遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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私事なんですが、紙で遊戯、城之内、海馬の再現デッキを作り、友人と遊んだところ、大盛り上がりしました。
やはり私の世代のプレイヤーの心には遊戯たちが宿っていますね。
ちなみに、遊戯が一番弱くて、海馬がぶっちぎりでした。


信じたもののその先は

 

舞   LP 1500

 

ハーピィ・レディ

 

攻 1800

 

 

城之内 LP 925

 

モンスター無し

 

 

「あたしのターン! あたしは手札から、"万華鏡-華麗なる分身"を発動!」

 

「げっ!? で、出やがった!」

 

正直に苦い顔をこぼす城之内に、舞はにやりと笑った。

 

 

 

万華鏡-華麗なる分身

 

魔法カード

 

特定のモンスターを分身させる

 

 

 

「現れなさい! "ハーピィ・レディ三姉妹”!」

 

 

ハーピィ・レディ1,2,3

 

攻撃力 1800

 

 

(万華鏡を発動したターンのハーピィは攻撃できない。前のターンに攻撃を罠でしのいだことで、絶好のタイミングで発動できたね……いや、発動タイミングを、見計らっていたのか。さすがは舞さん……)

 

 

「あたしはこれでターンエンド! さあ、ハーピィたちを倒せるものなら倒してみなさい! 城之内!」

 

「……俺のターン、ドロー! っ!(このカードは……)」

 

ドローカードを見て、固まる城之内。

場に、緊張感が立ち込めているのを皆肌で感じていた。

 

「……さすがに城之内君も気づいているね。ここが勝負所であるということを」

 

「ああ……今舞は、先ほどまで抑えていたハーピィの全力展開を開始した。つまり舞は、探り合いの時間はもう終わったと判断したということだろう。ここからが、本番だぜ」

 

(……問題は、城之内君が今の舞さんの攻めに対して、どれほどの回答を出せるかだね……焦って攻めても意味はない……けど、舞さんの手札にはおそらく……あのカードがあるはずだ)

 

「俺は……カードを1枚セット。"魔物の狩人"を守備表示で召喚して、ターンエンドだ……」

 

勝利たちの期待に反して、城之内は苦々しい顔でターンを終了した。

 

 

魔物の狩人

地属性 戦士族 星4

 

攻撃力 1500

守備力 1200

 

 

 

舞   LP 1500

 

ハーピィ・レディ1,2,3

 

攻 1800

 

 

城之内 LP 925

 

魔物の狩人

 

守 1200

 

伏せカード1枚

 

 

「城之内……」

 

「このターンで、逆転の手を引き込むことはできなかったか……」

 

「……言っちゃ悪いけど、今のターンは高くつくよ。城之内君が後手に回ったその隙を、見逃す舞さんじゃない」

 

 

 

舞はドローしたカードを手元に入れ、勝利のその言葉に呼応するようににやりと笑う。

 

「……城之内。光栄に思いなさい。今から見せるのが、あたしの全力。あたしのデッキの、エースモンスターよ!」

 

「何っ?」

 

「ハーピィデッキのエースモンスターだと……まさか!?」

 

(やっぱり、すでに持っていたか……さっきのターンの万華鏡は、このカードの布石!)

 

「現れなさい! “ハーピィズペット(ドラゴン)”!」

 

「“ハーピィズペット(ドラゴン)”だと!?」

 

 

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

風属性 ドラゴン族 星7

 

攻撃力 2000

守備力 2500

 

場の“ハーピィ・レディ”の数だけ攻撃力を上げる。

 

 

 

「これが……舞さんの切り札」

 

「まずいぜ! あのカードの効果は……」

 

「“ハーピィズペット竜ドラゴン”の効果。場にいる“ハーピィ・レディ”の数だけ、攻撃力を300ポイントアップするわ」

 

「何っ! ってことは……」

 

 

 

ハーピィズペット竜

 

攻撃力 2900

 

 

 

 

「攻撃力……2900!?」

 

城之内、そして遊戯が、舞のエースの存在に冷や汗を垂らす。

ペット竜の威圧感が、場を支配する

 

 

「カードを1枚セット。そして、バトルよ! “ハーピィズペット竜”で、"魔物の狩人"に攻撃! 『セイント・ファイアー・ギガ』!」

 

