遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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王国編特殊ルール③

飛行能力を持つモンスターは、飛行能力を持たないモンスターに対し、魔法耐性を得る(魔法、フィールド効果による能力上昇を無視できる)

オリジナルの王国トンデモデュエルが始まっていきます。



舞え! 黒羽の戦士vs乙女鳥戦士

 

「“BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル”の攻撃! 『ブラックスクラッチ』!」

 

(『BF』……初めて見るカテゴリデッキね。でも、あきらかに飛行能力を持った鳥獣族中心のデッキ。あたしのハーピィと同じ舞台で戦えるモンスター……)

 

「いいわ、攻撃力は互角よ! 迎撃なさい! “ハーピィ・レディ”、『爪牙砕断(スクラッチ・クラッシュ)』!」

 

「くっくっく。かかったね。ゲイルの特殊能力発動! 『ワールウィンド』!」

 

「特殊能力!?」

 

「そう。僕のゲイルには、攻撃時に突風を巻き起こし、相手の攻撃を妨げる能力がある! これで“ハーピィ・レディ”の攻撃力は半減する。いけっ、ゲイル!」

 

 

BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル 攻 1300

ハーピィ・レディ 攻 650

 

 

 

舞 LP 2000-650=1350

 

 

 

「くっ、やってくれるわね。でもその能力には、弱点があるわ。あたしのターン」

 

舞さんは自分の手札を見て、にやりと笑う。

 

「『攻撃時に突風を巻き起こし、相手の攻撃を妨げる』。ならば、こちらから攻撃を仕掛ければ、その能力は発動しないわ! 二枚目の“ハーピィ・レディ”召喚! さらに、“電撃鞭”を装備!」

 

ハーピィ・レディ + 電撃鞭 コンボ!

攻撃力 1600

 

「バトルよ! “ハーピィ・レディ”で、“BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル”に攻撃! 『鞭打処刑(ウィップバニッシュ)』!」

 

「……切り返しが早いね。それに、直ぐにゲイルの効果の弱点に気付くのもさすがだ」

 

 

ハーピィ・レディ + 電撃鞭 攻 1600

 

BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル 攻 1300

 

 

 

勝利 LP 2000-300=1700

 

 

 

「さあ! 勝負はこれからよ! あたしの華麗なるハーピィの十連コンボで完膚なきまでに叩きのめしてやるわ!」

 

「十連コンボか……そいつは楽しみだね。僕のターン!」

 

手札を見る……現状、ハーピィの攻撃力を超えられるようなカードはない。

 

「ここは、モンスターを守備表示」

 

「あら、早くも逃げの一手?」

 

「どうかな? 僕はこれで、ターンエンド」

 

 

ハーピィ・レディ + 電撃鞭 攻 1600

 

勝利

 

伏せモンスター1体

 

 

(詳細の分からない伏せモンスター。でも、今のうちに攻めておくのが吉ね)

 

「あたしのターン! ハーピィ・レディに追加の装備魔法、“サイバー・ボンテージ”を装備し、守備モンスターに攻撃!」

 

 

ハーピィ・レディ + 電撃鞭 + サイバー・ボンテージ

攻 2100

 

守備モンスター

BF(ブラックフェザー)-銀盾のミストラル

守 1800

 

 

「おーっほっほ! 雑魚モンスター。粉砕!」

 

「……やられちゃったか」

 

「あらあら。守備力の高いモンスターで守りを固めることもできないのかしら?」

 

「そうだね。さて、どうしたものか」

 

僕はそう言いながら笑うとそれをどう受け取ったのか、舞さんは思案顔になった。

 

(……まだまだ余裕ってことかしら。それともハッタリ?)

 

「純粋に楽しんでるだけなんだけどなあ……」

 

「何か言ったかしら?」

 

「いや、何も。僕のターン。さて、次はこいつだ! “BF(ブラックフェザー)-白夜のグラディウス”!」

 

 

BF(ブラックフェザー)-白夜のグラディウス

闇属性 鳥獣族 星3

攻撃力 800

守備力 1500

 

このカードは戦闘では破壊されない

 

 

「このカードは、戦闘では破壊されない特殊なモンスターだ」

 

「……なるほどね。読めたわ。あなたの『BF』とはつまり、貧弱なステータスのモンスターたちが強力な効果を用いて相手を翻弄していくカードなのね」

 

「くっくっく。さあ、今度はどうやって突破してくれるかな?」

 

