遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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みんな好きね。バンデットキース。
まあ、私もですけど。


力と力! 決着の融合召喚!

 

 

勝利 LP 3600 手札0枚

 

モンスターなし

 

伏せカード3枚 ゴッドバードアタック(封印済み)ブラック・サンダー(封印済み) 我が身を盾に

 

 

バンデット・キース LP 2950 手札 0枚

 

リボルバー・ドラゴン

 

攻 2600

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

 

 

 

勝利が、場の状況に笑いながらも冷や汗を垂らす。

 

封印カードや、今使用できないカードを除けば、勝利のカードは1枚もない。

一方キースは手札こそないが、フィールドには強力な効果を持ったモンスター、"リボルバー・ドラゴン”がいる。

 

(僕のデッキのモンスター単体じゃあ、"リボルバー・ドラゴン”に太刀打ちするのは難しい……でも、スーパーエキスパートルールは、プレイヤーへのダイレクトアタックが許される。早いうちに逆転の兆しを見いだせなかったら……このまま押し切られて負ける……)

 

悪い状況を整理し終えた後、勝利は深呼吸して、デッキに手をかける。

 

「……僕のターン、ドロー……モンスターを1体セットし、ターンエンド」

 

 

 

勝利 LP 3600 手札0枚

 

伏せモンスター1体

 

伏せカード3枚

ゴッドバードアタック(封印済み)

ブラック・サンダー(封印済み)

我が身を盾に

 

バンデット・キース LP 2950 手札 0枚

 

リボルバー・ドラゴン

 

攻 2600

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

 

 

「はっ! 威勢良く吠えた割に、もう限界か! 俺様のターン、ドロー……ちっ」

 

 

キースは取り繕いもせず、ドローカードを見て舌打ちを零す。

それを見て、勝利は状況を察する。

 

 

(……どうやら、下級モンスターは引けなかったようだね。僕のライフは3600。"リボルバー・ドラゴン”の攻撃力は2600。モンスターを召喚して、セットモンスターを"リボルバー・ドラゴン”の効果で破壊。2体でダイレクトアタックを決めれば勝ちはほぼ確定する。大方、重量級機械モンスターか、罠カードを引いたんだろうな……隠そうともしていないのは、手札の少なさ故にどうせ隠すことはできないだろうと思ってるからか)

 

奴も、勝利の決闘スタイルは把握している。

ここからは、先ほどまでの決闘とは全く違ったものになる。

勝利はそう直感した。

 

 

「"リボルバー・ドラゴン”、効果起動! ロシアンルーレット!」

 

(外してくれるならありがたいけど……)

 

回る銃身を、祈るような思いで見る。

しかし、結果は無情だった。

 

 

右肩部 〇

頭部  ×

左肩部 〇

 

 

「くっ……そううまくはいかないか」

 

「ルーレット成功! 狙いはセットモンスターだ! 『ガンキャノンショット』!」

 

「……セットモンスターは、"BF-上弦のピナーカ”」

 

「……くそっ。そいつか」

 

 

BF-上弦のピナーカ

闇属性 鳥獣族 星3

 

攻撃力 1200

守備力 1000

 

墓地に送られたターン、仲間のBFを呼び寄せる

 

 

以前王国で見たモンスターが故に、効果を知るキースは悪態をついた。

このターンで決めきれないことを、悔いている様子だった。

 

 

「だが、これで貴様のフィールドにモンスターはいなくなったぜ! "リボルバー・ドラゴン”のダイレクトアタックを受けな! 『ガンキャノンショット』!」

 

ゆっくりと中央の砲身を勝利へと向けた"リボルバー・ドラゴン”。

そしてキースの合図により、轟音とともに弾丸が射出され、勝利の身を貫いた。

 

 

勝利 LP 3600 ー 2600 = 1000

 

 

「ぐわぁ!」

 

(……くそっ。これで、1500ポイントのライフが必要な、"我が身を盾に”も発動できなくなってしまったか……厳しい。だが、まだ勝負は終わってない!)

