遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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さあ、バトルシティ初戦です。


因縁の決闘再び

 

 

「……」

 

「よお、お前決闘者だろ? 俺と決闘……げっ! 『クリエイター』!?」

 

「ああ、もう。わかったわかった。いいよ、どこか行ってくれて」

 

やれやれ、またか。

こぼれそうになった落胆の声を必死に飲み込み、勝利はしっしと追い払うように決闘者を逃がす。

 

(これじゃ、王国の二の舞だ)

 

王国でベスト4という肩書があるとはいえ、どうにも恐れられ方が普通ではない。

そう思った勝利は、一人の決闘者を捕まえ話を聞いてみた。するとどうにもあらぬ噂が決闘者の中で広がっているらしいということが判明した。

 

曰く、ふざけた態度の決闘者を嫌い、ひとたび目を合わせればすぐに決闘でわからせられる。

曰く、ペガサスから寵愛を受け、独自のデッキカテゴリを受け取っている。

 

果ては、『カードの創造主(クリエイター)勝利』と呼ばれているとのこと。

 

 

1つ目の噂はどうやら、時計台広場で一般男性に絡む決闘者に注意をしたことがよくない方向に広まってしまったのが原因らしい。

そして残りの噂については、王国の決闘が中途半端な情報だけ伝わっているせいで、飛んでもない方向に話が膨らんでいってしまった結果のようだ。

 

 

(まだ『BF』の決闘は王国以外ではほとんど見せてないから、そんな正体不明のデッキを使う人を初戦の相手に選びたくないのは道理。というよりは、『自分以外の誰かが犠牲になるのを見てから、対策を練りたい』というのが本音か)

 

 

「全く……デッキを変えるのは辞めたのに、まだ『クリエイター』だなんて呼ばれているからなんでなんだろうとは思っていたけど……」

 

『ぴぃ~……』

 

「ねぇ。全く失礼な話だよ」

 

 

ブリザードと口をとがらせて愚痴をこぼしながら、今後の展開について考える勝利。

王国と似た状況といったが、大問題としてまだ1戦も戦えていない。

せめて今日のために調整したデッキの感触を確かめるため、1戦だけでも戦いたいところだったのだが、それすらもままならないとなると動きようがない。

 

 

 

どうしたものか。

そう考えて足を止めようとしたところで、ブリザードが叫ぶ。

 

 

 

『っ! ぴぃー!』

 

「ん? ブリザード?」

 

何が起きた? と聞く前に、ブリザードが飛び、建物の間の路地へと飛び立っていく。

勝利はわけもわからぬまま、ブリザードを追った。

 

 

 

路地の奥へ奥へと入っていく。

ブリザードの姿が見えなくなっても、勝利にはどこに行ったのかが感覚でわかるため、道を悩まず最短距離で追い続けた。

 

やがて道が少しずつ整ってきたところで、とある廃倉庫の前で、ブリザードが止まっていた。

 

「ふぅ……全く、勝手にいかないでよね……ここに、何かあるの?」

 

『ぴぃ……?』

 

ブリザード自身もよくわかっていないのか、首を傾げながらも廃倉庫を見つめている。

何もない……ブリザードの錯覚なのか。

よぎった考えを否定するように、勝利の直感が警報を鳴らす。

 

 

 

 

 

(……間違いない。誰かいる)

 

 

 

 

 

「誰だ!? そこにいるのは!」

 

 

 

廃倉庫に向かい、勝利が声を上げた。

すると、古びたドアが音を鳴らしながら、ゆっくりと開く。

 

中から、全身ローブにフードを付けた男が現れる。

 

 

「その風体……貴様、グールズか!?」

 

 

「……オレと決闘しろ。黒羽勝利」

 

 

男が、回答になっていない回答を返しながら、決闘盤を構える。

勝利は、男を訝しんでのぞき込んだ。

 

(なんだ……こいつの声。くぐもっていて聞きづらいけど、どこかで聞いたことがあるような……)

 

「どうした? 怖気づいたのか?」

 

「……安い挑発だね。だが、乗った。この大会……お前らだけは、絶対に上にあげないと決めたんだ」

 

 

(フフフ。乗ってきたね。さあ、見せてもらおうか。お前だけの特別なカードと言われている、『BF』カードの力を!)