軽く舌打ちをした舞さんは、笑う僕を睨みつけながらドローする。

 

「あたしのターン! 攻撃できないなら、こうするまでよ! あたしはハーピィに、『万華鏡-華麗なる分身』を発動! あらわれなさい! ハーピィ・レディ1! 2! 3!」

 

 

万華鏡-華麗なる分身

魔法カード

特定のモンスターを分身させる

 

 

「……なるほど。万華鏡には、発動したターンには攻撃できないデメリットがある。でも、この状況なら関係ないってことだね」

 

「ええ。そして、次のターンには、グラディウスにも消えてもらうわよ! ターン終了!」

 

(あの舞さんの自信……ハッタリだとは思えない。なら……)

 

「僕のターン。カードを一枚セット。ターン終了」

 

 

 

 

ハーピィ・レディ1

攻 2100

 

ハーピィ・レディ2

攻 2100

 

ハーピィ・レディ3

攻 2100

 

勝利

 

守備モンスター

BF(ブラックフェザー)-白夜のグラディウス

守 1500

 

伏せカード1枚

 

 

 

 

「随分と悠長じゃない。後悔させてやるわ! あたしのターン。喰らいなさい! “ハーピィ・レディ -鳳凰の陣-”!」

 

「っ! そう来たか……」

 

 

 

ハーピィ・レディ -鳳凰の陣-

魔法カード

ハーピィ・レディが存在するとき、その数だけ相手のモンスターを破壊する。

 

 

 

「白夜のグラディウスが破壊されないのは飽くまで戦闘……魔法攻撃を耐えることはできないっ!」

 

 

 

勝利 LP 1700-(800÷2)=1300

 

 

 

「やっぱりすごいね、舞さん……」

 

「そんなに余裕こいていられるのも今のうちよ! あたしはカードを一枚伏せて、ターンエンド。次のターンで、終わりにしてやるわ!」

 

「それはどうかな。記念すべき『BF』たちの初陣なんだ。そう簡単には終わらせないよ! 僕のターン!」

 

(……とは言っても、伏せカードは現状役に立たない。このドローで活路を見いだせなければ、僕の負けは濃厚だ。引くしかない!)

 

 

「ドロー!」

 

 

ちらりとカードを見る……よし!

 

「僕は魔法カード、“天使の施し”を発動!」

 

 

 

天使の施し

魔法カード

デッキからカードを三枚引き、手札からカードを二枚捨てる

 

 

 

「三枚ドロー! その後二枚を墓地へ送る」

 

「ここへきての手札交換……よっぽど手札が悪かったのかしら?」

 

「……“BF(ブラックフェザー)-尖鋭のボーラ”を守備表示で召喚。カードを一枚セット。ターンエンド」

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-尖鋭のボーラ

闇属性 鳥獣族 星5

攻撃力 1300

守備力 900

 

 

 

ハーピィ・レディ1

攻 2100

 

ハーピィ・レディ2

攻 2100

 

ハーピィ・レディ3

攻 2100

 

伏せカード1枚

 

勝利

 

守備モンスター

BF(ブラックフェザー)-尖鋭のボーラ

守 900

 

伏せカード2枚

 

 

 

(何もカードは引けなかったようね! 今がチャンス。決めてやるわ!)

 

 

「あたしのターン。っ!」

 

ドローカードを見て、舞さんが固まる。

なにを、と言いかけたところで、今度は舞さんが笑い出した。

 

「ふふふ。まさか、こんなに早くあたしの切り札を見せることになるなんてね」

 

「……へえ」

 

ハーピィデッキで、ハーピィ・レディを超える切り札……。面白い!

 

「光栄に思いなさい。あたしのエースカードをお目に書かれることをね! あらわれろ、“ハーピィズペット(ドラゴン)”!」

 

「“ハーピィズペット(ドラゴン)”!?」

 

 

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

風属性 ドラゴン族 星7

攻撃力 2000

守備力 2500

 

場の“ハーピィ・レディ”の数だけ攻撃力を上げる。

 

 

 

「“ハーピィズペット(ドラゴン)”の効果発動! この子は“ハーピィ・レディ”の従順な僕。場にいる“ハーピィ・レディ”の数だけ、攻撃力を300ポイントアップする」

 

「っ! このために、万華鏡でハーピィを分身させていたのか!?」

 

なんて無駄の無いコンボ……この人は、本当に強い!