 

ハーピィズペット竜

 

攻 2900

 

魔物の狩人

 

守 1200

 

 

 

「くっ!」

 

「あたしはこれでターンエンド。さあ、あんたにこのペット竜を超えることができる?」

 

「あたりめーだ! 俺のターン、ドロー!」

 

城之内が負けじと気迫のドローをする。

だが、城之内に負けず劣らずの険しい表情で、舞もフィールドを見つめていた。

 

 

 

舞   LP 1500

 

ハーピィ・レディ1,2,3

 

攻 1800

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

 

攻 2900

 

伏せカード1枚

 

 

 

城之内 LP 925

 

伏せカード1枚

 

 

(さっきのターン……城之内の伏せカードは発動する様子がなかった……発動するタイミングがなかったのか、それとも……)

 

(……ここで、勝負に出るしかねえ!)

 

 

決意を合図にするように、城之内が動き出した。

 

 

「俺は……こいつを召喚だ! "ベビードラゴン"、攻撃表示!」

 

 

ベビードラゴン

 

風属性 ドラゴン族 星3

 

攻撃力 1200

 

守備力  700

 

 

「来たわ! 城之内の切り札!」

 

「攻撃表示ってことは……」

 

「城之内君は、仕掛けるつもりだね。多分、あのカード……」

 

全員の注目が、城之内のセットカードに集まる。

城之内が動くならば、ここのはず。

全員が、そう考えていた。

 

 

 

 

しかしその瞬間に反応したのは、皆の注目が集まったセットカードとは別の場所だった。

 

 

 

 

「伏せカードオープン! "ゴッドバードアタック”!」

 

 

 

 

「なんだと!?」

 

先にカードの反応をしたのは舞。

そして、"ハーピィ・レディ3"の姿が、カードを力を受けて燃え上がる。

 

 

ゴッドバードアタック

 

罠カード

 

鳥獣族モンスターに、1ターン限定で力を授ける。

2回の即行動を可能にし、カードを破壊する。

 

 

「このカードにより、"ハーピィ・レディ3"に1ターン限定で力を与え、あんたのフィールドのカード2枚に連続攻撃をお見舞いするわ! 対象はセットカードと、"ベビードラゴン"!」

 

「っ! まずい! "ベビードラゴン"を強化するには、"時の魔術師"の強化が必要だ! セットカードが先に破壊されたら……」

 

「……舞さんは、やっぱりすごい。城之内君が、ハーピィズペット竜を超えるためには、"ベビードラゴン"と"時の魔術師"でコンボを仕掛けてくるしかないことをわかっていたんだ……だから、先に手を打っていた」

 

勝利から、感嘆の声が漏れた。

そして、遊戯と勝利の予想が、避けがたい現実となって城之内に襲い掛かる。

 

「まずは、セットカードよ! "ハーピィ・レディ3”、『炎爪牙砕断(フェニックス・スクラッチ)』第1打!」

 

『ハァーーーー!』

 

深紅の炎に燃えるハーピィの蹴りが、城之内のセットカードに突き刺さる。

セットカードは、細かく切り刻まれ、黒い灰となって消えていった。

 

「城之内君のセットカードが、破壊された……」

 

「これでもう城之内君に、"ベビードラゴン"を守る術はない」

 

「"ハーピィ・レディ3”、『炎爪牙砕断(フェニックス・スクラッチ)』第2打!」

 

舞の宣言と同時、ハーピィは振り返り、"ベビードラゴン"に渾身の蹴りを叩きこむ。

"ベビードラゴン"の悲鳴を最後に、ハーピィと"ベビードラゴン"が同時にフィールドから消滅する。

 

 

城之内 LP 925 ー 600 = 325

 

 

「おーっほっほ! 忌まわしき"ベビードラゴン"撃破よ!」

 

「くそっ!」

 

「(前に"千年竜”にハーピィを倒されたの、結構根に持ってる……)な、何はともあれ、これで舞さんがもう一歩リードだね。城之内君の逆転の一手は一つ消えた。ライフは削れ、モンスターの数も、舞さんが有利だ」

 

「ああ……早めに次の手を打たないと、舞のモンスターに圧殺される結果になりかねないぜ」

 

