いよいよみなさんお待ちかねのバトルシティ開幕です。
バトルシティ開幕 千年の闘いの始まり
童実野町時計塔広場。
AM8:05
バトルシティ開始、55分前。
勝利が足を踏み入れたその時にはすでに、童実野町全体の雰囲気がいつもと様変わりしていた。
学生から、どう見積もっても20才前半の若者が町の中央を闊歩しており、その腕にはKC発信の今大会の参加資格である決闘盤が装着されている。
普段街を利用している中年たちが訝しむ目でそれを見ているが、それが少人数の戯れではないことを周りを見て察し、尻込みしている。
「……なんだい、今日は。さっきから腕にヘンな機械をつけた連中を見かけるが……」
「はっ。通行人はどいてたほうがいいぜ!」
「そうだそうだ。今日この街は俺たちの戦場になるんだからよ!」
ディスクを翳しながら若者たちが偉そうに中年を退ける姿を見て、勝利がやれやれといった表情を作る。
「そういう態度は感心しないね。確かにこのイベントは僕らの晴れ舞台。でも、僕らは街を借りている身だ。それ以上、決闘者としての品格を落とす行為はやめてくれるかな?」
「ああ!? なんだお前、偉そうにしやがって!」
中年へ威嚇を向けていた男が、勝利のほうへと顔を向ける。
そして、威嚇の顔を、怯みの表情へと変貌させた。
「く、クリエイター……」
「決闘者なら、決闘で語りな。開始時間までそこにいるなら、相手になってあげるよ」
「い、いやあ……ハハハ」
男は、苦笑いして去っていった。
勝利は、腰が低い中年男性に向き直り、簡単に説明する。
「すみません。今、童実野町全域でKC主催のカード大会のイベント中なんです」
「ほ、ほう。カード大会の……」
「こう言う機械が目印なので……ぜひご興味あったら、見物していってください。それじゃ」
軽く頭を下げて勝利が走っていく。
目指すは、時計塔広場の中央。
そこに……遊戯、そして、舞がいた。
「やあ、遊戯君。舞さん」
「勝利君!」
「勝利! 遅刻はなかったようね」
「当然」
遊戯と舞の傍に勝利が駆け寄る。
遊戯はすでに人格が入れ替わっており、もう一人の遊戯が表に出ていて、戦闘態勢万全だった。
「いよいよね。大会集合場所の時計塔に、強豪決闘者が次々と集まってくるわ」
「そろそろ、大会ルールが発表される頃合いだからな」
「まあ、おそらくは予選、本選って感じの、2段階以上のルールになるだろうけどね」
「ほう……その心を聞こうか」
「試すようなことしないでよ、遊戯君。この参加者が全員、この後の一位を決める戦いに参加できるわけがないし、海馬君がそんな面倒を良しとするはずがない。おそらく、ここに集めた選りすぐりの決闘者たちを、さらに選別するためのルールが、一次予選になるはずだ。それぐらい、君ならわかってるだろ?」
「ハハッ。試すような真似してすまなかったな。だが、さすがの洞察力だぜ」
遊戯が笑いながら、勝利に謝罪する。
全く……といった後に、勝利が舞に向き直り、舞に決闘盤を向ける。
「……一応確認するよ、舞さん。開始したら、やるかい?」
勝利が挑発的な笑みでそういった勝利に、舞が呆れたようなため息で返した。
「……あんたこそ、人を推し量るような真似してんじゃないわよ」
今度は舞が全く……と言って、それに勝利がくっくっくと笑う。
「あたしとあんたの決着は、こんなところでつけられない。そうでしょう?」
「ああ、わかってるよ。僕たちの誓いの舞台は、もっと劇的であるべきだ。わかってたうえで、確認したかったのさ。舞さんと、同じ気持ちかどうかをね」
「もう……」
顔を見合わせ、笑う二人。
それを見ていた遊戯が、居心地が悪そうな笑いを浮かべた。
「ところで遊戯君。城之内君は?」
「もう来る頃だぜ」
「やっぱり、参加するんだ! あいつも選ばれし決闘者ってわけね! あいつにもリベンジしなきゃなんないんだから、勝ち残ってもらわないと!」
「参加できたんだね。よかった……正直ちょっと心配だったんだ」