 

 

「「行くぞ!」」

 

 

 

 

勝利  LP4000

 

「「デュエル!!」」

 

??? LP4000

 

 

「僕のターン! "BFー残夜のクリス”を攻撃表示で召喚!」

 

 

BFー残夜のクリス

 

闇属性 鳥獣族 星4

 

攻撃力 1900

 

守備力 300

 

BFがいるとき特殊召喚できる

1ターンに1度、魔法・罠による破壊を回避する

 

(僕のデッキでは、かなり高攻撃力なクリス。いったん、相手の出方を伺おう)

 

「僕はこれで、ターンエンドだ」

 

「……俺のターン。俺は、モンスターをセット。さらにカードを1枚セット。ターン終了」

 

 

勝利 LP4000 手札 5枚

 

BFー残夜のクリス

攻 1900

 

??? LP4000 手札 4枚

 

伏せモンスター1体

 

伏せカード1枚

 

 

(この声……でも、なんだ? この感覚……)

 

走る、違和感。

しかし、決闘に集中すべきと判断し、意識を切り替える。

 

 

「……僕のターン、ドロー。バトルだ! クリスで、セットモンスターに攻撃!」

 

 

「……セットモンスターは、"サイバーポッド”」

 

 

サイバーポッド

 

闇属性 岩石族 星3

 

攻撃力 900

 

守備力 900

 

 

リバース時、フィールドのモンスターをすべて破壊する

お互いにデッキから5枚ドローし、レベル4以下のモンスターを守備か攻撃で特殊召喚する

 

 

「"サイバーポッド”の効果により、クリスを破壊!」

 

「くっ! クリスが!」

 

「そしてお互いに5枚カードをドローし、見せる。さあ、カードを引きな」

 

 

???

 

 

メカ・ハンター

陸戦型バグロス

機械王

スフィア・ボム 球体時限爆弾

マジック・ジャマー

 

 

BF-大旆のヴァーユ

BF-竜巻のハリケーン

ゴッドバードアタック

BF-幻耀のスズリ

闇の誘惑

 

 

 

(……こいつ……)

 

 

「俺は、"メカ・ハンター”、"陸戦型バグロス"を攻撃表示、"スフィア・ボム 球体時限爆弾"を裏側表示で召喚」

 

「……僕は、"BF-幻耀のスズリ"を攻撃表示。"BF-大旆のヴァーユ"、"BF-竜巻のハリケーン"を裏側表示で召喚」

 

 

 

メカ・ハンター

 

闇属性 機械族 星4

 

攻撃力 1850

 

守備力 800

 

 

陸戦型バグロス

 

地属性 機械族 星4

 

攻撃力 1500

 

守備力 1000

 

 

スフィア・ボム 球体時限爆弾

 

闇属性 機械族 星4

 

攻撃力 1400

 

守備力 1400

 

裏側のこのカードを攻撃したモンスターを起爆する

 

 

BF-幻耀のスズリ

 

闇属性 鳥獣族 星4

 

攻撃力 1400

 

守備力 1400

 

 

BF-大旆のヴァーユ

 

闇属性 鳥獣族 星1

 

攻撃力 800

 

守備力 0

 

 

BF-竜巻のハリケーン

 

闇属性 鳥獣族 星1

 

攻撃力 0

 

守備力 0

 

 

 

「……お前は、一体……誰なんだ?」

 

口を押えながら、勝利が言う。

まるで不気味なものを見て体が拒絶しているかのような反応だった。

 

 

『おやおや……まだこいつが誰か気づいていないのか。聞いていたほど察しは良くないな』

 

「なんだ? まだ気が付いてなかったのか。教えてやるよ、俺様は……」

 

 

 

 

「違う……お前じゃない」

 

 

 

 

 

フードに手をかけた男の動きを、勝利の言葉が制止した。

 

勝利は、怒りの感情を隠しもせずに叫んだ。

 

 

 

 

 

「バンデットキースの身体を使い、デッキを使い、操っている……後ろにいる貴様は、誰だと聞いているんだ!」

 

 

 

 

『っ!?』

 

フードを外し、特徴的な星条旗をあしらったバンダナを見せるキース。

しかし、そのキースを通して話す勝利がまるで自分と目を合わせているかのように感じ、キースを裏から操る褐色の男……『マリク』は錫杖を少し強く握りしめた。

 

『馬鹿な……千年アイテムも持たない男が、この千年ロッドの力を見破ったとでもいうのか!?』

 

「何の話だ? 黒羽勝利。俺様はバンデットキース。貴様を葬り去るために、地獄から舞い戻ってやったんだぜ?」

 

「うるさい!」

 

キースの言葉を、勝利が闇雲に払う。

その表情は……大きく歪んでいた。

 

 

(声と体以外、何もかも違う! これは……バンデットキースじゃあない!)

