勝利 LP 11000 手札 5枚
BF-そよ風のブリーズ
攻 1100
BF-上弦のピナーカ
攻 1200
永続魔法 黒い旋風
笑う男 LP 1000 手札 7枚 うちエクゾディアパーツ4枚(3種類)
残りデッキ 23枚
モンスター無し
永続罠 光の護封壁(3000LP)
伏せカード1枚
(私のエクゾディアデッキを見抜いたことは、さすがと褒めましょう。しかし私のデッキにはまだエクゾディア完成のためのパーツが眠っている。このゲーム、私の勝利はもはや時間の問題)
「さあ。ターンを進めなさい、黒羽勝利。次のターンに、私の『エクゾディア』があなたを打ち倒す。それがマリク様より任された、私の使命!」
両手を大げさに横に広げながら、芝居がかったような酔った様子の男がそう宣言する。
勝利はそれに顰め面で反応した。
「……マリクの使命とやらが、そんなに大事か?」
「……フフフ。愚問ですねぇ。大事ですよ、何よりもね。マリク様より賜った使命こそ、我が人生の本懐!」
勝利の問いに、大きく反応する男。
その様子はこれまでの張り付けた笑顔とは一つ違った、心からの笑顔であることが伝わってきて、勝利は思わず戸惑った。
その様子がどう見えたのかはわからないが、男が上機嫌で続けた。
「私はねえ……ひどい目にあってきたんですよ。この顔のおかげでね」
自分の顔を指さしながら、もう片方の手で服を引く。
そこから現れた傷跡に、勝利は見覚えがあった。
「……刺し傷跡」
「……ご明察。『へらへらと気持ちが悪い』と何度も殴られましたよ。両親に、同級生に、知らぬ大人に、何度もね。裏の世界に入っても、それは変わらなかった……あのお方に出会う前はね!」
震え声が、クレッシェンドで力強い声に切り替わっていく。
「マリク様は、場所をくれた! 力をくれた! そして何よりも……信頼をくれた!」
ディスクを顔の前に掲げ、デッキを見せびらかす。
勝利が毛嫌うコピーカードだらけのデッキを、愛おしそうに見つめていた。
勝利の顔から、表情が消える。
「私は、貴様を倒す! マリク様より賜ったこのデッキで、マリク様より拝命した任務を! 貴様を倒すというマリク様のその願いを! 達成して見せる!」
「本当にそう思っているのか?」
「……何?」
勝利の冷たい言葉が、男を指す。
笑みを張り付けたままではあるものの、男の声のトーンが一段階下がっていた。
「マリクが、お前を信頼してそのデッキを託し、お前ならできるとその任務を与えた。本当に、そう思っているのか?」
「……ええ、もちろん。マリク様の信頼に応えるべく、私は全力であなたを倒す。私を揺さぶろうとしてもそうはいきませんよ」
男の嬉しそうな言葉に、勝利は青筋を立てる。
勝利の心はすでに、男の先にいるマリクへと向いていた。
「……お前のデッキ。僕と戦うために用意されたデッキではなく、もっと前から託されたデッキ。だろう?」
その言葉に、男はピクリと眉を動かす。
それでも、笑顔を崩さない。
「ええ。その通りですよ。それが何か? 本当に倒してもらいたいのなら、新たなデッキを任せるはずだ。そういう話ですか? くだらないですねぇ」
「本気でマリクが僕を倒そうとしているのなら、お前たちが言う『組織の中でも上位のエリート』たちに任せるはず。ならばなぜ、組織の下っ端であるあんたを抜擢する?」
勝利の問いに、一瞬息を飲む。
がしかし、まだ笑顔で言い返した。
「関係ありません。マリク様は下っ端の中から私を信じ、抜擢してくれた。それだけで、貴様を倒すだけの力が湧いてきますよ」
盲信的にマリクに従う男。
勝利は一つため息を吐き、とどめとばかりに宣言した。
「お前が任されている仕事は、僕を倒すことじゃあない。僕を、足止めしておくこと。要は、負けても組織が痛まない時間稼ぎ要因だ。マリクはお前のことなんか、欠片も信頼しちゃいない」
瞬間、男の笑顔の仮面が完全に砕け散る。
男は、怒りの形相で叫んだ。
「無礼な! 撤回しろ! 私へのマリク様の信頼を、侮辱することは」
「マリクが信頼しているのは、お前のデッキのコピーカードたちだろ。持久戦に持ち込み、エクゾディアをそろえることで相手を倒す戦術をとるお前なら、たとえ負けても、本命の『誘拐』までの時間を稼ぐくらいはできる。だからお前が選ばれたんだ」