「あいつも王国のファイナリストなのよ? そりゃ、プレイングはたまにお粗末なとこあるけどね」
「いや……基準がKCのデュエリストレベルってことは、海馬君主導で選定されてるってことでしょ? だからさ……」
「ああ……」
勝利の言いたいことを察した舞が、苦笑いを返す。
遊戯も、同様だった。
「よお。遊戯、孔雀舞。ほんで……勝利」
少し気が緩んできた勝利たちの耳に、声が聞こえてくる。
その声の主に気づき、勝利は少し頬を緩めるとともに、気を引き締めて背筋を伸ばす。
「やあ、竜崎君。調子はどうだい」
「完璧に決まっとるやろ。ええか、王国での借りは、きっちり返すで。城之内にも、お前にもな」
真剣な表情だがしかし、その目は怒りではなく、闘志に燃えている。
それを見てまた上機嫌になった勝利は、また問うてみる。
「……なら、大会が開始したら、やるかい?」
決闘盤を向ける。
すると竜崎が、呆れたような声で言う。
「……あほなこといいなや。お前とワイの決着は、こんなところでつけられへん。せやろが」
そのセリフに、勝利はきょとんとした表情を浮かべ、聞いていた遊戯も、戸惑いの顔を作る。
なんだ? と二人の反応に不思議がる竜崎の頭に、突然の鈍痛が襲い掛かった。
「あだー!? 何すんねん、孔雀舞!?」
「うっさいわね! 気取ってんじゃないわよ!」
自信と全く同じリアクションを竜崎がとったということが何だか恥ずかしくなり、照れ隠しをする舞と、そんな事情など知る由もない竜崎との不毛な言い争いが巻き起こる。
遊戯は何とも言えない表情でぎゃあぎゃあと喚く二人を見守り、勝利はというと、そんな二人を見ながら腹を抱えて大笑いしていた。
「決闘者諸君。バトル・シティへようこそ!」
雑踏で今か今かと待ちわびる決闘者たちの雑談は、たった一言でぴたりと静まった。
声の方向に顔を向けると、町のテレビに、ビルのスクリーンに、そして……KCの名が刻まれた飛行船のビジョンに、本大会の主催者『海馬瀬人』の姿が映し出されていた。
「……海馬」
「来たね」
「今から、大会ルールを説明する!」
海馬の言葉に、周りにいる決闘者たちの息を飲む音が聞こえた。
「ここに集まった参加者は、海場コーポレーションが認定したデュエリストレベル5以上の決闘者だ! 君たちの手にある決闘盤がその証だ! 戦いの舞台は、この童実野町全域! 町のどこであろうが、決闘者が対峙したその瞬間に、そこは決闘の舞台となるのだ!」
(まあ、わかっていたことだけど。見たことも聞いたこともない大会の規模だ……こんな規模でやろうと思ったら、費用も、労力も半端じゃないのに決闘盤は無料贈呈……不正の参加者を取り締まるのも大変なはずなのに……単に、最強の決闘者を決める大会を開きたかっただけ? それとも……海馬君には、別の目的があるんだろうか?)
「決闘者は各自持参した40枚デッキを使い、アンティとして負けたものは勝者にレアカードを一枚差し出さななければならない! この戦いでは、より勝ち続けた者がよりデッキを強化していくことが出来るのだ!」
「「おおおおーーーー!」」
海馬の言葉に、場が一斉に沸く。
しかしそんな中、遊戯と勝利は、険しい顔でビジョンの海馬を見つめていた。
(アンティルール……参加者にとってレアカードは決して失いたくない魂……この大会は熾烈な戦いになるぜ……)
「そして、決勝戦の舞台に上がれるのは、最大8名! その決勝戦の舞台は……この町のどこかに隠されている!」
「決勝戦の場所が、隠されている……?」
「フフ……オレも君たちも平等な条件でこの大会に臨むつもりだ……よって、その決勝の場所はオレさえ知らないのだ!」
そこで、察していた通り、海馬の大会への参加も宣告される。
それを聞いて勝利は、もう一度考え込む。
(……やけに広い大会の範囲に、アンティルール……もしかして海馬君には、何か欲しいカードがあるのか?)
