確か、1ターン目にセットしたカードがあったはずだよね?」

 

「っ!!!? まさか、さっきのアブロオロスの効果と"手札抹殺"は……」

 

「遊戯の罠カードを狙い撃つためだったってのか!?」

 

その言葉で、城之内も、杏子も理解した。

勝利は、この決闘中初めてほんの少しの笑顔を見せ、一枚のカードを掲げた。

 

 

「"BF-朧影のゴウフウ"を墓地に捨て、君の墓地から一枚カードを選択する……選ぶカードは、こいつだ。 "聖なるバリアーミラーフォース”!」

 

 

「し、しまった!!」

 

 

デーモンの攻撃は、止まらない。

『魔降雷』は、BFの目の前に張られた、攻撃反射能力のバリアへと降り注いだ。

 

雷光がフィールドに光り輝き、デーモンはその身を己の電撃に焼かれた。

 

 

遊戯 LP1400 ー (2500 ÷ 2) = 150

 

 

「……"デーモンの召喚"、撃破」

 

「……」

 

 

勝利の宣言と、見るも無残な自分のLP、そして、勝利のLPを1も削れていないという現実が、遊戯の心にのしかかった。

 

 

 

(このままじゃあ、負ける……)

 

 

 

(……今の遊戯ボーイでは、この決闘においてもっとも重要なことに気づけない。敗色が徐々に色濃く心を染めていくのがわかりマース……)

 

「おいおい遊戯、どうしちまったんだよ!?」

 

ペガサスはもちろん、城之内ですらも状況の異常さを理解し始めていた。

 

「やっぱり、勝利君はすごいわ……遊戯が、あんなに手も足も出ないなんて……」

 

「違え、違えんだよ!」

 

杏子の呟きを、城之内は悔しそうに否定した。

 

「確かに、勝利はすげえよ! でも、本来の遊戯ならあんな風にはならねえはずなんだ!」

 

「……城之内?」

 

「今のだって、確かに勝利はすげえ! でも、遊戯は俺と決闘してる時だって、相手のカードを利用する俺の戦い方を知ってるし、対策もしてるんだ! いつもの調子だったらこんな風に、簡単に相手の手玉に取られるようなことは絶対にねえ!」

 

城之内の発言に、舞は無言で同意する。

 

(そう……勝利は確かにうまい……でも問題なのは、勝利にうまくやられていることじゃなく、遊戯が空回りして何もできていないこと。罠には無警戒。逆に自分の攻撃と罠は単調。そんな状態で、超高度な戦略と読みで戦ってくる勝利に敵うはずがない)

 

 

 

 

「……俺は、勝てないのか……爺ちゃん」

 

 

 

(……遊戯君、僕は、約束を果たす。全力で、決闘するよ。たとえこの決闘が、どんな結末を迎えたとしても)

 

 

 

絶望と、失望。

似て非なる想いを抱えた二人の差は、明確に結果に表れた。

 

 

 

 

勝利  

 

BF-逆風のガスト

 

守 1400 (+ 鎖付き尖盾)

 

BFー流離いのコガラシ

 

攻 2300

 

 

 

 

LP2000

 

 

 

 

 

 

 

遊戯

 

モンスター無し

 

伏せカード無し

 

 

 

 

LP150




ストーリーの巡り上そうなるのは運命だったとしても、新年1発目から情けない王様の姿を見せることになり申し訳ない。
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