「そんっ……」
反論の言葉が、喉で何かに引っかかり出切らない。
その何かとは、男の記憶だった。
『遊戯と海馬の相手は、神のカード封じのカードを持つ、仮面の二人に任せる。黒羽勝利の相手は……そうだな。お前のデッキがいいね』
(マリク様は、遊戯たちを倒し、神のカードを手に入れるために仮面決闘者のお二人を向かわせた……ならば私は? 私は、私のデッキの何を見初めて……黒羽勝利の相手を……)
まさか本当に……
脳裏を過ったそれを振り払うように声を荒げた。
「黙れ貴様! それ以上侮辱するようならば、決闘で負かす程度では済まさんぞ!」
「……話し過ぎたね。無駄な時間を食っている場合じゃないってのに。いいだろう。その先は、決闘の結果で語って見せな」
「……いいでしょう」
「さあ、僕のターンの続きだ」
発動した異次元の指名者を墓地に送った後、相手の手札を思い出していた。
(エクゾディアパーツは現在3種類。そして奴の手札には3枚目の"活路への希望”があった。つまり、もう決着までの猶予はそう長くない。だったら奴は次のターンに、仕掛けてくるはず)
「僕は、"翼の恩返し”を発動!」
翼の恩返し
魔法カード
鳥獣族モンスターが2体以上存在する場合、600LPを払って2枚ドローする
「LPを600支払って、2枚ドローできる」
勝利 LP 11000 ー 600 = 10400
(ドロー加速……いや、どちらかといえばLPコストを払うことで我々のLPを近づけ、"活路への希望”のドロー枚数を削ることが目的か。こざかしい)
("大嵐"や"ツイン・ツイスター"を引いて攻めるのが一番手っ取り早かったけど、そううまく引けないか。でも、まだ手はある!)
「さらに僕は、フィールドのピナーカとブリーズを生贄に捧げ、"BF-激震のアブロオロス”を召喚する!」
BF-激震のアブロオロス
闇属性 鳥獣族 星7
攻撃力 2600
守備力 1800
攻撃力を下げることで、爆風を巻き起こし、カードを手札に戻す
戦闘を行うことで、台風を巻き起こし、モンスターを手札に戻す
「"黒い旋風”の効果発動! デッキから"BF-残夜のクリス”を手札に加える! そして、アブロオロスの効果発動! 攻撃力を下げることで、フィールドの魔法・罠カードをすべて手札に戻す! 『爆風陣ーエアリアル』!」
BF-激震のアブロオロス
攻 2600 ー 1000 = 1600
アブロオロスがこん棒に竜巻をまとわせて、"光の護封壁”に向けて構える。
振り下し直撃すれば奴を守る光の壁は吹き飛ばされ、直接攻撃が通用するようになって、試合が決まる。
「させませんよ。伏せカードオープン! "デモンズ・チェーン”!」
デモンズ・チェーン
永続罠
悪魔の鎖でモンスターを縛る
対象モンスターは攻撃できず、効果は無効化される
「このカードによって、アブロオロスを拘束。攻撃と、効果の発動を無効にします!」
「ちっ! アブロオロスの攻撃力は、元に戻る」
BF-激震のアブロオロス
攻 1600 → 2600
「ふっふっふ。その様子では、このターンに攻撃するのは難しいようですね」
「……カードを1枚セット。僕はこれでターンエンド。そしてピナーカの効果が発動。デッキから、BFモンスター1体を手札に加える。僕が加えるのは、"BF-黒槍のブラスト”」
BF-黒槍のブラスト
闇属性 鳥獣族 星4
攻撃力 1700
守備力 800
BFがいるとき特殊召喚できる
モンスターの守備力にもダメージを与えることができる
勝利 LP 10600 手札 5枚
BF-激震のアブロオロス(効果無効中)
攻 2600
永続魔法 黒い旋風
伏せカード 1枚
男 LP 1000 手札 7枚 うちエクゾディアパーツ4枚(3種類)
残りデッキ 23枚
モンスター無し
永続罠 光の護封壁(3000LP)
永続罠 デモンズ・チェーン(アブロオロスを拘束)
「……では、私のターン。ドロー」
ドローカードを見る。引いたカードは、"宮廷のしきたり"。エクゾディアパーツではなかった。
笑みが崩れたその表情は、素直に苦い顔を表した。
宮廷のしきたり
永続罠
このカードが存在する限り、場の永続罠カードは破壊されない