「そんな……城之内! あきらめちゃだめよ!」

 

「おう! 誰があきらめるかっての!」

 

声に反応して肩を回しながら、やる気満々の様子を見せつける城之内。

舞も、嬉しそうな顔を崩さない。

 

「いいわ。ならあたしが、完膚なきまでに叩き潰してあげる。あたしのターン、ドロー! カードを一枚セットして、ターンエンドよ!」

 

 

 

舞   LP 1500

 

ハーピィ・レディ1,2

 

攻 1800

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

 

攻 2600

 

伏せカード1枚

 

 

 

城之内 LP 325

 

モンスター無し

 

伏せカード無し

 

 

 

(……俺の手札には、"真紅眼の黒竜"のカードがある。だが……真紅眼を強化するカードは、手札にはない。攻撃力2600のペット竜には勝てねぇ……)

 

今までの決闘でも幾度として自分を救ってくれた真紅眼。

しかし、このカード1枚で現状を打破しきることは難しい。

 

(……このターン真紅眼でハーピィに攻撃すれば、ペット竜の攻撃力を2300まで下げることができる。もしも舞にペット竜の攻撃力を上げる手段がなければ押し切れるかも……いや、ダメだダメだ!)

 

城之内は自分の希望的観測を振り払うように、頭を振った。

もう一度手札の真紅眼に向き合い、竜崎のことを思い出していた。

 

(このカードは、竜崎が託してくれた俺の切り札だ。簡単に失うわけにはいかねぇ。俺がこの決闘で勝つには……)

 

「このドローに、賭けるしかねえ! 俺のターン、ドロー!」

 

城之内が、引いたカードを恐る恐る見る。

そのカードを見て城之内は、覚悟を決めたように見えた。

 

「俺はカードを1枚セット。そして……"真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)"を召喚だ!」

 

「……来たわね!」

 

 

真紅眼の黒竜

 

闇属性 ドラゴン族 星7

 

攻撃力 2400

 

守備力 2000

 

 

 

「来た来た! 城之内の最強モンスター!」

 

「……城之内君は、ここが全力の出しどころだと判断したんだろう。最後の切り札の真紅眼を使ってでも、ここの勝負で舞を倒すしかないと考えたんだ!」

 

「ああ。間違いない。そして……その判断は正解だと僕も思う。舞さんの"ハーピィズペット(ドラゴン)"と、城之内君の"真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)"の攻撃力は、確実にこの決闘の勝敗を決めるキモになる。城之内君はこのターンが、真紅眼がペット竜を上回れる最後のターンであると判断したんだ!」

 

真紅眼が唸る。

それにハーピィたちが少したじろぐも、気合いを入れなおして一歩足を前に出しなおす。

勝利には、最初の決闘の時から成長した城之内に相対するハーピィが、気を引き締めなおしたように見えた。

 

「バトルだ! 真紅眼で、"ハーピィ・レディ2"に攻撃! 『黒炎弾』!」

 

 

真紅眼の黒竜

 

攻 2400

 

ハーピィ・レディ2

 

攻 1800

 

 

 

舞   LP 1500 ー 600 = 900

 

 

「くっ! あんたにここまでLPを削られるとはね。やるじゃない城之内」

 

舞から賞賛の声を受けた城之内だったが、嬉しそうな様子はなかった。

その舞の言葉が、負ける気がないということの表れであることを感じていた。

 

 

 

舞   LP 900

 

ハーピィ・レディ1

 

攻 1800

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

 

攻 2300

 

伏せカード1枚

 

 

 

城之内 LP 325

 

真紅眼の黒竜

 

攻 2400

 

伏せカード1枚

 

 

 

「舞さんと城之内のLPが、近づいてきたわ……」

 

「そうだね……お互いのLPが1000を切った以上、もうこの決闘の決着はそう遠くない。どっちが勝つとしても、この決闘の結末はあと数ターン後だ」

 

「ああ……」

 

遊戯と勝利は、一瞬言葉の空白を作る。

 

 

 

 

 

「……城之内君」

 

 

 

「……舞さん」

 

 

 

 

 

 

「「がんばれ!!!!」」

 

 

 

 

 