 

「……俺様はカードを1枚セット。ターン終了だ!」

 

「そっちのターン終了時に、ピナーカの効果が起動する!」

 

「けっ……相変わらず鬱陶しい効果だぜ……」

 

「僕のデッキから手札に加えるのは……」

 

 

言いながら、勝利はデッキを広げて思考する。

 

(手札はない。故に、BFの連鎖的な特殊召喚コンボは使えない。敵モンスターの攻撃力を半分にする、ゲイルを呼ぶのが手堅い選択だけど……)

 

 

BF-疾風のゲイル

 

闇属性 鳥獣族 星3

 

攻撃力 1300

 

守備力 400

 

BFがいるとき特殊召喚できる

攻撃を仕掛ける時、風で相手の勢いを半減させる

 

 

(でも、ゲイルじゃあ、このターンキースに大したダメージは与えられないないうえに、ゲイルとリボルバードラゴンで相打ちして、また僕のフィールドはがら空きになる……このゲームを有利にするためには、勝負に出るしかない!)

 

 

「僕はデッキから加えるのは、"BF-暁のシロッコ”!」

 

「……きやがったか」

 

 

BF-暁のシロッコ

 

闇属性 鳥獣族 星5

 

攻撃力 2000

 

守備力 900

 

相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、生贄不要となる

フィールドのBFの攻撃力を結集させる

 

 

 

 

 

勝利 LP 1000 手札1枚 (シロッコ)

 

モンスターなし

 

伏せカード3枚

ゴッドバードアタック(封印済み)

ブラック・サンダー(封印済み)

我が身を盾に

 

 

バンデット・キース LP 2950 手札 0枚

 

リボルバー・ドラゴン

 

攻 2600

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

 

伏せカード1枚

 

 

 

「そして僕のターン、ドロー!」

 

ドローカードを確認し、よし、と呟いた。

 

「僕は、魔法カード"貪欲な壺”を発動!」

 

 

貪欲な壺

 

魔法カード

 

墓地のモンスター5枚を選択し、デッキに戻す。

その後、カードを2枚ドローする。

 

 

「僕はこの効果で、墓地の、クリス、ブラスト、コガラシ、エルフェン、カルートの5枚をデッキに戻して、シャッフル。その後、カードを2枚ドローする!」

 

「ここで手札増強カードだと……?」

 

キースの苛立ちのによる心の騒めきは、勝利の期待の想いと反比例するように高まっていく。

LPと状況こそ現状キースが上回っているものの、キースのモンスターは"リボルバー・ドラゴン"だけ。

BFのトリッキーな効果で破壊されてしまえば、ピンチになるのはキースの方であるということを、正しく理解していた。

 

しかし、2ドローした勝利の様子は、ドロー前から大きく変わることはなかった。

 

(……BFモンスターをそろえることはできた……でも、まだ攻撃力が足りてない。そもそもあの伏せカード……さっきのターンに発動する素振りが一切なかったことを考えても、十中八九、罠カードだ)

 

今から全力で攻めて、シロッコの攻撃力を大きく上げることができれば、"リボルバー・ドラゴン"を倒せるかもしれない。

しかし、シロッコの攻撃力アップは自ターン限定。

攻撃を防がれれば、シロッコの攻撃力は元に戻り、狙い撃たれる的となってしまう。

 

 

攻めるべきか、攻めざるべきか。

勝利の心の天秤は、一瞬固まった。

がしかし、勝利はすぐに頭を振る。

 

 

(……馬鹿か。ここで悩んで守備に回るくらいだったら、最初っからピナーカで守備モンスターを呼んでくるか、ゲイルを呼んでくるべきだったんだ……でも、僕はシロッコに託した。なら、僕の行く道は一つだけだ!)