(このカードで、"光の護封壁”を守ることはできる……しかし、それもいつまで持つかは不明。それに黒羽勝利は"黒い旋風”の効果で、いつでも召喚できるモンスターを手札に蓄えているはず。パーツカードを守備にして守ることも難しい。できるならば、次のターンでゲームを決着してやりたいところ)
「私は、2枚目の"成金ゴブリン”を発動。あなたのLPを回復し、1枚ドロー」
勝利 LP 10600 + 1000 = 11600
「っ! フフフ。さらに魔法カード、"マジック・プランター"を発動」
マジック・プランター
魔法カード
永続罠カードを墓地に送り、カードを2枚ドローする
「"デモンズ・チェーン"を墓地に送り、カードを2枚ドロー!」
縛り付けていた鎖が消えたことにより、アブロオロスは解放され、嬉しそうに舞う。
(罠の除去効果を持っているアブロオロスを縛っていた鎖を解いた……勝負に出る気だね)
「さらに私は、"封印されし者の左腕”を場に召喚。そして、"馬の骨の対価"のカードを発動します」
馬の骨の対価
魔法カード
フィールドの効果を持たないモンスターを墓地に送り、カードを2枚ドローする
「"封印されし者の左腕"を墓地に送り、カード2枚ドロー……フフフフフ。そしてカードを1枚セットし、"非常食"のカードを発動!」
非常食
速攻魔法
フィールドの魔法・罠を墓地に送り、墓地に送った数×1000LPを回復する
「このカードで、今伏せた"宮廷のしきたり”と、"光の護封壁”を墓地に送りますよ」
男 LP 1000 + 2000 = 3000
勝利は少し目を見開く。
"光の護封壁”に、"宮廷のしきたり”。
どちらも、防御に重要なカード類だった。
「……ほう。勝負に出たね。見直したよ」
「黙りなさい。これで、あなたは終わりです! カードを4枚セットして、ターン終了!」
勝利 LP 10600 手札 5枚
BF-激震のアブロオロス(効果無効中)
攻 2600
永続魔法 黒い旋風
伏せカード 1枚
男 LP 3000 手札 3枚 うちエクゾディアパーツ3枚(3種類)
残りデッキ 17枚
モンスター無し
セットカード4枚
再び、にやついた笑顔が蘇ってきた男。
ターン終了の宣言と同時に、『勝利のターン開始が楽しみで仕方がない』。そんな様子が、表情から、仕草から伝わってきた。
しかし、ターンを始めないわけにもいかず、勝利がそっとカードを引く。
その瞬間に、男は意気揚々とカードを開く。
「この瞬間に、すべての伏せカードをオープンします! "活路への希望”! "闇よりの罠"! そして……"ギフトカード"2枚!」
闇よりの罠
LPが3000以下の時、1000LPを払い
「闇よりの罠」以外の墓地の罠カード1枚を選択する
墓地の通常罠カードを除外し、その効果をコピーする
男 LP 3000 ー 2000 = 1000
「"闇よりの罠"の効果が起動! 墓地の罠カード1枚の効果を、コピーすることができる! このカードが何を意味するのか、あなたには……フフっ。わかりますかねえ?」
上ずった声を抑えきれない状態で必死にしゃべる男。
それに勝利は、静かに答えた。
「……今から、"活路への希望”の効果が、2回発動する」
「その通り! 2枚の"ギフトカード”の効果により、あなたと私のLPの差は、15600ポイントまで膨れ上がる! つまり……私は残り17枚のデッキの中から、合計14枚のカードを引くことができるというわけですよ!」
再び、悦に入った男の一人芝居が戻ってきた。
勝利は、静かに、冷めた顔でそれを見守っていた。
「"封印されしエクゾディア”のカードはデッキに残り1枚だけ。ですが、そんなことは関係ありません! 引いて見せましょう! 引き当ててやりましょう! 我がマリク様への忠義の心で、デッキの中から勝利への1枚を、導いて見せましょう! 行きますよ!!」
男が、デッキに手を掛ける。
それを見て、勝利はそっと動きを合わせるように、自分の伏せカードに手をかけた。
「残念だね。あなたは、疑うことを知らない。せっかく立ち向かう心を持っているのに、そこに自分の意志がない。頭を操られていなくても、あんたはマリクの操り人形だ」
「……よくも、またマリク様を侮辱したな! 許さん……許さんぞぉ!」
再び表情を怒りに染める男。
しかしその表情は、長くはもたなかった。