 

 

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

攻撃力 2900

 

 

 

「だがいくら攻撃力が高くても、尖鋭のボーラは守備表示だ! ダメージを受けることはないよ!」

 

「それはどうかしらね?」

 

「……なんだって?」

 

「『BF』。なかなか強力なモンスターたちであることは認める。でも、所詮そのモンスターたちの力や能力は、ハーピィの美貌の前には到底かなわないものだという事を教えてあげるわ! 手札から、魔法カード、“誘惑のシャドウ”!」

 

「しまった! そう言う事か!」

 

 

 

誘惑のシャドウ

魔法カード

 

このカードの魔力が備わったものは敵を戦闘ホルモンによって誘惑し、攻撃を強要する事が出来る。

 

 

 

「そう、あなたの『BF』デッキに、女性型モンスターはいないんでしょう? ならばあなたのカードに、ハーピィの誘惑を逃れられるものはいない!」

 

「くっ! 尖鋭のボーラは、攻撃表示に変更される!」

 

「さあ、とどめよ! “ハーピィズペット(ドラゴン)”で、“BF(ブラックフェザー)-尖鋭のボーラ”に攻撃!」

 

ボーラと、ペットドラゴンの攻撃力の差は1600.

僕のLPは1300。

 

この攻撃を受けたら、負けてしまう!

 

 

 

ココしか……ない!

 

 

 

「伏せカードオープン! 罠カード、“BF(ブラックフェザー)-バックフラッシュ”!」

 

「なんですって!?」

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-バックフラッシュ

罠カード

 

墓地のBFが5体以上の時、BFの闇の力を結集した大爆発が敵を葬る

 

 

 

「帰ってこい! BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル、BF(ブラックフェザー)-銀盾のミストラル、BF(ブラックフェザー)-白夜のグラディウス、そして……BF(ブラックフェザー)-天狗風のヒレン、BF(ブラックフェザー)-空風のジン!」

 

僕のカードが“BF-バックフラッシュ”の効果で、一時的にフィールドに並ぶ。

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-天狗風のヒレン

闇属性 鳥獣族 星5

 

BF(ブラックフェザー)-空風のジン

闇属性 鳥獣族 星1

 

 

 

「ちょっ、ちょっと待ちなさい! 墓地のBFは三枚のはずよ!? いつの間に……!?」

 

舞さんが驚いた顔を見せた後、苦虫をかみつぶしたような顔を作る。

どうやら気付いたようだ。

 

「“天使の施し”で、墓地へ送っていたのね!」

 

「正解」

 

(まさかあの“天使の施し”は手札入れ替えじゃなくて、『BF』を墓地に送るために発動したっていうの!?)

 

「舞さん。あなたのデッキは、“ハーピィ・レディ”達を装備カードや魔法カードで強化し、どんどん強くして戦うデッキだ。そういうデッキはシンプル故に強いが、弱点もある。それは、強化したハーピィを倒された後に、立て直すことは困難であるという事。つまり、ここでハーピィを全滅させてしまえば、あなたはもう戦うことはできない!」

 

「……」

 

「これでご自慢のハーピィたちは全滅だ! いけっ、みんな! 必殺、バックフラッシュ!」

 

 

 

「……惜しかったわね」

 

 

 

「……何?」

 

「あたしのデッキの弱点に気付いたこと。そして、その弱点を突く最良の手を打ってきたこと。認めるわ。あなたは確かに、一流のデュエリストよ。あなたを少しでも侮っていたら、私の負けだった」

 

そう言って、舞さんは自分のセットカードに手をかけた。

 

「でも、残念だったわね。『ハーピィを倒されたら負ける』。そんな弱点、あたしが理解していないとでも思ったの? 罠カード『ハーピィの羽吹雪』!」

 

「羽吹雪だって!?」

 

 

 

ハーピィの羽吹雪

罠カード

 

敵モンスター、または敵モンスターの攻撃に強風をぶつけ、吹き飛ばす

 

 

 

「羽吹雪の効果により、バランスを保つ事が出来ない下級の鳥獣たちは吹き飛ばされるわ! よって、バックフラッシュは無効! ハーピィズペット竜の攻撃は止まらないわ!」

 

「っ!」

 

「これで終わりよ! 『セイント・ファイアー・ギガ』!」

 

「まだだ! 破壊された銀盾のミストラルの効果発動! BFが戦闘するとき、そのダメージを一度だけ0にする! ボーラを守ってくれ! ミストラル!」

 

 

 

BF-銀盾のミストラル

 