「おい! そうすればその場所がわかるんだ!」
勝利の思考を振り払うように、他参加者たちががなり立てる。
「君たちの手にある決闘盤を見たまえ。ディスクの裏に、透明なプレート状のものが備え付けられているはずだ!」
その言葉に反応し、決闘者たちが一斉にディスクを見る。
ディスクから抜き出したプレートの中に、地図の断片のようなものが描かれていた。
「このプレートは、"パズルカード”! 参加者全てのパズルカードを組み合わせると、童実野町の地図が完成するようになっている。このカードは特殊なプリズム加工が施してあり、6枚を重ねることによってプレートのある一点に光がともる」
「……なるほど」
勝利が、納得の声を上げた。
「この6枚のパズルカードを手にしたものだけが、未知なる決勝の舞台にたどり着くことが出来るのだ!」
「決勝戦に
「おおおおおーーー!!!」
「大会開始は9時! さあ! 決闘者共! バトルシティに散るがいい!」
開始の宣言に、広場の決闘者たちが湧き上がる。
そして当然それは、勝利たちも同様だった。
(……まっ、海馬君が何を狙っていて、この大会の目的がどうか、なんて、どうでもいい話か)
そう考えて、舞を見る。
やる気の瞳が、勝利を刺した。
「いい? 勝利。絶対に決勝に上がってきなさいよ! 予選で負けたらただじゃおかないんだから!」
その言葉に、勝利はにやりとして、ネックレスを翳す。
「ああ。もちろん」
舞が手を振りながら去っていくのを見えなくなるまで手を振った後、遊戯と顔を見合わせた。
「さて、どうしようかね」
「ああ……舞だけじゃなく、俺も勝利君とまだ戦うつもりはない。なら、ここで別れておくか」
「そうだね……じゃあ、僕は西のほうにでも……」
「見つけたぜ!」
勝利たちの会話を、聞き覚えのある声が引き裂いた。
「っ! 城之内君!?」
声の方向に反応してそちらを見ると、城之内が怒りの形相でとある男を睨みつけている。
城之内君の視線の先には、お世辞にも良い印象は覚えがたいぎょろついた眼でこちらの様子をうかがう、ロングコートの男がカフェの椅子に座っていた。
「おやおや……誰かと思えば、カードを奪われた負け犬か」
「っ! 負け犬だと!? ふざけやがって!」
「城之内君!」
今にも手が出そうな城之内を抑えるため、勝利と遊戯が駆け寄る。
「城之内君! いったい何があったんだ!?」
「遊戯! 勝利も! 気をつけろ! この大会には、レアハンターが紛れ込んでやがるんだ!」
「っ! レアハンター!?」
「……聞いたことがある。裏ゲーム界を賭けゲームで支配する闇組織『グールズ』! レアカード強盗集団!」
「フフフ。よくご存知で。この大会には全国から腕の立つ選りすぐりの決闘者が参戦する。我がグールズのレアハンターたちも数人、大会に参戦して網を張っているよ」
「……なにっ!? 城之内君! まさか……」
「……」
城之内が、顔を伏せる。
それを見て、勝利が察した。
「城之内君……君は、真紅眼を……」
「……くっ、そうだ……竜崎から受け継いだ、俺の魂のカードを……こいつが!」
城之内は、申し訳なさを言葉ににじませながら、遊戯と勝利の前に立つ。
それを見て、レアハンターは馬鹿にするように笑った。
「くくくくく。まさか貴様、もう一度私とやろうというのか……? 真紅眼の存在しない貴様のデッキで!」
「う、うるせえ! てめえだけは許さねえし、真紅眼だけは、俺の手で取り戻さなきゃなんねえんだ!」
怒りで体を震わせる城之内。
しかしレアハンターは、城之内と取り合おうとすらしなかった。
「レアカードを失ったお前に、もう用はない。私が決闘するべきは、武藤遊戯。そして、黒羽勝利。お前らだ!」
男は、遊戯たちを指さして指名した。
城之内は、それを守るように両手を広げた。
「待てっ! これは俺の問題だ!」
「いいよ。城之内くん。僕が行く」
「っ! 勝利!?」
勝利が、怒りを表情に滲ませながら、前に出る。
「人の魂のカードを奪い取る。そのために決闘を利用する『グールズ』!」
勝利の脳裏に、最愛の人の声が、戦友との誓いがリフレインする。
『このバトルシティでのあんたのと決着の決闘には、『決闘者としての誇り』以外の何かはいらない。ただ決闘者としての純粋な想いで、あんたと、あんたの『BF』たちと向き合いたいのよ』
『ええか、王国での借りは、きっちり返すで。城之内にも、お前にもな』
舞の言葉。
竜崎の言葉。
誇り高き決闘者たちの誓いが、勝利の心を駆り立てる。
「決闘者の命を賭した戦いの舞台に、ゲスな思惑で入り込んでくる邪悪。僕は、こいつらを許しはしない!」
(ククク。勝てるかな、私の、『エクゾディア』デッキに!)
