遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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王国編特殊ルール④

OCGではモンスターカードであるカードが、魔法、罠のようにセットして発動することがある。アニメの"時の魔術師"は茶色の淵で攻撃力も守備力も存在するのに魔法カード扱い。なんで?


到着、決闘者王国!

 

 

「「ふぁ、ふぁーくしょん!!!」」

 

勝利と城之内が示し合せたかのようにくしゃみを飛ばす。

さすがにこの時期の海は体に堪えるものだったようで、ダイブした二人はものの見事にそろって風邪を引いた。

まあ、舞にシャワーを借りる事が出来たから、そんなにひどくなっているわけでもないのが不幸中の幸いか。この程度なら、デュエルにもさほど影響はない。

 

「二人ともすまない……俺のカードを取りに海に飛び込んだせいで……」

 

「んなこたぁどーってことねえぜ!」

 

「ああ、遊戯君が謝るような事じゃないさ」

 

「……許せねーのは、遊戯の大切なカードを海に投げ込みやがったあの野郎だ」

 

城之内の視線の先には、うっすらと笑みを浮かべるインセクター羽蛾の姿があった。

遊戯(気配が変わった)は、それを見て闘志を燃やしていた。

 

……ちなみに勝利としては、遊戯たちの打倒羽蛾の戦いに介入しようというつもりはなかった。

理由は一つ。

 

(遊戯君が、あの程度の男に負けるはずがない)

 

はっきり言って、くやしさはある。

だがそれは、大切な祖父から受け継いだカードを投げ捨てられた遊戯の思いを押しのけるようなものではない。

であれば、奴を倒すのは、遊戯の手であるべきだ。

 

「遊戯君」

 

だから勝利はできる最大限のエールを送るだけにした。

 

勝利は遊戯に、二枚のカードを差し出した。

それに合わせて城之内も、二枚のカードを差し出す。

 

それは、ピースが欠けてしまった、もはや役立たずの『エクゾディア』パーツ。

 

しかし、それを見た遊戯は険しい顔を崩し、爽やかに笑ってカードを受け取ってくれた。

 

 

 

「二人とも……ありがとう。俺は、絶対奴をぶったおすぜ!」

 

 

 

決闘者(デュエリスト)達よ。まずはあの城に向かうがいい!」

 

「……おっ、もうすぐルール説明が始まるみたいだね」

 

バクラが城の上の方を指さした。そこには黒服の宣言で現れたペガサスが、この王国でのルールを説明している。

ざっくり言うと、

 

・島内でスターチップをかけてデュエル

・スターチップを失った敗者は決闘者の資格を失う

・スターチップを10個集めた者、先着4名が城に入る事が出来る

 

というもの。ほとんど勝利が事前に聞いていたものと変わりなかったので驚くようなことはなかった。

そしてやはり、件のルールについては主催側から説明する気はないようだった。

そういったところも含めて、決闘者としての腕が試されるということなのだろう。

 

(もしかしたら、僕や羽蛾君でさえもまだ知らされていないギミックや戦術があるのかもしれない)

 

いいだろう。面白いじゃないか!

 

「……やってやる」

 

静かに、勝利の中の闘志が燃えた。

 

 

 

 

 

 

100近い人数の参加者たちがぞろぞろと散っていく中、バクラが話しかける。

 

「そういえば勝利君。君、結局あの部屋をあの女の人に明け渡しちゃったみたいだけど……いったい何があったんだい?」

 

バクラのそのセリフに、城之内、本田の野次馬コンビが耳を傾け、杏子が「馬鹿……」と呟き苦い顔をする。

 

まあ、実際には一度デュエルをして、ちょっと仲良くなっただけ。明け渡したのも概ね自分の意思だし、特にやましいことは何もない。

勝利はそういおうとしたのだが……

 

「「…………」」

 

城之内と本田の視線が勝利の目を凄まじい強さで射抜く。

 

「いや、そんな目でみられたって、何もないものは何もなかったよ」

 

「勝利ぃ!?」

 

城之内が涙目になりながら、肩をつかむ。

 

「い、痛い。痛いよ!? 城之内君!」

 

「本当に、本当に何もおいしい思いはなかったと、俺たちの目を見て言えんのか!?」

 

「そりゃあ……」

 