「っ! おう! 見てろ、遊戯!」

 

「っ! ええ! 見てなさい、勝利!」

 

 

四人の声で、決闘場が震える。

 

 

 

その様子を、杏子は遠くに感じた。

 

 

 

 

(……ずるいなぁ。決闘者って)

 

 

 

 

杏子は、少し笑う。

 

 

 

 

 

「さあ、行くわよ城之内! あたしのターン、ドロー!」

 

舞はドローカードにちらと目をやり、そのカードをそのまま場におろす。

その様子に一瞬、先刻の遊戯の姿が重なる。

城之内が、声を上げた。

 

「……おいおい、まさか!?」

 

「あたしは、"死者蘇生”を発動!」

 

舞が、高らかに宣言する。

勝利は、優しく笑った。

 

「舞さん……すごいな」

 

 

死者蘇生

 

魔法カード

 

敵味方問わずモンスターの魂を蘇生させ、味方にする事が出来る

 

 

「このカードで蘇生するのはもちろん、"ハーピィ・レディ”。これで、"ハーピィズペット(ドラゴン)"の攻撃力がアップ!」

 

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

 

攻 2600

 

 

 

これにより、城之内の真紅眼の攻撃力を、舞のペット竜の攻撃力が再び上回る。

しかし、当人たちの表情はまだ動かない。

 

(……息が、詰まる。まるで、達人が間合いを図るかのように、二人の意識が研ぎ澄まされていく)

 

誰かの冷や汗が落ちる音がしそうなほどに、その場は静寂だった。

全員の時間の感覚が歪み、まるで何分とその場で硬直したかのように感じた。

一呼吸おいて、静寂を切り裂いたのは、舞の声だ。

 

 

 

「カードを一枚セット……覚悟はいい、城之内?」

 

「ああ、来い!」

 

 

 

「"ハーピィズペット(ドラゴン)"! "真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)"に攻撃! 『セイント・ファイアー・ギガ』!」

 

ペット竜が身体を大きく起こし、口に渾身の力を籠める。

先ほどの真紅眼の『黒炎弾』よりも大きく育ったその炎球は、勝負を決めるべく真紅眼に向かって放たれた。

 

眼前に迫る『セイント・ファイアー・ギガ』。

それを見た城之内は、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

「ここだ! 伏せカードオープン! "墓荒らし”!」

 

 

 

 

「っ! "墓荒らし”!?」

 

 

墓荒らし

 

魔法・罠カード

 

相手の墓地(セメタリ―)に置かれたカードを一枚奪い取る。

 

 

「そう! このカードで、舞の墓地のカードを1枚奪い取るぜ! そのカードは……こいつだ! "ハーピィの羽吹雪”!」

 

 

 

ハーピィの羽吹雪

 

罠カード

 

敵モンスター、または敵モンスターの攻撃に強風をぶつけ、吹き飛ばす

 

 

 

「そうか! 舞のカードで、舞と同じように、相手の攻撃を弾き飛ばしてしまえば……」

 

「ペット竜を倒せるのね!」

 

すべてを理解した瞬間に、笑う"墓荒らし"。

そして羽吹雪のカードを持ったまま、真紅眼の後ろに回り、力を与える。

 

「いけぇ! "羽根吹雪"!」

 

着弾寸前だった『セイント・ファイアー・ギガ』が止まる。

真紅眼はそのまま、ペット竜へと向けて、はじき返そうとしていた。

 

そして、今度はその様子を見ていた舞が、お返しとばかりにニヤリと笑った。

 

 

 

 

「悪いわね、城之内。その手は、もう対策済みよ」

 

 

 

 

「な、なんだと!?」

 

 

言って舞は、勝利を見た。

 

(感謝するわ、勝利。あんたとの船の決闘がなかったら、この一撃は防げなかった)

 

「舞さん……」

 

眼で訴えた舞に、勝利はただ呟きを返した。

 

 

 

「伏せカードオープン! カウンター罠カード、"トラップ・ジャマー”!」

 

 

 

 

トラップ・ジャマー

 

カウンター罠

 

バトル中の罠の発動を無効にする

 

 

 

 

「このカードによって、バトル中に発生した罠カードの効果を無効化する!」

 

「何っ!? てことは!!?」

 