 

 

「それ以上、人の心を弄ぶな! バトル続行! スズリで、セットモンスターを攻撃! 『ミラージュ・フラッシュ』!」

 

 

BF-幻耀のスズリ

 

攻 1400

 

スフィア・ボム 球体時限爆弾

 

守 1400

 

 

『なんだなんだ。焦ったか?』

 

「……スフィア・ボムの効果発動。攻撃してきたモンスターを、起爆する」

 

 

BF-幻耀のスズリ スフィアボム吸着

 

 

 

「おいおい。とんだミスじゃねえのか。黒羽勝利ぃ?」

 

キースの挑発に、勝利は鼻を鳴らす。

 

「ふん……これがミスに見えるなら、お前の腕は大したものじゃあないな」

 

嘲るように吐き出された勝利の強い言葉。

それがキースにではなく、自分に向けられたものだと悟ったマリクの顔が歪む。

 

『なんだと……?』

 

「バトル終了。そして、手札から魔法カード発動! "フェザー・ウィンド・アタック”! スズリをデッキに戻し、ブラストを手札に加える!」

 

 

フェザー・ウィンド・アタック

 

魔法カード

 

フィールドのBFをデッキに戻し、デッキのBFを手札に加える。

 

 

 

BF-幻耀のスズリ デッキへ

吸着したスフィアボム 破壊

 

 

BF-黒槍のブラスト 手札へ

 

 

『ちっ、透かしたか……さすがは決闘者王国のファイナリスト。いうだけのことはあるじゃないか』

 

見定めるマリクの感心の声など知る由もなく、勝利が自分を必死に落ち着けるように、淡々と決闘を進める。

 

「さらに、"BF-黒槍のブラスト"を特殊召喚! このカードは、場にBFがいる場合特殊召喚できる!」

 

 

BF-黒槍のブラスト

 

闇属性 鳥獣族 星4

 

攻撃力 1700

 

守備力 800

 

BFがいるとき特殊召喚できる

モンスターの守備力にもダメージを与えることができる

 

 

 

「まだまだ行くぞ! 僕は"異次元の指名者”を発動!」

 

 

異次元の指名者

 

魔法カード

 

カードを1枚宣言する

相手の手札にそのカードがあれば、カードを除外する

相手の手札になければ、自分のカードを1枚除外する

 

 

「カード名を1枚宣言し、そのカードが相手の手札にあれば除外する。宣言は、"マジック・ジャマー”だ!」

 

「っ! 貴様!」

 

「そんなウルトラレアカードの使用を、みすみす見逃すはずはないだろ。さあ、手札を見せな!」

 

「……」

 

キースは、唇をかみしめながら、手札を公開した。

 

 

キースの手札 6枚

 

機械王

マジック・ジャマー

高等儀式術

ゼラ

死者への手向け

ホーリー・ナイト・ドラゴン

 

 

「……"マジック・ジャマー"を手札から除外する」

 

華麗なカード裁きで、敵のレアカードを発動前に奪い取る勝利。

しかし勝利の表情は、歪んだまま変わることはなかった。

 

「……"ゼラ"に、"高等儀式術”に、"ホーリーナイトドラゴン”に、"死者への手向け"に、"マジック・ジャマー"……」

 

(キースがいかにレアカードを集めているからって、あんな世界に数枚というレベルのカードを何枚も手に入れられるわけがない……つまりあのカードは、全部グールズが作ったコピーカード。ふざけやがって……)

 

苛立ちが募る勝利。

自分の手札を見つめなおし、必死に冷静さをかき集め、心を静める。

 

「カードを2枚セット。ターンエンド」

 

(僕のセットカードは、"ゴッドバードアタック"に、"ブラック・サンダー”……これなら、キースのパワーカードたちにも対抗できるはずだけど……)

 

「貴様のエンド宣言時、俺様は伏せカードを発動する。罠カード、"心鎮壷(シンツェンフー)”」

 

「くそっ! やはり対策済み……」

 

 

心鎮壷《シンツェンフー》

 

永続罠カード

 