 

 

『私に勝ったら私のこと好きにしてもいいわよ。朝まで』

 

『体のシャッフルはあなたが勝った後で』

 

『賭けの結果を違えたりはしないわ。好きになさい』

 

 

 

「な、なにもなかったよ。何も」

 

目をそらす。

嘘は言っていない、嘘は。

 

 

「お、おい勝利……まさか……お前」

 

「あーもう! いい加減にしなさーい!」

 

 

杏子の怒号と二人への拳骨により、ようやく勝利は解放された。

 

 

 

 

 

 

「さてと……ここからどうする?」

 

杏子がそうつぶやいたのは、デュエル開始まで1時間、というペガサスの宣言があったから。なぜ開始までにそんな長く時間を取るのかと言うと、この島を探索し地形をよく知ることがデュエルを有利にすることにつながるからなんだけど……当然そんなことを知らない参加者たちはこの一時間の使い方に四苦八苦しているようだった。

 

しかしそこは我らが遊戯。

そんなくだらない事で悩みはしない。

 

「森へ行くぜ! 羽蛾はその方向へ進んでいったからな!」

 

即決。さすがだ。

 

(さて、僕はどうしようかな? 遊戯君についていくのも面白そうだけど、それだと遊戯君のデッキやプレイングを確認してしまうことになり、せっかくの遊戯君とのデュエルの楽しみを減らしてしまうことになりかねない。かといってここでみんなと別れるのもなあ……)

 

 

 

 

 

「ああ、いたいた。おいこらー! 勝利ーーー!!」

 

 

 

 

 

「げっ! この声は!!?」

 

「……? 舞さん?」

 

後ろの声に反応して振り返ると、やはりというかそこには元気溌剌な舞が佇んでいた。

 

「どうしたの、舞さん? まさか、しょっぱなから僕とデュエルするつもりかい?」

 

そう言ってデッキホルダーを触りながら警戒する勝利に、舞は優しげな笑みを浮かべた。

 

 

 

たった一日かかわっただけだが、わかったことがある。

こういう笑みを浮かべる時の舞さんは、悪巧みしてる時の舞さんだ。

 

 

勝利は、鋭いと自負する己の勘が警報をがんがん鳴らしていることを感じ取っていた。

 

「あら、忘れたの? 昨日あたしと、『二人っきりで回る』って約束したじゃない」

 

「……はい?」

 

「「な、なにぃ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!?」」

 

「ちょっと、勝利君!? どういうこと!?」

 

「い、いや。どういう事も何も……」

 

そんな約束は一切していない。

 

(というか一応デュエルに勝ったのは僕なんだから、条件をだすとしたら僕の方のはずなんだけど……)

 

「さあ、いくわよ勝利!」

 

弁解する余地すらもらえず、舞に引きずられていく。

っていうか……

 

「ちょ、ちょっと待って舞さん! 閉まる、首が極まってるから~~!」

 

 

 

 

 

「「……羨ましい……」」

 

「……男ってサイテー! どいつもこいつも、あんなフェロモン女にやられちゃって!」

 

「……勝利君、ああいう女性がタイプだったんだね」

 

「……まあ、気にしててもしょうがない。俺たちは羽蛾を探しに行くぜ!」

 

 

 

 

「ちょっとまってよみんな! ちょっとくらい助けるそぶりがあってもいいんじゃないのかな!? 仲間って言ってくれた話はどこに行ったのさ!? 薄情者~~~!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……で、舞さん。なんで僕を連れてきたのさ」

 

森の中へと連れ込まれた勝利は、肩を回しながら舞に尋ねる。

さすがに昨日の今日で、本気で一緒と旅をしたいと思ってくれた……なんて楽観視するほど馬鹿じゃない。

 

「単純な話よ。あたしのデッキはすでにあなたに内容を知られてしまっている。ならあなたがあたしのデッキ内容を言いふらさないように、あなたと一緒に島を回りあなたを監視しておけばいいってわけ」

 

「……なるほど」

 

「それに、大会優勝者のあなたはあたしの知らないこの島のルールを知っているはず。だからあなたのデュエルするところを見ておけば、そのルールも見えてくるだろうしね」

 

「さすがにデュエルの腕が一流なだけあって、戦い方は心得てるね」

 

(……それに、デュエルしているところを観察すれば、こいつの強さを見極められるかもしれない。同じ奴に二度も負けるなんて、あたしの決闘者としての誇り(プライド)が許さないわ!)