 

「僕は……"BF-暁のシロッコ"を召喚! このカードは、相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、生贄なしで召喚できる!」

 

キースは、王国の決闘を思い返して、顔をしかめた。

一度やられた経験から、この後に何が起こるのかを察した。

 

「そして手札から、"BF-下弦のサルンガ”を守備表示で特殊召喚!」

 

 

BF-下弦のサルンガ

 

闇属性 鳥獣族 星2

 

攻撃力 500

 

守備力 500

 

フィールドに攻撃力2000以上のモンスターがいる場合、特殊召喚できる

 

 

「サルンガは、攻撃力が2000以上のモンスターがいる場合、手札から特殊召喚できる……そしてさらに、魔法カード、"翼の恩返し”を発動!」

 

 

翼の恩返し

 

魔法カード

 

鳥獣族モンスターが2体以上存在する場合、600LPを払って2枚ドローする。

 

 

「このカードによって、600LPを捧げることにより、僕はシロッコとサルンガに、1枚ずつカードをもらうことができる」

 

勝利LP 1000 ー 600 = 400

 

「……この状況で、さらにLPを減らしやがるだと?」

 

「もう、退いてなんかやるもんか! 2枚ドロー!」

 

勝利は、引いたカードをちらと確認した後、覚悟の表情でまっすぐにキースを見据えた。

 

 

「さらに、モンスターを追加する。手札から、"BFー突風のオロシ”を守備表示で特殊召喚!」

 

 

BFー突風のオロシ

 

闇属性 鳥獣族 星1

 

攻撃力 400

 

守備力 600

 

BFがいるとき特殊召喚できる

 

 

「ちぃ……BFをそろえやがったか」

 

「そう。そして、シロッコのモンスター効果は、この状況でこそ真価を発揮する! シロッコの効果発動! フィールドのモンスターの攻撃力を、BF1体に集約する!」

 

 

BF-暁のシロッコ

 

攻 2000 + 500(サルンガの攻撃力) + 400(オロシの攻撃力) = 2900

 

 

「2900……」

 

キースが、呟く。

二人に、間を図るかのような静寂が訪れた。

 

(王国では……シロッコが、奴の力を上回ってくれた)

 

仲間を、信じるしかない。

一つ息を吐いて、

 

「行くぞ、キース」

 

と静かに言った。

 

 

「バトル! シロッコで、"リボルバー・ドラゴン"に攻撃! 『ダークウィングスラッシュ』!」

 

シロッコが、翼を大きく広げる。

それを、勢いよく"リボルバー・ドラゴン"に向けてはためかせようと構えたその刹那、キースが動いた。

 

「やらせるかよ! 伏せカードオープン!」

 

「くっ! (やはり罠か!)」

 

想像通りの展開に、顔を顰める勝利。しかし次の瞬間、勝利は眉間のしわをほどき、代わりに驚愕の表情を向けた。

 

「罠カード、"絶体絶命”!」

 

「何っ!?」

 

 

絶体絶命

 

罠カード

 

このターン、相手モンスターの攻撃をすべて直接攻撃にする

 

 

「このカードによって、貴様のモンスターの攻撃は、俺様への直接攻撃へ変換される!」

 

 

シロッコの攻撃の標的であった"リボルバー・ドラゴン”の姿が消え、キースの後ろへと位置を変える。

"リボルバー・ドラゴン”の前に立つこととなったキースは、苦い顔で、シロッコをにらみつけた。

 

「……かまうな、シロッコ! 『ダークウィングスラッシュ』!」

 

『くわぁー!』

 

ほんの少し笑みをこぼした勝利。

そして、勝利の再度の宣言を契機に、シロッコが思い切り翼を振る。

鋭い風の刃が、キースの身を裂いた。

 

 

キース LP2950 ー 2900 = 50

 

 

「ぐわぁあ!」

 

キースがその一撃に思わず、後ずさりをする。

まるでそれを守るかのように、"リボルバー・ドラゴン”が前に出直す。

 

 

「意外だね。あんたに、デッキのカードを思いやる心みたいなものが、残されていたのか?」

 

「……けっ。てめえらの気色悪い価値観でものを語るんじゃねーよ。"リボルバー・ドラゴン”にゃあ、まだ死んでもらっちゃ困るから残しただけだ……」

 

悪態を返すキース。

しかし、勝利には見えていた。

キースのために、戦おうとする、"リボルバー・ドラゴン”の心。

 

 

(思えば……キースはあれだけ大量のレアカードを抱えていたというのに、自分で決闘する時は常に機械族中心のパワーデッキだった。キース……あんたにも、あったのか? ただ……ただ純粋に決闘を楽しんでいた……そんな頃が。想像できないけどね)

 

「そら……まだてめえのターンだろうが。それでターンは終了か?」

 