相手のセットカード2枚を選択し、その2枚を壺に封印して使用不能にする

 

 

「貴様のセットカード2枚を、封印する」

 

 

 

 

勝利 LP 4000 手札4枚 闇の誘惑

 

BF-黒槍のブラスト

攻 1700

 

BF-大旆のヴァーユ

守 0

 

BF-竜巻のハリケーン

守 0

 

 

伏せカード2枚 ゴッドバードアタック、ブラック・サンダー(封印済み)

 

 

バンデット・キース LP 4000

手札 5枚 機械王、高等儀式術、ゼラ、死者への手向け、ホーリー・ナイト・ドラゴン

 

メカ・ハンター

攻 1850

 

陸戦型バグロス

攻 1500

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

 

 

 

「さあ行くぞ! 俺様のターン、ドロー! まずは"高等儀式術”を発動!」

 

「来るか……」

 

 

高等儀式術

 

魔法カード

 

デッキから通常モンスターを生贄に捧げ、儀式モンスターを召喚する

 

 

「デッキから、星4"カッター・ロボ”と、星4"海を守る戦士”を墓地へ送る。さあ、"ゼラ”の降臨だ!」

 

 

ゼラ

 

闇属性 悪魔族 星8

 

儀式モンスター

 

攻撃力 2800

 

守備力 2300

 

 

 

「……"ゼラ"。それが、今のあんたの切り札かよ? キース……」

 

『フフフ。絶望したか黒羽勝利。グールズの手にかかれば、この程度のカードはいくらでも複製可能なんだよ』

 

「……」

 

あざ笑うマリク。

しかし勝利は、マリクのことなど見てはいなかった。

 

「……いいのかよ。キース」

 

呟く勝利。

だがその言葉で、キースの手が止まることはなかった。

 

「……俺様は、"七星の宝刀”を発動」

 

 

七星の宝刀

 

魔法カード

 

星7モンスターを除外し、カードを2枚ドローする

 

 

「"ホーリー・ナイト・ドラゴン”を除外し、2枚ドロー。さらに"陸戦型バグロス"を生贄に、"機械王"を召喚」

 

 

機械王

 

地属性 機械族 星6

 

攻撃力 2200

 

守備力 2000

 

場の機械族の数だけ攻撃力を上げる

 

 

「"機械王"は、場の機械族の数だけ攻撃力を100上げる。機械族は"メカ・ハンター”と"機械王"の2体。よって攻撃力は、2400」

 

機械王

 

攻撃力 2200 + 200 = 2400

 

 

表情を変えることなくモンスターの展開を進めるバンデットキース。

そのキースの様子と、好転したフィールドを眺めながら、マリクは機嫌を向上させながら、戦況を冷静に見定めていた。

 

『さて。ブラストは攻撃表示。罠を封じたから、問題ないとは思うが……"ゴッドバードアタック"で"ゼラ"を狙うだけならば、守備表示でよかったはず。念を入れておくかね』

 

「……バトル。"機械王"で、ブラストに攻撃。『ジェットパンチ』」

 

 

機械王

 

攻撃力 2400

 

BFー黒槍のブラスト

 

攻撃力 1700

 

 

「……手札から、"BFー月影のカルート”の効果発動!」

 

 

BFー月影のカルート

 

闇属性 鳥獣族 星3

 

攻撃力 1400

 

守備力 1000

 

手札から墓地に送ることで、そのターン、BFの攻撃力に自身の攻撃力を加算する

 

 

「手札から墓地に送り、ブラストの攻撃力にカルートの攻撃力をプラスする!」

 

『なるほど……BFはトリッキーなモンスター効果で戦うと聞いていたが、そういう効果か。面白い』

 

 

機械王

 

攻撃力 2400

 

BFー黒槍のブラスト

 

攻撃力 1700 + 1400 = 3100

 

 

「ブラストの迎撃! 『月夜のデス・スパイラル』!」

 

 

キース LP 4000 ー 700 = 3300

 

 

ブラストの迎撃を受け、機械王の身体がずれ落ちる。

爆発によって起こった衝撃をキースに受けさせながら、マリクは笑う。

 

『これで、脅威は完全に去った。さあ、攻撃だ』

 

「……"メカ・ハンター”と、"ゼラ”で守備モンスターに攻撃」

 

 

 

ゼラ

 

攻 2800

 

メカ・ハンター

 

攻 1850

 

 

BF-大旆のヴァーユ

 