 

「でも、別に僕がそれに従う理由はないんじゃないかな? 楽しいデュエルが出来たことの義理は、部屋を明け渡すことで返したと思うけど?」

 

軽く探りを入れる勝利に、舞は鋭い目で返した。

 

「この要求がのめないなら、あなたをこの場で島から追い出すだけよ」

 

デュエルする、という事か。と理解した勝利は、直ぐに考える。

 

(舞さんは、あのルールをまだ知らない。ならば、僕が有利を取ることは難しい事じゃない。でも……舞さんの実力は僕が身を以て体感しているし、何よりこの人は、この島で唯一僕の『BF』デッキを知っている人だ。負けたら終わりの初戦の相手とするには、リスクが大きすぎる)

 

それに、デッキタイプが近い舞のデュエルを近くで見ることは自分のデュエルの参考にもなる。

 

 

(結局、舞さんの手に乗るしかないわけか……)

 

 

 

ふぅ、とため息をついた後、舞に手を差し出した。

 

「ひとまずはお互いの(スターチップ)10個獲得を目指して……ってことで構わないかな?」

 

「ええ。協定は成立ね」

 

 

言うやいなや舞は、差し出した勝利の右腕に、自分の腕をからめてくる。

 

「ちょ、ちょっと! 何してるのさ! 舞さん!?」

 

「ふふっ、いいじゃない。こんな美人と二日も、二人っきりでいられるのよ? ちゃーんとエスコートしてよね?」

 

「っ!!!!!!」

 

ふ、二日間!?

しまった! 決闘者の王国の戦いは二日続くんだ! 

という事は、二日間丸々舞さんと一緒!? 盲点だった!

 

「あ、あのー、舞さん。さすがにそれは……」

 

「あら、嫌なの?」

 

「……」

 

 

ああ、断れない自分の弱さが憎い……

しかしどうしよう! こんないろんな意味で危険な人と二日間一緒に過ごすのか!?

嫌じゃない。いやしかし、気の休まる時間が無くなるのは少し嫌だ!

 

だ、誰か助けてくれー!

 

 

 

 

「……おいこらぁ! 黒羽勝利!! お前さん、何しとるんや!!!!」

 

「へっ?」

 

 

 

 

そんな風に願っていると、救世主は意外なところから現れた。

 

 

 

「だ、ダイナソー竜崎君……?」

 

木陰から現れたのは、船でも少し話をしたダイナソー竜崎……だったんだけど。様子がおかしい。

湯気が出るほどに真っ赤にした顔に、額に浮かべぴくぴくと震える青筋。

分かりやすく言うと、数分前の城之内、本田がしていた顔と同じ顔をしている。

 

「ようもワイの前で見せつけてくれるやないか!? 大会優勝者はそないにえらいんか!?」

 

「……?」

 

……とりあえず、どう見ても彼が勝手に覗き見ただけなのだが、もはやそれはどうでもいい。気になるのは、彼の異常なまでの怒りだ。

彼とは船が初対面。当然深い仲であるはずもないし、まともな会話はこれが二度目だ。

特に恨みを買うようなことをした記憶もない…と思うのだが、彼の様子を見るに、どうも『きれいな女性を連れているのが許せない』というだけの怒りとは思えない。

 

(……舞さん。竜崎君に何かしたの?)

 

(ん? ああ……そういえばあいつ、あたしのこと部屋に誘ってたわね。ま、あたしの狙いは既にだれかさんに決まってたから、適当にあしらってやったけど)

 

ああ……なんとなく読めた。

つまり、自分の知らない場所で、竜崎が舞を部屋にお誘いする、というイベントが起こっていた。

しかし、結果的に舞が竜崎を相手にすることはなかった。

そして今、その舞は勝利に引っ付いている。

 

だから竜崎は舞のこういう本性を知らないままで、

舞を横取りされたと逆恨みしているわけだ。

 

(……うん。完全に僕は被害者だ。)

 