「……冗談。決められなかった以上、シロッコの攻撃力は元に戻る。このままターンエンドしたら、シロッコを狙われて僕のLPは0だ。そんな終わり方ごめんだね。僕は手札から、"一時休戦"のカードを発動」

 

 

一時休戦

 

魔法カード

 

お互いにカードを一枚ドローし、次のターンの開始時までお互いにいかなる手段でもダメージを与えることができなくなる。

 

 

「お互いにカードを一枚引き、次の僕のターンまで、いかなるダメージも無効となる」

 

「ちっ……姑息な手を打ちやがって」

 

「カードを1枚セット。これで僕は、ターンエンド」

 

 

勝利 LP 400 手札0枚

 

BF-暁のシロッコ

 

攻 2000

 

BF-下弦のサルンガ

 

守 500

 

BFー突風のオロシ

 

守 600

 

伏せカード4枚

ゴッドバードアタック(封印済み)

ブラック・サンダー(封印済み)

我が身を盾に

不明1枚

 

バンデット・キース LP 50 手札 1枚

 

リボルバー・ドラゴン

 

攻 2600

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

 

 

一時休戦中 ダメージ無し

 

 

一呼吸ついた勝利は、状況を見直した。

 

(このターン僕は、ダメージを受けない。たとえ"リボルバー・ドラゴン"の効果が決まったとしても、効果と、戦闘で、破壊できるモンスターは2体。僕のフィールドのモンスターは3体だから、どうなっても1体は残ってくれる)

 

残ってさえくれれば。

 

勝利のそんな考えを見透かしてか、知らずか、キースが邪悪に笑った。

 

 

 

「……ダメージを受けねえから、安心ってか。なめてんじゃねえぞ黒羽。このターンで、お前を再起不能の泥沼まで沈めてやるよ」

 

「っ!」

 

『ぴぃ……』

 

勝利と、勝利のそばで見守るブリザードが、その勢いに思わず気圧される。

今のキースから、強い意志を感じた。

 

 

その意志とは、勝利が唯一認める、『執念』というキースの力だった。

 

 

「俺のターン! ドロー! まずは、"リボルバー・ドラゴン"の効果発動! ロシアンルーレット!」

 

三度、シリンダーが音を立てて回る。

勝利は、息を飲んだ。

 

 

右肩部 ×

頭部  ×

左肩部 〇

 

 

"リボルバー・ドラゴン"の左肩部から、銃弾が飛ぶ。

しかし、単発で放たれたそれは、BFたちを脅かすものではなく、3体は軽く羽で羽ばたいてそれを交わした。

 

ふぅと一つ息をつく。

 

「頼みの効果破壊も不発に終わった。そんなんじゃあ、僕を追い詰めることはできないよ。キース」

 

「……ふははは。慌てんじゃねえ。今から俺様の、本当の切り札を見せてやるよ……」

 

「……なんだって?」

 

 

はったりじゃあない。

キースを見て、勝利は確信する。

 

(だが……この状況で、"リボルバー・ドラゴン”を超えるエースモンスターなんて……)

 

 

「さあ、覚悟しやがれ! 俺様は魔法カード、"融合”を発動!」

 

 

「っ! しまった! そういうことか!?」

 

 

融合

 

魔法カード

 

決められたモンスター2体以上を融合する

 

 

「俺様はフィールドの"リボルバー・ドラゴン”と、手札の"ブローバック・ドラゴン”を融合! 現れろ、暴走機関銃、"ガトリング・ドラゴン”!」

 

 

ガトリング・ドラゴン

 

闇属性 機械族 星8

 

融合モンスター

 

「リボルバー・ドラゴン」 + 「ブローバック・ドラゴン」

 

攻撃力 2600

守備力 1200

 

フィールド全体に銃を乱射する。

フィールドのモンスターを0~3体を破壊する(破壊する数はランダム)

 

 

がたがたがた、と車輪を鳴らしながら、それはポジションをとった。

その大きな体躯に、機械仕掛けの長い腕。

 

そして、その両腕の先端に装備された、銀色のガトリング銃。

 

 

 

逃げ場はない。そう感じさせるに十分な力が、そのモンスターにはあった。

 

 

 