「僕は、謝らないよ。伏せカードオープン。"神秘の中華鍋”」
「……は?」
神秘の中華鍋
速攻魔法カード
フィールドのモンスターを生贄に捧げ、攻撃力か守備力の数値分LPを回復する
「このカードの効果によって、アブロオロスを生贄に捧げる。そして僕のLPを2600回復する」
アブロオロスが中華鍋にその身を捧げ、その身をエネルギーに変換して、勝利の中に流れ込む。
勝利は小さな声で、ありがとう。と呟いた後、男に向き直る。
「さて……これでどうなるか、わかるかな?」
「……」
(な、なんだ? LP回復? このタイミングでそんなことをしても、"活路への希望”のドロー枚数が増えるだけ。私の『エクゾディア』が完成する確率が、上がるだけのハズ……)
『"活路への希望”のドロー枚数が増えるだけ』
「っ!!? まさか!? まさか貴様!?」
気づくと同時、決闘盤がカードを処理を開始した。
神秘の中華鍋 効果処理
勝利 LP 10600 + 2600(アブロオロスの攻撃力) = 13200
ギフトカード×2 効果処理
勝利 LP 13200 + 6000 = 19200
活路への希望 1枚目 効果処理
勝利 LP 19200
男 LP 1000
差 LP 18200 9枚ドロー
「きゅ……9枚ドロー……」
「さあ、引きなよ。まず、
男は泣きそうな顔で、デッキを見る。
デッキ枚数は、17枚。
そして、9枚ドローの効果が発動する"活路への希望”の効果が、2回。
「き、貴様まさか……この状況を生み出すためにわざと、"翼の恩返し”を発動して、LPの差を縮めようとするふりを……本来の目的、『LPの差を
「『エクゾディア』の特殊勝利。手札をそろえるだけでフィールドやLPの状況を無視して勝利することができる戦術。確かに強力な力だ。だがしかし、その効果は、あんたがゲームを続けられる状態であるならばの話だ」
M&Wは、カードを引かなければいけない状態でデッキからカードをドローできなければ敗北となる。
イシズが当初勝利に対して狙っていた策。
それと同じものを、勝利は仕掛けていたのだ。
「『エクゾディア』のカードによる勝利が発生するのは、手札にエクゾディアパーツがすべてそろい、エクゾディアが降臨したとき。いいかえるのであれば、『エクゾディアパーツがすべてそろったとしても、エクゾディアが降臨できない状況下』では勝利することができない。"活路への希望”の効果で2枚のドローで『エクゾディア』が完成したとしても、"活路への希望”で9枚ドローする効果が発動しているのであれば、9枚ドローが完了するまでは『エクゾディア』による勝利は訪れない」
「あ……ああ……」
震える男の手。
やがて、ディスクから警告音が鳴り始める。
「さあ、これが最後の勝負。1枚目の"活路への希望”の効果でエクゾディアのパーツをすべて引き切ったのであれば、エクゾディアが降臨して僕の負け。しかし、1枚目の"活路への希望”の効果で1枚でもパーツをそろえることができなければ、デッキ8枚に対しカード9枚をドローすることとなり、デッキを引き切ってあんたの負け。あんたのエクゾディアは、永遠に場に出てくる機会を失う」
「ああ……」
ディスクの警告音が、感覚が短くなる。
男が、カードを1枚ずつ引き始めた。
引くごとに、男の視界が、涙で歪んでいく。
「さあ。引いてみなよ。そのマリクへの忠義とやらが、お前の力になるのなら」
「ああ……ま、マリク様……」
7枚目。
8枚目。
男が、固まった。
「お、お許しを……ま、マリク様ぁーーーーーーーー!!!!!!!」
引いたカードを、床に落とす。
手札も、落とす。
見える数々のエクゾディアパーツ。
そして、その中に見えない"封印されしエクゾディア”のカード。
ディスクが、決着を知らせた。
勝利は、崩れ落ちたその男のそばによる。
男は、「マリク様……」と上の空で呟くばかりで、もはや勝利のことは目に入っていなかった。
勝利はそっと、男のディスクからパズルカードを外す。
「1枚、もらっておくよ。アンティはいらないからね」
そういった後、遊戯たちが上っていったビルを見上げる。
自分の決闘で夢中になって彼らのことは見えていなかったが、果たして遊戯たちの決闘は無事に終わったのだろうか。
早く、合流してモクバ君を追いかけなくては。