レアハンターが立ち上がり、勝利ににじりよる。
勝利は鋭い瞳を逸らさぬまま、左腕を前に翳した。
それに合わせて、レアハンターも腕を出す。
始まる。
全員が息を飲んだ。
「待ちな!」
後数秒で、バトルシティ最初の決闘が始まるであろう、その瞬間に、遊戯の言葉が2人の間に割り込んだ。
「っ! 遊戯君……」
「悪いな、勝利君。この決闘は、俺がもらうぜ」
遊戯が、勝利の左腕を抑え、すっと下がる。
代わりに、遊戯がディスクを構えた。
「君の怒りは最もだ。こいつらはこの街の、この大会を汚す害虫。奴らを野放しにすることは、俺たち決闘者の誇りを汚されることを意味する。俺たちが信じた決闘者の魂を守るため、こいつらは必ず倒さねばならない」
「……」
遊戯の独白を、勝利は静かに聞いていた。
「俺は知っている。城之内君が、竜崎から受けとった真紅眼を大切に扱い、デッキを構築していたことを。竜崎から受け継いだ魂を、誇りを、大切に守っていたことを」
「遊戯……」
「奴が踏み躙ったのは、この大会だけじゃない! 俺の大切な友達の魂を、心を侮辱した! だからこそ、俺がやらなければならない!」
「……」
遊戯の宣言を聞き、勝利がすっと左手を引き、一歩下がって、城之内の隣についた。
「……王国で、僕が舞さんの誇りを守るために戦おうとしたときに、君は僕に決闘を譲ってくれた。星を投げ出しても、僕らの魂を守ってくれたよね。今度は、僕の番か」
「……ありがとう。勝利君」
「ただし!」
勝利は遊戯を前に押し出すように、思い切りよく背中を叩く。
ばん、という小気味いい音が鳴った。
「二つ、約束だ。君と、城之内君だけじゃない。僕、舞さん、竜崎君。バトルシティの決闘者全ての誇りにかけて、戦ってくれ。そして……勝ってくれ!」
「ああ! 任せろ!」
2人の様子を爬虫類のような目で伺うレアハンターが、内心ほくそ笑む。
(馬鹿どもめ。どちらが先でもかまいはしない。遊戯を葬った後は、黒羽勝利、貴様の番だ! 誰であろうとも、私の『エクゾディア』デッキに敵いはしない!)
「遊戯! 気をつけろ! あいつのデッキには……っ!? 勝利!?」
城之内が遊戯に出そうとした助け舟を、勝利が制した。
「城之内君。遊戯君は約束した。僕たち決闘者の誇りにかけて、奴を倒すと。なら、もう彼に口出しは不要だよ。ね、遊戯君」
「……ふっ。ありがとう、勝利君……城之内君! たとえレアハンターがどんな卑劣な手を隠していようが、決闘前に俺がその手を知る権利はない。それに……どんな戦術で来ようとも、俺のデッキが粉砕するぜ!」
場所は童実野町時計台広場。
時刻は、9:00ちょうど。
バトルシティ初戦。
パズルカード、レアカード、そして……決闘者の魂を賭けた決闘が、開幕した。
遊戯 LP4000
「「デュエル!!」」
レアハンター LP4000
「俺のターン、ドロー! "
地属性 岩石族 星4
攻撃力 1700
守備力 1600
「ターンエンド! さあ、貴様の戦術を見せてみな!」
「フン、私のターン! (よし、すでにエクゾディアパーツは2枚!) 魔法カード、"天使の施し”!」
「"天使の施し”……(手札交換カード……)」
天使の施し
魔法カード