「さあ……またお楽しみのルーレットだ。が、こいつの効果は、今までほど優しかねーぞ。いけぇ、"ガトリング・ドラゴン”! 『デスペラード・ガトリングレイン』!」

 

 

 

キースの宣言とともに、ガトリング銃から銃弾が乱射され、勝利のフィールドに着弾する。

轟音を鳴らしながらとめどなく降り注ぐそれは、まさに鉄の雨だった。

 

最初の数秒は必死に身を躱すBFたちだったが、やがてその質量に、被弾の回数を増やしていく。

それを好機といわんばかりに、銃の回転速度が一気に加速した。

 

 

その激しさから、思わず勝利は目を背ける。

 

 

やがて、銃弾を打ち尽くしたのか、音が止む。

勝利がゆっくりと目を開けるが、景色は砂埃で埋め尽くされる。

土と硝煙の香りに顔を顰めた勝利だったが、しばらくして景色が晴れると、その表情を驚愕に変える。

 

 

 

 

勝利 LP 400 手札0枚

 

モンスター無し

 

伏せカード4枚

ゴッドバードアタック(封印済み)

ブラック・サンダー(封印済み)

我が身を盾に

不明1枚

 

 

バンデット・キース LP 50 手札 0枚

 

ガトリング・ドラゴン

 

攻 2600

 

永続罠 心鎮壷 カード封印中

 

 

「ハハッ、大当たり! 3体のモンスターを、一掃だぜ!」

 

「ぐっ……」

 

「このまま攻撃で葬ってやりてぇところだが……"一時休戦”のせいで、ダイレクトアタックでもダメージは与えらんねえ。俺様のターンはこれで終了だ。さあ……最後のターンだぜ」

 

(まさか、本当に3体ともやられてしまうなんて……いや、僕はまだ、機械(マシーン)カードのパワーを甘く見ていたのか)

 

 

 

勝利が、無言でカードを引く。

その姿を見て、キースは笑いながら口を開く。

 

「覚えてるぜえ……てめえのデッキは、複数カードでパワー不足を補う、コンボ型デッキ。だが、そのデッキで俺様のデッキに正面から肉薄できるほどのパワーカードはシロッコくらい。それも、モンスターが並んでいたらの話だ」

 

 

キースの言い分は正しい。

勝利のデッキのカードで、単体でひっくり返すことができるBFカードはごくわずか。

シロッコが破壊された今、残り数十枚のデッキの中に、ここからひっくり返すことができるBFを引く確率は、10パーセントにも満たないだろう。

 

 

「ああ……さすがに、その通りだね。もはや僕のデッキに、"ガトリング・ドラゴン"に勝る高攻撃力モンスターは、ほとんどいない」

 

 

その言葉に、キースは歓喜し、口を大きく釣り上げた。

 

 

勝った。

その言葉が、こぼれかけた。

 

 

 

 

「勝てなかっただろうね……僕が、王国で、あんたと戦った時のままだったら!」

 

 

 

 

「……なんだと?」

 

「行くぜ、キース! あんたの言う通り、これが……ラストターンだ! 伏せカードオープン! "無謀な欲張り”!」

 

通常罠

自分はデッキから2枚ドローする

その後の自分ドローフェイズは2回スキップされる

 

「カード2枚ドロー! その後、2回のドローがスキップされる……けど、今の僕には関係ない!」

 

高らかに宣言し、引いたカードを掲げる勝利。

そのドローに、絶望の気配は欠片もなかった。

 

 

「僕はさらに、魔法カード、"大嵐”を発動!」

 

 

 

大嵐

 

魔法カード

 

敵、味方問わず、場のすべての魔法・罠カードを破壊する

 

 

 

 

「フィールドの、魔法・罠カードを一掃する!」

 

その言葉とともにカードをセットしたのと同時、お互いのフィールドに暴風が吹き荒れる。

 

 

 

勝利 LP 400 手札2枚

 

モンスター無し

 

バンデット・キース LP 50 手札 0枚

 

ガトリング・ドラゴン

 

攻 2600

 

 

 

(……"心鎮壷"の破壊? いや、自身の魔法・罠が破壊されてちゃ意味がねえはず……あの野郎、一体何を)