しかし、目の前の竜崎にそんなことを言ったって、聞く耳持たないのは火を見るより明らか。説得しようにも、舞を部屋に入れたこと自体は事実なわけで、それを正直に話せば火に油を注ぐだけ……

さて、どうしたものか……

 

 

勝利は穏便に済ます方法を考え込んだ。

 

しかし勝利は学習するべきだった……自分の脇にいるこの人を自由にしたら、面倒なことになるのだという事を。

 

 

 

「ごめんねえ、竜崎さん。あたし、デュエルの強い人が好みなのよ。だから、勝利君についてくことに決めちゃったの」

 

色っぽさ全開のかわいらしい声色で、竜崎にそう宣告する。

勝利の表情は一気に歪んだ。

 

「な、なんやてぇ~~~!!!!?」

 

「ちょ、ちょっと!!! 舞さん!!!」

 

(いいから。ここはあたしに任せなさい。大丈夫、悪いようにはしないわ)

 

舞は耳元でそうつぶやいた。

悪いようになる気しかしない。

 

「そんな奴のデッキに、ワイのデッキの力が劣っとる言う事か!?」

 

「あれ? だって竜崎さん、3位だったんでしょう? なら、1位の勝利君の方が、強いってことじゃないの?」

 

「そ、それはトーナメントで順位を付けただけの話や! 直接デュエルすりゃあ、ワイの方が上にきまっとる!」

 

 

 

「へぇ……じゃあ、見せていただける?」

 

 

 

「……何やて?」

 

「勝利君と、竜崎さん。直接デュエルしたら、どちらの方が強いのか。ぜひ、見てみたいわ」

 

「……ええやろ。デュエルや、黒羽勝利! ワイが勝ったら、孔雀舞から離れてもらうで!」

 

「わあ、男らしい! 素敵よ、竜崎さん!」

 

「へへっ! (今日は最高についてるで!)」

 

「じゃあ、その賭けはあたしが取り仕切るわね。(スターチップ)はお互い一個賭け。そしてデュエルに敗北した者は、勝利した者に従う事。いいわね」

 

そう言って勝利の方を見て、舞がウインクした。

 

(……はあ、そういう事か。)

 

『賭ける星は一つ』。この言葉で確信した。

舞はこのデュエルで脱落者を出す気はない。

 

要するに舞は、先にデュエルさせてこの王国のルールの確認をしつつ、自分の手駒を増やそうとしているわけだ。

 

(悪い人だなあ……)

 

「さあ、デュエルや!」

 

「……わかったよ」

 

 

(まあこのデュエル、僕にとってのメリットも大きい。受けない理由はないね)

 

 

 

なんせ相手はダイナソー竜崎。

大会で使用したデッキをそのままもってきているのなら、彼のデッキは強力なパワーカードで敵を押し切る、恐竜(ダイナソー)デッキ。

このデュエル、負ける方が難しい。

 

 

 

「場所を移動しようか、竜崎君。ココじゃあ、デュエルは楽しくならないよ。互いにね」

 

「へっ、せやな。まずは森を出るで」

 

 

上機嫌の竜崎に、やれやれといった様子の勝利が後を追い、丘の上のデュエルボックスを目指しだした。




導入パート。
記念すべき王国初デュエルは、ダイナソー竜崎戦です。

大体この小説は5000~8000文字位を目指していて、どうやっても切りようがないときに10000になる、くらいの目安で1話を作成しています。今回は切りがよかったので、デュエル前に切りました。

また、次回からのデュエルについて、先に一つ言っておくべきことがあります。
それは、『闇属性』と『フィールドパワーソース』についてです。
デュエリストの皆さんならご存じの通り、BFは極一部を除いて全員が闇属性・鳥獣族です。
そして、原作の竜崎の発言に、『闇属性モンスターはフィールドパワーソースの効果を受けられない』というセリフがあります。

このセリフについてですが、
・闇のプレイヤーキラーのカードや、ゴースト骨塚のカードが闇フィールドや墓場フィールドの効果を得ている
・BFがフィールドパワーソースを受けなかったら勝利の王国デュエルの面白みが減ってしまう←こっちがメイン

以上2点の理由により、闇属性がフィールドパワーソースを受けられないという設定は撤廃します。ご認識ください。

故にBFはハーピィなどと同様に、山岳のフィールドパワーソースを得ます。
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