デッキからカードを3枚引き、手札からカードを2枚捨てる
「3枚カードを引き、2枚捨てる! (ククク……これで3枚!) そして、"アステカの石像"を守備表示で召喚!」
地属性 岩石族 星4
攻撃力 300
守備力 2000
このカードが攻撃された場合、与える戦闘ダメージは倍になる
(守備力2000の壁モンスター……"天使の施し”でも攻撃モンスターを引くことはできなかったのか……それとも)
「(せいぜい場の壁モンスターに苦労しているがいい)私はこれでターンエンド!」
遊戯 LP4000
手札5枚
攻 1700
レアハンター LP4000
手札5枚(エクゾディア3枚)
アステカの石像
守 2000
「俺のターン! 俺は、
バフォメット
闇属性 悪魔族 星5
攻撃力 1400
守備力 1800
このカードが召喚した時、デッキから"幻獣王ガゼル"を手札に加える
「このカードで、デッキから"幻獣王ガゼル"を手札に加える。そして手札から、"融合"の魔法を発動する。"幻獣王ガゼル"と、"バフォメット”を融合するぜ!」
「なるほど……"融合"なら、壁モンスターを超える攻撃力のモンスターを速攻召喚できるね」
融合
魔法カード
決められたモンスター2体を融合する
「現れよ! "有翼幻獣キマイラ”!」
有翼幻獣キマイラ
風属性 獣族 星6
攻撃力 2100
守備力 1800
キマイラが破壊された場合、融合素材の片割れを特殊召喚できる
遊戯の速攻に、ギャラリーの決闘者たちがおおー! と湧き上がる。
しかししたり顔のレアハンター、苦し気な城之内、そして……思案顔の勝利は、言葉ないままだった。
(フフフ。高い攻撃モンスターでいい気になりおって……)
(クソっ。壁モンスターなんかどうでもいいから、早く奴の手札を何とかしないといけねえってのに!)
(……奴から、戦意が感じられない。奴は、どうやって遊戯君に勝とうとしているんだ?)
「行くぜ! キマイラで、"アステカの石像"に攻撃! 『
有翼幻獣キマイラ
攻撃力 2100
アステカの石像
守 2000
「"アステカの石像"破壊! カードを1枚セットし、ターンエンドだ!」
「フフフ。私のターン! "天使の施し”を発動!」
「っ! また手札交換カード!?」
「3枚カードを引き、2枚捨てる! (っ! 4枚目! 私の勝利はもはや目前!) 私は、"起動砦のギア・ゴーレム”を守備表示で召喚!」
起動砦のギア・ゴーレム
地属性 機械族 星4
攻撃力 800
守備力 2200
800LPを捧げ、ダイレクトアタックできる
「私はこれで、ターンエンド」
遊戯 LP4000
手札3枚
有翼幻獣キマイラ
攻撃力 2100
セットカード1枚
レアハンター LP4000
手札5枚(エクゾディア4枚)
起動砦のギア・ゴーレム
守 2200
「くそっ……また壁モンスター……このままじゃあ!」
「……大丈夫だよ。城之内君」
焦る城之内を、静かな声でなだめる勝利。
しかし、城之内が見たその勝利の表情は、怒りに満ち満ちていた。
「……勝利?」
(……コピーカード……しかもそれを遊戯君の、僕たちの前にぶつけるだなんて。どれだけ決闘を馬鹿にすれば気が済むんだ!)