墓地にいる時、一度だけBFの身代わりとなる

 

 

 

「……防ぐ手段も用意していたのね。でももう時間の問題よ! “誘惑のシャドウ”でこうげきを強要される以上、あなたに勝つ手段は残っていないわ!」

 

「……僕のターン。魔法カード、“フェザー・ウィンド・アタック”を発動」

 

 

 

フェザー・ウィンド・アタック

魔法カード

フィールドとデッキのBFを入れ替える

 

 

 

「その効果でボーラをデッキに戻し、“BF(ブラックフェザー)-残夜のクリス”召喚。そしてクリスに、“グローウィング・ボーガン”を装備!」

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-残夜のクリス

闇属性 鳥獣族 星4

攻撃力 1900

守備力 300

 

グローウィング・ボーガン

魔法カード

 

BFのみ扱える弓矢。装備した者は攻撃力500アップ

 

 

 

「守備が封じられたなら、せめて少しでもペットドラゴンの攻撃力を落とす! クリスで、ハーピィ・レディ1に攻撃! 『ショット・アロー』!」

 

「くっ! この程度!」

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-残夜のクリス 攻 2400

ハーピィ・レディ1 攻 2100

 

 

 

舞 LP 1350-300=1050

 

ハーピィ・レディ2

攻 2100

 

ハーピィ・レディ3

攻 2100

 

ハーピィズペット(ドラゴン)

攻 2600

 

 

勝利

 

BF(ブラックフェザー)-残夜のクリス 攻 2400

攻 2400

 

伏せカード1枚

 

 

 

 

「さあ、そろそろフィナーレよ! あたしのターン! “死者蘇生”のカードを発動!」

 

 

 

死者蘇生

魔法カード

敵味方問わずモンスターの魂を蘇生させ、味方にする事が出来る

 

 

 

「“ハーピィ・レディ”を守備表示で蘇生! これにより、“ハーピィズペット竜”の攻撃力は再び上がる!」

 

 

 

ハーピィ・レディ

守備力 1400

 

ハーピィズペット竜

攻撃力 2900

 

 

 

「……抜け目ないね。最後まで最善を尽くし続ける、完璧なデュエル。本当にすごいよ、舞さん」

 

「……今更どんなお世辞を言われたって、攻撃はとめであげないわ。行きなさい、“ハーピィズペット竜”! 『セイント・ファイアー・ギガ』!」

 

 

 

 

 

「お世辞じゃないよ。舞さんは、本当にすごいデュエリストだ。僕の方こそ、少しでも舞さんを見縊っていたら、僕の負けだった」

 

 

 

 

 

「っ、どういう意味よ!?」

 

「こういう意味さ。さあ、これでラストだ! 手札の“BF(ブラックフェザー)-流離いのコガラシ”を墓地に捨て、伏せカードオープン! “フェイク・フェザー”!」

 

 

 

フェイク・フェザー

魔法・罠カード

BFモンスターを一枚手札から捨て、相手の墓地のカードを一枚奪い取る

 

 

 

「あたしのカードを、奪い取るですって?」

 

「そう。そして奪い取るのは、これだ! “ハーピィの羽吹雪”発動!」

 

「っ! しまった!」

 

気付いたか。

だが、もう遅い!

 

「逆風によって、『セイント・ファイアー・ギガ』がはじき返される!?」

 

「それだけじゃない! 下級の鳥獣である“ハーピィ・レディ”達が吹き飛ばされることで、“ハーピィズペット竜”はハーピィの加護を失い、攻撃力が下がる!」

 

 

 

ハーピィズペット竜

攻撃力 2000

 

 

 

『セイント・ファイアー・ギガ』

攻撃力 2900

 

 

 

「さあ、自分の攻撃をその身で受けろ! ハーピィズペット竜!」

 

「……嘘。あたしの、“ハーピィズペット竜”が……」

 

 

 

舞 LP 1050-900=150

 

「“ハーピィズペット竜”、撃破!」

 

勝利がそう宣言すると、舞はテーブルに突っ伏し、崩れ落ちそうになる体を必死に抑え込んでいた。

声をかけることはしない。どんな優しい言葉をかけたとしてもそれは、全てを尽くし戦った舞に対する侮辱だろう。

しばらく待っていると、舞がゆっくりと口を開いた。

 

「“BF(ブラックフェザー)-バックフラッシュ”も……囮だったというの?」

 