 

「……ふっ、その答えは……こいつさ! 自分フィールドにカードが存在していない場合、"BFー逆風のガスト”は特殊召喚することができる! 来い、ガスト!」

 

 

BF-逆風のガスト

闇属性 鳥獣族 星2

 

攻撃力  900

守備力 1400

 

フィールドにカードがない場合、特殊召喚できる

フィールドに風を巻き起こし、逆風空間を作る

 

 

「……何かと思えば。この状況、そんなカードじゃあ時間稼ぎにもなりゃしねえぞ」

 

「時間稼ぎ? 違うね。このカードは、僕の勝利への第一歩さ! そして僕には、まだ通常召喚の権利が残っている!」

 

 

そう言って、勝利は残り1枚の自分の手札を掲げる。

キースが、ごくりと喉を鳴らした。

 

 

(たとえガストを生贄に、上級モンスターが出てきたところで、星5、6やそこらのモンスターじゃ、"ガトリング・ドラゴン"には敵わねえはず……まさか、またエルフェンみてぇなこざかしい効果で!?)

 

 

 

キースが、"ガトリング・ドラゴン"のパワーをいなし、嘲笑うように勝利をかっさらうBFの姿を想像して少し怯んだ。

 

勝利が、手札を反転させる。

キースはそのカードに、目を丸くした。

 

 

 

「これが、僕の新たな力! 僕が召喚するモンスターは……"融合呪印生物-闇”!」

 

 

「っ!!!? 『融合』……だと!?」

 

 

融合呪印生物-闇

闇属性 岩石族 星3

 

攻撃力 1000

守備力 1600

 

このカードは、融合素材モンスター1体の代わりにできる。

闇属性の融合モンスターの融合をする場合、このカードと場のカードを一枚を融合することができる

 

 

 

 

(全く……まさか、最後の切り札の『融合』までかぶることになるとはね)

 

 

「"融合呪印生物-闇”の、効果を起動! このカードは、自分を含むフィールドに存在するモンスター2体で、融合召喚を行うことができる!」

 

「な、なにぃ!? "融合"カード無しで、融合召喚だと!?」

 

「その通り! そして、"融合呪印生物-闇”のもう一つの効果! このカードは、融合素材になるとき、ほかのモンスターの代用として、融合を行うことができる!」

 

 

『がぁー!』

 

『……』

 

 

勝利の言葉に、ガストが反応し、そのガストを自らの身体に取り込むように、融合呪印生物が身体を開き、ガストを受け入れる。

 

ガストが樹陰生物に触れたその瞬間に、一筋の閃光とともに、フィールド全体に青く、そして黒い稲妻が駆け巡った。

 

 

 

 

「バンデット・キース……あんたを超えるならやっぱり、技じゃあない。力だ!」

 

「な、なにぃ!?」

 

場が暗く染まり、"ガトリング・ドラゴン"の正面には、暗雲が立ち込めている。

やがて、雷のエネルギーを満たしきったかのように、稲妻が収まり、雲の下に漆黒の穴が現れる。

 

 

「『あんたのすべてを超えて、僕は勝つ』。これがあんたの力を超える、僕が信じた新たな力!」

 

 

 

やがて穴からせり上がるように、

それは、現れた。

 

 

 

 

「闇も、雷も、友も、そして……敵をも食らいつくす、悪魔の力!」

 

 

 

勝利が、振り上げた手を下す。

それに合わせて、その悪魔も手を下す。

 

手に集まった電流がはじけ、闇を裂いた。

 

 

 

「その姿を現せ! "デーモンの顕現”!」

 

 

 

デーモンの顕現

 

闇属性 悪魔族 星6

 

融合モンスター

「デーモンの召喚」 + 闇属性モンスター

 

攻撃力 2500

守備力 1200

 

このカードは「デーモンの召喚」としても扱う。

このカードが存在する限り、 自分フィールドの「デーモンの召喚」は攻撃力500アップ!