「こんな奴に……こんな決闘をする奴に、遊戯君が負けるはずはない!」
「っ!? 勝利、お前、もう気づいて……」
「僕だけじゃないさ」
勝利のその言葉に重なるように、遊戯の不敵な笑いが場に響いた。
「フフッ。なるほど、コピーカードの量産を、そういう戦術で使ったか」
「っ!? 何っ!?」
「貴様に、『エクゾディア』は召喚させない!」
「ゆ、遊戯!」
「せ、戦術を、見抜かれた……」
「……クックック。それでこそだぜ、遊戯君」
遊戯の宣言に笑みを残し、勝利は身を翻して歩き出す。
「勝利?」
「遊戯君が戦術を見抜いたのであれば、この決闘にはもう僕が見るべきところはないよ。遊戯君が勝って、終了だ」
はっきり言って、見ていて楽しい決闘ではない。
決闘の結末が見えたのであれば、もはや勝利に用はなかった。
(……遊戯君に代わってもらって、助かったな。正直、僕じゃあ、怒りを抑えきれる自信はなかった)
ああ、そうそう。
言いながら振り返る勝利。
それに城之内は、驚いた表情で反応する。
「城之内君は、見ていた方がいい。見ておいて、もう一度距離を知っておきな。君が目指す、『真の決闘者』との距離を」
「っ!」
そう言い残し、その場を去ろうとする勝利。
それを見て城之内は、もう一度声をかけた。
「待て、勝利! 一個聞かせてくれ! なんで……なんで『エクゾディア』に気づけたんだ!?」
「……うーん。考えてたことを全部言葉にするのは難しいんだけど……ポイントは、"天使の施し"かな」
遠目に続く遊戯たちの決闘を見ながら、勝利が答えた。
「"天使の施し"は、"強欲な壺”と違って、手札の枚数が増えない。僕も使っているカードだけど、僕には捨てるカードで有利を作りたいっていう目的がある。"ボーラ”や"バックフラッシュ”みたいなカードでね。でも、奴のデッキには、それがなかった。奴のデッキはおそらく、壁モンスターと手札入れ替えカードのみで構成されていて、カードコンボで勝利しようという様子は見受けられなかった。ならば、1枚でも多くデッキを回転させて、攻撃以外の方法で勝とうとしている。それがわかったのさ」
「……」
城之内は、簡単なことと言わんばかりに話した勝利の様子を見て、震えていた。
(……これが、勝利の……遊戯たちの見ている世界ってことかよ……)
「……城之内君」
固まる城之内に、勝利は優しい顔を向けた。
城之内は、困惑しつつも、勝利から目を離さない。
「がんばってね。決勝で会おう」
「っ!!? ああ!」
そうして、今度こそ勝利は、城之内たちから離れた。
(……『グールズ』。レアカードを求め、大会を荒らし、決闘者の魂を汚す、悪党。おそらく、海馬君は、奴らの参加を咎めようとはしていない。むしろ、奴らのような存在を、おびき出そうとしているような節がある……おそらく、自分の目的のために)
それ自体を攻めようとしているわけではない。
勝利にとって大事なことは、海馬の意向ではなかった。
(重要なのは……奴ら、『グールズ』が、少なくない人数、このバトルシティに参加しているという事実)
勝利は、腰のデッキにそっと手を触れる。
皆の心が、怒りが、カードを通じて伝わってくる。
(ああ、わかってる……あんな奴らに、僕らのバトルシティを勝ち抜かせはしない……負けない。絶対に!)
一人、闘志を燃やし、決勝への覚悟を高めた。
そして、数分後。
『僕の名は、マリク。千年アイテムの、『千年
決闘に勝った遊戯、そして城之内は、大きく様子が変わったレアハンターと対峙していた。
その男は、千年アイテムの所持を宣言し、名を『マリク』と名乗った。
「人の想いのままに操るだと!?」
(このマリクこそ、イシズの言っていた7つ目の千年アイテムを持つ敵!)
「マリク!! 貴様らの目的は……グールズの目的はなんだ!?」
遊戯が指をさし、マリクに問う。
それにマリクは、隠す様子もなく答えた。
『神のカードをそろえることさ。現代に蘇った、3枚のレアカードをね……』
「神のカード!?」
「……いずれ神のカードを持って、お前のことを倒しに行くよ。楽しみにしておくんだな。遊戯」
「さあ、そいつはどうかな……俺が、貴様の野望を粉砕するぜ!」
「……楽しみにしているよ。名もなきファラオよ」
そのやり取りを最後に、レアハンターはこと切れたかのように地面に倒れこんだ。
そしてはるか遠方よりその会話を楽しんでいたマリクが、一度目を瞑って意識を落ち着かせた。
(フフフ。そう、それこそが選ばれしものによる……
瞬間、マリクの視点が切り替わる。
そこには先ほどまで、遊戯たちとともにレアハンターと対峙していた男、黒羽勝利の姿があった。
(ペガサスに見初められし、不思議なカードを操る決闘者。『黒羽勝利』。その力が僕の計画の障害になりえる者なのか……お前の実力も、見定めておかなくちゃね……こいつを使って)
「……」
勝利のバトルシティ初決闘は、すぐそこに迫っていた。
さてさて。
初戦は誰でしょう。