「囮のつもりはなかったんだけどね……あれで決まるはずはないと思っていた。そして、止めるカードがあるとしたら伏せカードかなって」

 

「……完敗ね。さあ、終わらせて頂戴」

 

「……僕のターン。クリスで、ハーピィ・レディ2へ攻撃。『ショット・アロー』」

 

 

 

BF(ブラックフェザー)-残夜のクリス

攻 2400

 

ハーピィ・レディ

攻 2100

 

 

 

舞 LP 150-300=0

 

 

 

 

「あたしの負けよ……」

 

 

 

 

 

「賭けの結果を違えたりはしないわ。好きになさい」

 

舞さんはそう言って目を瞑ったまま、ソファーに体を投げ出した。デュエル中は集中していて目に入っていなかったが改めて見ると、やはり舞さんはきれいな女性だった。出るところはでていて、引っ込むところは引っ込んでいる理想的なボディに、そのボーイッシュな態度や振舞いは彼女の魅力を最大限に引き出していると言え……

 

(いや何を考えているんだ僕は!?)

 

頬をぺちんとならし、煩悩を追い払う。

 

(別に僕はそんなことをするために彼女を連れ込んだわけじゃ……ないこともないけど、少なくともそんなことをするためにデュエルをしたわけじゃない。少なくともデュエルをしている間は、舞さんとデュエルしている時間は、他に変えようのない最高の時間だった。だからこそ、これ以上の報酬なんて必要ない。むしろ僕は、感謝しているんだ)

 

「舞さん、受け取ってくれ」

 

そう言ってカードを一枚差し出す勝利を見て、舞は訝しむような目を向けた。

 

「……どういうつもり?」

 

「別に深い意味はないよ。ただのお礼。僕がつかってたカードだけど舞さんのデッキにも合うと思う」

 

「施しかしら? そんなもの、このあたしが受け取るとでも思ってるの?」

 

「違うよ。今言っただろ? お礼さ。今のデュエルは、僕の『BF』の初陣にふさわしい、最高のデュエルだった。僕には、あなたに勝つ事が出来た仲間たちの、喜ぶ声が聞こえたよ。だから、君にそのお礼をしたい。受け取ってくれ」

 

「……」

 

舞は無言のまま、カードを受け取った。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、僕は遊戯君たちの所へ行ってくるよ。この部屋は、自由に使ってくれて構わない。それじゃ、またね」

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

 

バタン、という音を立てながら、勝利は走り去っていった。

一人残された部屋で、舞は独りごちる。

 

 

 

「……おかしなボーヤ」

 

 

 

 

 

 

「あれ? 遊戯君たちがいない?」

 

タコ部屋に戻った後、軽く探してみたのだが彼らの姿は見当たらなかった。

 

おかしいな……いくらタコ部屋が広いと言えど、あの目立つ頭髪の彼らを見つけられないというのは考え難い。

だとするならば、どこだろう? 売店? もしくは、お手洗いだろうか……

 

「ねえ、そこの君?」

 

「ん? なんだよ。今デッキの調整中……って、く、クリエイター!?」

 

「取り込み中すまない。武藤遊戯君を見なかったかな。おそらく、数十分前まではこの部屋にいたはずなんだけど」

 

「あ、ああ。武藤遊戯なら、甲板に出ていきましたよ」

 

「甲板か……わかった、ありがとう」

 

みんなで風にでもあたりに行ったのだろうか。

めでたくタコ部屋くらしとなったわけだから、とっとと合流してしまおう。

そう思い、少年に軽く礼を言うと、少年は続けて楽しそうにつぶやいた。

 

「でもやっぱり、大会優勝者や準優勝者も、武藤遊戯のことが気になるんですね」

 

「準優勝者?」

 

歩き出そうとしたその瞬間に聞こえてきたその言葉に振り返る。

 

「羽蛾君のことだよね」

 

「ああ、はい。さっきインセクター羽蛾さんにも同じような質問をされたんで、同じように答えたんです。やっぱ決闘者として強い人は強い人に惹かれあうんですかね」

 

かっこいいなー、なんてのんきにつぶやく彼をよそに、勝利は先ほど話していた羽蛾の怪しげな笑みを思い出していた。

 

(羽蛾君は決勝戦で、僕のデッキに対する対応手段を用意することで勝利を描いていた。いわゆる策を弄して戦う戦略家タイプの決闘者だ)

 

そんな決闘者が、王国到着前の船で遊戯に接触しようとしている。

……いやな予感がする。

 