このカードが墓地へ送られた場合、「デーモンの召喚」1体を特殊召喚する

 

 

 

「ば、馬鹿な……デーモンモンスターだと……?」

 

「あんたは知らないだろうけどね。僕はちょっと前まで、デーモン使いだったんだよ」

 

 

睨みあう、"ガトリング・ドラゴン"と、"デーモンの顕現”。

 

"ガトリング・ドラゴン"が腕の銃を向けようとしたその瞬間に、デーモンから青い稲妻が飛び、ガトリングが地にたたきつけられる。

そこには、完全なる格の差があった。

 

 

「な、なぜ……攻撃力は、"ガトリング・ドラゴン"の方が高いはず……」

 

「"デーモンの顕現”には、効果がある。自身を、"デーモンの召喚(デーモンモンスター)”として扱う効果。そして……"デーモンの召喚(デーモンモンスター)”の攻撃力を、500ポイントアップする効果さ」

 

 

デーモンの顕現(デーモンの召喚)

 

攻 2500 + 500(自身の効果) = 3000

 

 

キースは、ただただ、呆然と固まる。

勝利は、全力で握った拳をキースへ突き出した。

 

 

 

「さあ……バトルだ! "デーモンの顕現”で、"ガトリング・ドラゴン"を攻撃! 『魔降雷波』!」

 

 

 

 

デーモンの顕現(デーモンの召喚)

 

攻 3000

 

ガトリング・ドラゴン

 

攻 2600

 

 

 

 

キース LP 50 ー 400 = 0

 

 

 

 

 

 

雷の勢いに、轟音を鳴らして崩れ落ちるガトリング・ドラゴン。

勝負は、決着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい決闘だったよ。ありがとう」

 

決闘盤の電源を落とし、デッキを外してしまった後に、その場に座り込むキースのもとまで歩み寄った勝利は、そっと手をキースに差し出した。

キースは、動かなかった。

しかしそれは、操られていた時のような生気のない表情ではない。

むしろ、彼の中でさらに煮えたぎる何かが、あふれ出ているかのようだった。

 

「……キース」

 

もう一声かけようとすると、ぱぁん、という快音とともに、差し出した手を思い切りはじかれる。

さすがに痛みに耐えかねて手を引っ込めてさすりながら、キースを再度見る。

視線だけで人を殺せそうな勢いで、勝利を睨んでいた。

 

 

「……『いい決闘だった』だと? てめぇ、どこまで人を馬鹿にすりゃ気が済むんだ! ああ!?」

 

立ち上がり、勝利の胸倉をつかむキース。

勝利は冷静に、騒ぐ『BF』たちを目で制しながら、キースに向き合った。

 

 

「……馬鹿になんてしていない。キース。あんたは、得体のしれない、『洗脳』などという未知の力に、自分で打ち勝った。そして僕に、『執念』と『力』の決闘をもう一度全力でふるって見せた。しかも、イカサマなしでだ。僕は心からあんたを」

 

 

 

「うるせえっつってんだよ!」

 

 

 

 

勝利の言葉すべてを待たずに、キースが勝利の身体を持ち上げ力のままに投げ捨てる。

地面にたたきつけられた勝利は、痛む身体を抑えながら、ゲホゲホと軽くせき込んだ。

 

 

(……自分で、洗脳に打ち勝っただと……)

 

 

キースは、すべてをはっきりと覚えているわけではない。

王国を出て、謎の帆船に拾われてからの記憶は、ずっと曖昧なまま。覚えているものもあるが、その映像を自分の記憶と感じることができず、知らない日記を自分のものだといわれて読まされているような気分だった。

特に、自分に洗脳とやらを仕掛けてきた輩の顔も声も、一切思い出すことができなかった。

 

 

しかし、今の、勝利との決闘の内容については、部分的にだが思い出せていた。

 

 

(コガラシ……エルフェン……弓の装備カード……馬鹿の一つ覚えみてえに、王国の時と同じカードで戦いやがって……)

 

 

そう。

勝利は明らかに、決闘の途中でカードを選んで戦っていた。

まるで、王国の自分との決闘を再現するかのように、カードも、シチュエーションも選んでいた。

それが誰のためだったのかなど、考えるまでもない。

 

だからこそ、キースは、苛立っていた。

 

 

(必死こいて、頼んでもいねえのに人様の記憶取り戻すために……そのうえで、俺様の切り札を、力で超えてきやがった……王国の時のように、技じゃなく、力で……)