守 0

 

BF-竜巻のハリケーン

 

守 0

 

 

 

セットカードが封印されている今、勝利になすすべはなく、2度の攻撃でモンスターを破壊される。

勝利は、歪む顔に悔しそうな表情を追加した。

 

「……ごめん。みんな」

 

「モンスター破壊。カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

 

 

 

勝利 LP 4000 手札3枚 闇の誘惑

 

BF-黒槍のブラスト

 

攻 1700

 

伏せカード2枚 ゴッドバードアタック、ブラック・サンダー(封印済み)

 

 

バンデット・キース LP 3300

手札 2枚 うち一枚 死者への手向け

 

メカ・ハンター

 

攻 1850

 

ゼラ

 

攻 2800

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

伏せカード 1枚

 

 

 

『フフフ。これでモンスターの数で優位をとった。高攻撃力モンスター"ゼラ"がいる限り、こちらの優位はゆるぎない』

 

 

 

 

 

 

「……いいのかよ。それで」

 

 

 

 

 

 

『……何?』

 

小さな声で、しかし、力強い声で問う勝利。

その言葉を、マリクは鼻で笑った。

 

『コピーカードで勝ってうれしいのかって話か? くだらないね。言ってやれ、キース』

 

「……貴様に勝てるならば、なんだって構わねえさ。どんなカードを使ったって……」

 

 

 

 

 

「お前はもうしゃべるな。僕は、バンデットキースと話しているんだ」

 

 

 

 

 

『っ!!? こいつ……』

 

(気配を感じ取っているとかいうレベルじゃない……こいつは、明確に僕とバンデットキースを分けて判断している。いったいどうやって……)

 

 

驚愕と困惑を浮かべるマリクを無視……していることに気づくこともなく、勝利はただひたすら、バンデットキースに言葉をかける。

 

「別に僕は、あんたの仲間でもなきゃ、友達でもない。あんたのことなんか、何も知りゃしない。だが……一つだけ知っていることがある。あんたは……『勝利への執念』だけは人一倍の男だった」

 

「……」

 

キースは、ピクリとも動きはしなかった。

虚ろな目だけをこちらに向けて、勝利の声が聞こえているかも怪しい。

だが、それでも勝利は続けた。

 

「あんたの自慢の『機械(マシーン)』カードたちは、儀式の生贄にされ、"ゼラ”の露払いに使われて……結果場を制圧したのは、貰い物の紛い物。それで……あんたの求める勝利は得られるのか!? あんたの勝利への渇望は、それで満たされるのか!? それでいいのかよ……賞金王、バンデットキース!」

 

 

 

『……ハハハ。言葉で説得してこの男の意識を取り戻そうっていうのかい? 無駄だね。そんなことで太刀打ちできるほど、この千年ロッドの力は甘くないんだよ!』

 

 

 

嘲笑うマリク。

その笑い声は廃倉庫前の二人には届かず、現場はただただ無言が支配していた。

 

勝利は、ちっ、と舌打ちしながら、自嘲する。

 

 

(ああ、そうだよ。別に僕は、キースの仲間じゃあない。キースのことを、助けてやる義理もない……これは、ただの八つ当たりだ)

 

 

かつて勝利は感じ取った。

バンデットキースは、過去の自分であり、あったかもしれない世界の自分だと。

 

自分は、立ち上がれた。

BF、遊戯たち、真黒、そして……舞に救われた。

 

そしてこのバトルシティを前に、ついに、地獄から一歩足を踏み出した。

勝利は、前に進むことができた。

 

 

 

(……哀れすぎるじゃあないか。たった一人で、地獄から必死に這い上がろうとしてきた先に、待っていたのが、こんな結末だっただなんて……)

 

 

 

皆に会えなければ……自分はこうなっていたのかもしれない。

すべてに絶望し、名も知らぬものにいいように利用され、自分の望まぬ戦いを強いられる。哀れな人形。

 

 

 

キースを、許しているわけではない。

 

王国の、舞に対する所業。

汚い決闘の手法。

 

そのすべては、勝利の価値観にはまるでそぐわない、まさに鏡写しの存在。

 

 

しかし、だからこそ。

今目の前の、自分の進まなかった未来を行くバンデットキースの末路は、勝利にとって、何よりも受け入れがたく、許されざるものだった。

 

 

 

「……義理なんか、ない。意味も、ない。でも……」

 

 

 

 

(僕は、もらってばかりだ。遊戯君たちにも、BFたちにも、真黒さんにも、舞さんにも。僕は……救われてばかりだ)

 

 

 

でも。

だからこそ。

そう勝利は思い、奮起する。

 

 

 

(……たくさんもらうことができた僕だからこそ! できることがあるはずだ!)