城之内は、場を見る。

"墓荒らし"と、それによって場に発生していた"ハーピィの羽吹雪”が、ゆっくりと霧散していく。

それにより、眼前まで迫った『セイント・ファイアー・ギガ』を止める術を失い、容赦なく目の前で爆発を起こした。

 

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

 

『セイント・ファイアー・ギガ』

 

攻 2600

 

真紅眼の黒竜

 

攻 2400

 

 

城之内 LP 325 ー 200 = 125

 

 

「れ、真紅眼……」

 

「城之内の……最後の切り札が……」

 

「……」

 

決闘は、まだ終わってはいない。

城之内のLPは残っている。

竜崎戦の時とは違う。城之内の眼には、まだ炎が宿っている。

 

ここで、決闘の勝敗を外野が口出しすることは、戦う決闘者への侮辱だ。

 

しかし勝利の心はすでに、勝敗を確信していた。

 

(……僕の知っている限り、城之内君はすべての切り札を使い切った。竜崎君からもらったアドバイスを生かし、切り札の真紅眼を最後の刃として隠しきり、渾身の罠と合わせて舞さんと戦った。そのうえで、舞さんが城之内君の戦術を超えていった……城之内君にはここから、"ハーピィズペット(ドラゴン)"を倒すだけのカードは、残されていない……)

 

言葉には出さない。

だが隣を向くと、遊戯も、そして杏子さえも、同じことを思っているのがよく分かった。

 

そして当然、それは舞も同じだった。

 

(あたしのセットカードは、2枚目の"誘惑のシャドウ”。このカードがあれば、次のターンに城之内に逃げられることはまずない……いや、それ以前に……)

 

 

「……あんたの切り札は、全部墓地に行った。まだ戦うの? 城之内」

 

 

 

勝利たちが思っていたことをそのまま舞が口にした。

 

 

 

「ああ。俺のデッキには、まだカードが残ってる。俺は、俺のLPが尽きるその瞬間まで、戦い続けるぜ!」

 

 

 

「城之内君……」

 

「城之内……」

 

勝利は、竜崎と城之内の決闘を思い出す。

確かにあの時、竜崎に発破をかけられ、城之内は同様の言葉を吐いた。

しかし、あの時とは、決定的に状況が違う。

 

(あの時には、城之内君が気が付いていないだけで逆転の一手は城之内君の手の中にあった。でも、今は……)

 

しかし、勝利は気が付く。

城之内の、デッキを見る表情。

その顔から、無為なドローに対する負の感情は、かけらも感じられなかった。

 

(なんだ? あの表情は、城之内君は……何を待っている?)

 

 

 

 

(まぐれだろうが、奇跡だろうが、今ここで舞に勝てるんだったら、なんだって構わねえ! 頼むぜ……俺のデッキ!)

 

 

 

 

 

 

「俺のターン…………ドロー!!!」

 

 

 

 

 

皆が、息を飲む。

城之内が、何を待っているのか。

その答えを、音も出さずにじっと待った。

 

 

 

 

 

 

その答えが……フィールドに現れた。

 

 

 

 

 

 

「……行くぜ! "時の魔術師"!!

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「何!?」

 

「なんだって!!!?」

 

「なんですって!!!?」

 

 

 

 

 

時の魔術師

 

魔法カード

 

時を操ることができる不思議な魔術師。

1000年の時を超えて力となる。

 

 

 

 

 

 

全員が絶句する。

しかし、その場にあるのは紛れもなく、"時の魔術師"の姿だった。

 

 

「嘘……だってあんたさっき、"ベビードラゴン"と一緒にセットカードを……」

 

「ああ……これか?」

 

 

城之内は悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべ、墓地のカード一枚を舞に見せつける。

 

 

 

偽物の罠

 

罠カード

 

罠カードの身代わりとなる。

 

 

 

「に、"偽物の罠"……」

 

「そういうこと。へへっ、文字通りの『スカ』ってわけだ」

 

 

その様子に、舞はあっけにとられる。

当然、勝利も、遊戯も同じ表情だった。

 