そう思い、ビルを下ろうとしたその瞬間。
男が頭を抱え、奇声を上げながら立ち上がった。
「あぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「っ!!? なんだなんだ!?」
思わず勝利は足を止め、振り向く。
突然立ち上がったその男が何をするかわからず、足を前後に開き、動きやすい体制で手を構えた。
しかし、男は動かない。
虚ろな目、ふらつく身体。
まるで、自分の意志で立っていないようだった。
「まさか……マリク!?」
『見届けさせてもらったよ。神の力。そして……黒羽勝利。お前の力もね。強い強い』
「マリク……」
言い分を聞くに、遊戯たちと自分の2か所で、同時に会話をしようとしているらしい。
状況を概ね理解した勝利は、小馬鹿にしたように笑った。
「ふん。遊戯君たちもお前の手下を倒したようだな。お前の仲間はどんどんと敗れていくぜ?」
『フフフ。ここまで僕の手下どもの決闘に付き合ってくれたことには礼をいうよ。おかげで随分と時間を稼げた』
マリクの言葉に、勝利は目の前の男のことを思い出し顔を歪めた。
想像通り、彼はマリクにとって時間稼ぎの要因でしかなかったらしい。
そして……目の前の彼曰く、『組織の中でも上位のエリート』だった遊戯たちと戦ったレア・ハンターたちもまた、マリクにとってはただの駒。
(……どこまでも人を馬鹿にした奴だ)
『まずレア・ハンターたちの視点から君たちのデッキ構成はほぼ把握した……情報がほとんどなかった黒羽勝利のデッキもね。君たちいずれの対戦でも、僕のデッキに勝つことはできないだろうね……僕の持つ
(……"オベリスクの巨神兵"を海馬君が持っているとイシズは言っていた。つまり、"オシリスの天空竜”を遊戯君が奪い取り、マリクの手に残る神はその"ラーの翼神竜”のみ。しかしそのカードは
、マリク曰く史上最強。まだ僕は……グールズとの闘いの舞台にすら上がれていないってことか)
『そして、神を奪い取る計画とは別の……もう一つの計画。それは遊戯……君との千年の時を超えた戦い! お前の「死」を持ってでしか終わらせることのできない……墓守の血族の復讐だ!』
その言葉に、勝利は胸ポケットの千年タウクを、マリクに見られないように握った。
(それが……イシズが自分のすべてを賭してでも止めたかった、自分自身さえも焼き尽くしかねない、マリクの復讐の炎)
奴を倒し、その復讐劇に幕を下ろす。
それがイシズから受け取った、墓守の使命。
(……いや、関係ない。僕はあくまで、マリクを倒す。決闘を愛する、一人の決闘者として)
勝利は自分の決意を新たに、マリクに向き直る。
『でも……今はちょっとそれ以外の計画も並行して進めていてね……それがお前だよ、黒羽勝利』
「……何?」
突然の名指しに、勝利は疑問符を投げ返す。
『お前には、随分とこけにされたからねぇ……本来貴様のような部外者をこの舞台に上げるつもりはなかったんだが……少し事情と、気が変わってね。喜びな。遊戯への復讐劇の舞台に、お前も演者として参加してもらうよ。残酷な舞台の演者としてね。すでにお前の相手役の役者には、話はつけてあるんだ』
「っ!! 貴様! まさか、そのためだけに舞さんを!?」
『フフッ。相変わらず察しがいいね、黒羽勝利。遊戯、勝利。今度の劇は見ごたえがありそうだ。楽しみにしておくよ』
「マリク! 貴様ぁ!」
勝利が衝動のままに、男の胸倉をつかみ上げる。
が、男は完全に脱力し、動かず、ものも言わなくなった。
いら立ちのままにその男を投げ飛ばし、屋上から正面のビルの屋上へと目線を向けた。
すると、屋上から身を乗り出し、こちらを覗く遊戯と目があった。
「遊戯君! 海馬君!」
勝利が大声で吠える。
だいぶ自分の位置よりも高い場所にいる遊戯だったが、ギリギリ届いたようだった。
「勝利君! よかった! 君は無事だったんだな!?」
こちらの安否を見る遊戯。
しかし余裕のない勝利は、遊戯の言葉を無視して用件だけを簡潔に届けた。
「海馬君に伝えてくれ! モクバ君の場所がわかるから、助けに行こうって!」
拙作を思いついたときに、一番書きたいと思っていた決闘が近づいてまいりました。
ここまで続けられてありがたい限りです。
頑張って駆け抜けます。