 

 

 

 

 

「……みんな、頼みがある」

 

 

 

勝利が声を潜め、キースに届かぬ声量で呟いた。

言葉のあて先は当然……見えない、勝利の友達。

 

 

 

 

「……僕を、連れて行ってほしい。王国の、遊戯君の時のように。僕の、心を」

 

 

 

 

あそこに。

そういって、勝利は、指をさした。

 

 

 

 

決して、場に響くことのない声。

しかし勝利は笑い、感謝とともに、カードを引いた。

 

 

 

「……頼むぜ、みんな。一緒に戦ってくれ! 僕は、"悪夢再び"を発動する!」

 

 

悪夢再び

 

魔法カード

 

墓地の守備力0の闇属性モンスター2体を手札に加える

 

 

「この効果によって、さっきのターンにやられた墓地の、ハリケーン、ヴァーユを手札に戻す!」

 

『なるほど……さっきのターンにモンスターの破壊を傍観していたのは、そのカードで回収するのを狙っていたからか』

 

「さらに、僕は手札から、"闇の誘惑"を発動!」

 

 

闇の誘惑

 

魔法カード

 

2枚ドローし、闇属性モンスターを1枚除外する

手札に闇属性がいない場合、手札をすべて墓地に送る

 

 

「カードを2枚ドローし、ハリケーンを除外! さらに、"黒羽の宝札"も発動!」

 

 

黒羽の宝札

 

魔法カード

 

BFモンスターを手札から除外し、カードを2枚ドローする

このターン、特殊召喚できない

 

 

「ヴァーユを除外して、2枚ドロー! よしっ!」

 

 

『ちっ……集めた雑魚モンスターを、手札に変換しやがった……仕掛けてくるか』

 

 

「行くぜ! "BFー漆黒のエルフェン”を召喚!」 

 

 

BF-漆黒のエルフェン

闇属性 鳥獣族 星6

 

攻撃力 2200

守備力 1200

 

味方のBFがいるとき、生贄が不要になる。

味方のBFを陽動として、相手の攻撃態勢を崩す

 

 

「……エルフェンだと……そいつは、上級BFのハズ……」

 

「エルフェンは、味方のBFがいるとき、生贄なしで召喚できるんだ! そして、エルフェンのもう一つの効果起動! 相手モンスターの攻撃態勢を崩す!」

 

 

 

ゼラ

 

守 2300

 

 

 

「……ああ、うざってぇ効果だ。だが、お前のモンスターじゃあ、"ゼラ"の守備力にも届かねえ……」

 

「それはどうかな? 僕はさらに、"二重召喚(デュアルサモン)”を発動!」

 

 

二重召喚(デュアルサモン)

 

魔法カード

 

1ターンに二度のモンスター召喚を可能にする

 

 

 

「これによって1ターンに二度の召喚行為を認められる! ブラストを生贄に、"BFー流離いのコガラシ”を召喚!」

 

 

 

BFー流離いのコガラシ

 

闇属性 鳥獣族 星6

 

攻撃力 2300

守備力 1600

 

 

「……エルフェン……コガラシ……」

 

 

キースが、おもむろに頭を押さえる。

苦し気な表情と瞳には、ほんの一瞬、わずかな生気を感じた。

 

 

 

 

『バトルだ! "BF-漆黒のエルフェン”で攻撃! 『ウィンドミル・カッター』!』

 

 

『僕だって、あんたのカードは読んでたよ!』

 

 

 

 

「……ぐっ!?」

 

 

脳裏に過ぎる映像。

それを、かき消すように頭を振るキース。

 

勝利は、それを見ながら、続けた。

 

 

「……さらにこいつだ! 装備魔法、"グローウィング・ボーガン”! コガラシに装備!」

 

 

グローウィング・ボーガン

 

魔法カード

 

BFのみ扱える弓矢。装備した者は攻撃力500アップ

敵の手札も射抜く

 

 

BFー流離いのコガラシ

 

攻 2300 + 500 = 2800

 

 

 

弓を構え、矢をつがえるコガラシ。

すっと息を吐き、構えるエルフェン。

 