「信じられない……"ベビードラゴン"を、"時の魔術師"なしで召喚していたなんて……あの時、舞さんの場には攻撃力2600の"ハーピィズペット(ドラゴン)"がいた。舞さんがペット竜で"ベビードラゴン"を攻撃した瞬間に、城之内君のLPは0になっていたはず……」

 

「城之内君は、舞のセットカードを読んでいたということなのか!?」

 

「嘘……いくら何でもそんな、勝利みたいな読みの力……」

 

「ああ。俺にはそんな力はねーぜ」

 

驚愕する皆の声に、城之内はあっけらかんと言った。

 

 

 

 

「俺にあるのは、多少の運。あとは……仲間を信じることだけだ」

 

 

 

 

「仲間を……」

 

「俺は、"炎の剣士"があっさりやられちまった時点で、やっぱり正面からぶつかっても、舞にはかなわねーと思った。その時はまだ、"時の魔術師"も手札になかったしな。だが舞なら、たとえ別のカードをセットしても、"時の魔術師"を警戒してくれると思ったんだ。舞。お前を信じて、この決闘一番の大博打に挑んだんだぜ」

 

 

舞はその城之内の言葉に、あきれたような笑みをこぼした。

 

 

「そうか! "ベビードラゴン"は"時の魔術師"と組み合わせることで、"千年竜”へと変身するコンボがある。だが、"時の魔術師"はそのカード単体でも、強力な力を持つ未知数なカード。だからこそ城之内君は、"ベビードラゴン"を囮にすることで、"時の魔術師"だけは、舞の警戒網から逃がしたんだ!」

 

「……竜崎君は、"時の魔術師"が警戒されるからこそ、"真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)"を託し、城之内君に切り札を隠し持つように言った。だからこそ城之内君は、逆に"真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)"を先に出して、"時の魔術師"を、もう一度自分の切り札にしたんだ」

 

「城之内……すごい!」

 

 

(……すごすぎる……こんな博打の張り方、僕や舞さんじゃ想像もつかない……いや、遊戯君だって、考えもしないよ)

 

 

勝利は、思わず苦笑を漏らした。

それはまさしく、城之内による、城之内のデュエルだった。

 

 

 

 

 

「さあ。これが最後の勝負だ、舞! 『タイム・マジック』!」

 

 

 

 

『ターイム・マジック!』

 

 

 

 

 

城之内の高らかな宣言と、"時の魔術師"の声が木霊する。

アタリの確率は、1/2。

確かに、成功すれば逆転の一手。

だが城之内のLPは残り僅か。外した瞬間に、城之内の負けは確定する。

 

 

 

 

しかし、舞はすでに、自分の手札をそっと場に伏せていた。

まるで、この『タイム・マジック』の結果を、確信しているように。

 

 

 

 

(一緒だ……あの時の竜崎君と)

 

 

あの時、竜崎が何を思っていたのか。

そして、舞が今、何を思っているのか。

 

勝利は、理解した。

 

 

(城之内君と対面して、戦った二人にはわかるんだ……城之内君が、ここで外すはずがないということが)

 

 

『タイム・ルーレット』の針が、次第に速度を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

その針は……『当』の文字で止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィールドに、台風が、雷雨が、猛吹雪が。

そしてそれ等すべてを超える、時空を唸らせるような災害はフィールドに巻き起こる。

 

ハーピィの、ペット竜の無残な末路を見ないよう、舞は目を伏せていた。

しかしその表情は、結果にあらがおうとする表情ではなかった。

 

 

 

 

舞が、そっと目を上げる。

そこには、ハーピィも、ペット竜も、すでに姿はなかった。

 

 

 

舞   LP 0

城之内 LP 125

 

 

 

「そこまで! 勝者、城之内!」

 

 

 

 

「か、勝った……? 勝ったぜバカヤロー!!!!」

 

 

 

 

 

審判と、城之内の高らかな宣言。

決闘は、決着した。

 




城之内の「勝ったぜバカヤロー!」が大好き。

というわけで、城之内vs舞戦決着。

残りは展開的には原作と同じになるので、勝利の介入する箇所以外の決闘などはざっくりカットして進めていきます。

後2話で王国編は完結です。
改めて言っておくと、バトルシティは書きますので、拙作はまだまだ続きます。
ただ、バトルシティ前の間話が、3〜5話入るかなという予定。
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