 

 

渾身の力で歯を食いしばり、爪が食い込み血が滲むほど拳を握る。

痛みでも感じなければ、自分がおかしくなりそうだった。

 

 

「……キース」

 

「っ!?」

 

 

呼吸を整え、立ち上がった勝利が、キースを見る。

キースはその勝利の瞳が、何を見ているのか、どう見えているのか、何もわからなかった。

 

だからこそ、沸き立つ苛立ち。

今キースが勝利から受け取れる想いは、それだけしかなかった。

 

 

 

近づいてくる勝利に、キースは何かを投げつける。

勝利は自分の顔に飛んできたそれを、反射で掴んだ。

 

 

それは、カードと、パズルカードだった。

 

 

 

驚いた勝利が声を出す前に、キースが立ち上がり、歩き出した。

 

 

 

勝利の横を抜け、工場の敷地の外へと向かっていく。

勝利は、何も言うことができず、ただただそれを見送っていた。

 

 

 

 

「……今日は、負けといてやる。だが、絶対に次は、お前を、潰す」

 

 

 

 

それだけ言い残しキースは、おぼつか無い足を無理やりに動かし、消えていった。

勝利は、キースの背中が見えなくなったことを確認した後に、ふう、と息をついてその場に座り込んだ。

 

 

 

『ぴぃ。ぴぃー!』

 

「ああ、うん。大丈夫。元気元気。ただ、ちょっとだけ、疲れちゃっただけさ」

 

怒っているのか、心配しているのか、とにかくせわしないブリザードを宥めながら、少し空を見上げる勝利。

 

「……奴を、救えたのかな? 僕は」

 

『……ぴぃ?』

 

「ははっ。わかんないよね。僕にもわかんない。でも、一個だけ言えることは……僕は遊戯君たちや舞さんみたいに、上手にはできなかったってことかな」

 

乾いた笑いが、誰もいない廃工場にこだまする。

だが、その声がすっと消えたころに、勝利はほんの少しの、安堵の笑みを作った。

 

「……でも、『次』って言ってたね。なら、いったんよかったということにしようか」

 

 

 

 

 

少しした後、勝利は立ち上がり、自分のデッキを広げる。

図らずも、デッキ調整の最初の決闘という目的は達成したため、新しくなったデッキを見直していた。

 

「……しかし、あの辰巳君との決闘を参考にして入れておいたデーモンカードが、こんな風に役に立つことになるなんて思ってなかったよ」

 

『ぴぃ! ぴぃ!』

 

取り出した"デーモンの顕現”を見て、はしゃぐブリザード。

それに笑いながら、勝利はさっきの決闘、そして、これまでのたくさんの決闘に思いを馳せた。

 

 

 

「……嫌いなデュエルだといい捨てた人との決闘で得たものでデッキを作り、バンデットキースという卑怯な決闘者の魂をほんの少しだけ救うことができた。全く……人生って、決闘って、何がどうつながっているかわからないね」

 

 

 

勝利はそう言いながら、カードを一枚デッキに入れる。

 

 

 

「さっ、行こっか」

 

『ぴぃ!』

 

 

 

 

 

黒羽勝利 VS バンデットキース

勝者 黒羽勝利

 

パズルカード 2枚

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

二人の決闘が発生した廃工場から遠い遠い、とある部屋の一室。

 

 

その部屋の床には、ガラス類の破片が大量に散らばっており、机や壁には何かがたたきつけられたようなへこみや跡が残っている。

 

その部屋の中央で、金色の錫杖を持ちながら軽く息を乱すその男は、凄まじい表情で空を見つめていた。

 

 

 

 

「……僕をここまでコケにしてくれたのは、初めてだよ。黒羽勝利……」

 

言いながら、深呼吸をして自分の心を落ち着かせようとする。が、煮えたぎる怒りが、それを許してくれなかった。

 

 

 

「貴様だけは、名もなきファラオとともに、確実に僕の手で葬ってやる……最も残酷で惨たらしい舞台を用意してね……フフフフフ……」

 

 

 

 




はい。キース戦終了。もちろん勝利の勝ちです。
次回の対戦相手は果たして。
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