 

二人が、勝利を見て頷いた。

勝利が、小さく、ありがとう。と呟いた。

 

 

 

 

 

勝利 LP 4000 手札1枚

 

BFー流離いのコガラシ + グローウィング・ボーガン

 

攻 2800

 

BF-漆黒のエルフェン

 

攻 2200

 

伏せカード2枚 ゴッドバードアタック、ブラック・サンダー(封印済み)

 

 

バンデット・キース LP 3300

手札 2枚 うち一枚 死者への手向け

 

 

メカ・ハンター

 

攻 1850

 

ゼラ

 

守 2300

 

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

伏せカード 1枚

 

 

 

『……一気に上級モンスターを2体展開したか……だが、次のターンに、グールズの手にかかればそんなモンスターは無意味だってことを教えてやるよ』

 

 

ほくそ笑むマリク。

しかし、キースの表情には笑顔はなかった。

むしろ、苦々しく顔を引きつらせている。

 

 

 

 

 

 

「……馬鹿に、してんのか……」

 

 

 

 

 

キースのそのちいさな声は、果たして聞こえたのか。

 

勝利は大きく息をすい、どんっ、と胸をたたいて気合いを入れた。

 

 

 

「さあ、バトルだ! エルフェンで、"メカ・ハンター”に攻撃! 『ウィンドミル・カッター』!」

 

 

 

BF-漆黒のエルフェン

 

攻 2200

 

メカ・ハンター

 

攻 1850

 

 

 

キース LP 3300 ー 350 = 2950

 

 

 

「ぐぅ!」

 

キースが、エルフェンの攻撃を受け、苦しそうに胸を押さえ後ずさる。

 

そして……それに呼応するように、遠い地でその決闘を見つめるマリクも、その衝撃に反射的に胸を押さえた。

 

 

 

『な、なんだ!? この攻撃は!? なぜ、僕にまで……!?』

 

 

 

困惑するキース。

その様子に、確信を持った勝利。

 

 

 

(効いている……やっぱり、奴の心の支配にも、『BF』たちの力は届いている……! 心は、届く!)

 

 

 

「続けて、コガラシで、"ゼラ”を攻撃! 『木枯らし荒らし-弓矢の嵐』!」

 

 

BFー流離いのコガラシ + グローウィング・ボーガン

 

攻 2800

 

ゼラ

 

守 2300

 

 

飛び上がったコガラシから、数多の弓矢が放たれる。

 

 

その光景に、キースの虚ろな目が、ピクリと反応した。

 

 

 

矢を受けた"ゼラ”が膝を折った。

その瞬間に、コガラシが、渾身の力で一本の弓を引いた。

 

 

 

 

「……"グローウィング・ボーガン"の効果。装備したモンスターが相手のモンスターを破壊した時、相手の手札を一枚墓地に送る!」

 

 

勝利は目を瞑り、心臓に手を添える。

そして、コガラシと目を合わせる。

 

 

(頼む……コガラシ! 僕を……奴の元へ!)

 

 

 

 

「いけぇ! コガラシ! 『木枯らし荒らしー懸魂一撃』!」

 

 

 

 

その放たれた一本の弓は、一直線に"ゼラ”を貫く。

そして……勢いをそのままに、バンデットキースに着弾した。

 

 

「ぐおおぉぉ!!?」

 

 

キースが膝を折り、頭を押さえ、その場で苦しみだした。

何かにあらがおうと、キースが必死になって暴れているような、そんな様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その景色を最後に、勝利は、いったん瞳を閉じる。

体が、浮き上がるような、不思議な感覚を感じる。

 

 

 

 

 

ほんの数秒、心の流れに身を委ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を開き、勝利の目の前に飛び込んだ風景は、

懐かしさすらも覚える、漆黒の暗闇だった。

 

 





さあ。勝利初戦、バンデットキース?戦が始まりました。
予想が当たっている人がいらっしゃいましたね。

アニオリ、遊戯VSバンデットキースの代わりの決闘となります。

ご存じの方はご存じかもしれませんが、アニメではまだ王国ルールでの決闘なので、少々風変りにはなりますが。

ちなみに、キースの心鎮壷は、遊戯王Rで出てきたカード・ヘキサチーフの代用になります。

そんな感じで楽しんでいただけたら幸いです。

……といいつつ、さっそく決闘から外れた方向に進んでいますが。
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