「……ありがとう。また、王国で」

 

礼の言葉を吐き捨てるように呟き、返答を待たずに駆け出す。

 

ただの予感だ。

外れるならいい。

疑ったことを、心の中で羽蛾君に謝ればいいだけの話だ。

 

 

 

だが勝利は、感覚が人より特別に鋭い。

本来見えないものを、感じ取れてしまうほどに。

 

 

 

勝利は自覚がある。

自分の予感は、あまり外れない。

 

 

 

 

「こうすればよかったんだ!」

 

 

当たってしまった。しかも、最悪の方向で。

 

 

聞いたのは、高らかに言い放つインセクター羽蛾の声で、

みたのは、無残にも海に投げ込まれる、遊戯の切り札、『エクゾディア』の封印カード。

 

 

(くっ! 僕がもっと早く気付くことができていれば……)

 

 

「くそっ!」

 

カードが投げ込まれるや否や、城之内が船から飛び降り、海に落ちた『エクゾディア』カードを回収しに行った。

 

そんな姿に、勝利は軽く頭を振る。

 

(たらればで、過去を嘆いている時間は僕にはもうない! 僕にできる事、それは……)

 

 

 

 

「てやあ!」

 

 

 

「っ! 城之内君! 勝利君!」

 

飛び込むことだけだ!

 

(ごめんよ……。寒いだろうけど、僕と一緒に、カードを探してくれ!)

 

……よし! 一枚見つけた! あとはどこに……

 

「っ! うわっぷ!」

 

(ま、まずい……波に流される……それに、船も遠くなってきた。早く見つけないと……)

 

っ! あった、もう一枚! ありがとう、みんな!

 

「勝利! 大丈夫か!?」

 

「じょ、城之内君!」

 

パッと振り返ると、城之内が自分用とさらにひとつ、勝利のための浮き輪を持ってきてくれた。

カードを握り締めた勝利たちは、浮き輪に結ばれた縄で船へと引き上げられた。

 

そして甲板で再度、拾えたカードを確認する。

 

結局勝利が見つけたパーツは、エクゾディアの『右腕』と『左足』の二枚。

そして城之内が見つけたのは、『左腕』と『右足』の二枚。

 

『封印されしエクゾディア』のカードを、見つけることはできなかった。

 

「クソッ!」

 

「……ごめんよ、遊戯君」

 

(……気づけたはずだった。はずだったんだ)

 

 

自分には、それができる力と、友達があった。

だというのに……

 

 

「……城之内君、勝利君。本当にありがとう……」

 

『ピー!』

 

お礼の言葉をかけてくれる遊戯。

その言葉と、慰めてくれる友達の声だけが、締め付ける心を和らげてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、というわけでさ……部屋明け渡しといてこんなこと言うのもみっともない話なんだけど……シャ、シャワー貸してくれないかな?」

 

 

呆れ顔を浮かべた舞は、勝利と城之内に部屋のシャワーを貸してくれたのだった。

 

 

 

 

 

紆余曲折。

 

喜びも悲しみも、成功も失敗も、全てを綯交ぜにした船は静かに進み。

 

 

 

 

 

翌朝……『王国』へ到着した!

 

 

 

 

 

 




このデュエルだけはソリッドビジョンも何もないという事実

OCGと効果が違うカードが大量に出てきましたので、軽く解説。(毎回は大変なので、今回だけ。こんな感じでOCGカードを王国ナイズしてますという指標だと思っていただければ)

銀盾のミストラル
・OCG
 破壊されたターン自分が受ける戦闘ダメージを一度だけ0にする
・本作
 墓地にいる時、BFへの攻撃を一度だけ無効にする
→1ターンに1回しか攻撃が発生しないので、良きように変更

バックフラッシュ
・OCG
 直接攻撃時に発動
・本作
 攻撃時に発動
→王国編では直接攻撃は存在しないので良きように変更

ハーピィの羽吹雪
・OCG
 ターン終了時まで、相手が発動したモンスターの効果は無効化される。
・本作
 敵モンスター、または敵モンスターの攻撃に強風をぶつけ、吹き飛ばす。
→テキストを抽象的に大幅改変 アニメで出てきた時はカウンター罠だったそうです。知らなかった。

主に勝利のカード全般の話ですが、バトルシティまで行ったら適当に理由つけてOCGテキストに戻します。

どうしてもセイント・ファイアー・ギガをはじき返すのをやりたかった……
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